ショートステイとは?ロングショートステイの実態・デメリット、連続日数や費用などわかりやすく解説(2024年報酬改定版)

ショートステイ施設の選び方ポイント8つ 介護コラム

この記事を監修したのは

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役

河北 美紀

ショートステイは、期間を定めて介護施設に入所して介護や機能訓練などを受けるサービスです。家族がなんらかの理由で一時的に介護ができなくなった場合や介護者の休息の目的で利用することもできるため、非常に人気です。しかし、介護保険サービス費以外にも宿泊に関する実費が発生するため、費用が高額になると心配している方も多いのではないでしょうか。今回は、ショートステイの概要や料金の仕組み・費用助成の制度についてご紹介していきます。また、滞在期間の長いショートステイ「ロングショート」「ミドルステイ」の実態・メリットやデメリットについても解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

★こんな人に読んでほしい!

  • ショートステイを勧められたけど、詳しくはわからない方
  • 在宅介護をしているが介護疲れがある方
  • 将来的に施設入居を検討している

★この記事で解説していること

  • ショートステイには、介護保険対応の「ショートステイ」「療養ショート」に加えて介護保険対象外の「自費ショート」もある
  • 介護保険のショートステイは利用可能日数のルールがあり、事前の予約とケアプランへの組み込みが必要
  • ショートステイの料金は「介護保険サービス利用料」「保険給付対象外の料金」の合算で請求される
  • ショートステイの料金には助成制度がある
  • ショートステイは「医療ケアの有無」「認知症対応」「事前の見学」で選ぶ。施設入所を検討しているときは「併設型」を選ぶことがおすすめ
  • 一か月以上ショートステイを連泊する「ロングショート」「ミドルステイ」の実態について


1. ショートステイとは

1-1. ショートステイとは?わかりやすく解説

ショートステイの効果、ショートステイを利用して、介護負担の軽減・介護と家庭仕事の両立

ショートステイは、あらかじめ決めた期間に介護施設へ短期間入所(宿泊)し、必要な介護を受けるサービスです。利用している間は家族が介護から離れて休息を取ることができるため、人気の高い介護保険サービスのひとつです。

なお、児童を対象としたショートステイ(短期入所生活援助)もありますが、この記事では介護保険制度に基づくショートステイについてご紹介していきます。

ショートステイ(短期入所)を利用する

ショートステイの主な目的は、日常生活上の介助や機能訓練などを行うことによって利用者の心身機能の維持に努めるとともに、普段利用者を介助している家族の身体的・精神的な負担の軽減を図ることです*1。本人がショートステイを利用している間は家族も介護を休んでまとまった時間を捻出することができるので、介護者の負担軽減や介護離職を防ぐ効果も期待できます。なかには、最終的に施設入所を検討しているときのお試し利用として活用する方もいます。

実際によくある利用シーンをご紹介します。

  • 認知症になって物忘れが増えた本人を見ていると、ついイライラしてしまう。月2回程度2泊3日でショートステイを利用して、お互いが離れて気分転換する時間を作りたい
  • 難病によって昼夜問わず痰吸引が必要だが、介護者である家族も眠れないので困っている。5日間自宅・5日間ショートステイと交互に利用して、休息の期間が必要だ
  • 急に近い親戚に不幸があったので、落ち着くまでの4泊5日くらい本人を施設で見てもらいたい

厚生労働省の調査によると、実際にショートステイを利用して介護負担が軽減されたと応えた人は94%、介護と仕事・家庭の両立がしやすくなったと感じた人は全体の84.1%にも及んでいます*2。このデータも示している通り、ショートステイは日常的な介護で家族が疲労感を感じている方や、急に介護者が不在となる場合の対応におすすめです。

1-2. ショートステイは全部で3種類

ショートステイは、大きく以下の3種類に分類することができます。

  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護(医療型ショートステイ・療養ショートステイ)
  • 宿泊サービス(介護保険外サービス)

