この記事を監修したのは
介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
河北 美紀
在宅での療養生活に欠かせない訪問看護。訪問看護とは看護師やリハビリ職などがご自宅に訪問し、主治医の指示の下で利用者様に必要な看護を行います*1。
とはいえ、訪問看護を利用すると費用負担などが出てくるのではと利用を懸念してしまう方もいらっしゃるかもしれません。また、訪問介護との違いが分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、訪問看護がどのような役割を果たすのかにくわえ、知っておきたい訪問看護の費用面や軽減制度などをくわしくご紹介します。
★こんな人に読んでほしい!
- 訪問看護を勧められたけど、詳しくはわからない方
- 在宅で医療処置が必要な方もしくはそのご家族
- 施設や病院ではなく在宅で看取りたい方
★この記事で解説していること
- 訪問看護とは看護師やリハビリ職が自宅を訪問し医師の指示に基づいた処置や検査など療養の支援を行うもの
- 主治医から訪問看護が必要と診断されれば年齢や疾患問わず訪問看護は利用できる
- 訪問看護の利用頻度や料金は病状や住んでいる地域などによって大きく変わる
- 介護度が高くなると訪問看護の利用頻度も高くなるが、費用においては減額制度を活用できる
1. 訪問看護とは
1-1. 訪問看護の目的
訪問看護とは、病気や障がいがあっても、医療的ケアを受けながらでも、自宅で自分らしく暮らしていくこと*1を目的に、症状の回復あるいは予防に向けて*2必要な看護を提供するサービスです。
在宅療養に必要な医療的ケアやリハビリを受けたり、生活面の困りごとや不自由さを一緒に解決したりといったことが、訪問看護の内容になります。担当の医師やケアマネジャーなどの支援者とも連携して、おもに医療面でのさまざまなアドバイスも提供します。
また、体調が急変したときなど緊急受診するべきかどうか判断に迷うときに、電話で相談にのったり、必要に応じて緊急訪問をして適切な処置をします。自費サービスにはなりますが、救急搬送へ同行してくれることもあります。
そのほかに、訪問看護にはこんなメリットがあります。
1-2. 訪問看護のサービス内容
訪問看護でどのようなサービスが受けられるのか、サービス内容をまとめました*3。
1-3. 訪問看護と訪問介護、在宅看護の違い
訪問看護と混同しやすいのが、訪問介護あるいは在宅看護。それぞれの違いを見てみましょう。
【訪問看護と訪問介護および在宅看護の違い】
訪問看護 | 在宅看護 | 訪問介護 | |
概要 | 看護師やリハビリ職などが自宅に訪問し、在宅療養者の看護や支援を行う | 在宅療養者の家族が医師の指導を受けながら看護や支援を行う | 介護福祉士など介護の資格を持った訪問介護員が被介護者の自宅に訪問し、必要な介護や支援を行う |
実施者 | 病院や訪問看護ステーションから派遣された看護師など | 家族や近親者 | 訪問介護事業所から派遣された訪問介護員 |
医療行為の可否 | ○ | ○(家族の責任で行う) | ×(禁止されている) |
リハビリの可否 | ○ | ○(家族の責任で行う) | × |
身体介護の可否 | ○ | ○(家族の責任で行う) | ○ |
家事援助の可否 | △(精神科訪問看護の場合は家事支援も業務の範ちゅう) | ○(家族の責任で行う) | ○(一定の条件あり) |
よく混同されやすい訪問看護と訪問介護の違いですが、端的にいうと医療行為を行うか否かという点が大きな違いです。訪問介護はホームヘルプとも呼ばれるように入浴、排せつ、食事等の介護や調理、洗濯、掃除といった生活支援や家事支援を行うサービスで、医療行為はできません*4。
一方、訪問看護は医療行為がメインで、調理、洗濯などの家事代行はしません。
役割分担しながら、両方のサービスをバランスよく取り入れて、安心で快適な生活を実現させるケースは多いです。
1-4. 看護師だけではない!訪問看護は誰が訪問してくれるのか
訪問看護を実施している機関は、病院や診療所などの「医療機関」と、訪問看護サービスを専門に行う「訪問看護事業所」の2種類があります。「医療機関」は医療保険しか使えませんが、「訪問看護事業所」は医療保険だけでなく介護保険でも利用できます。どちらの保険を使うかは、医師の指示によって決定されます。
