要介護認定で一番多いのはどの介護度?最新データと将来予測を徹底解説

要介護認定で最も多い認定は? 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

高齢化社会が進む中、介護を必要とする方々にとって必要なのは要介護認定です。要支援または要介護の認定を受けることは、介護保険サービスを利用するための最初のステップとなります。

要介護認定は、「要支援1」から「要介護5」までの7段階で判定されます。それぞれの認定には、日常生活における支援や介助の必要性に応じた基準があります。要介護認定について、詳しくは別の記事でまとめていますのでご参照ください。

利用者家族
利用者家族

先日、介護認定を受けた母の認定が要介護2でした。もっと重い認定になると思っていたのですが、思っていたよりもずっと軽い認定だったので驚きました。要介護2だと施設に申し込みができないっていう話も聞いていますのでちょっと残念です。

介護認定では、どのくらいの認定になる方が多いのでしょうか。要介護4や要介護5になるのは難しいのかしら。

介護度の分布は必ずしも分布が平均になるように相対的に割り振られているわけではありません。

本記事では、どの要介護度が最も多いのか、その理由と背景、また将来予測について詳しく解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 介護保険の認定が出て、同じ認定の人がどのくらいいるのか知りたい人
  • 要介護4や5の割合がどのくらいか知りたい人

【この記事でお伝えしていること】

  • 要介護認定で最も多いのは要介護1で全体の20%を占める
  • 要介護5の認定者数はこの10年以上ほぼ変わらず、割合は大幅に減少している
  • 将来的には後期高齢者の増加に伴い、徐々に要介護3以上の割合が増えると予想される

要介護認定で一番多いのは?要介護認定の現状と推移

要介護認定者数の推移:20年間で2.6倍に増加

介護保険の認定結果を受け取る高齢者とその娘

厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、要介護認定者数は2000年度には約260万人でしたが、2021年度には約682万人に達しました。この増加は、高齢化の進行に伴う自然な利用者増だけでなく、介護保険制度の認知の拡大・普及が進んだことや、介護サービスを希望するニーズが大きいことを表しています。

  • 2000年:260万人
  • 2010年:490万人
  • 2020年:668万人
  • 2024年:717万人

要介護度別の認定者数と割合:2024年度の最新データ

次に、要介護度別の認定者数と割合を見てみましょう。

要介護度認定者数(万人)全体に占める割合(%)
要支援1104.2万人14.6%
要支援2101.3万人14.1%
要介護1147.8万人20.6%
要介護2120.5万人16.8%
要介護393.7万人13.0%
要介護490.6万人12.6%
要介護559.3万人8.3%
合計717.7万人

介護保険事業状況報告

この表から明らかなように、要介護1が147.8万人で最も多く、全体の20.6%を占めています

要支援1から要介護1のいわゆる軽度者が全体の半数以上を占めており、比較的軽度から中程度の介護状態に集まっていることがわかります。また、特別養護老人ホームへの入所対象となる要介護3以上は合計しても全体の1/3にとどまっています。

要介護1が最も多い理由

要介護1と認定された高齢者、デイサービスで介護職員と

要介護1の認定者数が多い背景には、以下のような理由が考えられます。

要支援と要介護の間の壁
要支援認定と要介護認定では利用できるサービスが大きく異なります。利用可能な単位数も限られ、また、ケアマネジャーのモニタリング訪問も3カ月に1回が原則であり、サポートの量としては十分ではありません。要介護1になることで、解消できる課題が多いことから区分変更で要介護1を目指すケースが多いことが要因にあります。

認定基準の特性
要介護1の認定は、介護の必要な手間は要支援2程度であるものの、状態が不安定であることが条件となっています。状態が不安定として該当することの多い、認知症高齢者や、がん末期の高齢者等が増加していることから要介護1の認定の割合が多くなっている可能性があります。

介護予防・重症化予防の効果
ケアマネジャーの行う適切なケアマネジメントと、品質の高い介護サービスを通して、重症化を予防できている側面もあります。その結果として、要介護1の状態が維持できているケースが増えていると思われます。

認定者の年齢分布
認定者数は高齢になるほど増加しますが、前期高齢者では要介護1が特に多く、これが全体の割合にも影響を与えています。将来的に、年齢分布が後期高齢者中心になることで、より重い介護度に集中する可能性があります。

過去の要介護度の推移

要介護度別の認定者数はどのように変わったか

では、これまでの要介護認定者数はどのように変化してきたのか。過去の推移を5年ごとにまとめました。

要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
2010年65.264.788.286.267.561.956.9
2015年87.783.9119.8105.179.172.858.4
2020年94.993.0138.0113.988.783.456.9
2024年104.2101.3147.8120.593.790.659.3

