階段の介護リフォーム、転倒・転落の重大事故を防ぐ住宅改修のポイント!

階段の介護リフォーム。転落転倒の事故を防止。 介護コラム
株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役 遠藤哉

この記事を監修したのは

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士

遠藤 哉

階段の上り下り、不安で諦めていませんか?

戸建て住宅に暮らす高齢者の生活では、階段昇降が高い頻度で行われることもあります。ベランダに洗濯物を干すために階段で2階に上がり、日中は日当たりのいい自室で読書をし、夜は2階の寝室に移動する。しかし、この日常生活の一部である階段は、高齢者やそのご家族にとって、大きな危険を伴うこともあります

今回は階段の介護リフォームについて、そのメリットと効果、リフォームの際の注意点などを紹介します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 階段の上り下りに危険を感じ始めている人
  • 家族に反対されているが夜は2階の寝室で過ごしたい人
  • 階段を安全に昇降する方法について考えているケアマネさんや関係者

【この記事で説明していること】

  • 階段からの転落は重大事故につながりやすい。
  • 階段の手すりは途切れさせない。両側もしくは、降りるときの利き手側もしくは外回り側に取り付ける。階段は「最後の一段」で事故が多い。
  • 階段の滑り止めは介護保険対象。介護保険対象外のリフォームとしては照明や階段昇降機などがある。

階段の介護リフォームが重要な理由

まず階段の介護リフォームが重要な理由をお伝えします。

階段昇降が必要な住宅構造

日本は土地が狭いことから、戸建て住宅でも2階建や3階建の住宅が多いです。総務省統計局の調査によると、日本の戸建て住宅のうち、84.1%が2階建以上の住宅となっています。多くの住居は複数階から成り立っており、日常的に階段昇降を行っているのです(*1)。

そして、階段の移動にはリスクが伴います。狭い日本の土地事情もあり、段差が急な階段や、踏面の寸法が狭い階段、手すりのない階段、踊り場のない直線階段(鉄砲階段)など、リスクの大きい階段もあります。階段昇降時の転落事故を防ぐためには、階段をより安全にリフォームしていくことが重要です。

ご家族
ご家族

階段は危ないから高齢者は2階には上らせないようにした方がいいんじゃないの?

株式会社ユニバーサルスペース 遠藤代表
株式会社ユニバーサルスペース 遠藤代表

それもひとつの方法かもしれませんが、これまでの生活スタイルをできるだけ維持することが本人の自尊心やモチベーションにもつながります。環境の変化に弱い高齢者も多いので、まずは今ある生活を崩さないことを優先に考えるといいでしょう。

ただ、身体能力的に段差昇降が難しい場合は、専門職と相談しながら1階で生活できる環境を準備していくことをお勧めします。

重大事故につながりやすい

階段の事故は大きな事故につながりやすい傾向があります。

介護リフォーム・住宅改修

階段昇降は片足立ちでつま先出しを連続して行うという動作が必要になるため、バランスを崩す危険が高まります。そして、階段での転倒は転落となり、大きな怪我につながることが予想されます。腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折など、その後の生活に大きな影響を与えることも多く、中には死亡事故につながるケースも。階段からの転倒・転落は大きなダメージにつながりやすいので注意が必要です。

特に気を付けたいのが夜間の階段昇降。寝室のある2階から階段を下りて1階のトイレに移動する際に足を踏み外して転落してしまう事故も少なくありません。

これは社内独自データとなりますが、いえケア運営会社がフランチャイズ本部を行う「介護リフォーム本舗」全店舗の場所別相談件数(2022年1月~12月)を見ると全498,230カ所の相談のうち、60,674カ所が階段に関する工事の相談となっています。全体のおよそ12%は階段の介護リフォームの相談で、5番目に希望の多いリフォーム場所であることがわかります(*2)。

階段の手すり取付

階段の介護リフォームで最も重要なのはやはり手すりです。

現在の建築基準法上では、階段には手すりを設けることが決められています(*3)。

建築基準法(階段等の手すり等)

第二十五条 階段には、手すりを設けなければならない。

 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。

 階段の幅が三メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが十五センチメートル以下で、かつ、踏面が三十センチメートル以上のものにあつては、この限りでない。

 前三項の規定は、高さ一メートル以下の階段の部分には、適用しない。

上記のように、現行制度では階段手すりが必須となっていますが、比較的古い住宅では手すりのない階段も多く見かけるのが現状です。階段での重大事故を防ぐため、手すり設置についてのポイントを紹介します。

階段の手すりは途中で途切れさせない

階段の手すりは途切れさせず、連続した手すりにしましょう。階段昇降時にはどうしても足元に注意が行きやすく、手元への注意が散漫になります。手すりが突然途切れてしまうと、つかみ損ねて転倒・転落するリスクが高まります。

もし階段の構造上、手すりが途切れる場合に関しても、できるだけ途切れる距離が短くなるようにしましょう。

手すりは階段のどちら側につける?