そして、訪問看護というと、訪問者は看護師を強くイメージしますが、実は、看護師以外の専門職も訪問し、サービスを提供しています。
訪問看護では次の専門職スタッフがサービスを提供しています。
職種 | 役割 |
看護師 | どの事業所でも訪問可能。医師の指示に基づいて看護及び医療的ケアを提供する。 |
保健師 | どの事業所でも訪問可能。保健師資格取得者は看護師免許も所得しているため、看護師としての役割もありつつ、担当医や他の専門職、あるいは社会資源とのパイプ役も担う*5。 |
理学療法士(PT) 作業療法士(OT) 言語聴覚士(ST) | 訪問看護ステーションおよび民間企業が運営する訪問看護サービスにおいて訪問可能。各種リハビリテーションを行う。ただし、民間企業が運営する訪問看護の場合は保険の対象外となるため、全額実費負担となる*6。 |
助産師 | 健康保険法の指定を受けた訪問看護ステーションにおいて訪問可能*6。NICUを退院し、医療ケアを必要としながら在宅生活をする子どもに対しての看護及び保護者への育児の支援を行う*7 |
精神保健福祉士 | 精神科訪問看護においてのみ医療機関および訪問看護事業所において訪問可能。ただし、訪問看護ステーションでは単独で訪問できず、他職種に同行する形で実施できる。地域支援者や社会資源とのパイプ役も担う。 |
2. 訪問看護を受けるにはどうすればよいか
2-1. 対象者は主治医から訪問看護の必要があるとされたすべての方
訪問看護の対象者は、主治医が認めれば年齢を問わず、子どもから高齢者まですべての方になります。主治医から訪問看護指示書という書類を作成してもらうことで利用できます。まずは主治医に訪問看護の希望を相談しましょう*8。
訪問看護には、「医療保険」による訪問看護と、「要介護認定」を受けた方が対象になる「介護保険」の訪問介護の2種類がありますが、どちらの場合も、主治医の同意および訪問看護指示書が必要です。
2-2. 訪問看護を希望する場合の相談先
訪問看護の希望は、担当のケアマネジャーがいれば、まずはケアマネージャーに相談しましょう。要介護認定は受けたものの、まだ担当のケアマネジャーがいない場合は管轄の「地域包括支援センター」に相談するのがおすすめです。
ただし、手順が決まっているわけではないので、もしも利用を希望したい訪問看護ステーションがある場合は、直接そのステーションに相談することもできます。かかりつけ医や、入院中の医療機関の相談員に相談することも可能です。
あるいは、役所や保健所の担当窓口に相談もできます。その方の状態に合う相談先を紹介してくれるはずです。それでも迷ってしまう方や、訪問看護のことをいろいろ知りたい方は、「日本訪問看護財団」に問い合わせてみてはいかがでしょうか*9, 10。
2-3. 介護保険と医療保険は併用できない
訪問看護は、医療保険によるものと介護保険によるものに大別され、この2種類の訪問看護を同時に利用はできません。訪問看護を必要とする方の状況に合わせて、医療保険か介護保険のどちらを利用するか決定されます。
医療保険と介護保険それぞれの訪問看護の利用条件は、以下の通りです。
【医療保険の場合】
- 65歳以上で要支援・要介護に該当しない者
- 65歳以上で要支援・要介護を受けているが、下記の疾病者等に該当する者
・末期の悪性腫瘍
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・スモン
・筋萎縮性側索硬化症
・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病
・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がII度又はIII度のものに限る)
・多系統萎縮症(線条体黒質変性症・オリーブ矯小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群)
・プリオン病
・亜急性硬化性全脳炎
・ライソゾーム病
・副腎白質ジストロフイー
・脊髄性筋萎縮症
・球脊髄性筋萎縮症
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎
・後天性免疫不全症候群
・頸髄損傷または人工呼吸器を使用している状態及び急性増悪期の場合 - 65歳未満で主治医が訪問看護の必要性に同意した者
- 特別訪問看護指示書の交付を受けた者