この中にある「宿泊サービス」は「有料ショートステイ」「お泊りデイサービス」「自費ショート」などとも呼ばれています。それぞれの違いを以下にまとめました。

短期入所生活介護*1*2*4短期入所療養介護*1*3*4宿泊サービス*5
特徴併設型と、単独型がある。日常生活上の介護が中心で、特養入所希望者は希望する施設併設のショートステイを利用すると有利になる医療機関に併設されている。医療的ケアやリハビリの体制が手厚い日中はデイサービス利用。夜間は同じ施設内に自費で宿泊する
運営主体多種多様。併設型はおもに社会福祉法人医療機関多種多様
医療処置の有無施設により異なる不可
費用負担介護保険対象減免制度あり*6介護保険対象減免制度あり*6実費減免制度なし
予約難易度難しい難しい比較的取りやすい
高齢者と男性介護職員

まず、最も違うのは「短期入所生活介護」「短期入所療養介護」は介護保険サービスであるのに対し、「宿泊サービス」は介護保険サービスではないという点です。「宿泊サービス」は介護保険制度上のデイサービスなどの施設を活用して自費で夜間の世話をする介護保険外のショートステイです。そのため医療処置には対応しておらず、費用を減免する公的制度がないため予約難易度は高くありません。

「短期入所生活介護」はショートステイ専門の施設と特養などに併設されたタイプがありますが、「短期入所療養介護」は全て介護老人保健施設や診療所などの医療機関に併設されています。医療処置の可否にも差があり、「短期入所生活介護」の場合は施設によって対応可能な範囲が異なりますが、「短期入所療養介護」は医療機関が母体なので基本的に対応可能です。また、介護保険対応のショートステイはどちらも費用負担の減免制度があるため人気が高く、数ヶ月前から予約していないと計画的に利用することは困難です。

1-3. その他の短期入所系サービスの施設の種類と違い

介護保険制度には通常のショートステイ施設以外に、一定の条件の下で一時的に利用できる短期入所系サービスがあります。これらは空床ショートや緊急ショートと呼ばれ、該当する施設の空きベッドを活用したり、特定条件下のもとでショートステイを利用したりする制度です。

一時的に利用できる短期入所系サービスは、以下の通りです。

①空きベッドがあるときに利用できる短期入所系サービス

  • 特定施設入居者生活介護(短期利用)*7*8
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用)*8*9
  • 認知症対応型共同生活介護(短期利用)*8*9

②担当ケアマネジャーが緊急やむを得ない事情があると認めた場合に利用できる短期入所系サービス

  • 小規模多機能型居宅介護(短期利用)*10
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)短期利用*11

どちらの場合も入所施設で実施されるショートステイですが、通常のショートステイと同様に在宅のケアマネジャーがケアプランを作成することで利用できるサービスです。いつもの事業所の予約が取れず困っている場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。

2. ショートステイの利用条件

実際にショートステイを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • ケアプラン(居宅サービス計画書)にショートステイ利用が明記されている
  • ショートステイとの利用契約や事前予約が済んでいる
  • 介護保険給付の対象となるのは連続30日まで*7
  • 累積の利用日数は要介護認定有効期間の半分の日数を超えないようにする*12

まず介護保険サービス共通の大前提として、ケアプランに利用するサービスが記載されている必要があります。利用開始の前には契約と利用の予約が必要です。ただしショートステイ利用の事前予約は、通常2〜3ヶ月前から受け付けている事業所が多いので、希望日が具体的に決まっている場合は、1日でも早く担当のケアマネジャーさんに相談しましょう。

介護施設での職員と利用者

なお、ショートステイの利用日数には「連続利用は30日まで」「累積日数は要介護認定の有効期間の半数程度まで」と言う一定の制限があります。しかし連続利用の31日目を全額自己負担とすることで連続日数がリセットされますし、累積日数についても要件を満たせば半数を超えて利用することが可能です。さらに、介護者の事情や病気によって緊急性が高いと判断されれば、空きがあればすぐにでも利用できます。詳しくは、担当のケアマネジャーさんに確認してみるとよいでしょう。

こんな例もあるので紹介します。

ご家族
ご家族

私が入院している間、誰も母を見ることができないのでショートステイを利用しました。30日を超える連泊になってしまったので、一日を介護保険を使わない自費ショートステイの扱いにしてもらいました。自費の一日分は介護保険が使えない分、高くつきますが、それでもずっと見ていただける安心には代えがたいので、お願いしてよかったと思います。