人間の体には利き手があるので、利き手側に手すりがあることが望ましいです。階段を上るときと降りるとき、どちらも手すりを使いますので、理想を言えば両側に手すりが欲しいところです。

横幅の問題などで、手すりを片側にしか設置できない場合は、上るときよりも降りるときの方が事故が多いので、階段を降りるときに利き手で手すりをつかめるようにしましょう。また、曲がり階段の場合は段板が広い外回り側に手すりを取り付けると、足の置き場を広くとることができ、より安全な昇降動作が可能になります。

普段の階段昇降の動作なども参考にしながら、どの位置に手すりを取り付けるかを検討しましょう。

  • 理想は階段の両側に手すりをつける
  • 降りるときの利き手側に手すりをつける
  • 曲がり階段では外回り側に手すりをつける

注意したい、最上段と最下段

よく言われる話ですが、階段で一番危険なのは最後の一段
気持ちのゆるみなどもあり、踏み外しが多発すると言われています。最後の一段で転倒しないことを念頭にリフォームをすることが求められます。

人は自分の体より前方にある支持物(手すり)をつかんで前進します。手すりが体の後ろ側(背中側)に残っていると後方にバランスを崩す恐れがありますので、転倒リスクの高い場所では常に前につかまる場所を確保することが求められます。

階段の最上段によくある例として、右図のように階段が最上段で途切れてしまう手すり。これは写真素材サイトから拝借した画像なのですが、これだと最上段を上がりきるときに体の前方は手すりがなく、その先につかまる場所がありません。この最後の一歩が踏み出せずに転倒につながる危険があります(下図左上)。

階段は少なくとも踏面一段分前方に延ばすことで、階段の先につかまる場所を確保することができ、移動先の階でスムーズに歩きはじめることができます(下図右上)。

もし、前方に延ばすことができない場合は上に手すりを立ちあげましょう。上るときは体の上にある手すりをつかむと、体を上に引き上げやすくなります(下図左下)。

階段の手すり、最上段と最下段

階段を降りるときも同様で、降りた前方に手すりが延長していると最後の一段を降りるときにも体を手すりで支え、バランスを保持できます。手すりでバランスを整えながら、歩き始めもスムーズになります。階段を降りた後、どの方向に歩きはじめるかを意識して手すりをつけるとより安全な移動につながります。

階段の手すり」といわれたからといって、単純に階段の上から下まで手すりをつければいいわけではなく、最後の一段も安全に移動ができ、その先の行動にもスムーズに移行できるような手すりが必要です。どこにどんな手すりをつけるべきか、手すりの種類などはこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。

介護保険を使って介護リフォーム

手すり以外にも介護保険対象の工事はあります。

階段の滑り止め

階段の滑り止めは転落防止に有効な手段です。階段で足を滑らせることがないように、滑り止めテープや滑り止めのプレートを段鼻(踏板の先端部分)に取り付けます。足を滑らせて階段を踏み外す事故を防止することに役立ちます。このような階段の滑り止めも、固定すれば介護保険の住宅改修工事として認められます。

また、滑り止めをするときには色彩にも注意しましょう。階段が暗い場合や、利用者の視力がぼやけている場合は上から見たときにどこまでが段なのか、先端部分を判断することが難しくなります段鼻につけるすべり止めが目立つと、段の先端部分を把握することができます。利用者の視力が弱い場合は目立ちやすい色の滑り止めを選択しましょう。

介護保険外で階段の介護リフォーム

介護保険対象外の介護リフォームを提案します。

  • 照明を取り付ける
  • 階段昇降機を取り付ける
  • 荷物を置かない

照明を取り付ける

階段は夜間に使うことも多い場所です。暗いと段を視認できず踏み外してしまうリスクが高まります

そこで、階段に照明をつけ、足元を照らしてあげるといいでしょう。上から照明を照らすのもいいですが、肝心の降りるときには自分の体で影ができてしまい、足元がよく見えなくなります。できれば足元側に照明があるといいでしょう。階段の上がり下がりの初めに人感センサーのライトなどがあるといいでしょう。

階段昇降機を取り付ける

階段昇降機

手すりをつけても安全に階段昇降ができない場合は、階段昇降機を設置することもひとつの解決策です。

いす型の昇降リフトで、リモコン操作で上下階を移動するタイプが一般的です。階段の形状に応じてオーダーメイドとなります。

介護保険が適用されず、全額自己負担となります。直線階段でも高いものは100万円近くになることもありますし、回り階段の場合は直線階段の倍くらいの金額になることもあります。レンタルで利用できる商品もありますが、これも介護保険は対応していません。

また、設置するためには階段の幅が最低750mm必要ですので、階段昇降機が設置できない場合もあります。自治体によって補助金の対象になる場合もありますので、相談してみましょう。参考に東京都港区の高齢者昇降機設置費助成の情報を掲載します(*4)。

高齢者昇降機設置費助成
東京都港区ホームページです。

荷物を置かない

これはよく見かける光景ですが、階段の踊り場部分に荷物を置きっぱなしにしているご家庭、ありませんか?階段に障害物があると、それを避けるために手すりと体との距離が離れてしまうことや、足場が狭くなるなど、転倒のリスクが高まります。

荷物を置きやすい場所に階段があるご家庭も多いのですが、リスクの高い場所でもあるため、階段には荷物を置きっぱなしにしないように注意しましょう。

まとめ

階段の介護リフォームについて紹介しました。

まずは手すりを設置することで階段からの転落リスクを減らしていくことを目指しましょう。すでに手すりがついている住宅でも、手すりが太すぎて(細すぎて)つかみにくい・手すりが途切れているという場合は、いざというときに役に立たないこともあります。まずは今の環境を見直してみることをお勧めします。

参考資料

介護リフォームのご相談

介護保険制度を使った介護リフォームの相談は全国の介護リフォーム本舗加盟店でお受けしております。

介護リフォーム本舗

介護リフォーム本舗は介護リフォームの専門業者として、全国100店舗で展開するフランチャイズグループです。累計工事実績は10万件。「快適生活を創る」を理念に活動しています。

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