介護保険で要支援の認定に!相談は地域包括支援センター?ケアマネに直接相談できるの?2024年改定でどうなる?

要支援認定、居宅介護支援事業所に直接相談できるの? 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

介護保険は3年に一度大きな改正を迎えます。2024年4月の制度改定では、指定予防支援事業者の対象が拡大されました。要支援のケアプランを作成する機関は地域包括支援センターに限定されなくなったのです。

そこでこんな質問をいただいたので紹介します。

介護者
介護者

母が先日、はじめて介護保険の認定を受けて、要支援1という保険証が届きました。介護保険を使って、訪問リハビリと階段の手すり工事を考えています。

要支援の認定だから、地域包括支援センターに相談に行って、要支援のケアプランを立ててもらうことが必要と聞きました。

でも、実は地域包括支援センターのある法人に知っている人が働いていて、できればその人には会いたくないし・介護が必要になった状況を知られたくない、っていうのが母の希望なんです。

4月から、相談は地域包括支援センターじゃなくてもよくなったというのを聞きました。地域包括支援センターを経由しないでサービスを利用するにはどうしたらいいですか?

いえケア編集部
いえケア編集部

ありがとうございます。制度が変わって要支援の認定を受けた方は予防プランについて相談する場所についても選択肢ができることになります。選択肢が増えるといっても、すべてのケアマネジャーが予防プランを受けるわけではなく、地域によってもスタート時期をずらす場合もありそうです。詳しく説明していきます。

【この記事を読んでほしい人】

  • 要支援の認定を受けてサービス利用を考えている人
  • 予防支援の指定を受けている居宅介護支援事業所のケアマネジャー
  • 地域包括支援センターの職員

要支援認定の方がサービスを利用するまで

これまでの介護予防(要支援の方対象)のサービス利用について

まずは介護保険で要支援の認定を受けた方がサービスを利用するまでの従来の流れを説明していきます。

従来であれば、要支援の認定を受けたら、住んでいる地域を管轄する地域包括支援センターに相談をします。そこでサービスの希望や目標などを踏まえて予防ケアプランを作成します。地域包括支援センターが直接予防ケアプランを作成するのではなく、地域の居宅介護支援事業所に委託をして予防ケアプランを作成するというパターンもあります。

地域包括支援センターについてはこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。

まずは従来の2つのパターンでそれぞれサービスを利用するまでの流れを説明します。

(地域包括が直接担当する場合)

要支援の認定を受け取る

地域包括支援センターに相談・
地域包括支援センターと介護予防支援の契約

事業所の選択・予防ケアプランの作成

サービス事業所と契約・サービス担当者会議

サービス利用開始

(居宅介護支援事業所委託の場合)

要支援の認定を受け取る

地域包括支援センターに相談・委託先居宅介護支援事業所の紹介

地域包括支援センターと介護予防支援の契約・委託先居宅介護支援事業所との契約

サービス事業所の選択・予防ケアプランの作成

サービス事業所と契約・サービス担当者会議

サービス利用開始

委託をした場合、基本的には委託先の居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当として、訪問や相談、連絡調整などのケアマネジメントを行います。地域包括支援センターは後方支援という形で関わりますが、あくまで契約の主体は地域包括支援センターと利用者の関係、もしくは居宅介護支援事業者を含めた三者間契約となっています。

これが従来の介護予防支援の仕組みと流れになります。

制度改定により要支援のケアプランはどう変わるか

2024年4月からは地域包括支援センターを通さず、直接居宅介護支援事業所と契約ができるようになりました。

厚生労働省通知、改正内容

令和6年4月から居宅介護支援事業者も市町村からの指定を受けて介護予防支援を実施できるようになることから、以下のとおり見直しを行う。

  • ア 市町村長に対し、介護予防サービス計画の実施状況等に関して情報提供することを運営基準上義務付けることに伴う手間やコストについて評価する新たな区分を設ける。
  • イ 以下のとおり運営基準の見直しを行う。
    • ⅰ 居宅介護支援事業所が現在の体制を維持したまま円滑に指定を受けられるよう、居宅介護支援事業者が指定を受ける場合の人員の配置については、介護支援専門員のみの配置で事業を実施することを可能とする。
    • ⅱ また、管理者を主任介護支援専門員とするとともに、管理者が他の事業所の職務に従事する場合(指定居宅介護支援事業者である指定介護予防支援事業者の場合であって、その管理する指定介護予防支援事業所の管理に支障がないときに限る。)には兼務を可能とする。
  • ウ 居宅介護支援と同様に、特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算及び中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の対象とする。

このように地域包括支援センターも予防支援の指定を受けることが決まりました。これまでの「包括が直接担当する」パターンと「居宅介護支援事業所が委託を受けて担当する」パターンに加えて、
居宅介護支援事業所が直接契約して担当する」というパターンもできました。

これにより、地域包括支援センターとの相談や契約を経由することなく、サービスを利用することができるようになりました。

ケアマネジャーに直接依頼するメリットとデメリット

地域包括支援センターを介さず直接居宅介護支援事業所を選択・契約するメリットとデメリットを紹介します。

居宅介護支援事業所に直接相談するメリット

  • 地域包括支援センターを経由しない
    地域包括支援センターは地域の総合的な相談窓口です。地域の様々な相談が集まります。ただ、地域包括支援センターにも質のばらつきがあることや、人手不足で十分な相談体制がとれないセンターもあるというのが実情です。知人や親戚からの評判が悪いなど、地域包括支援センターには相談したくない、という人もいると思います。地域包括支援センターは担当地域が決められてしまうので、他の地域の地域包括支援センターに相談することはできません。つまり要支援の方がサービスを利用するには地域包括支援センターを必ず経由しなければいけなかったのですが、今後は地域包括支援センターを経由しないルートができるということです。
  • サービス利用までの時間が短縮できる
    地域包括支援センターが直接担当する場合もありますが、委託という形でケアマネジャーが担当するパターンが非常に多いです。となると、委託先を決めて、契約をして、さらにサービス事業所を決めるという形でステップが多く発生しますので、サービス利用までに時間がかかります。居宅介護支援事業所に直接相談であればそのステップが少なくなります。居宅介護支援事業所に併設しているサービスの利用希望があるのであればさらに利用開始までの時間を短縮できるでしょう。

