デイサービスとは?利用をおすすめしたい人とサービス内容をわかりやすく解説(2024年4月報酬改定版)

デイサービスをおすすめしたい人、料金やサービス内容について 介護コラム

この記事を監修したのは

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役

河北 美紀

デイサービスとは、介護を受けるために施設に通うタイプの介護保険サービスです。しかしデイサービスの種類によって目的・内容・料金が異なるので、複雑さに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。今回は、デイサービスの仕組みや選び方・料金について徹底解説します。この記事を読めばデイサービスに関する疑問が解決し、利用するか否かを判断できるようになるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

★こんな人に読んでほしい!

  • 立つとき、座るときにふらつくことがある方
  • デイサービスを勧められたけど、詳しくはわからない方

★この記事で解説していること

  • デイサービスは施設に通って介護を受ける送迎付きのサービスで、要介護1から利用できる
  • 要支援の方や認定を受けていない「基本チェックリスト」に該当している方は自治体単位の独自サービスを利用できる
  • デイサービスには、通常のデイサービス以外に「療養型」「地域密着型」「認知症対応型」がある
  • デイサービスは1回当たり1,000~2,000円の自己負担だが、さまざまな条件で料金が変わる
  • デイサービス利用の傾向は1日7~8時間滞在するパターンが多く、週2~3回利用する人が大半
  • デイサービスの目的は「介護や交流」がメインで、デイケアの目的は「医学的なリハビリ」
  • デイサービスは「生活に張り合いや刺激が欲しい」「運動したい」「介護が必要だがひとりになる時間が心配」「家族が介護で疲れている」場合におすすめ
  • デイサービスを利用するためのケアプラン作成は、「居宅介護支援事業所」や「地域包括支援センター」に依頼する


1. デイサービスとは

1-1. デイサービスは、日帰りで介護施設に通う送迎付きの介護保険サービス

デイサービスで受けることのできるサービスの種類

デイサービスとは、正式名称を「通所介護」と言います。自宅から日帰りで施設に通い、必要な介護や機能訓練・レクリエーションなどの支援を受ける介護保険サービスです。在宅の高齢者が利用する「居宅サービス」「地域密着型サービス」の中で、最も利用割合が高い人気のサービスです*1

厚生労働省は、デイサービスの基本方針を「在宅での生活を維持するため、日常生活上の介護・機能訓練・閉じこもり予防によって心身機能の維持や家族の介護負担軽減を図る」と定めています*2。つまりデイサービスは日常生活全般の介護だけでなく、身体機能や認知機能の維持に必要な訓練や指導を行うことで、在宅で暮らす高齢者や介護をする家族の心強い支えになっているのです。

1-2. デイサービスのサービス内容

デイサービスが実施する主なサービス内容は、以下の通りです。

  • 送迎
  • 入浴
  • 食事
  • 排泄
  • 機能訓練(認知症予防を目的とした脳トレなどの訓練を含む)
  • レクリエーション
  • 送迎

デイサービス利用時に必要不可欠な送迎は、デイサービスの基本的なサービス内容のひとつです*1。ただし、送迎用の車両や担当する職員の数は事業所ごとに異なるため、事業所と自宅の距離が離れている場合は「送迎対象外のエリアです」と断られてしまう場合があります。その場合は家族の方から送り迎えしてもらうか、近隣の事業所から選択することになるでしょう。

デイサービスの介護職員

また、入浴・食事・排泄といった身体介護も、どの事業所でも必ず実施するデイサービスの基本サービスです。利用者の介護状態に応じて、本人の自立を促すような介助をしてくれます。ただし入浴介助については、施設によって設備が異なるため、なかには寝たきりの方や立てない方の入浴が難しいデイサービスもあるので注意しましょう。

