地域包括支援センターの4つの役割とは?相談だけではない、地域包括の機能と課題。

地域包括支援センターの4つの役割。 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

在宅介護は突然にやってきます。

在宅介護が必要になったときのために事前に準備をしているという方が実はあまり多くなく、突然やってくる介護に戸惑うという方が多いです。誰に相談したらいいのかわからない。という方にまず知ってほしいのが「地域包括支援センター」です。

聞きなれない・聞き馴染みのない言葉でピンとこない人も多いと思います。在宅介護の総合的な相談窓口が、地域包括支援センターです。全国におよそ5500カ所の地域包括支援センターがあり、在宅介護に関する様々な相談に対応しています。日本全国のドラッグストアの店舗数が6000店舗、スーパーマーケットの数が5500店舗。ちなみにマクドナルドが日本全国で2900店舗ですので、いかに地域包括支援センターの数が多いかがわかるかと思います。

「ホウカツ」という名前を知っている・聞いたことがあるという方もいると思います。ただ、実際何をしているのか詳しくはわからないという人も多いので、地域包括支援センターの役割をわかりやすく紹介したいと思います。
ちなみにいえケア中の人は元包括職員ですので、より具体的にお伝えできればと思います。

【こんな人におすすめ】

  • まだ在宅介護をしていないけれど、今後のために情報収集をしておきたい人
  • 地域包括支援センターに相談することになったが、どんなところか知りたい人
  • 地域包括支援センターはいつも忙しそうだけれど、実際のところ何をしているのか知りたい人

【この記事で解説していること】

  • 地域包括支援センターは在宅介護の総合的な相談窓口
  • 地域包括支援センターには大きな4つの役割がある
  • 地域包括支援センターにも課題が多く、限界がある。

地域包括支援センターとは?

地域包括支援センターは在宅介護の総合的な相談窓口です。全国に設置され、介護保険の申請から在宅介護サービス利用の相談、ケアマネジャーなど在宅介護を支える事業者の相談窓口にもなっています。

地域包括の「包括」は「ひっくるめて」という意味で考えるといいでしょう。どんな相談でも、在宅介護に関することであれば相談に対応してくれます。

地域包括には、日々、いろんな相談が寄せられます。例を紹介します。

  • 近所の認知症の高齢者が畑の野菜を持って行ってしまって困っている
  • 隣で大声で怒鳴る声がするので、高齢者が虐待されているんじゃないだろうか
  • 父が家に閉じこもってばかりいて、介護が必要なわけではないけれど出かけるような場所はないか

こんな相談が日々寄せられるのが地域包括支援センターです。

社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネ)・保健師という3職種が配置され、それぞれの専門性を活かして地域に住んでいる高齢者の支援や、地域の課題解決を行います。

実は地域包括支援センターが担っているのは在宅介護の相談窓口という機能だけではなく、あわせて4つの役割があるのです。

地域包括支援センターの4つの役割・機能を紹介していきます。

地域包括支援センターの4つの役割

地域包括支援センターの4つの役割

総合相談支援

もっとも一般的に知られている地域包括支援センターの役割が総合相談です。地域住民の相談に対応し、適切な機関につなげたり、問題を解決するなどの対応を行います。

例えば、以下のような相談に対応し、手続きの代行などを行う場合もあります。

  • 介護保険の申請
  • 地域の高齢者向けの市町村独自サービスの相談・申請
  • 介護サービスに関する減免制度等の説明
  • ケアマネジャーや介護サービス事業所の紹介
  • 住宅改修の相談 など

地域の実情や社会資源に詳しく、制度も熟知している地域包括支援センターの職員だからこそできることも数多くあります。相談業務を通して多くの課題を解決し、地域に貢献をしています。

在宅介護をすることになった方がまず地域包括支援センターで辿り着くのがこの総合相談です。介護保険の申請やケアマネジャーの紹介など、支援につながるまでのサポートを行うことができます。

ケアマネジャーが担当についていない方に対する住宅改修の調整や理由書作成などのサポートを行うこともあります。

在宅介護をしている家族を対象にした介護者教室や座談会・交流会などを開催することもあります。

介護予防ケアマネジメント

体操教室で指導する地域包括支援センター職員

介護予防ケアマネジメントは、まだ「要介護」の認定を受けていない人たちが、地域でより自立した生活ができるよう、ケアプラン作成などの支援を行うことです。要支援1,要支援2の認定に該当する高齢者や、介護予防チェックリストなどを通して事業対象者に該当した高齢者に介護予防ケアプランを作成します。