※単位:万人

全体の要支援・要介護認定者数が増えるのにつれて、全体的に人数は右肩上がりに増えています。

以下は2010年~2015年~2020年の割合分布をグラフにしたものです。

要介護1の認定者数は割合でみても右肩上がりで増えている状況がわかります。それに対し、割合が著しく下がっているのが要介護5です。

2010年には、要介護1、要介護2、要介護3という順に多かったのですが、要支援1と要支援2の認定者数が増加し、要介護3の認定者数を追い抜く形になっています。

要介護5の割合減少が示すもの

認定者数の推移で特に注目してほしいのは要介護5の割合です。要介護5の人数はほとんど増えておらず、2010と2020年は人数も同じ。全体の認定者数が増える中で最重度の要介護5の割合は減少していることがわかります。

要介護5の割合は10年間で約27%減少

要介護5、寝たきりの高齢者。病院のベッドで食事の介助を受ける

2010年には11.6%だった要介護5の割合が、2020年には8.5%まで減少しました。この背景には、重度化を防ぐための介護予防施策の成果があります。自立支援を目標にする介護保険の理念が浸透し、重度化を食い止めていることがわかります。

これは日本の介護職員が、重度の高齢者に対しても適切なアプローチをし、残存機能を活かして、自分の力でできることを増やしてきた積み重ねでもあります。また、医療の進歩により、脳血管疾患などにより大きなダメージを受けて要介護5に認定された方も、集中的なリハビリの結果で介護度を改善する事例が増えていることも大いに影響しているでしょう。

自治体が介護保険給付抑制のために、要介護5の認定者数を意図的にコントロールしているのではないかという疑念もありますが、認定審査会というブラックボックスで認定が決定されているため根拠はありません。


年代別の要介護認定の特徴

年齢によって要介護認定の分布も大きく異なります。

65歳以上75歳未満の前期高齢者は比較的軽度認定者が多いのに対し、90歳以上で見ると最も少ない認定が要支援1となります。年齢を重ねるごとに、介護度の分布は重度の認定に偏る傾向があります。

区分全年齢 割合(%)90歳以上 割合(%)
要支援114.5%9.1%
要支援214.1%10.9%
要介護120.5%20.2%
要介護216.8%18.9%
要介護313.6%17.3%
要介護412.6%18.2%
要介護58.2%10.8%

90歳以上では、特に要介護3,4,5の割合が大きく伸びていることがわかります。割合として最も多いのは要介護1であることは変わりませんが、他の介護度と比べてもその差は僅差になっていることがわかります。


2040年の要介護認定の未来予測

では、将来要介護認定の分布はどのように変わっていくのか。厚生労働省の将来予測をもとにAIが分析した結果を掲載します。

要介護認定者数は900万人超に到達

厚生労働省の予測によると、2040年には要介護(要支援)認定者数が900万人を超えるとされています。これは、65歳以上人口の約22%が何らかの介護認定を受けることを意味します。

現在の約717万人から見るても大幅に増加、特に団塊世代が後期高齢者になることから、75歳以上人口が大幅に増加。介護認定者数が一気に押し上げられる見込みです。

要介護1~2の割合は約45%を維持

軽度から中度の要介護者が多い状況は今後も続くと見られます。特に、介護予防のさらなる普及により、要介護1~2の割合が一定の水準を保つと考えられます。

要介護3以上の認定者が増加

高齢者人口の増加に伴い、要介護3以上(重度介護)の割合は40%を超えると予測されています。これは、90歳以上の高齢者が増加し、より高度な介護を必要とするケースが増えるためです。

2040年時点での要介護5の割合は横ばいもしくは8%以下と見込まれています。90歳以上の超高齢者は増えるものの、医療技術の進歩や早期介護サービスの導入により、要介護5に至る前に適切な支援が行われ、重度化を防ぐ可能性が指摘されています。


技術と制度の進化

2040年には、AIやデジタル技術を活用した要介護認定の調査が一般的になると予測されています。
AIは、申請者の健康データや生活状況をリアルタイムで分析し、より精度の高い認定決定を可能にします。これにより、認定プロセスの迅速化と公平性が確保される見込みです。

すでにAIによる一次判定の事務負担軽減や、オンラインでの介護認定審査会など、ITの技術により要介護認定を迅速化する取り組みもスタートしています。


具体的な予測モデル

以下は、要介護認定者数の推移を基にした2040年予測モデルです。

認定者数(万人)要支援1・2要介護1~2要介護3以上
2024年71728%37%34%
2040年90025%35%40%

このように、2040年には全体の認定者数がさらに増加する中で、重度者が増え、質・量ともに介護サービスへの需要が大きくなっていくことが予想されます。

介護業務の効率化や自立支援がますます重要になってくるのではないでしょうか。

まとめ

要介護認定の現状と分布、そして将来予測について解説しました。

データから、要介護1の認定者数が最も多いことがわかりました。ただ、超高齢者が増えることでより重度の高齢者が増えていく傾向も見られます。

重度化・重症化予防の取組により、軽度認定を維持する方も増える可能性もあります。いずれにしても、介護サービスの存在はこれからも要介護認定者の暮らしを支える重要な役割を果たすことが予想されます。介護度や身体状況を目安に、自立支援を目指して適切なサービス利用をしていきましょう。

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この記事を執筆・編集したのは

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