この記事を監修したのは
介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
河北 美紀
訪問介護とは、自宅に訪問介護員(ホームヘルパー)が訪れ、入浴・排泄・食事介助など直接利用者の身体に触れる介助や、調理・洗濯・掃除など利用者の日常生活を支援する介護サービスです。この記事では、これから在宅で介助が必要になり、訪問介護でどのようなサービスが提供されるのか知りたい方に向けて、訪問介護サービスの制度やサービスの流れについて順を追って解説していきます。
★こんな人に読んでほしい!
- 訪問介護を勧められたけど、詳しくはわからない方
- 在宅で介助や生活支援が必要な方もしくはそのご家族
★この記事で解説していること
- 訪問介護のサービスでできること、できないこと
- 訪問看護や定期巡回との違い
- 訪問介護の料金や利用回数について、要支援・要介護の場合での違い
- 在宅介護で利用できる費用軽減制度について
- 訪問介護を受ける場合の流れ
- 訪問介護事業所を選ぶ際のチェックポイント
1. 訪問介護とは
1-1.資格を持つ訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅訪問
訪問介護とは、介護が必要になった方が自宅で自立した生活を送るために、介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格を持つ訪問介護員が訪問して介護サービスを提供します。
訪問介護員として介護サービスを行えるのは以下の資格取得や研修修了した人です。
1-2. 訪問介護3つのサービス内容*1
訪問介護サービスは、その内容により3つに分けられます。
身体介護サービス
入浴・排泄・食事・体位変換・口腔洗浄・服薬介助など利用者の身体に直接接触して行われる介助のことです。自立した生活を送ってもらうため、見守り的援助も含まれます。
生活援助サービス
調理・洗濯・掃除など、身体介護以外の日常生活を営むうえで必要な支援のことです。一人暮らしの場合や、同居家族が何らかの理由によって家事を行えない場合に利用できます。
通院等乗降介助
訪問介護員の資格をもつ介護タクシーの運転手が、通院などのために必要な乗車や降車の介助を行います。乗車前・降車後の移動介助など一連のサービスを含みます。
1-3. 訪問介護員(ホームヘルパー)が行なえないサービス *2*3
介護保険で行える日常生活援助は、一般的な家事代行サービスとは違い、家事であっても行えないことが多くあります。
たとえば、利用者のご家族のための調理や洗濯など、利用者本人に関わる範囲を超える場合が挙げられます。そのほか部屋の模様替えなど日常生活の範囲を超える場合や庭の草むしりやペットの散歩など訪問介護員が行わなくても日常生活に支障がない場合は日常生活援助のサービスに含まれませんのでご注意ください。
通院等乗降介助は、あくまでタクシーに乗るまでの介助が対象になります。通院中の付き添いやタクシーの同乗はできませんので、こちらについてもお知りおきください。
こうした介護保険で行えないサービスは、保険外のサービスや自治体の制度で利用できる場合があります。たとえば、一人暮らしの65歳以上の高齢者で、調理が困難な方にお弁当の配食サービスを行い、安否確認制度を実施している自治体や要介護・要支援認定を受けていない高齢者に一時的な援助を提供する自治体もあります。また、介護タクシーについては、福祉タクシー券や介護タクシー利用の費用の一部を補助している自治体もあります。有償・無償のサービスがありますので、お住まいの地域でどのようなサービスを実施しているのか確認しておきましょう。
詳細はこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。
1-4. 訪問介護でできる医療的ケア*4*5*6
医療的ケアとは、利用者が日常生活を営むために必要なケアです。利用者の生命に直結するリスクを伴うため、ケアは医師の指示のもとに行われます。具体的には、たんの吸引と経管栄養についてです。たんの吸引には、口腔、鼻腔、気管カニューレ内部の吸引があり、経管栄養は、胃ろうまたは腸ろう、経鼻経管栄養があります。
2012年4月より、在宅で家族が日常的に行っているたんの吸引や経管栄養の介助を訪問介護員が実施できるようになりました。ただし、訪問介護員の誰もが医療的ケアを行えるわけではありません。もともと医師や看護師が医療行為として行うたんの吸引や経管栄養の介助を、日常生活で必要な支援として介護職が行いますので、知識や経験があると分かる証明が必要です。