機能訓練やレクリエーションは、事業所ごとの特徴を表す重要なポイントです。例えば機能訓練のための人員や設備を充実させた「機能訓練特化型」の事業所や、日替わりで充実したレクリエーションを提供し「お楽しみ要素」に力を入れている事業所などがあります。事業所のコンセプトによって細かなサービス内容が異なるので、ぜひ利用する方の希望や好みに合った事業所を探してみてください。

1-3. デイサービスの人員体制

デイサービスに配置が義務付けられてるのは、おもに管理者・生活相談員・看護師・介護員・機能訓練指導員です*2。例えば栄養改善や口腔ケアに関する付帯サービスを提供する場合に、専門職である管理栄養士や歯科衛生士などを配置している施設もあります*3*4。基本的な人員配置の詳細は、以下の通りです*1

職種必要数詳細
管理者1人事業運営や職員、利用者に関する統括的な管理を行う。
生活相談員専従で1名以上(常勤換算方式)利用者・家族・担当ケアマネジャーなどとの連絡調整や介護相談などに応じる。利用契約や担当者会議の参加、通所介護計画書の作成なども担う。
看護職員専従で1名以上(常駐してなくても可)利用者の体調観察や医療処置、服薬管理、主治医との連携、緊急時対応を担う。
介護職員(利用者の数が15人以下の場合)1名以上(利用者の数が15人以上の場合)15人を超えた部分について、利用者の数が5人増えるごとに1名以上利用者の身体介護やレクリエーションの提供を担う。
機能訓練指導員1名以上利用者に対し機能訓練を実施することで身体機能や生活機能の維持向上を図る。機能訓練指導員の資格要件は以下の通り。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師または あん摩マッサージ指圧師、一定の実務経験があるはり師およびびきゅう師*5

※常勤換算方式:1ヶ月間の従業員の延勤務時間を週の所定労働時間で割った数

上記でご紹介したデイサービスの人員配置は、厚生労働省が定めている必要最低限の法定基準です。実際にはサービス内容を充実させるためにより多くの介護・看護職員や専門職を配置したり、現場の職員負担を軽くするために送迎専門の運転手や介護補助員などを雇用したりしている場合もあります。詳しくは、利用を検討するときに施設を見学するなどして確認すると安心です。

1-4. デイサービスの利用条件

デイサービスは介護保険制度に基づく専門的なサービスです。そのため、誰でも利用できるわけではありません。利用するためには、以下の条件が必要です。

  • 要介護1以上の認定を受けていること
  • 本人が利用に同意していること
  • 送迎可能な範囲に居住していること、もしくは家族が送迎できること
  • 専門的な医療行為が不要なこと
  • 事業所を利用するための基本的ルールを守れること

ここからは、デイサービスの主な利用条件についてご紹介していきます。利用のためには複数の条件やルールを守る必要がありますが、とても有用な介護サービスであることは間違いありません。ぜひ積極的に活用していきましょう。

1-4-1.要介護1以上の認定を受けていること

介護保険制度上のデイサービスは要介護1以上の方が対象になっているので注意しましょう*6。ただし要支援認定の方や「非該当」と判定された人でも利用できる可能性があります(詳細は後述)。

1-4-2.本人が利用に同意していること

本人が利用に同意していなければデイサービスを利用できません。介護保険制度の利用は「本人」と「事業所」の契約によって成立するため、家族の都合のみで強引に利用させることは不適切だからです。事業所としても本人が利用を拒否している場合は必要なサービスが提供困難となるため、断られる場合が多いでしょう。

デイサービスに行きたがらない方に興味を持ってもらうための方法をいくつか下記の記事にまとめていますのでよろしければご参照ください。

1-4-3.送迎可能な範囲に居住していること、もしくは家族が送迎できること

デイサービスは施設で介護を受けることが大前提のため、事業所から送迎してもらうことが基本です。発着時間が都合悪い場合や、自宅が送迎エリア外の場合は家族が送迎する必要があります。