ご家族
ご家族

家で介護をすることができなかったのでショートステイを利用しています。ずっと連泊をしていたかったのですが、ショートステイの部屋に空きがなかったために3日間だけ近くのデイサービスのお泊りサービスを利用しました。雰囲気がよく、スタッフもやさしかったようで、本人も喜んでいたみたいです。またショートステイに戻って連泊をしています。はやく入所先が決まればいいんですけれど。

最後に、ショート利用時の注意点をご紹介します。

  • 利用中に体調が悪化した場合や、事業所内で感染症が発生した場合は利用中断を求められる場合があります。事業所からの電話に対応できるようにしておきましょう。
  • 利用中に急変した場合の対応方針は事業所ごとに異なります。トラブルにならないよう、必ず事前に対応方針を確認してください。
  • 緊急連絡先として、複数人の連絡先を求められる場合もあります。メインで介護している方以外にも近しい人に協力を仰いでおきましょう。

3. 「ロングショートステイ」の実態

3-1.ロングショートステイとは

ロングショートステイとは?
介護者不在など中長期の入所や長期入所の空きベッド待ちなどに活用

ショートステイの利用のひとつに、「ロングショート」と言う考え方があります。これはショートステイを長期利用することを指し、一般的に「31日以上連続してショートステイを利用すること」を言います。「ロング(長い)」と「ショート(短い)」で全く相反する言葉で、一般的に聞き馴染みのない言葉ですが、業界内ではよくつかわれる造語となっています。他にも「ミドルステイ」いう場合もあります。

宿泊サービスでの夜間のケア

実際のところ、ショートステイ事業所のうちロングショートを受け入れている事業所は59.9%ある*2とされています。全ての事業所でロングショートの受け入れに対応しているわけではありませんが、なかには利用者のうち半分以上が長期利用枠になっている事業所*2もあり、一定のニーズがあることが分かります。ロングショートを利用する理由は、ほとんどが自宅で過ごすことが困難となった方が特養への入所が決まるまでほかの施設で過ごしてもらう、いわゆる「特養空き待ち」であることも明らかになっています*2

ロングショートの利用については、保険者である市区町村ごとに考え方が異なります。また、事業所の受入可否についても他利用者の受入状況や経営方針によっても対応方針が違います。また、ロングショートではなく、ほかの介護施設に入所した方が安心して過ごせる場合もあります

3-2.ロングショートステイのメリット

ロングショートステイのメリットは長い期間慣れた場所で滞在できることです。職員との関係性・コミュニケーションも深くなり、居心地の良さを感じることができます。相手の言わんとしていることもわかるようになりますし、長期入所に近い感覚で接することができます。

入所期間が長くなると、実際に長期入所した後の生活イメージもより具体的になり、施設入所への抵抗感が少なくなることが多いです。また、長期入所で受け入れる施設側としても、ショートステイの期間が長ければ、ケアに関する注意点もショートステイスタッフと共有することができ、安心して受け入れることができます。

3-3.ロングショートステイのデメリット

ロングショートステイにはデメリットもあります。

入所期間が長くなり、長期入所とは異なり長期的な計画に基づいたケアが行われません。ショートステイは特別養護老人ホーム長期入所やデイサービスと異なり、イベントやプログラムが少ないため、日中活動の質や量が乏しくなりやすいです。身体を動かす機会が少なく、ロングショート利用中に身体機能が悪化するというケースも少なくありません。

また、ショートステイには連続利用日数の制限があり、連続30日を超える利用は原則できないルールとなっています。かといって、ロングショート利用中の利用者が、みな自宅に帰ることができる状況であるとは限りません。そこで、この連続日数超過対策として、連続31日目の利用日は介護保険を使わず、全額自費利用の扱いとする場合が多いです。これにより、連続32日目からまた介護保険適用として30日分の連続利用ができるというものです。