介護職がたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを業務として行うには、講義や筆記試験、シュミレーター(人型のマネキン)での演習、実地研修を経て、各都道府県に申請し登録認定された場合のみ実施できます。不特定多数の利用者に実施できるのは、第1号、第2号認定者で、特定の個人にのみ実施できるのは第3号認定者となります。認定範囲を超えて医療的ケアを行うと違法行為となりますので、資格を持った介護職もしくは、看護師などの医療職であるかを確認しておきたいところです。
訪問介護事業所によっては認定資格を持った介護職がいないこともあります。ご自身やご家族の経済的な面や望まれる介助の方法に合わせて、医療的ケアを訪問看護で行うか、医療的ケアに対応できる訪問介護で行うかを選択できますので、担当のケアマネジャーにまずはご相談することをおすすめします。
2. 訪問看護や定期巡回との違い
2-1. 訪問看護と訪問介護の違い。 医療面から利用者をサポートするのが訪問看護*7*8
訪問介護と間違えやすいのが訪問看護。それぞれの違いをみていきましょう。
【訪問看護と訪問介護の違い】
訪問看護 | 訪問介護 | |
概要 | 看護師やリハビリ職などが自宅に訪問し、在宅療養者の看護や支援を行う | 介護福祉士など介護の資格を持った訪問介護員が被介護者の自宅に訪問し、必要な介護や支援を行う |
実施者 | 病院や訪問看護ステーションから派遣された看護師など | 訪問介護事業所から派遣された訪問介護員 |
医療行為の可否 | ○ | ×(禁止されている。吸引など一部医療的ケアは条件付きで許可) |
リハビリの可否 | ○ | × |
身体介護の可否 | ○ | ○ |
家事援助の可否 | △(精神科訪問看護の場合は家事支援も業務の範ちゅう) | ○(一定の条件あり) |
訪問看護の特徴は看護師やリハビリ職が医療行為を行う点にあります。たとえば、血圧や体温測定での体調管理、点滴や注射などの医療行為、寝たきりの方の床ずれ処置や予防の指導、在宅でのリハビリテーションなどです。訪問看護では、介護者だけではなく介護する人への指導も含め、終末期まで安心して在宅で過ごせるように医療の面から利用者のサポートを行っています。状態により、医療保険を利用する場合もありますので、かかりつけ医にご相談ください。
訪問看護事業を行えるのは、都道府県知事の指定を受けた指定訪問看護事業者です。訪問看護ステーションと医療機関(病院・診療所)の2種類があり、看護師、保健師以外にも、理学療法士や作業療法士などのリハビリの資格を持つ医療従事者がサービスを提供しています。
2-2. 24時間365日介護を受けられる?定期巡回・随時対応型訪問介護看護
「1日に数回だけ食事介助に来て欲しい」「緊急時にすぐに駆け付けて欲しい」そのような要望に応えるのが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。要介護の方の生活を支えるため、24時間365日、訪問介護と訪問看護が密接に連携したサービスです。2012年4月に創設されました*9。
訪問で食事介助や体位変換などあらかじめ決められた時間ごとに短時間の介護を1日に複数回受けられます。利用回数が増えても月々一定額の料金になることが特徴です。また、オペレーションセンターに看護師や介護福祉士などの有資格者がオペレーターとして常駐し、緊急時には自宅に設置されたケアコールで利用者の体調不良や転倒などの通報をすると、オペレーターが対応するしくみになっています。訪問が必要と判断した場合は、オペレーターが指示を出し、訪問看護師や介護士が対応にあたるので安心です。
要介護1以上の方がサービスの対象ですので要支援の方は利用することができません。また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用すると、通院等乗降介助を除く訪問介護、連携型利用時を除く訪問看護、夜間対応型訪問介護は併用できませんのでご注意ください*10。寝たきりなど重度の要介護者で、定期的に体位変換、おむつ交換、食事介護が必要な方や、介護の必要なご家族が遠方で、緊急時すぐに対応できない場合などに活用を検討してみましょう。
また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の料金は包括報酬制をとっており、いわゆる月額固定料金です。そのため、通常の訪問介護サービスを利用するよりも料金がかなり大きくなる場合があります。利用にあたって、まずは費用がどのくらい変わるかを確認することをお勧めします(2024年の制度改定で包括払いだけでなく、利用回数に応じた出来高払いの項目もできました)。
3. 訪問介護料金と利用回数は、利用時間や地域などによって異なる
3-1. 訪問介護料金と利用回数(要介護の場合)