- 認知症以外の精神疾患の者
※要支援・要介護認定を受けている者でも、2~5に該当する場合は医療保険の対象となる。
【介護保険の場合】
- 65歳以上で要支援・要介護認定を受けている者
- 40歳~64歳で以下の特定疾病を原因として介護が必要な状態になっており、要介護・要支援認定を受けている者*11, 12
・末期のがん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老病
・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障害 糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
医療保険と介護保険、どちらも所得に応じて1~3割の自己負担料金がかかります。きちんと規定の利用料が定められており、1回の訪問の料金に大きな違いはありません。しかし、利用回数が多ければ、もちろん1ヶ月の利用料は高まります。
なお、医療保険の4の「特別訪問看護指示書」とは、重点的な訪問看護が必要であると医師が認めた時に特別に発行される書類で、退院直後で頻繁な訪問が必要な方や、急激な病状の悪化が認められる方が対象です。この特別訪問看護指示書は有効期間が最大14日間で、交付されると週4回以上の訪問看護が可能になります。
3. 訪問看護の利用回数
医療保険による訪問看護には週3回までの利用制限がありますが、介護保険による訪問看護には具体的な回数制限は設けられていないため、担当ケアマネージャーなどと相談しながら適切な回数を計画することが大事です。
なお、医療保険の訪問看護でも「特別訪問看護指示書」の交付を受けている方は、週4回以上の訪問が可能です。
【特別訪問看護指示書とは】
訪問回数を増やし、手厚い看護ケアが必要な状態であると医師が認めたときに、訪問看護事業所へ発行するもの。
退院直後で頻繁な訪問が必要な者や、急激な病状の悪化が認められる者が発行の対象で、疾病の制限はない。
有効期間は最大14日で、原則は月1回のみの発行ですが、気管カニューレを装着している者、真皮を超える褥瘡の処置が必要な者は月2回まで交付可能*13。
なお、医療保険と介護保険では、基本的に介護保険の利用を優先させることが規則で定められています。 ただし特定の条件を満たすことによって介護保険から医療保険の訪問看護に切り替わったり、回数や時間の制限を問わずに利用できるという例外のケースもあります。
詳細は下表をご参照ください。
【医療保険と介護保険の回数の違い*14】
医療保険 | 介護保険 | |
回数制限 | ・週3回まで利用可 ・「支給限度額」はない ・ 他の介護保険サービスと併用しても、支給限度額の負担にならない | ・具体的な回数制限なし ・ 要介護度に応じた「区分支給限度額」があり、利用するすべての介護保険サービスを、介護度に応じた支給限度額内に収めなければ、支給限度額を超えた分は全額負担となる |
提供時間 | ・30分未満、あるいは30分~90分の範囲で設定 | ・ケアマネジャーが作成するケアプランに応じ、以下の4パターンから決定 ① 20分 ② 30分 ③ 1時間 ④ 1.5時間 リハビリの場合は20分単位 |
例外 | ・特別訪問看護指示書が交付された場合は、週4回以上訪問できる(14日間・最大月2回まで) ・「厚生労働大臣が定める長時間の訪問を要する者」に該当する場合は最大週3回まで90分を超える長時間訪問が可能 ・ 「厚生労働大臣が定める疾病等の患者」や「特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる状態等にある者」に該当する者は週4回以上の訪問が可能 | ・「特掲診療料の施設基準等別表第7号に掲げる疾病等者」は医療保険給付に切り替わる ・特別訪問看護指示書が交付された場合は、医療保険給付に切り替わる ・ 認知症以外の精神疾患の者は医療保険から給付される |
4. 訪問看護の料金
4-1. 訪問看護の料金は事業所の種類、職種、地域、加算などによって変わる
訪問看護の料金は、事業所の種類、職種、地域、加算などによって変わってきます。
これは、住まいの地域によって1級地〜7級地と分類されており、地域によって1単位当たりの単価が10円〜11.40円と変動するからです。
2024年度の報酬改定によって決定した単価は、以下となります。