3-4.ロングショートステイ利用者の声

ロングショートに至る経緯は様々ありますが、ロングショートを利用した利用者のご家族・ケアマネからいただいた声を紹介します。

ケアマネ
ケアマネ

大腿骨を骨折して入院。介護老人保健施設でリハビリしても在宅に復帰は難しいという状況でした。家族と相談し、入所できる特別養護老人ホームを探しました。受け入れが可能という施設から返事をいただきました。ただ、長期入所の枠自体は埋まっているから、長期入所の枠があくまではショートステイ(ロングショート)扱いで、長期の枠が空いたらそのまま長期入所という条件でご本人・ご家族と相談の上、その特別養護老人ホームにお世話になる事になりました。ロングショートの間も丁寧に対応していただき、ご本人も穏やかに過ごすことができたようです。

利用者家族
利用者家族

私が大きな病気で入院することになり、ショートステイを利用しました。手術後退院したらまた自宅で介護をする予定でした。でも私自身の体調が戻らず、再入院。在宅介護どころか一緒に暮らすことが難しいという状況になり、ケアマネさんに相談しました。今受けてもらっているショートステイ先の特別養護老人ホームでたまたまショートステイの予約が空いたそうで、しばらく連泊させていただくことになりました。本人も今の環境が気に入っているみたいで、ロングショートステイからそのまま長期入所できるようにケアマネさんに手続きしてもらうことになりました。

以上の体験談のように、ロングショートを利用するのは理由として様々です。長期入所を前提としない場合もあります。中・長期間のショートステイ利用を希望する場合、まずは担当のケアマネジャーにご相談ください。ケアマネジャーがいない場合は、最寄りの地域包括支援センターや市町村窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。

2024年の制度改定によりショートステイ利用が長期化する場合の減算適用が拡大されました。こちらに情報をまとめています。

4. ショートステイの費用

4-1. 料金は3つに分けられる

ショートステイを利用した際に請求される利用料金は、大きく分けると以下の3つの費用の合算になります。

  • 介護保険サービスの基本料金
  • 介護保険サービスの各種加算料金
  • 介護保険給付対象外の自己負担料金

介護保険サービスの基本料金は、ショートステイ(短期入所生活介護)よりも療養ショートステイ(短期入所療養介護)の方が高い傾向があります。また、介護度が重度であればあるほど1日あたりの料金も高く、居室タイプによっても料金プランが異なります。

介護保険サービスの各種加算は「送迎加算」「個別機能訓練加算」など基本サービスに上乗せして支援を実施した場合の加算や、「サービス提供体制強化加算」「看護体制加算」「介護職員処遇改善加算」など体制の強化や人材確保に対する加算があります。

また、ショートステイ利用時に発生する自己負担料金には以下のようなものがあります。

  • 食費
  • 滞在費
  • 31日目の介護保険サービス全額自己負担料金(ロングショート利用中の場合)
  • 娯楽費
  • 冷房・暖房費
  • 洗濯費
  • タオル代
  • 衛生用品代

料金の詳細は事業所ごとに異なり、「重要事項説明書」に記載されています。必ず書類に目を通し、不明な点は事業所の担当者に確認するようにしましょう。不安な場合は、可能なかぎりケアマネジャーに立ち会ってもらうことをおすすめします。ケアマネジャーからも契約に立ち会ってもらうと代わりに質問してくれたり、説明内容を補足してもらえたりするからです。

4-2. 短期入所生活介護のサービス基本料金の目安

ショートステイ(短期入所生活介護)の料金は、「単独型か特養併設型か」「居室タイプ」*13「要介護度」「地域区分」*13「利用者の自己負担割合」などの要素によって異なります。ここでは、現在主流である特養併設型の料金をご紹介します。

(特養併設型ショートステイのサービス基本料金)*4

要介護度従来型多床室従来型個室ユニット型個室ユニット型個室的多床室
要支援1451円/日529円/日
要支援2561円/日656円/日
要介護1603円/日704円/日
要介護2672円/日772円/日
要介護3745円/日847円/日
要介護4815円/日918円/日
要介護5884円/日987円/日

※1単位=10円、自己負担割合1割の場合

一日あたりの基本料金は、このように居室のタイプごとに料金プランが設定されていて、要介護度によって料金が変わります。実際の介護サービス費は、この基本料金に各種加算が加わることを覚えておきましょう。

