認知症の方の要介護認定のポイント。使えるサービスや施設についても解説

失敗しない要介護認定 介護コラム

この記事を監修したのは

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役

河北 美紀

内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の要介護者(総数)における、介護が必要となった主な原因で最も多いのは「認知症」*1です。また、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になるとの推計*2もあり、認知症と介護は切り離せない問題となっています。この記事では、認知症の方のご家族向けに、認知症の方の要介護認定のポイントや使えるサービス、施設などについて解説しています。

★こんな人に読んでほしい!

・認知症を発症している方のご家族

・現在介護認定を受けており、今後認知症の発症が心配なご家族

★この記事で解説していること

・要介護認定とは介護サービスの必要量を判断するもので、介護にかかる手間(時間)をもとに決まる。認知症がある場合は、要介護認定で1以上とされることも多い

・認知症の方が要介護認定を受ける際の訪問調査では、必ず家族が同席し、普段の様子を正確に伝えられるようにするのがポイント

・認知症の症状が進行し、心身の状態が悪化した場合などは区分変更の申請により、再度、要介護認定を受けることが可能

・認知症で徘徊のリスクがある方におすすめの市区町村および民間の見守りサービスや、GPS付きのキーホルダーや見守りカメラなどの便利なアイテムも活用しましょう

・認知症の方に特化した認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などの入居施設もあり、より専門的なケアを受けることができる

・認知症カフェなど地域のネットワークを上手に活用し、介護のストレス軽減や悩みの相談などを気軽に行いましょう


1. 要介護認定とは?

1-1. 要介護認定とは介護サービスの必要量を判断するもの

要介護認定とは、介護サービスの必要量を判断するもので、客観的なコンピュータによる一次判定と介護認定審査会での二次判定の二段階で審査されます*3

介護保険は原則65歳以上から利用可能ですが、介護保険で規定されている特定疾病が原因で介護が必要と判断された場合は、40歳以上の方でも介護保険の対象となる可能性があります。初老期における認知症(若年性認知症)も介護保険で規定されている16種類の特定疾病*4のひとつです。

1-2.要介護認定の流れ

介護の必要性を感じたら、まずは住まいの「地域包括支援センター」に相談しましょう。地域包括センターはさまざまな機関と連携し、地域に住む高齢者をサポートしています。高齢者の暮らしに関する困りごとや相談にのってくれ、課題解決のための提案やアドバイスをしてくれます。

介護保険を利用したサービスを利用する場合には、要介護認定が必要です。要介護認定の申請は、市区町村の介護保険課などで行っており、申請が受理されると訪問調査が実施されます。その後、訪問調査結果と主治医の意見書をもとに一次判定が行われ、介護認定審査会による二次判定を経て、最終的な要介護度が通知されます。

介護保険申請からサービス利用するまで

要介護認定の申請方法や詳しい流れについてはこちらの記事でご確認ください。

また、認定結果に不満がある方は見直しの申請をすることもできます。

1-3. 認知症の症状がある場合は要介護1以上と認定されることも多い

認知症の方の介護

要介護度は、あくまで介護にかかる手間(時間)をもとに決まります。認知症を発症していても日常生活を送るのに支障がない方もいるため、要介護認定で必ず要支援・要介護の認定がされるとは限らず、非該当(自立)と判定される方もいます。一方で、身体の状況が比較的良好でも、認知症の周辺症状(徘徊、興奮・暴力、身辺の清潔を保てない行為など)のために介護に要する手間が多くかかる方もいます。

要介護認定の一次判定で同じ要介護認定等基準時間である「要支援2」や「要介護1」となった場合、二次判定の介護認定審査会において、比較的状態が安定しており改善の見込がある場合は要支援2、認知症があり心身の状態が不安定で、回復の見込も難しいと判断される場合は要介護1となることがあります。この点において、認知症の症状がある場合は要介護1以上と認定されることも多いと言えます。

2. 認知症の方が要介護認定を受ける際のポイント

訪問診療医

主治医(かかりつけ医)の意見書は要介護認定の重要な判断材料となります。実情を正確に記載してもらうためにも、認知症の状態も含め、要介護者の健康状態や生活状態などをよく理解してもらっているかかりつけ医を持っておくことが重要です。

訪問調査では本人の心身状態や生活状況、生活環境、家族の状況などの聞き取りが行われます。その際には、必ず本人の普段の様子をよく把握している家族が同席するようにしましょう。特に認知症の方は、日によって認知症の症状も異なり、改まった状況では急にしっかりすることも多く、普段よりも問題なく本人が受け答えできてしまうことがあります。