1-4-4.専門的な医療行為が不要なこと、健康状態が安定していること

デイサービスは、服薬介助や床ずれの処置と言った基本的な医療行為は対応可能です。ただし、多くのデイサービスでは痰吸引や経管栄養・点滴治療などの専門的な医療行為への対応は想定されていません。同様に、がん終末期や看取り期などによっていつ呼吸停止してもおかしくない状態や、風邪症状や感染症が疑われる症状がある場合も断られる場合があります。

基本的に健康状態が安定している方が利用できることを覚えておきましょう。

1-4-5.利用するための基本的ルールを守れること

デイサービスでは、介護保険制度上の決まりごと以外に、利用するためのルールを「契約書」や「重要事項説明書」で定めています。基本的ルールは事業所によって異なりますが、特に多い例を以下にご紹介します。

  • 他利用者の生命や身体に危害を及ぼす行為をしないこと
  • 他利用者や職員と、飲食物や金品のやり取りをしないこと
  • 他利用者や職員に対しハラスメント行為(セクハラ・パワハラなど)をしないこと
  • サービス利用中に他利用者や職員に対し布教活動をしないこと

デイサービスは、さまざまな生活環境にある方が集まる事業所です。周囲の方に迷惑となる行動がみられる場合は利用を制限される場合があるので、ルールを守って利用することが重要です。

1-5. 要支援の場合、自治体単位の通所型サービス(総合事業)として提供される

要支援と要介護の場合は、提供されるデイサービスの種類が異なります。要介護の場合介護保険制度に基づく「通所介護」として実施されますが、要支援1・2の方がデイサービスを利用する場合は「通所型サービス」(総合事業)として、自治体が独自に実施するデイサービスとして提供されます

過去、要支援1・2の方は「介護予防通所介護」と呼ばれる介護保険サービス上のデイサービスを利用していました。しかし制度改正により、平成29年度より現在の「通所型サービス」(総合事業)に完全移行しています*7。大まかな全国的基準はあるものの、サービス内容や利用可能な頻度・利用料金は自治体ごとに異なります。

詳細については、最寄りの地域包括支援センターや自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。

1-6.「非該当」でも、通所型サービス(総合事業)を利用できる場合がある

介護サービス

通常のデイサービスは要介護1以上の認定がないと利用することができません。しかし通所型サービス(総合事業)の場合は、要支援1にも満たない「非該当」の場合でも利用できる可能性があります。なぜなら、「基本チェックリスト」の実施結果が一定基準を満たした場合は介護予防の取り組みが必要な「事業対象者」として認定され、通所型サービス(総合事業)の利用対象者となるからです*8

「基本チェックリスト」とは、自身の心身の状況をチェックすることで介護が必要となる恐れがある要素を確認できるツールです。全部で 25 項目の質問により、「生活機能全般」「運動機能」「栄養状態」「口腔機能」「閉じこもり」「認知症」「うつ」のそれぞれにおけるリスクを判定することができます。上記の要素のいずれかにおいてリスクありと判断された場合に、「事業対象者」として認定される仕組みです。

「基本チェックリスト」は、基本的に中学校区ごとに設置されている地域包括支援センターが運用しています。要介護認定は受けていない(非該当になった・更新しなかった)方でデイサービスを利用してみたい方は、最寄りの地域包括センターに相談しましょう。

2. デイサービスは4種類

デイサービスの種類4つ

介護保険制度上のデイサービスは、以下の4種類があります。

  • 通所介護(デイサービス)
  • 地域密着型通所介護(小規模デイ)
  • 療養通所介護(療養デイ)
  • 認知症対応型通所介護(認知症デイ)

それぞれの特徴は以下の通りです。

事業種別特徴
通所介護*6通常のデイサービス。身体介護や機能訓練、レクリエーション、家族の介護負担軽減などの基本的な機能を持つ。事業所ごとの特色が強い。
地域密着型通所介護*9定員19人未満の小規模なデイサービス。通常のデイサービスより定員が少ないので、アットホームで密度が高い支援が期待できる。
療養通所介護*10通常のデイサービスでは対応しきれない医療ケアや重度の要介護者・看取り期の方でも受け入れ可能なデイサービス。医師や訪問看護ステーションと連携して、きめ細やかな支援を提供する。
認知症対応型通所介護*11*12認知症の診断を受けている方を対象にした専門的なデイサービス。認知症に特化しているため、スタッフの認知症対応力が総じて高いことが特徴。グループホームに併設されているタイプは料金も安い。要支援1から利用できる。