訪問介護の利用料金は介護度による違いはありません(要介護の場合)。要介護1でも、要介護5でも同じ料金ですが、利用する時間数によって料金が異なります。また、介護度ごとに介護保険が利用できる上限額(支給限度基準限度額)が定められていますので、その範囲で利用する形になります。
介護保険で補助される支給限度基準額は、要介護度別に決められています。1か月の利用料金が限度基準額を超えると、全額自己負担になるので支給限度額の範囲でケアプランを立てるのが一般的です。そのため介護度に応じて介護サービスを受けられる回数や自己負担額が変わってきます。要介護度別に決められた1か月のサービス利用限度額料金の目安を紹介します。
1か月のサービス利用限度額*11
区分 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
支給限度基準額(円) | 167,650 | 197,050 | 270,480 | 309,380 | 362,170 |
自己負担額(1割) | 16,765円 | 19,705円 | 27,048円 | 30,938円 | 36,217円 |
全国都道府県の介護費用の地域格差をなくすために1から7級地とその他の8つの地域区分に分けて単価を設定して、サービス内容によって決められている単位にかけて利用料金を計算していきます。
地域による単価一覧*12
地域 | 1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 |
単価 | 11.40円 | 11.12円 | 11.05円 | 10.84円 | 10.70円 | 10.42円 | 10.21円 | 10円 |
訪問介護サービス内容と単位一覧*13
サービス内容 | 時間 | 単位 | 自己負担額 |
身体介護 | 20分未満 | 163 | 163円 |
20分以上30分未満 | 244 | 244円 | |
30分以上1時間未満 | 387 | 387円 | |
1時間以上1時間30分未満 | 567 | 567円 | |
以降30分増すごとに | 82 | 82円 | |
引き続き生活援助を行った場合の加算 (所要時間が20分から起算して25分ごと。201単位を限度) | 65 | 65円 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 179 | 179円 |
45分以上 | 220 | 220円 | |
通院等乗降介助 | 97 | 97円 |
2024年4月に介護報酬が改定され、利用料金が変更されました。訪問介護の料金は報酬が切り下げられる形となり、自己負担の金額も少なくなっています。ただ、事業所によっては、処遇改善加算など加算分によって金額が値上げになる場合もあります。詳細はケアマネジャーや訪問介護事業所のサービス提供責任者等に確認することをお勧めします。
緊急時訪問加算、夜間・早朝・深夜加算、生活機能向上連携加算などの各種加算については、必要に応じて基本のサービス料金に追加する形で請求されます。
介護保険サービスの利用回数に関しては、要介護度やほかのサービス(リハビリや通所介護など)との併用もあるため、個々人によって異なります。
厚生労働省「介護給付費等実態統計」*14によると訪問介護の受給者1人あたり1か月の利用回数は、要介護1で約11回、要介護3で約28回、要介護5で約50回と介護度が高くなるほど訪問介護利用回数が増加する傾向にあります。
3-2. 訪問介護の料金と利用回数(要支援の場合)
要支援の場合は、市町村が運営する総合事業でホームヘルパーが自宅を訪問する「訪問型サービス」を利用できます。
要支援と要介護では料金の仕組みが異なります。要介護が利用する回数や時間数によって金額が異なるのに対して、要支援の場合は月額固定料金となっています。
- 要介護1~5(訪問介護):利用回数・利用時間によって料金が異なる
- 要支援1・2(総合事業):月額固定料金(利用頻度によって異なる)
市町村によって利用料金やサービス内容も異なります。詳しく知りたい方はお住まいの市区町村のWebサイトもしくは地域包括支援センターへお問い合わせください。
総合事業の訪問型サービスの費用の目安(1割負担で、1単位=10円とした場合) | |
週1回の訪問 | 月1,176円程度 |
週2回の訪問 | 月2,349円程度 |
週2回を超える訪問 | 月3,727円程度 |
週2回以上の利用も可能です。上限として設定されているわけではないので週4回・週5回も理論上できないことはないですが、ヘルパーの人員不足もあり、週2回を超える場合は受けられない可能性が大きいです。