利用するサービスによって、介護予防支援(介護保険・予防給付)または介護予防ケアマネジメント(総合事業)という位置づけで行われます。

地域包括支援センターの3職種だけでなく、地域によっては介護予防ケアマネジメントの業務を専門に行うプランナーという職種を配置している場合もあります。

また、地域包括支援センターの職員が直接担当する場合だけでなく、外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーに委託という形式でケアプランを作成してもらう場合もあります。

地域包括支援センターの業務のうち、この介護予防ケアマネジメントの業務が占める割合が非常に大きいため、それ以外の業務がまわらないという指摘もされています。2024年の介護保険制度改定で、居宅介護支援事業所も介護予防支援のサービスを提供することができるようになりましたが、制限も多く、地域包括支援センターの負担軽減がすぐに目に見えることはなさそうです。

要支援認定の直接ケアマネ相談、詳細はこちらの記事に記載しております。

他にも、介護予防のための体操教室や栄養教室の開催なども行い、広く地域の高齢者の健康増進に努めています。

権利擁護

高齢者の権利擁護も重要な地域包括支援センターの役割のひとつです。

高齢者が、不当に権利を侵害され、虐待を受けることもあります。高齢者虐待防止法で定めてある通り、虐待通報はすべての国民の義務でもあり、虐待が疑われる事実があった場合は通報をしなければいけません。そのときに、相談・通報窓口となるのが地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは虐待の通報を受けると、市への報告、関係者からの情報収集、市区町村関係部署も交えた会議などを行い、方針を決定します。

また、高齢者の財産管理や消費トラブルなどの問題などに関しても相談対応を行っています。虐待防止についての啓発を行うことも重要な役割です。地域の高齢者が自分らしく暮らしていけるようにサポートしているのが地域包括支援センターです。

包括的・継続的ケアマネジメント

ケアマネジャーの相談を受ける地域包括支援センター職員

あまり世間知られていない地域包括支援センターの役割が、この包括的・継続的ケアマネジメント

地域包括支援センターでは様々な関係機関と連携しています。市区町村や、自治会、老人会、民生委員、介護事業者、企業、商店会、警察、消防、医療機関、教育機関など、様々な方と関わっています。地域ケア会議という会議を行い、地域の課題について話し合います。

地域のケアマネジャーの支援も行っています。ケアマネジャー事業所も多様性があり、経験豊富なケアマネジャーが多数在籍している事業所もあれば、まだ経験の浅いケアマネジャーが一人で勤務しているところもあります。こんな場合はどう支援したらいいの?という相談や、地域包括も一緒に訪問してほしいという相談も対応しています。

地域のケアマネジャーが困ったときにサポートを行うケアマネ相談や、ケアマネ同士で情報交換やスキルアップを目指すケアマネ交流会などを行うのも地域包括支援センターの役割です。

様々な機関と連携してより良い地域を目指していくことも地域包括支援センターの重要な役割です。


地域包括支援センターの役割4つを紹介しました。これらの役割・機能を専門職が連携しながら行うのが地域包括支援センターです。地域包括支援センターという名称もわかりにくいですが、その役割の名称もまたわかりにくいですよね。

地域包括支援センターへの相談方法

では、実際地域包括支援センターに相談する手順について説明します。

担当(管轄の)地域包括支援センターを確認する

地域包括支援センターは住所によって担当地域が分かれています。つまり、隣の地区や別の市の地域包括支援センターへの相談はできません。知り合いがいるからこっちの地域包括に相談したい、とか、評判がいいからこっちの包括に、ということはできません。

担当地区がどこかは市区町村に確認するといいでしょう。住所を伝えると管轄する地域包括支援センターの場所や連絡先を教えてくれます。

電話で相談する

直接相談に行くこともできますが、まずは電話で相談することをお勧めします。なぜかというと、地域包括支援センターの職員は常に事務所で待機しているとは限らず、会議への参加、利用者宅への訪問、別の相談対応、研修の開催、電話対応など、様々な活動をおこなっています。地域包括まで足を運んでもすぐに対応してもらえないということもありますので、一度電話をして、予約をしてから相談に行くことをお勧めします。