厚生労働省の発表によると、通常のデイサービスや小規模デイは要介護2までの軽度者の利用が全体の6割弱を占める一方、認知症対応型通所介護は要介護3以上の利用者が多くなっています。人が多く集まる場所に行くことが苦手な方は小規模デイ、医療依存度が高い方は療養デイ、認知症があって専門的な対応が必要な方は認知症デイを選択するとよいでしょう。

運動機能特化型デイサービス

なお、デイサービスのなかには「リハビリデイサービス〇〇」「パワーリハ〇〇」のように、機能訓練の体制を強化した「機能訓練特化型」と呼ばれているタイプもあります。しかし「機能訓練特化型」は制度上の定義ではなく、あくまで4種類のいずれかに該当しています。身体機能の維持向上を目的としている場合は、機能訓練特化型のデイサービスを選ぶとよいでしょう。

また、デイサービスの施設を夜間宿泊施設として利用してショートステイのような利用の仕方ができる「お泊りデイサービス」と言うサービスを実施している事業所もあります。宿泊に関する料金は介護保険対象外ですが、通いなれた施設で馴染みの職員から夜間の介助も対応してもらえる点が魅力です。

3. デイサービスの料金

デイサービスの料金は、自己負担割合が1割の方の場合で1回当たり1,000~2,000円程度となっています。介護保険対象の基本サービス費と各種加算に、介護保険対象外となる食事代などが加算されて請求されます。

通常のデイサービスを1回利用した場合の料金は、以下の通りです*12

要介護度基本サービス料
要介護1658円/回
要介護2777円/回
要介護3900円/回
要介護41,023円/回
要介護51,148円/回

※1単位=10円、自己負担割合1割の場合(2024年4月更新)

デイサービスの料金は、デイサービスの種類や要介護度・事業所の規模・自己負担割合・地域単価によって変わります。また、要介護1以上の方が利用するデイサービスと要支援や事業対象者の方が利用する通所型サービス(総合事業)でも違いますし、通所型サービス(総合事業)の場合は自治体ごとでも異なります。

詳細については、別記事「デイサービスの料金と費用を抑える方法」でご紹介しています。デイサービスの料金について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。

4. 利用時間と利用回数

お金の計算イメージ。いくら?

デイサービスの利用時間は、1時間単位で区切られています。要介護1以上の場合特段の回数制限はありませんが、要支援や事業対象者の方の場合は週3回以上の利用に関して介護報酬が設定されていないため、実質的に週1~2回の利用に制限されています*13

なお、厚生労働省によるとデイサービスの1回当たりの利用時間は7時間以上8時間未満が最も多く、利用回数は1週間あたり2~3回利用するケースが多くなっています。利用時間や利用回数は、利用者の体調や希望・事業所の体制などを踏まえて総合的に決定されます。支援内容の詳細はケアマネジャーがケアプランに記載することによって決まるので、利用時間や回数に希望がある場合は早めに担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。

デイサービスの費用を抑えたいという方はこちらの記事をご参照ください。

5. デイサービスとデイケアの違い

デイサービスとデイケアの最も大きな違いは、デイサービスの主な目的は「心身機能の維持や家族の介護負担軽減を図る」ことであるのに対し、デイケアの目的は「医学的なリハビリテーションを行うことで心身機能の維持・回復を目指す」点にあります。