また、訪問型サービスで家事など生活援助系サービスの場合は、要介護の方向けの訪問介護とは異なり、初任者研修の資格を持っていないホームヘルパーが訪問する場合もあります。
4. 在宅介護で利用できる4つの費用軽減制度
4-1. 高額介護サービス費*15
1か月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えたときは、超えた分が払い戻される制度です。2021年8月には、医療保険制度の高額療養費制度に合わせて、介護サービスの利用者または同一世帯に課税所得380万円(年収約770万円)以上の65歳以上の方がいる高所得者世帯を対象に負担限度額の見直しが行われました。
4-2. 高額医療・高額介護合算療養費制度*16
1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の医療保険と介護保険における自己負担の合算額が著しく高額になる場合に、負担を軽減する仕組みを設けました。年額56万円を基本に、医療保険各制度や被保険者の所得・年齢区分ごとの自己負担限度額を設定しています。対象世帯は、医療保険各制度の世帯に介護保険の受給者がいる場合に、被保険者からの申請に基づいて、高額療養費の算定対象となる世帯単位で、医療保険と介護保険の自己負担を合算した額が、新たに設定する自己負担限度額を超えた場合に支給されます。
4-3. 高額療養費制度*17*18
医療費の家計負担が重くならないように、医療機関や薬局の窓口支払額が、1か月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。毎月の上限額は、加入者の年齢や所得水準によって分かれています。1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数受診や、同じ医療保険に加入している同一世帯の方の受診について、1か月単位で合算して一定金額を超えた場合にも支給されます。
4-4. 特別障害者手当*19
精神または身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別介護が必要な状態にある在宅の20歳以上の方に支給されます。毎年2月、5月、8月、11月にそれぞれの前月分までが支給されます。令和4年4月より、支給月額は27,300円に設定されました。前年の所得が一定額以上である場合は支給されない所得制限も設けられています。
その他、訪問介護サービスも医療費控除の対象として、サービス費用が還付される場合もあります。訪問介護のうち、身体介護サービスであれば医療系サービスと併せて利用することにより、医療費控除の対象となりますので、確定申告のために領収証は保管しておきましょう。
5. 訪問介護を受ける場合の流れを解説*20*21
これからご自身やご家族にとって適切なサービスを提供する訪問介護事業所を選ぶには、どのような流れになるのでしょうか。ここでは、要介護・要支援の認定を受けて、在宅で訪問介護を受ける際の流れやポイントを紹介していきます。
①訪問介護事業所の情報収集
市町村の介護保険課の窓口、地域包括支援センターなどに地域の訪問介護事業所の情報があります。事業所のWebサイトやパンフレットなども参考に、訪問介護事業所に関する情報収集を始めていきましょう。このサイト、いえケアでも現在地または指定の住所を中心に訪問介護事業所を検索することができますので、よければお使いください。
②ケアマネジャーにケアプラン作成依頼
要支援の場合は地域包括支援センターの職員、要介護の場合は地域居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプラン作成を担当します。ケアマネジャーは介護全般をサポートしてくれる相談役でもありますので、ご自身やご家族の希望をケアマネジャーに正確に伝えて、訪問介護事業所を紹介してもらいます。ケアプランを作る際には、ケアマネジャーに任せきりにせずに、ご自身やご家族がどのような生活を送りたいのか、また介護にどれくらいの予算を使えるのかを考えて要望を伝えていきましょう。
③重要事項説明書の内容について詳しく説明を受ける
事業所の重要事項説明書をもらい、サービス内容や料金など利用に際して大切なことを説明してもらいます。
④契約書の締結
ケアマネジャーが立てたプランを確認し、訪問介護事業所の利用を決める際には、契約書を交わします。ご本人の対応が難しい場合は、家族などが代行して契約をする方法もあります。内容をよく読み、不安があれば担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、在宅介護支援センターの窓口などに相談しましょう。
⑤訪問介護計画書の作成依頼