要介護度が適切に認定されないと、必要なサービスを受けることができず、結果的に介護の負担や金銭的負担が増大する問題が生じてしまいます。本人の普段の様子を細かくメモや動画で記録するなど工夫し、ありのままの事実を正確に訪問調査で伝えられるように準備しておきましょう。

認知症の症状が進行し、心身の状態の悪化による介護の手間が増えた場合などは、区分変更の申請により再度、要介護認定を受けることが可能です。ただし、希望の要介護になるとは限らず、場合によっては同じ、あるいは要介護度が下がってしまう可能性もあるため、事前にケアマネジャーに相談するようにしましょう。

3. 要介護認定を受けた認知症の方が介護保険で利用できるサービス

3-1. 自宅に訪問してもらう・通い・短期間の宿泊サービス一覧

介護保険で利用可能な居宅サービス*5をご紹介します。

自宅に訪問してもらう・訪問介護・訪問入浴・訪問看護・訪問リハビリ・居宅療養管理指導・夜間対応型訪問介護※・定期巡回・随時対応型訪問介護看護※
施設に通う・通所介護(デイサービス)・通所リハビリ(デイケア)・地域密着型通所介護(地域密着型デイサービス)※・療養通所介護※・認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)※
短期間の宿泊・短期入所生活介護(ショートステイ)・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
訪問・通い・宿泊を組み合わせる・小規模多機能型居宅介護※・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)※

※市区町村指定の事業者が地域住民に提供する地域密着型サービス

認知症の方を対象とした認知症対応型デイサービスなどはより専門性が高く、認知症の知識や経験が豊富なスタッフのもとで安心して利用することができるためおすすめです。レクリエーションなどは認知症の方にとって良い刺激になり、認知症の進行を遅らせる効果も期待できます。

3-2.認知症の方の介護におすすめの市区町村・民間サービスやお役立ちアイテム

認知症の方の介護におすすめの市区町村・民間のサービスやお役立ちアイテムを紹介します。

サービス名内容
屋外見守りサービス認知症の方が外出時に迷ってしまった際などに、GPSでどこにいるか把握したり、家族から協力者に捜索依頼を行うことができるサービス
認知症高齢者等の見守り・SOSネットワーク本人の特徴や連絡先を事前に市区町村に登録しておくことで、行方が分からなくなった際に、ネットワーク構成機関などに情報発信し、早期発見を行う
見守りカメラ自宅内外の様子をカメラで確認できる。動体を検知してお知らせする機能や、音声通話や録画ができる機能もある
GPS付きキーホルダー認知症の方がいつも持参するバッグや衣類に入れておくことで、GPSの位置情報システムを利用し、徘徊時にもおおよその場所が特定できる
見守り機能付き家電冷蔵庫や炊飯器、ポットなどのの家電にセンサーがついており、家電を使用した際に家族に通知がくる
電話や訪問による見守り電話や訪問で定期的に安否確認を兼ねた訪問を行うサービス。高齢者の話し相手になることで、孤独感をやわらげ、事故などを未然に防ぐこともできる

これらのサービスのほか、徘徊そのものを防止するために玄関や窓に外出を知らせる人感センサーや、暗証番号で管理できるタイプの内鍵を設置するなどの方法もあります。徘徊してしまった場合に備え、お住まいの市区町村や施設名をQRコードにしたシールを要介護者の爪に貼っておく方法もあり、GPSと異なり携帯するのを忘れるリスクがないため安心材料のひとつになります。

厚生労働省では認知症施策として、認知症の方と家族へ出来る範囲で手助けをする「認知症サポーター」を全国で養成し、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを目指しています*6