以下に、主な違いを表にまとめました*14

デイサービスデイケア
正式名称通所介護通所リハビリテーション
主な目的日常生活上の介護、社会的孤立の解消、家族の負担軽減リハビリテーションによる機能維持・回復
医師の配置不要専任の常勤医師1名以上
種類通所介護地域密着型通所介護療養通所介護認知症対応型通所介護病院や診療所のデイケア介護老人保健施設のデイケア介護医療院のデイケア
利用に向いている方独り暮らしで日中の介護が必要な方閉じこもりがちな方介護者が介護疲れをしている方専門的なリハビリテーションを希望する方医療的ケアが必要な方

このように、デイサービスは「介護」を重視しているのに対し、デイケアは医師を配置して医学的なリハビリテーションや医療的ケアを中心に行う点が特徴です。

なお、デイサービスとデイケアの違いの詳細については別記事にて解説しています。興味がある方は、ぜひこちらも合わせてご覧ください。

6. デイサービスをおすすめする方5選

デイサービスの利用によって困りごとが解決すると考えられるのは、以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • 閉じこもりを解消したい方
  • 運動する機会が欲しい方
  • 自宅での入浴が難しい方
  • 日中の介護者が不在で困っている方
  • 家族の介護負担軽減が必要な方

なぜ上記の方にデイサービス利用がおすすめなのか、ご紹介していきます。

6-1.閉じこもりを解消したい方

介護サービスの利用

認知症やケガ・体力の低下などによって外出が難しくなると、次第に筋力や認知機能が低下してしまいます。これによって介護の必要性が増してしまうため、閉じこもりを予防・解消して生活の好循環を作り出すことが重要になります。

デイサービスでは、施設ごとに楽しく通ってもらえるような工夫がされています。例えば、手芸教室やカラオケや職員オリジナルのゲームなどさまざまです。なかには麻雀やパチンコなど娯楽設備を取り入れているところもあります。また、近隣住民の利用率が高いデイサービスを狙って利用し、旧知の友人と一緒に過ごせることを期待して通っている方もいます。

デイサービスにもいろいろな種類がありますので、ケアマネさんに聞いてみる、もしくは検索して調べてみると、本人が気に入る場所が見つかるかもしれません。

閉じこもりは、高齢者の心身状態を悪化させる可能性がある重要な課題です。解消するためには、目的や楽しみが必要です。デイサービスであれば、「あそこのデイに遊びに行っている」「週1回、友人に会える」などの外出のきっかけを作ることができるでしょう。

6-2.運動する機会が欲しい方

デイサービスでのリハビリを受ける高齢者

運動の機会がなくなると足腰が弱くなり、転倒の危険性が増えます。自宅に訪問してもらってリハビリを受ける「訪問リハビリテーション」などの介護保険サービスもありますが、時間制限や運動内容には限りがあります。そのため、設備が整ったところでしっかり運動したいと考えているのであればデイサービスの利用がおすすめです。

特におすすめなのが、「機能訓練特化型」のデイサービスです。機能訓練特化型のデイサービスは、充実した運動器具や設備が整っている点が特徴です。また、運動の時は介護スタッフが危険がないか観察してくれるので安心です。半日~1日滞在できるので、しっかり運動したいと考えている方にもおすすめです。

「運動する機会が欲しいけど、家でひとりでやるのには限界がある」と感じている場合は、デイサービスの利用がおすすめです。

6-3.自宅での入浴が難しい方

歩行器

入浴は身体の清潔を保つだけでなく爽快感を得られるため、生活の質の向上を図るうえでとても大切です。しかし一方で、転倒やヒートショックによる体調の急変などのリスクが付きまといます。病気や認知症によって入浴に介助が必要になると、自宅での入浴が困難となる場合が多くなります。

そこでおすすめなのが、入浴設備が整ったデイサービスで入浴する方法です。デイサービスには看護師が配置されているので、入浴前後の体調確認や万が一の時でも速やかに対応してくれます。また、施設によっては寝たきりの人にも対応できる特殊浴槽を備えている所もあります。館内に暖房が完備されているので冬季間におけるヒートショックの心配も減らせます。