契約した訪問介護事業所とサービス内容を記載した訪問介護計画書をケアマネジャーに作成してもらいます。どのような介護を、何のために、いつ利用できるのかの説明を受け、間違いがないかを確認します。
⑥サービス利用開始と利用後のサービス内容見直し
実際のサービス利用を開始してからは、月に1回、ケアマネジャーが自宅に訪問します。ケアプランに基づいてサービスが適切に実施されているかなどをモニタリングしていきます。必要があれば、サービスの内容を見直して変更も可能です。
6. よい訪問介護事業所を選ぶ際の6つのチェックポイント
6-1. 希望の曜日や日時に訪問してもらえるか
介護保険で利用できる介護サービスは、ケアプラン、訪問介護計画書に基づいてサービスを提供します。そのため訪問介護で曜日や日時の希望がある場合は、あらかじめケアマネジャーに相談が必要です。要介護度によって、利用限度額が決められていますので、利用回数や滞在時間に制限がある場合や、訪問介護事業所の訪問介護員の配置人員状況により調整が必要な場合もあります。全国的に訪問介護員の人手不足が深刻化していますので、希望の時間帯を確保できない場合もあります。
個人の状況により、提供できる最適なサービスが違いますので、契約する前に担当のケアマネジャーともよく相談しておきましょう。
6-2. 事業所の人員体制や資格保持者の数が確認できるか*22*23
訪問介護事業所には、訪問介護員等、サービス提供責任者、管理者が在籍しています。厚生労働省が示す訪問介護事業所の人員体制の基準では、訪問介護サービスを提供する際に必要な職員は、訪問介護員等が常勤換算2.5人以上必要です。そのうち、サービス提供責任者が利用者の数40人に対して1人以上もしくは、以下の3つの要件をすべて満たす場合には、利用者50人につき1人配置されていることが条件に挙げられます。
管理者については、常勤で管理業務を専ら行う者とされています。
法律で定められている人員配置基準に違反すると指定取り消し効力停止処分に合うため、基準を下回らないように資格を保有している人員の確保を各事業所とも求められます。
また、担当者の方がお休みになった際に、代わりの方が担当できるぐらい人員体制が整っているかは事前に把握することが大切です。
こうした基準を満たしている事業所かどうかは、厚生労働省の介護サービス情報公表システムから、介護事業所・生活関連情報検索ができます。事業所の運営方針や、サービス内容、常勤・非常勤職員の配置割合や苦情相談窓口などの一覧をみることができますので、こちらも事業所を選ぶ際には参考になさってください。
事業所内では定期的に職員研修を行って、職員の資質向上を図っています。緊急時や感染者が発生した場合の対処についても常勤・非常勤職員共に情報共有の機会を提供していますので、特定事業所加算を受けているかどうかもケアマネジャーに確認し、考慮してみましょう。
6-3. ケアマネジャーに希望を伝えて、複数の事業所を紹介してもらい比較できるか
介護保険サービス利用にあたり、訪問介護事業所でのサービスが適正に提供されているか、要介護認定の利用限度額を超えないかなど利用者やその家族にとって、不利益にならないように相談・助言をする役割があります。
初めに介護にかけられる予算や介護におけるご自身やご家族の要望を伝えましょう。ケアマネジャーには守秘義務がありますので、外部に知られる心配はありません。たとえば、「仕事を続けるため、家族の食事介助や身の回りの生活援助を重点的に行ってもらいたい」「おむつ交換で、日中短時間でも定期的に1日複数回訪問してもらいたい」など要望を伝えると、必要な介助を実施できるかどうか考慮し、最適な事業所を紹介してもらえます。その際に事業所の良し悪しを判断するために複数の訪問介護事業所を紹介してもらうことをおすすめします。
6-4. 1日に複数回の介護が必要な場合、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に対応しているか
前述した通り、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、24時間対応で訪問介護・看護が利用できます。このサービスのメリットは、必要なケアに応じて1回あたりの介助は短時間になりますが、1日複数回の訪問ができる点です。ただし、現状において、食事介助などの身体介助や調理、掃除など比較的ゆったりと時間をとるサービスを中心に受けたい場合、注意が必要です。なぜなら、定期巡回サービス事業所と別の訪問介護事業所の介護サービスの併用ができないためです。将来的に定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスを検討している場合は、利用を見越して定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業を行っている訪問介護事業所を選ぶこともひとつの方法です。