4. 認知症の方が入所できる施設

4-1. 認知症の方が入所できる施設一覧

認知症の方が入所できる施設一覧*5です。

種類名称受け入れ要介護度特徴
介護保険施設介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)要介護3以上常時介護が必要で、自宅での生活が困難な方向けの施設。介護やリハビリ、療養上の世話などを提供する。看取りへ対応しており、終の棲家となる。公共性の高い施設のため比較的低価格で入居できる
介護老人保健施設(老健)要介護1以上在宅復帰を目指している方向けの施設。リハビリテーションや必要な医療、介護などを提供する。入所期間は原則半年以内
介護医療院医療依存度が高く、長期にわたって療養が必要である方が対象。療養上の管理や看護、介護、リハビリテーションなど必要な医療と日常生活に必要なサービスを提供している
その他高齢者施設介護付き有料老人ホーム要支援1以上介護等のサービスが付いた居住施設。サービスはホームが提供する。施設によって価格の幅が広く、選択肢が多い
サービス付き高齢者向け住宅見守りサービス(安否確認・生活相談)を受けられる高齢者単身・夫婦世帯が居住できる賃貸住宅。敷金・礼金はあるが、一時金は不要。介護サービスは別途契約する。施設よりも自由度が高く生活できるメリットがある。今は看取りまで対応するところも増えている
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)要支援2以上民間の認知症の高齢者向けの共同生活住居。サービスはホームが提供する
住宅型有料老人ホーム自立から受け入れ可能生活支援等のサービスが付いた居住住宅。認知症の方の受け入れは施設によって異なる。レクリエーションなどに力を入れているホームが多い。介護が必要になった場合、別途外部の介護サービスを契約する。施設によって価格の幅が広く、選択肢が多い
ケアハウス身体機能の低下により、一人暮らしに不安のある方や家族の援助が困難な方向けの入居施設。比較的低価格。サービスはホームが提供する

認知症の方におすすめなのは認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。1フロア5~9人の少人数制でそれぞれに個室があるため、家庭のような暮らしを続けつつ、認知症専門のスタッフによるケアが受けられます。

4-2.施設入所の費用目安

施設に入所した場合の費用目安一覧です。

種類名称入所時の費用月額費用(目安)
介護保険施設介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)なし8~15万
介護老人保健施設(老健)なし7~17万
介護医療院なし7~17万
その他高齢者施設介護付き有料老人ホーム0~数千万※15~40万
サービス付き高齢者向け住宅0~数千万※12~25万
+介護サービス費
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)0~数十万※10~14万
住宅型有料老人ホーム0~数億※10~50万+介護サービス費
ケアハウス0~数千万9~20万+介護サービス費

※入所一時金を多く支払うほど月額費用は安くなります。

民間の施設は施設によって費用の幅が広く、選択肢が多いのが特徴です。また、月額はあくまで目安であり、この他に医療費や薬代、追加するサービスなどによっては別途費用が発生します。

5. 認知症の方の介護との向き合い方

5-1. 家族が認知症になったときの心がまえ

介護サービスの利用

認知症と診断されると、ご家族はもちろんですが、本人もとてもつらいものです。自分や周囲の環境が少しずつ変化することに傷つき、不安を抱えている気持ちをご家族も理解してあげるようにしましょう。

ご家族だけで認知症の方を介護するのはとても大変ですので、介護保険内、介護保険外のサービス(民間サービスなど)を積極的に利用し、家族やご近所、友人、ケアマネジャーをはじめとする介護・医療の専門家など皆で支え合える体制をつくることが重要です。

認知症の方やその介護者である家族などが集う「認知症カフェ」*7も全国に約6000ヶ所あります。認知症カフェには認知症の専門職の方もいるため、専門的な相談も気軽に行えるほか、同じ悩みを持つ方と繋がることで、介護のストレスを軽減することもできます。認知症の家族がいることを周囲にオープンすることにより、ご近所や友人の理解・協力を得ることができる可能性もあるので、認知症カフェなど地域のネットワークを上手に活用しましょう。詳しくは、お住まいの地域の高齢者担当課や地域包括支援センターでお尋ねください。

5-2. 限界を感じる前に施設への入所も検討を

介護にかかる期間は予測がつかないものです。介護をするご家族の気持ちの安定や時間も大切にし、在宅サービスと施設サービスを上手に活用して介護疲れを解消するようにしましょう。ショートステイなどを利用することは、お互いのリフレッシュにもなります。

在宅での介護を限界まで頑張りすぎて心身のバランスを崩す前に、無理せず施設への入所も検討するようにしてください。

参考文献

この記事を監修したのは

河北 美紀

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
2013年介護事業を運営する株式会社アテンド代表取締役就任。
8年間父の介護をした経験と、江戸川区介護認定審査会委員を務めた経験をもとに介護保険外サービス『冠婚葬祭付き添いサービス』を拡大。
母体のデイサービスは、2017年株式会社ツクイ(東証一部上場企業)主催の介護コンテスト横浜会場にて最優秀賞受賞。メディア実績は、厚生労働省老健事業「サービス活用販促ガイド」、週刊ダイアモンド、シルバー新報、東京都「キャリアトライアル65」、経済界など複数。


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