4-3. 短期入所療養介護のサービス基本料金の目安

療養ショート(短期入所療養介護)サービス基本料金の傾向は、ショートステイと同様で、「居室タイプ」・「要介護度」・「地域区分」「利用者の自己負担割合」の組み合わせによって料金が変わります。療養ショートの場合は各種医療機関に併設されており、単独型はありません。運営主体の種類によって料金設定が異なる点が特徴です。さらに、そのなかでも「基本型」「在宅強化型」「療養型」などの細かい区分があります。

ここでは、一例として最も事業所数が多い介護老人保健施設(老健)に併設されている療養ショート「基本型」の料金をご紹介します。

(介護老人保健施設併設型療養ショートのサービス基本料金)*4

要介護度従来型多床室従来型個室ユニット型個室ユニット型個室的多床室
要支援1610円/日577円/日621円/日
要支援2768円/日721円/日782円/日
要介護1830円/日753円/日836円/日
要介護2880円/日801円/日883円/日
要介護3944円/日864円/日948円/日
要介護4997円/日918円/日1,003円/日
要介護51,052円/日971円/日1,056円/日

※1単位=10円、自己負担割合1割の場合

ショートステイの場合は従来型多床室と個室は同じ料金でしたが、療養ショートの場合は異なっており、多床室の方が高いところが異なっています。また、全体的に療養ショートの方が高めです。特に療養ショートは施設の種類が多く、事業所によって設定されている料金体系が大きく異なります。詳しくは、施設選びの際にケアマネジャーに確認するようにしましょう。

長期利用のショートステイ(ロングステイ)は料金が安くなる?

ショートステイの長期利用を制限するために、2024年4月からは長期利用時の介護報酬を引き下げる改定が行われています。連続利用31日目からは1日30単位の減算となります。61日目以降はさらに減額し、特別養護老人ホームの長期入所同等の単位数に変更されました。

料金が安くなる、と喜んでばかりもいられません。長期利用を受け容れていた施設側としては、長期利用の利用者が多くなれば収益が悪くなります。短期利用の利用者を中心に回転率を高くする方が収益がよくなるのであれば、長期利用の受け入れを制限することも考えられます。地域の状況にもよりますが、ショートステイ側の事情も考えると、長期利用は利用しにくくなる可能性が高くなります。

5. 利用できる費用助成

ショートステイは介護サービス費以外に食費・滞在費がかかるため、どうしても利用料金が高くなってしまいます。そこで活用したいのが、公的支援による費用助成制度です。ショートステイや療養ショートの利用で活用できる助成制度は、以下の3つです。

  • 特定入所者介護サービス費*6

おもに生活保護受給者や住民税非課税世帯を対象に、ショートステイ利用時に発生する食費・滞在費の一部を減免する制度です。受給するためには、所定の要件を満たしている必要があります。

  • 高額介護サービス費*6

所得に応じて段階別に区分し、月々の介護サービス利用料が区分ごとの上限額を超えた場合に差額が市区町村から返金される制度です。こちらの制度では、食費・滞在費を含まない介護保険サービスの自己負担額が計算対象となります。

  • 社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担軽減制度

おもに住民税非課税世帯を対象に、制度の対象となる社会福祉法人などが実施する介護保険サービスを利用した場合に利用料の1/4を減免する制度です。食費・滞在費も減免の対象になります。

ここで紹介した助成制度は全て市区町村が窓口になっています。仮に要件を満たしていても、申請をしないとこれらの助成制度は適用されません。特に非課税世帯の方は対象になる可能性があるので、まずは担当のケアマネジャーに相談するか、直接各市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせるようにしましょう。

6. ショートステイ選びのポイント8選

6-1. 医療ケアが必要かどうか

看護師

継続的・専門的な医療ケアやリハビリテーションが必要な場合は、療養ショート(短期入所療養介護)を利用しましょう。

療養ショートは医療機関に併設されているショートステイなので、医療ケアやリハビリが得意です。一方でショートステイ(短期入所生活介護)は、おもに病状が安定している方が対象になります。そのため体調が不安定な場合や急変の可能性が高い場合の方は利用が難しいか、体調が悪化した時点で帰宅を求められる場合が多いです。