1級地 | 11.40円 |
2級地 | 11.12円 |
3級地 | 11.05円 |
4級地 | 10.84円 |
5級地 | 10.70円 |
6級地 | 10.42円 |
7級地 | 10.21円 |
その他 | 10円 |
たとえば東京23区は1級地なのですが、町田市や狛江市、多摩市では2級地、八王子市は3級地、立川市では4級地と、東京都内でもこのように細かく等級がわかれます。
なお、1単位の単価は年度によって異なります。その年の1単位の単価は担当ケアマネージャーに尋ねれば教えてくれるでしょう*16。
さて今回は、介護保険制度の1単位を10円とし、自己負担1割のケースを想定して金額をまとめました。
独立型の訪問看護ステーション | 病院併設 | 診療所併設 | |
所要時間20分未満 | 314円 | 266円 | 266円 |
所要時間30分未満 | 471円 | 399円 | 399円 |
所要時間30分以上1時間未満 | 823円 | 574円 | 574円 |
所要時間1時間以上1時間30分未満 | 1,128円 | 844円 | 844円 |
どの事業所の場合においても准看護師免許所持者が訪問をした場合には10%減額となります。
また、利用者様の状況によって以下の加算も追加されます*19。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ) ①利用者・家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にある ②緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われている 訪問日以外に訪問してほしいと家族や利用者から求められた場合に対応 | 600円/月 |
緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 574円/月 |
特別管理加算Ⅰ 以下の処置における特別な管理 ・胃チューブ留置(経鼻・胃ろう) ・腹膜透析・気管切開 ・気管カニューレ(永久気管孔を含む) ・膀胱留置カテーテル ・PTCD など(種々ドレーンなどの留置) ・輸液用ポート ・数日間継続的に行っている、留置針による点滴等 | 500円 |
特別管理加算Ⅱ 以下の処置及び特別な管理 ①在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態 ②人工肛門又は人工膀胱を設置している状態 ③真皮を越える褥瘡の状態 ④点滴注射を週 3 回以上行う必要があると認められる状態 | 250円 |
ターミナルケア加算利用者の死亡日及び死亡日前14日以内に 2日以上ターミナルケアを行った場合に加算 | 2,500 円 |
複数名訪問看護加算利用者や家族が同意のもとで、同時に 2人の職員が 1人の利用者に対し訪問した場合 | <30 分未満>看護師等 2 名254 円 看護師等と看護補助者201 円 <30 分以上>看護師等 2 名402円 看護師等と看護補助者317円 |
長時間加算1時間30分以上の訪問看護を実施した場合(特別管理加算の対象利用者のみ) | 300円 |
退院時共同指導加算入院中あるいは施設入所中の方に対して主治医とともに在宅生活における必要な指導を誌、文書によってその内容を提供した場合 | 600 円 |
初回加算(Ⅰ) 新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所等から退院した日に訪問看護事業所の看護師が初回の訪問看護を行った場合 | 350円 |
初回加算(Ⅱ) 初回及び過去2カ月間訪問看護を受けていなかった場合であって改めて訪問看護を受ける場合 | 300円 |
専門性の高い看護師による訪問看護の評価 | 250円/月 |
情報通信機器を用いた死亡診断の補助に関する評価 | 150円 |
口腔管理に係る連携 | 50円 |
なお、基本料金に対して時間によっては料金が加算されます。
- 早朝(午前6時~午前8時)
- 夜間帯(午後6時~午後10時):25%増し
- 深夜(午後10時~午前6時): 50%増し
さらにエンゼルケア(逝去時ケア)を受けた場合には、保険適用外の料金が追加されます。相場は5000円~2万円が相場で、実費負担となります。
4-2. 介護度が上がるほど訪問看護費用は増えるのか