6-5. もし相性がよくない場合に他の訪問介護員に変更ができるか
訪問介護は対人サービスなので、相性があります。契約前に他の訪問介護員に変更ができるのかを確認することをおすすめします。もし、訪問介護事業所に直接確認することができない場合は、担当のケアマネジャーに代わりに聞いてもらうことも可能です。
サービス利用後に訪問介護員の変更が難しい場合、もしくは訪問介護員の変更をしたものの訪問介護事業所のサービスが合わない場合は、我慢せずにご自身やご家族にあった訪問介護事業所の変更を検討しましょう。訪問介護事業所の変更は介護保険制度のルールで認められています。地域包括支援センターに中立的な立場からアドバイスをもらうために相談することも可能です。また、利用者が別の訪問介護事業所に連絡をして、現在利用している訪問介護事業所を変更したい旨を伝えて、そのケアマネジャーから現在のケアマネジャーに連絡をとってもらい手続きをすすめる場合もあります。
6-6. 円滑なコミュニケーションができるか
訪問介護は、基本的にご自宅に1人の訪問介護員が入って行われる介護サービスです。毎回サービスを行う訪問介護員はもちろん、サービス担当責任者との相性の良し悪しで、介護の満足度も変わります。とはいえ、初めて訪問介護を利用するご本人やご家族にとっては、どのようなサービスが行われるのか、不安もありますよね。最初の面談で相談しやすい雰囲気であることや、連絡がスムーズであること。また、いざという時に頼れるかどうかも大切です。訪問介護サービスの特性上、ほかの利用者が急変し、時間変更になる場合もあります。その際にも、事前に連絡があるかなど報告・連絡・相談がていねいに行われるかは確認しましょう。円滑にコミュニケーションを行えないと判断すれば、適宜指摘しても介護保険のルールでも認められており問題はありません。
ご本人やご家族にとって、よりよい介護が受けられるように訪問介護員、担当ケアマネジャーと普段からコミュニケーションを重ねて、お困りの時には相談ができるようにしていきましょう。
訪問介護はこれからどうなる
訪問介護はヘルパーの高齢化や人員不足で、なかなかサービス事業者が見つからないという地域も増えているようです。訪問介護の求人倍率は10倍を超える地域も多く、各事業者ヘルパーの確保に苦慮している状況です。
人員不足を補うために、デイサービスが訪問介護のサービスを提供する新サービスの導入という構想もあります。2024年の制度改定時の導入は見送られましたが、今後も効率的なサービス提供を行う仕組みが検討されるかと思われます。
また、生活援助のサービスを介護保険から除外すべきという声も財務省方面から上がっています。
他にも、外国人介護士が訪問介護にも解禁されたこともあり、訪問介護は大きな変化を迎えることになりそうです。
参考文献
*1厚生労働省 訪問介護・訪問入浴介護 訪問介護の概要・訪問介護のサービス内容(P3.P4)
*2厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ)
*3厚生労働省 地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集(P3)
*4厚生労働省 介護職員等による喀痰吸引等実施のための制度について
*7厚生労働省 社保審・介護給付費分科会第182回(R2.8.19)資料3 訪問看護
*8厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの? – 訪問看護
*10厚生労働省 24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設 定期巡回・随時対応サービスの介護報酬(他サービスの利用)
*11厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスに係る利用料
*12厚生労働省社保審-介護給付費分科会 第172回(R1.11.15) 資料 地域区分について
*13令和3年社保審-介護給付費分科会 第199回(R3.1.18)指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造 訪問介護費(令和3年4月版 介護報酬算定構造 2スライド)
*14厚生労働省 訪問介護・訪問入浴介護(P19)「介護給付費等実態統計」
*20厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービス利用までの流れ
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