居宅介護支援事業所に直接相談するデメリット

  • 予防支援の指定を受けている事業所が少ない
    すべての居宅介護支援事業所が予防支援の指定を受けるわけではありません。予防支援(要支援)は居宅介護支援(要介護)に比べて単価が安く、あまり依頼を受けたくないと考えている事業所も少なくありません。希望するケアマネジャーの事業所があっても予防支援の指定を受けているかどうかは確認が必要です。
    予防支援の事業所指定を受けているかどうかは、市町村のホームページ等で確認することができます(例:介護予防支援の実施事業者の追加について|横浜市)。地域によっても異なるかと思いますが、指定を受けている事業所数は少ないため、居宅介護支援事業所との直接契約の場合は、まず指定を受けているか確認してから相談することをお勧めします。
介護予防支援費と居宅介護支援費の比較
  • 予防支援の空き状況がわからない
    もちろん、全ての予防支援指定事業所がいつでも受け入れ可能とは限りません。ケアマネジャーの担当件数上限などもありますので、探しても受け入れができる事業所が見つからないという状況も考えられます。そうなると、地域包括支援センターに結果的に相談するというパターンになる可能性があります。
  • 予防ケアマネジメント(総合事業)対象者は直接契約ができない
    要支援の方がサービス利用する仕組みとしては予防給付だけでなく、総合事業の予防ケアマネジメントという枠組みもあります。予防マネジメント対象の場合は居宅介護支援事業者との直接の契約ができません。また、サービス利用後もこのふたつの制度を行き来する可能性があり、その場合はその都度契約するという手間が発生します。

最後に説明した予防ケアマネジメントに関する制度の問題、次の章で詳しく説明します。

要支援のケアプランは2種類!介護予防支援と介護予防ケアマネジメント

要支援のケアプランは2種類ある

要支援のサービス全てが予防支援ではありません。市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業という枠組みでサービスを利用することもあります。

訪問型サービス
(訪問介護)

通所型サービス
(デイサービス)

介護予防ケアマネジメント
(ケアマネ)

以上の3つのサービスに関しては介護保険ではなく、市町村の総合事業という枠組みで提供されます。なので、上記3サービス利用のパターンであれば、介護予防ケアマネジメントとして、地域包括支援センターの管轄になるため、直接ケアマネジャーとは契約ができません

この3つのサービス以外のサービスを利用する場合は、総合事業の介護予防ケアマネジメントではなく、介護予防支援となります。この場合は直接ケアマネジャーと契約ができます

以下のようなパターンが該当します。冒頭で今回相談いただいたようなケースも、予防支援対象となります。

訪問リハビリ
(介護保険)

予防支援
(介護保険)

福祉用具貸与
(介護保険)

通所型サービス
(総合事業)

予防支援
(介護保険)

ショートステイ
(介護保険)

訪問型サービス
(総合事業)

予防支援
(介護保険)

例えば、今まで訪問介護(総合事業の訪問型サービス)のみを利用していた方が、来月から福祉用具レンタルを利用することになった場合。それまで総合事業の介護予防ケアマネジメントでケアプランを作成していたのが、介護保険の予防支援でケアプランを作成することになります。

総合事業と介護保険、どちらの対象になるのかはこちらの厚生労働省資料の画像をご参照ください。

厚生労働省資料 総合事業実施後のフロー

介護予防・日常生活支援総合事業のサービス利用の流れ(厚生労働省)

同じ要支援のケアプランでも、総合事業と介護保険の2つの種類があり、利用するサービスによってそれを行き来することがあります。これまで居宅介護支援事業所と直接契約して予防支援のケアプランを立ててもらっていた人が、サービスの変更によって予防ケアマネジメント対象になると、地域包括支援センターとの契約が発生する場合があります。

介護者
介護者

え・・・なんだか難しくないですか

介護保険と市町村(総合事業)、ふたつの制度があり、行き来することがある制度設計になるため、非常にわかりにくいです。契約書類に署名などの手間も生じます。利用する側としてはあまり意識することはなく、ケアマネや地域包括支援センターで調整してくれるのですが、そういった複雑な仕組みだということもご理解下さい。

なので、希望しているサービスがどちらの制度の対象になるかわからない、という場合は地域包括支援センターに相談するのが安全です。もし、地域包括支援センターに相談できない特別な事情がある場合は市町村の担当窓口に相談してみましょう。

まとめ

要支援認定が出た方が直接居宅介護支援事業所に相談する流れと注意点について解説しました。市町村の事業と介護保険、ふたつの制度にまたがって非常に複雑な制度だったのに加えて、直接ケアマネジャーのいる居宅介護支援事業所と契約するという新たなパターンも生まれました。

現場もしばらくは手探りな状態になると思いますが、まずは要支援認定を受けている方が、自立のために必要なサービスをスムーズに受けることができることが大事ですよね。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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