訪問看護は、介護度によって一回当たりの料金が変わるサービスではありませんが、介護度が上がれば上がるほど医療的ケアの必要性が高まり、利用回数が増え、利用料も増える傾向にあります。令和2年8月の社会保障審議会の資料によると、訪問看護にかかる1ヶ月の費用の内訳は、要介護3が15.4%、要介護4が15.8%、要介護5が18.8%となり、要介護3以上の方の費用合計が約50%を占めています*17。
なお、要支援の方の場合は、介護予防訪問看護となり、料金が安くなります。
5.利用できる費用軽減制度
ここからは、費用軽減制度について詳しくご紹介します。
5-1. 高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、介護保険によるサービスの利用料について「1ヵ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えたときは、 超えた分が払い戻される制度」*18 のことをいいます。負担限度額は所得によって変わるため、訪問看護を含む介護サービスを多く利用する場合には、所得による負担限度額をチェックしておきましょう。
5-2. 高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間において医療保険と介護保険における自己負担を合算した額が著しく高額となった場合に負担が軽減される制度です*19。各所得区分の限度額を超えている、国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度の各医療保険における世帯内である、など各種条件があるため、自治体窓口で個別に相談するといいでしょう。
5-3. 高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が毎月1日~末日の1ヶ月間の間に限度額を超えた場合、越えてしまった額を国が支給してくれる制度です。
上限額は、年齢や所得によって定められます*20。
5-4. 特別障害者手当
特別障害者手当とは、「特別障害者」に対して支給する手当のことです。特別障害者とは「精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする」方と定義されており、この条件に当てはまる20歳以上の方に27,300円が支給されます。
なお、受給資格者もしくは受給者の生計を維持する扶養者の前年度の所得が一定以上を越えた場合には支給されません*21。
6. 訪問看護を受ける際の注意点
6-1. 病院で行うような詳細な検査や積極的治療は難しい
訪問看護とは、自宅に看護師がおもむいて、医師の指示に基づいた治療やケア、ときには検査も行います。しかし、あくまで在宅で可能な範囲であって、専門的な検査や医療処置は限界があります。必要があれば、主治医からの紹介で外来診療での専門的な検査や治療を行うことをすすめられるでしょう。
6-2. 訪問介護よりも料金が高い
看護師など医療の専門職種が訪問する訪問看護は、ホームヘルパーなどが生活まわりのお手伝いを主とする訪問介護と比べると、利用料が高くなります。たとえば介護保険の単位数(1単位=約10円)で比べてみましょう。訪問看護は20分未満で「313単位」、訪問介護は20分未満の身体介護で「167単位」と、訪問看護のほうが料金が2倍近くなります。そのため、「ヘルパーさんができることはなるべくヘルパーさんに対応していただきましょう」という傾向があります。
訪問看護は受けたいが出費は抑えたい、という場合は、「訪問看護+他の介護サービス」で依頼したいことをカバーできないか、ケアマネージャーと相談するとよいでしょう。
さらに、前述した費用補助制度が利用できるかどうかも確認しておくとよいです。
6-3. 保険を使ったサービスには、利用の仕方に制限がある
医療保険でも介護保険でも、保険を使って訪問看護を利用する場合は、利用方法に一定のルールや制限があります。困りごとについて何でもお願いできるわけではありません。
保険適用のルールや制限を超えて、自分のニーズを満たしてもらいたい場合は、保険外の「自費」の訪問看護を利用するといいでしょう。日頃お世話になっている事業所のスタッフが自費サービスとして対応してくれる場合もありますし、自費専門の訪問看護事業所もありますので、そうしたプライベートサービスをどのように取り入れればいいか、担当ケアマネージャーに相談するといいでしょう。
