ロングショートステイの利用ができなくなるって本当?60日超えのショートステイ、長期利用に減算適用!(2024年介護保険改正)

介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

ショートステイとは、介護が必要な利用者を短期間受け入れて食事や排せつ、入浴等の支援を行う宿泊サービスです。とはいえ、ショートステイが「ショート」じゃない場合もあります。自宅に帰れない状況にある方などを比較的長期間継続利用することもあります。これを俗に「ロングショート(ロングショートステイ)」と呼んだりすることがあります。このロングショートに国からのメスが入りました。

今回はこの、ロングショートについて質問をいただきましたので紹介します。

介護者
介護者

ショートステイについて質問です。いま、母がショートステイを利用しています。実は私もずっと病院への入退院を繰り返している状況ですが、私以外に家族はおらず、自宅に母の介護をできる人はいないんです。とはいえ、母も高齢ですし、自分一人でトイレに行くこともできないので、ショートステイを長い期間利用させていただいています。

本当に助かっているのですが、介護保険の制度が変わって、長期間のショートステイが制限されると聞きました。長期入所の申し込みはしているのですが、まだ空きもないということで、ショートステイが使えなくなると、本当に困るんです。

いえケア編集部
いえケア編集部

どうもありがとうございます。体調もすぐれない中、不安な情報ですよね。今回はショートステイの長期利用がどうなっていくのか、具体的に紹介していきます。

【この記事を読んでほしい人】

  • ロングショートステイまたはショートステイを利用することのある利用者様・家族様
  • ショートステイの利用相談を受けるケアマネジャー
  • 今回の介護報酬改定に興味を持っている方

【この記事でお伝えしていること】

  • ショートステイを長期利用するロングショートステイの利用数は年々増えている
  • 介護報酬の改定により連続60日以上の利用に制限を加えることに
  • 今回の報酬改定の影響を受けていない事業所も多く、これまで同様に利用できる場合も多い

ロングショートステイとは何か?

まず、そもそもロングショートステイとは何か、について解説していきます。

ロングショートステイとは

介護イメージ

ロングショートステイは、一般的なショートステイとは異なり、比較的長期間にわたって介護施設や宿泊サービスを利用する形態です。一般的なショートステイが数日から数週間程度の短期滞在であるのに対し、ロングショートステイは連続利用日数が30日を超える長期滞在を示すことが多いです。

ミドルステイと呼ばれることもあります。

ロングショートステイの特徴は、主に以下の点にあります。

  1. 長期間の滞在: ロングショートステイは、介護者の事情によって在宅介護が長期にわたって困難とされる利用者や、特別養護老人ホーム入所までの待期期間で利用する場合が多いです。通常、30日を超える利用を短期入所の長期利用「ロングショートステイ」と呼ぶことが多いです。
  2. 継続的なケア: 利用者が長期間滞在することで、継続的な医療・看護ケアや日常生活支援を受けることが可能です。これにより、利用者の安心感や生活の質が向上します。
  3. 安定した環境: ロングショートステイでは、利用者が安定した環境で生活し、ケアを受けることができます。職員や他の利用者とのコミュニケーションの機会も多くなり、利用者側が得る安心感も大きくなります。
  4. 長期入所への慣らし利用: 施設への長期入所を前提にロングショートステイを利用する場合もあります。長期入所用の部屋に空きはないけれど、ショートステイ用のベッドだったら長期で用意ができる、という場合にロングショートステイを利用することもあります。施設側は利用者の性格やケアの注意点などを確認することができますし、利用者側も施設での生活に慣れる意味でも重要な役割を果たします。

ロングショートステイは、利用者や介護者のニーズに合わせた柔軟なケアを提供し、介護の持続可能性を支援する重要なサービスとして位置付けられています。

ロングショートステイと一般のショートステイの比較

ロングショートステイと一般のショートステイの違いについて下記の表にまとめました。

特徴ロングショートステイ一般のショートステイ
滞在期間30日を超える利用~数カ月単位数日から数週間
対象者長期にわたって在宅介護が困難な状況にある利用者短期的なケアや介護休暇(レスパイト)が必要な利用者
利用目的介護者の不在や利用者の安定した生活環境の提供介護者の一時的な休息やリフレッシュ、短期的なケア提供
介護者の状況長期的な不在、深刻な介護負担の軽減と持続可能性の支援一時的な介護休暇やストレス解消の機会、短期にわたる不在
サービス提供内容食事・排泄・入浴などの介護、健康管理に加え、定期受診の対応など食事・排泄・入浴などの介護及び健康管理
経済的負担長期間の滞在に伴う費用・介護保険対象外費用もあるため高額になりやすい短期間の滞在に伴う費用が比較的低額

ロングショートステイの場合は、ショートステイ期間中に病院受診や内服薬の処方を受けなければいけない場合もあります。継続して飲んでいる薬が足りなくなってはいけないので、家族やケアマネジャーと相談して、状況によっては施設側で病院受診の対応をしなければいけないケースもあります。

このように、ロングショートステイでは長期的な支援が必要になるため、利用者の様々な課題にも対応することがあります。

ショートステイやロングショートステイについてはこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。

ロングショートステイ利用に関する制限

ロングショートステイは利用する側にとっては非常に助かるサービスです。在宅介護の駆け込み寺、と呼ばれることもあります。

ただ、ショートステイはあくまで、「ショート」であって、長期利用を想定したサービスではありません。長期利用者が多くなることで、施設側は空床が少なくなり安定したショートステイの報酬を受けることができます。しかし、ロングショートステイでベッドの空きが少なくなり、短期間の利用を希望しているショートステイの受け入れがしにくくなってしまうという問題もあります。