自宅でヘルパーから入浴介助してもらうことも可能ですが、身体機能が低下した人の場合、一般家庭の浴室には限界があります。自宅での入浴が難しいと感じたら、デイサービスの利用を検討しましょう。

6-4.日中の介護者が不在で困っている方

訪問・ヒアリングする男性

「介護離職」とは、介護が必要になった方の面倒を見るために仕事を辞めることを指します。しかし、仕事を辞めたり正社員からパートになって勤務時間を減らしたりすれば当然収入が減ってしまうので、将来的に生活が立ち行かなくなってしまう恐れがあります。かといって本人を家に一人にして仕事に行くわけにもいきません。そんな時は、デイサービスの利用がおすすめです。

なかには「自宅にヘルパー呼んで見守ってもらえばいいでしょ」と考える方もいます。しかし厚生労働省が定める規定では、単なる見守りは「身体介護」として認められていません*15。「ただ危険がないか見守っていてくれればいい」だけでは、介護保険の対象にならないのです。一方、デイサービスを利用すれば介護職員や看護職員の見守りのもとで安全に過ごすことができます。しかも運動や入浴・トイレ介助なども受けることができるので、一石二鳥です。

日中介護者が不在になるからと言う理由で仕事を辞めてしまえば、ご自身の生活にも悪影響を及ぼします。介護離職の防止と日中独りになることへの不安を同時に解決するためには、デイサービスの利用が最適と言えるでしょう。

6-5.家族の介護負担軽減が必要な方

おもにご家族が介護を担う場合、時間的・身体的・精神的な負担がのしかかります。24時間介護が必要になれば健康な家族も疲弊し、体調を崩してしまうことになりかねません。ひとりで抱え込んでしまうと他の家事の時間や介護者自身のプライベートな時間まで奪われてしまうので、要介護者・介護者双方の心身の健康のためにも介護負担軽減を行う必要があります。

そこで一番におすすめしたいのが、デイサービスです。先にご紹介しています通り、デイサービスの主な目的に「家族の負担軽減」があるからです。同様の通所サービスであるデイケアの目的には「家族の負担軽減」がないため断られる場合がありますが、デイサービスであれば「介護者の休息や空いた時間に他の家事をするため」と言う理由で利用することが可能です。

在宅での介護生活を続けるためには、適度な休息とリフレッシュも重要です。お互いの気分転換にもなるので、積極的にデイサービスを利用していきましょう。

7. デイサービスを受ける場合の流れ

デイサービスを利用するためには、所定の手続きを踏んだうえでケアプランを作成する必要があります。しかし、実は「要介護」「要支援」「事業対象者」の3パターンごとに手続きの流れが少し違います。

初めてデイサービスを利用する場合の流れについてパターンごとに手順を解説していきますので、ご覧ください。

7-1.要介護の場合

デイサービスを利用するために介護保険を申請して、要介護の認定を受けた場合の流れは以下の通りです*16

  1. 要介護認定の申請をする(住民票がある自治体)
  2. 認定調査・主治医意見書
  3. 介護認定審査会による審査
  4. 認定結果通知
  5. 居宅介護支援事業所との契約
  6. サービス担当者会議(ケアプラン作成)
  7. 利用開始

まずは、お住いの市区町村の介護保険担当窓口で要介護認定の申請をしましょう。最寄りの地域包括支援センターや、ケアマネジャーが働く居宅介護支援事業所などでも代行申請が可能です。その後「認定調査結果」「主治医意見書の提出」が終わると、「介護認定審査会」によって要介護度を決定し、申請者へ通知します。

この結果が要介護1~5だった場合は、「居宅介護支援事業所」がケアプラン作成の窓口となります。任意の事業所と契約し、デイサービス利用について相談をしましょう。その後、ケアマネジャーが開催する「サービス担当者会議」にて「ケアプラン」が最終決定されます。ケアプランが完成すれば、いよいよサービス利用の開始です。