体調が安定している方はショートステイ(短期入所生活介護)を、体調が不安定な方や継続的な医療ケアが必要な方は療養ショート(短期入所療養介護)がおすすめです。

6-2. 併設型か単独型か

併設型と単独型にもそれぞれメリット・デメリットがあります。最終的に特養入所を希望している方は特養併設型が、特養入所よりも予約の取りやすさを重視する方は単独型がおすすめです。

特養入所希望者が併設しているショートステイを利用している場合、早く入所できる可能性があります。ショートステイと同じ施設に特養の入所相談を担当している職員も在籍しているため、自然と利用者の心身状況や生活環境の情報鮮度が高くなり、入居優先順位に反映させやすくなるからです。一方、単独型は独自に人員を確保している関係で利用定員が多い傾向があり、併設型と比較すると予約が取りやすい点がメリットです。

以上のことから、在宅介護の継続に不安があって特養入所を検討している方は併設型を、予約の取りやすさを重視する場合は単独型の事業所を選びましょう。

6-3. 送迎に対応しているか

送迎の介護職員

ショートステイはデイサービスのように自宅と施設間の送り迎えに対応しています。しかしショートステイの場合は「送迎加算」と言うオプションサービスの扱いなので、事業所の対応によっては送迎な地域に制限を設けている場合があります*4

たとえば、「事業所から離れているので迎えに行けない。家族送迎なら利用可能」といった場合や、「迎えの時間や帰宅してくる時間が早すぎて生活リズムと合わない(家族が対応しきれない)」などの問題が生じ、サービス利用の支障になる可能性があります。

そのため、事業所を選ぶときは送迎の対象範囲内か・送り迎えの予定時間に問題がないかをあらかじめ確認しておきましょう。

6-4. 認知症の方の場合は、認知症対応実績のある施設を選ぶ

認知症の診断を受けていて普段から対応に困る言動がある方の場合は、認知症対応に優れた事業所を選ぶようにしましょう。

ショートステイを利用している間は、一時的に集団生活となります。認知症による徘徊や帰宅願望・他者への迷惑行為がある場合、認知症対応に不慣れな施設の場合は対応しきれずに利用を拒否される場合があるからです。

認知症対応が苦手な施設・得意な施設はケアマネジャーが情報を持っています。特に認知症がある方の場合は、ケアマネジャーから安心して預けられる事業所を紹介してもらいましょう。

6-5. 環境の変化による混乱を防ぐためになるべく同じ場所にお願いする

施設での食事

環境の変化が苦手な方の場合、利用する事業所を限定して毎回なるべく同じ部屋を使わせてもらえるようにお願いしましょう。

なぜなら、特に認知症の方は環境の変化に弱いからです。慣れないところだと安心して眠れないどころか「知らないところに連れてこられた」と不安になり、混乱して徘徊行為・徘徊・帰宅願望・被害妄想・暴力行為などの原因となってしまいます。

慣れない場所で不安になることを防ぐため、混乱する可能性がある方の場合は利用する事業所を一ヶ所に絞り、滞在する部屋も極力同じ部屋を使わせてもらうようにお願いすることがおすすめです。

また、普段から同じ施設内にあるデイサービスを利用していると、ショートステイに来た時もいつもデイサービスに来る時と同じ施設内なので安心して利用ができるなどのメリットがあります。

6-6. 予約が取りやすく、本人の負担が比較的軽い1〜2泊から始める

初めてショートステイを利用するときは、1泊2日から利用することがおすすめです。

理由は2つあります。1つめの理由は本人の精神的負担を抑え、利用になれてもらうことです。誰でも不慣れな場所ではなかなか寝付けないもの。まずは短期間の利用から始め、徐々に慣れてもらうようにするとよいでしょう。

2つめの理由は、ショートステイの予約システムです。通常、ショートステイはどの事業所も希望日の2〜3ヶ月前から予約を受け付けているため、まとまった予約は中々取りづらいです。しかし最も短期間である1泊2日であれば予約できる可能性が高まります。

まずは利用開始の段階で埋まっている3ヶ月先までは1泊2日で空いている日を予約し、利用に慣れましょう。すると、ちょうど2〜3ヶ月経って慣れてきたころに「来月からは希望する日にちで予約できるようになる」タイミングが訪れます。