連続30日を超えるショートステイ利用の禁止、および連続30日以降の報酬減算

これまでも厚生労働省はショートステイの長期利用の制限を加えてきた経緯があります。

こちらの資料に詳しく説明が載っています。

↓こちらは2024年3月までの単位数をもとにした資料の為、現行の単位数ではありませんのでご了承ください。

ショートステイ長期利用減算

※第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

【ショートステイ長期利用減算】

  • 利用者が連続して30日を超えてサービスを受けている場合においては、30日を超える日以降に受けたサービスについては、短期入所生活介護費を算定することができない。
  • 自費利用を挟み、同一事業所を連続30日利用している者に対してサービスを提供する場合には、連続30日を超えた日から減算を行う(1日につき30単位)。

【連続30日まで:通常】連続30日までの利用は減算されないため、通常の介護報酬。いわゆる一般のショートステイ。

【連続31日目:自費】連続30日を超えた利用はできないため、連続31日目は介護保険を適用できず、全額自費のショートステイを一日だけ利用。

【連続32日目以降:減算】連続32日目からはまた介護保険適用となります。ただし、通常の介護報酬から30単位減額した単位数となります。

32日目以降、報酬が減額されていますが、悪質なサービスだから減額されているというわけではありません。長期利用により、入所時の情報収集や施設の生活に慣れるまでの手間などが軽減されるため、短期間の利用と同じ報酬ではおかしいという意見もあり、減額されることとなっています。

これが従来の「ショートステイ30日超えルール」と言われるものです。

制限が加わってからもロングショートステイの利用数は増えている

それでも、ロングショートステイを利用する方は減りません。むしろ増えているのです。

ショートステイの長期利用減算の算定割合

※第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

ショートステイ長期利用による減算を受けている割合は年々増えており、平成28年度がショートステイ全体の23.3%だったのが、令和4年には37.0%まで上昇しているのです。

これには様々な背景があると思われます。

  • 核家族化などによる、老々介護の高齢者のみ世帯・独居世帯が急激に増え、介護力のない世帯が増えたため
  • 長期入所のための慣らし期間としてロングショートステイを利用することが増えているため

諸々の事情で自宅での介護ができない家庭も増えていますので、ロングショートステイが必要なパターンも増えています

しかし、その弊害として緊急時に短期間のショートステイを利用したくても、長期利用の方が多いために、予約で埋まっており、利用できない人がいるという弊害もあります。

ショートステイ利用を断られた理由

※第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

こちらの資料では、短期入所の利用を希望したのに利用できなかった理由として、「満床」が圧倒的に多い結果となっています。長期利用が多いということは、施設側としてはベッドコントロールもしやすく、収益も安定する反面、緊急的なショートステイ利用のニーズに応えられないという状況が生まれているのです。

2024年、制度改定で新たにロングショートステイ60日ルールが追加

ロングショートステイ

そこで、2024年の介護保険制度改正では60日を超えるショートステイ利用の単価をさらに引き下げられました。要介護3の場合の単位数の比較を表で紹介します。

(要介護3の場合)単独型併設型単独型ユニット型併設型ユニット型備考
基本報酬787単位745単位891単位847単位通常の単位
長期利用者減算
(31日~60日)
757単位715単位861単位817単位-30単位
長期利用の適正化
(61日以降)
732単位715単位815単位815単位2024年4月より適用

単独型施設に関しては61日以降の単位数はかなり減っており、単独型は25単位、単独ユニット型は46単位も減額されます。

短期入所生活介護(ショートステイ)における長期利用の適正化

※令和6年度介護報酬改定における改定事項について

ただ、見ての通り、減算が適用されるのは、4つの施設類型のうち、単独型・単独ユニット型・併設ユニット型の3種類。残る併設型に関しては、連続30日超過による30単位減額の時点で、長期入所よりも単位数が下回っているので、今回の減算は適用されませんでした。

最も大きい減額を受けたのは、単独型と言われる特別養護老人ホームに併設されていないタイプのショートステイ施設ということになります。

また、要支援の方を対象にしたショートステイも同様に長期利用に伴う減額が適用されています。

制度改正でロングショートステイはどうなるの?

介護施設でのようす

ショートステイに関しては長期間利用を制限する決定となりましたが、ロングショートステイが利用できなくなるわけではありません

施設・事業所によっては長期間の減算を受けないように、短期間の利用者の比率を多くしていくかもしれません。ただ、併設型の施設:つまり特別養護老人ホームなどの建物内で行われるショートステイに関してはほぼ今回の減算の影響を受けていません。なので、制度が変わったからといって、ロングショートステイをいきなり制限するという動きはあまり起こらないと思われます。

こちらの資料はショートステイの類型別事業所数です。大きな影響を受けた単独型は全体の11.6%。単独型ユニット型は7.5%。合計しても19.1%のみです。

類型別ショートステイの事業所数

※第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

大多数を占める併設型のショートステイ施設は影響を受けていない、もしくは数単位の影響にとどまっています。今回の改定でショートステイの長期利用を急に制限しようという動きは生まれないでしょう。

介護者
介護者

それを聞いて安心しました。

ただ、ショートステイというサービスはあくまで短期入所。「短期」の状態が長く続くのは本人にとっても宙ぶらりんな状態であまり望ましいものではありません。緊急時の対応や受診の対応、日中活動の充実度など、長期入所の方が受けられるメリットは多いです。

あくまでロングショートステイは一時的・臨時的な対応としての利用だと考えておきましょう。ロングショートステイの先の展開も意識しながら利用しましょう。

このほか、ショートステイに関する介護保険制度の改定についてはこちらの記事をご参照ください。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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