7.訪問看護事業所の選び方・4つのポイント
7-1. 事業所の体制が整っているか
事業所の基本的な体制は、ぜひ確認しておきたいところです。
土日祝日や年始年末に対応可能かどうか。定期訪問の曜日や時間を必要があれば変更できるか、あるいは何かあれば担当スタッフを変えてもらうことができるか、そのような対応が可能なマンパワーが安定している事業所かどうか、もしくは少数精鋭か。また、緊急時の連絡では誰がどのように対応してくれるのか。いざというときの苦情や相談の受付先があるかどうか。
これらは、サービスを利用してから「そんなはずではなかった」という事態を避けるために、あらかじめ知っておくといいポイントです。優先順位は、利用する本人や家族によって異なりますが、念のため契約前に押さえておくと安心です。
自宅での看取りも考えているのであれば、どの訪問看護事業所なら対応可能か、ケアマネジャーに確認しておくといいでしょう。詳細はこちらの記事をご参照ください。
7-2. 必要な医療行為・処置に対応しているか
訪問看護ステーションといっても、身体ケアが得意な事業所もあれば、精神的ケアが得意な事業所、リハビリに力を入れている事業所、子どものケアが得意な事業所などそれぞれに特徴があります。とくに介護度や医療的ケア度が高い場合は、適切なサービス提供が可能な事業所かどうかを確認する必要があります。
特別な医療処置の例は以下
- 人工肛門、膀胱留置カテーテル、膀胱ろう、腎ろうの処置
- 経管栄養、胃ろう、腸ろうの処置
- 床ずれ(褥瘡)の処置
- 点滴、注射、中心静脈栄養(IVH・TPN)
- 気管カニューレ、吸引、人工呼吸器、在宅酸素療法(HOT)
- インスリン注射
- 腹膜透析(CAPD)
- 麻薬を用いた疼痛管理
2024年の介護報酬改定により、訪問看護事業所の専門性を評価する枠組みが追加されました。緩和ケア(看取り)や、褥瘡(床ずれ)、人工肛門などのケアに関しての専門的な研修を受けているかによって介護報酬が評価される仕組みが追加されました。
近年は訪問看護事業所も増え、事業所によって、特徴・得意なケアが異なりますので、より専門性を活かした差別化が進んでいくと思われます。(2024年5月31日追記)
在宅介護の情報検索サイト「いえケア」では、訪問看護事業所ごとに専門の医療処置ができるかどうかがわかります。自分のニーズにマッチしている訪問看護事業所を探す際にぜひ活用してみてください。駆けつけてくれることが重要になります。家族や介助者だけでは、突然の不調や状態の悪化に対応しきれないからです。24時間対応の「オンコール」体制があるかどうかも、訪問看護事業所選びの重要なポイントになります。
また、終末期(ターミナル期)の訪問看護を依頼する場合は、訪問回数が頻回になる可能性が高く、十分対応できるだけの看護師が在籍しているかどうかも確認しておくことをおすすめします。
7-4. 円滑なコミュニケーションを図れるか
在宅サービス全般にいえることですが、訪問看護もやはり人と人のつき合いによるサービスなので、相性の問題があります。いくらサービスや体制などが整っていたとしても、訪問スタッフとの相性が合わなければ、利用者も家族も気持ちよく過ごしにくくなります。実際に訪問してくれるスタッフがどんな方か、契約前の相談の時点で確認しておくといいでしょう。
加えて、サービスの契約時に、苦情や改善要望の窓口があるかどうかを確認することをおすすめします。
参考文献
*1.公益財団法人日本訪問看護財団 Q1 訪問看護は、どんなサービスですか?
*3.公益財団法人日本訪問看護財団 Q2 訪問看護はどんな看護をしてくれますか?
*6.公益財団法人日本訪問看護財団 Q7 どんな機関が訪問看護をしてくれますか?
*8.公益財団法人日本訪問看護財団 Q3 どんな人が訪問看護を、受けられますか?
*9.公益財団法人日本訪問看護財団 Q4 訪問看護は誰に相談したら受けられますか?
*10.公益財団法人日本訪問看護財団 Q10 訪問看護に関する相談窓口はありますか?
*13.厚生労働省 訪問看護 医療保険と介護保険の訪問看護対象者のイメージ(図)
*14.公益財団法人日本訪問看護財団 Q6 訪問看護師は、どのくらいの時間、何回来てくれますか?
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