6-7. 状況に応じて小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護の利用を検討する

複数の介護サービス事業所を併用している場合、本人が混乱してしまったり、必要なときにショートステイの予約ができずに困ったりする方もいるでしょう。そんなときは、思い切って「小規模多機能型居宅介護」や「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」に切り替える方法もあります。

この2つサービスは、どちらも「地域密着型サービス」に分類される施設で、以下の機能を合わせ持つ点が特徴です。

  • 「通い」としてのデイサービス機能
  • 「訪問」としてのホームヘルパー機能
  • 「宿泊」としてのショートステイ機能
  • ケアマネの機能
  • 訪問看護の機能(看護小規模多機能の場合)

ひとつの小規模な事業所で複数のサービスを利用できるので、デイサービスで受け入れる職員も、自宅にヘルパーとして来る職員も同じ顔ぶれですし、何よりもデイサービスで通いなれた施設にショートステイをすることができるので安心です。また、通常はあらかじめ予定された内容の介護保険サービスしか利用できないのに対し、この2つのサービスの場合は臨機応変に支援内容を変更することも可能です。

ただし、「小規模多機能型居宅介護」と「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」は定額制なので利用回数が少なくとも同じ料金がかかること、一度登録すると併用できる介護保険サービスがかなり限定されてしまうこと、担当のケアマネジャーが自動的に変わってしまうことなどのデメリットもあります。詳しくは以下のの記事をご参照ください。

ショートステイの利用がうまくいかないと感じたときは、担当のケアマネジャーと相談しながら、どちらを利用するといいのかを検討することがおすすめです。

6-8. なるべく事前に見学に行き、施設の雰囲気を把握する

費用の相談

ショートステイの事業所を選ぶときは、なるべく事前に見学に行くことがおすすめです。日帰りのデイサービスと違い、ショートステイは宿泊を伴う性質上、体験利用が難しくなっているからです。

見学の際は、できれば利用する本人も一緒に訪問しましょう。見学する時間としては、昼食の時間がおすすめです。どのようなメニューが提供されているのかをチェックできますし、職員がどのように利用者の介助を行っているか・人員は足りているかの確認がしやすい時間帯だからです。

事前の心構えができていれば、初回利用のときも安心です。利用開始の前に施設全体の雰囲気を把握するためにも見学を行い、利用者の様子や職員の立ち振る舞い・施設の雰囲気などを確認しておくことが重要です。

ショートステイを利用することが決まったら準備も。初めてショートステイを利用する人はこちらの記事を参照していただけると、ショートステイの準備、ポイントがわかります。

施設選びに迷うときには施設選びの専門家に相談することもひとつの方法です。プロのコンシェルジュに相談できる無料サービスを利用することも検討しましょう。

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参考文献

*1.厚生労働省 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第120条、第123条、第141条、第143条

*2.第180回 社会保障審議会資料 資料4 P29、31、35

*3.第180回 社会保障審議会資料 資料5 P1

*4.厚生労働省 介護報酬の算定構造 P介護9~14、予防5~13

*5.厚生労働省 指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針について 第1の2

*6.厚生労働省 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料

*7.指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 8の注17、9の注15、10のハおよび注3

*8.厚生労働大臣が定める施設基準 22のイ~ホ、31のハ~二、35

*9.指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準 5のロおよび注1、6のロおよび注2

*10.厚生労働省 介護サービス情報公表システム 13. 小規模多機能型居宅介護

*11.厚生労働省 介護サービス情報公表システム 14. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

*12.指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第13条の21

*13.第194回社会保障審議会 資料10 P4、14

*14.厚生労働省 低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減制度事業

この記事を監修したのは

河北 美紀

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
2013年介護事業を運営する株式会社アテンド代表取締役就任。
8年間父の介護をした経験と、江戸川区介護認定審査会委員を務めた経験をもとに介護保険外サービス『冠婚葬祭付き添いサービス』を拡大。
母体のデイサービスは、2017年株式会社ツクイ(東証一部上場企業)主催の介護コンテスト横浜会場にて最優秀賞受賞。メディア実績は、厚生労働省老健事業「サービス活用販促ガイド」、週刊ダイアモンド、シルバー新報、東京都「キャリアトライアル65」、経済界など複数。


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