相談する

電話を受ける地域包括支援センター職員

地域包括支援センターの職員と会って相談します。地域包括支援センターは、地域によって様々です。公共の施設に併設している場合もありますし、介護施設の一室に設置している場合もあります。スーパーやショッピングモール内に設置している場合もあります。

もしその場に行くことができない・外出ができない場合は、地域包括支援センターの職員が自宅を訪問することもできます。

今の生活上で困っていることや解決してほしい課題などを伝え、相談しましょう。もし介護保険の認定申請をする場合は、介護保険証があればあらかじめ用意しておくことをお勧めします。

地域包括支援センターへの相談の流れを解説しました。

地域包括支援センターの課題

とはいえ、地域包括支援センターにも課題があります。課題のいくつかを紹介します。

地域包括支援センターの課題

地域包括支援センターの認知不足

そもそも地域包括支援センターが世間に知られていないということがひとつの問題です。どこに相談したらいいの?地域包括って何?何をしてくれるの?どこにあるの?といったことが、世間一般に十分知られているとは言えません。介護の仕事をしている人でも、良く知らないという方が多いのが事実です。

地域ごとに別の名称・通称を用いて認知の向上を図るところもありますが、まだまだ認知度に問題があります。全体の半数近く、高齢者でも3~4割程度の人は地域包括支援センターを知らないとも言われています。認知不足のために、相談につながりにくい・つながるまでに時間を費やしてしまう問題があります。

離職率が高く、人材不足

悩んでいる地域包括支援センターの職員

なかなか地域包括支援センターの職員が定着しないことは大きな課題です。責任が大きく、給与も一般のケアマネジャー等の仕事と比較してもそれほど高くありません。時間外の勤務や研修なども多く、離職率が高いことが指摘されています。

離職率が高くなると、知識や経験が蓄積されず、相談支援の質が向上しません。介護業界全体も人材不足が進んでいることもあり、社会福祉士・主任介護支援専門員・保健師といった有資格者で優秀な職員の獲得は非常に高いハードルがあります。

地域のケアマネジャーの方が経験豊富で、ケアマネジャーから指導されることが多くなるなど、逆転現象が起きることもあります。職員の離職や人材不足に課題を抱える地域包括支援センターが多いです。

地域・法人による質の違い

多くの地域包括支援センターは、社会福祉法人や営利企業など、様々な団体が市区町村からの委託を受けて運営しています。いわば民間です。そのため、地域や運営法人によってその質も大きく異なります。相談支援の質を高めることよりも、自法人への集客の入口と考えている法人があることもまた事実です。

もちろん市が監督して、指導などは行っていますが、法人の姿勢によって大きく異なることが指摘されています。

業務が多忙

昔から言われていたことですが、地域包括支援センターの業務がマルチタスク過ぎて職員が常に多忙な状況が続いています。ひとつの業務に集中する間もなく、次から次へと新たな業務や相談が舞い込んでくるので、本来果たすべき役割を果たせず、市町村から課せられたノルマ達成や、日々の業務に忙殺されてしまう状況が生まれます。

親身に相談に乗ってくれなかった、雑な対応をされた、上から目線で対応された、といった声が多いこともまた事実です。

このように数多くの課題もあります。地域包括支援センターが地域包括ケアシステムで大きな役割を担っていることは間違いありませんが、十分機能しているとは言い切れません。権限や予算が限られるだけでなく、市からの要求なども多く、地域包括支援センターが疲弊している側面もあります。

まとめ

地域包括支援センターの4つの役割について解説しました。

在宅介護の最初の相談窓口である地域包括支援センター。まだ介護に関わっていない人でも、必ずその名前は憶えておきましょう。長くて覚えられない方は「ホウカツ」とだけでも覚えておきましょう。そして、自分の地域の担当包括がどこにあるのかも調べておくと、いざというときもすぐに行動に移せます。

4つの役割を全部覚えてたらそりゃいいですけど、在宅介護の相談ができる場所で、他にもいろいろ地域のためにやっているところだよって、覚えておきましょう。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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