7-2.要支援の場合

デイサービスを利用するために介護保険を申請して、要支援の認定を受けた場合の流れは以下の通りです*16

  1. 要介護認定の申請をする(住民票がある自治体)
  2. 認定調査・主治医意見書
  3. 介護認定審査会による審査
  4. 認定結果通知
  5. 地域包括支援センターとの契約
  6. サービス担当者会議(ケアプラン作成)
  7. 利用開始

要介護の認定を受けた時の違いは、ケアプランを作成する窓口が異なる点です。要支援の認定を受けた場合、担当は自動的に最寄りの地域包括支援センターになります。地域包括支援センターでは「社会福祉士」「保健師(看護師)」「主任ケアマネジャー」が所属してプラン作成を担当しています*17

なお、地域包括支援センターでは要支援の方のケアプラン作成を要介護1以上の方を担当している「居宅介護支援事業所」に委託する場合があります。この場合は「居宅介護支援事業所」のケアマネジャーが要支援の方のケアプランを作成します*18。地域包括支援センターを通して、希望する居宅介護支援事業所への作成依頼も可能です。

7-3.事業対象者の場合

「事業対象者」の形でデイサービスを利用する場合の手順は以下の通りです*19

  1. 最寄りの地域包括支援センターに相談
  2. 「基本チェックリスト」を実施
  3. 地域包括支援センターが「事業対象者」として市町村へ届出
  4. 地域包括支援センターとの契約
  5. サービス担当者会議(ケアプラン作成)
  6. 利用開始

地域包括支援センターを通して「基本チェックリスト」を実施し、対象として認められた場合は要介護認定を受けずとも「事業対象者」として要支援の方と同じデイサービスを利用できます。「事業対象者」として認定されたのちは地域包括支援センターと契約し、サービス担当者会議を経てサービス利用を開始します。

参考文献

*1.厚生労働省 第180回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 P1、2、26

*2.厚生労働省 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第92条、第93条、第94条

*3.厚生労働省 令和3年度介護報酬改定について P31

*4.厚生労働省 令和3年度介護報酬改定の概要(栄養関連)P11

*5.厚生労働省 第153回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料5 P15 

*6.厚生労働省 介護サービス情報公表システム どんなサービスがあるの?ー通所介護

*7.厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方 P7、9

*8.八王子市福祉部高齢者福祉課 基本チェックリスト運用マニュアル P3~6

*9.厚生労働省 介護サービス情報公表システム どんなサービスがあるの?ー地域密着型通所介護

*10.厚生労働省 介護サービス情報公表システム どんなサービスがあるの?ー療養通所介護

*11.厚生労働省 介護サービス情報公表システム どんなサービスがあるの?ー認知症対応型通所介護

*12.厚生労働省 介護報酬算定構造 P介護5、地域4

*13.厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業の算 定構造 P総合事業4

*14.第180回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料3 P21

*15.第142回社会保障審議会介護給付費分科会 参考資料1 P3

*16.厚生労働省 介護サービス情報公表システム サービス利用までの流れ

*17.厚生労働省 地域包括支援センターの業務

*18.厚生労働省 ② 介護予防支援関係 【1 委託について】問1

*19.厚生労働省 介護サービス情報公表システム 介護予防・日常生活支援総合事業のサービス利用の流れ<総合事業実施後の利用手続き>

この記事を監修したのは

河北 美紀

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
2013年介護事業を運営する株式会社アテンド代表取締役就任。
8年間父の介護をした経験と、江戸川区介護認定審査会委員を務めた経験をもとに介護保険外サービス『冠婚葬祭付き添いサービス』を拡大。
母体のデイサービスは、2017年株式会社ツクイ(東証一部上場企業)主催の介護コンテスト横浜会場にて最優秀賞受賞。メディア実績は、厚生労働省老健事業「サービス活用販促ガイド」、週刊ダイアモンド、シルバー新報、東京都「キャリアトライアル65」、経済界など複数。


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