福祉用具選択制の疑問を徹底解説!固定用スロープ・歩行器・多点杖・単点杖は購入対象商品になるの!?(3/16付Q&A情報追加)

どうなる福祉用具選択制。レンタル・購入の分かれ道 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

介護保険での福祉用具利用は原則レンタル」という常識は過去の話になるかもしれません。2024年の介護保険制度改定を機に、特定の種類の福祉用具を、レンタルにするか・購入にするか、利用者が選択できるようになります

選択できるようになったんだから、利用者の選択ができて、利便性が上がっていいことじゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、とんでもない。多くの関係者が頭を悩ませる事態となっています。

福祉用具選択制について、これまでの経緯をまとめ、今後の展望も含めて解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 福祉用具専門相談員や福祉用具の卸及びメーカーのみなさん
  • ケアマネジャーのみなさん
  • 現在対象となる福祉用具をレンタルしている利用者さんとそのご家族

【この記事で解説していること】

  • 福祉用具レンタル・購入選択制が生まれる経緯と概要について
  • 選択制に該当する福祉用具の種類
  • 選択制導入に関する疑問について
  • 医療職に確認不要で固定用スロープを介護保険で使う方法
  • 財務省の本当の狙いは「手すり」

福祉用具選択制が生まれた経緯

まずは福祉用具選択制とはそもそも何か、なぜ生まれたのか解説します。もしこれまでの厚生労働省の審議などをチェックしているため、十分理解ができている方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。

財政制度審議会における財務省の提言

話は令和2年11月まで遡ります。

財務省の財政制度等審議会で以下のような指摘がありました。

  • 福祉用具貸与について、借りるより買う方が安いのに、借りるのは奇妙なこと。今回説明のあったような制度設計の失敗が今の費用の増加を招いているのではないか(*1)。
財政制度分科会(令和2年11月2日開催)福祉用具の在り方の見直し

財務省が制度設計の失敗と断定している内容について説明します。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成するケアプランのうち、6.1%は介護保険給付が福祉用具レンタルのみのケアプランであり、内訳としては歩行補助つえ・歩行器・手すり等の廉価な福祉用具のみのプランが7割を占めている。

歩行補助つえを利用する高齢者

例えば、歩行補助つえ1本のレンタルにかかる費用は月1,500円(1割負担であれば150円)であっても、ケアマネジャーのケアプランにかかる費用は月10,000円かかる。3年間レンタルの利用を続けた場合、福祉用具にかかる費用は48,600円に対してケアマネジャーのケアマネジメントにかかる費用は360,000円となる。購入すれば1万円で購入できるものにこれだけの費用が掛かっている。

このような財務省から指摘でした。

これが自立支援を目標としたケアマネジメントの本質を完全に無視した主張であることは介護現場に携わる人であれば誰の目にも明らかです。
福祉用具レンタルの給付管理やサービス内容を管理するだけの立場としてケアマネを見ていることや、一連のケアマネジメントプロセスは福祉用具だけだろうと変わらないこと、介護保険給付は福祉用具だけでも医療保険やインフォーマルサービスも含めたケアマネジメントを行っていること、末期がんターミナルケアの場合にも医療保険サービスが中心になり福祉用具のみのケアプランも多いことなど、財務省の主張は論点の矛盾を挙げればきりがありません。

福祉用具のメンテナンスや選定にかかるコストなども考えていない時点でかなりの暴論なのですが、これをきっかけに福祉用具やケアマネジメントの給付適正化・在り方を見直すための検討会が厚生労働省で行われることとなりました。

それが介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会です。

つまり、発端は財務省による給付抑制のための提言だということです。

平成26年にも福祉用具のみケアプランの削減案が

実は福祉用具のみのケアプランの報酬を削減すべきという提言が行われたのはこれが最初ではありません。

平成26年11月の介護給付費分科会でもこのような意見が上がっていました(*2)。

福祉用具のみのケアプランは業務負担が少なく、ケアマネジメントの報酬を減額すべきだという意見でした。

この案に対しては、福祉用具のみでも一定のケアマネジメントプロセスが発生することや、減額されないために不必要なサービス利用が発生してしまうのではないかとの懸念もあり却下されています。

そして、今度は財務省から「廉価な福祉用具をレンタルの対象から外すべき」という提言として飛び出してきた経緯になります。

介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会

あり方検討会のメンバーには日本介護支援専門員協会の副会長や、多数の居宅介護支援事業所を運営している会社の代表も参加。福祉用具に関しても、日本福祉用具供給協会テクノエイド協会など多くの団体から出席しています。

あり方検討会では、今回皆様にお伝えしている給付の適正化に関する内容だけでなく、事故防止や福祉用具専門相談員の養成カリキュラムなども議題に上がっていますので、もし興味のある方は議事録などもご参照ください。

介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会

第一回のあり方検討会が開催されたのが令和4年2月17日。令和5年10月30日開催まで9回の検討会が開催されました。

令和4年7月に行われた第三回のあり方検討会では日本介護支援専門員協会による調査結果をもとにした反論も行われました。財務省が示した歩行補助つえのみレンタルしているケースは全体の1.2%しか存在しないことを根拠に、モデルとして不適切であることを示しています(*3)。

この反論でこの議論は沈静化としたかと思いきや、新たな提案があり方検討会で行われました。それが福祉用具のレンタル・購入選択制です。

福祉用具のレンタル・購入選択制について

福祉用具のレンタル・購入選択制とは

福祉用具選択制について該当品目

第五回のあり方検討会で「貸与と購入の選択制」という案が浮上しました(*4)。これまでの購入への切り替えではなく、選択制にトーンダウンした形になります。

これは、対象となる福祉用具の利用に関しては、利用者が特定福祉用具として購入するか、レンタルを行うか、どちらかを選択するという仕組みが考案されました。

高齢者支援課福祉用具・住宅改修指導官:

まず、1点目は「貸与・販売の選択を可能とすることに対する考え方」でございます。まず、自立支援、自己決定権等の目的、背景をお示しし、次に選択制を可能とする場合の貸与・販売の考え方について。貸与の際に行われている介護支援専門員や福祉用具専門相談員によるモニタリングやメンテナンスについては、販売を選択した場合であっても、貸与の場合と同様に当該用具の試用期間において実施すべきではないか。(*5)

福祉用具選択制のポイントは以下の4点です。

  • 貸与対象商品だが、特定福祉用具としての購入も選択できるようにする
  • 対象商品は廉価である程度中長期の利用が実態上見受けられる福祉用具に限る
  • 販売を選択した場合でも利用状況をモニタリングできる仕組みを作る
  • 本人の状態に即した最も適切な用具の給付するため、主治医やリハビリ専門職等が専門的な視点も含めた仕組みが必要

これまで介護保険上の福祉用具は「原則レンタル」というルールに基づいていました。これは、本人の状態変化などに応じて適切な商品を選定することや、安全な利用ができるようモニタリング・メンテナンスを行うことが必要になるためです。ただし、直接肌に触れるものなど、衛生上の問題から貸与に適さない商品のみが特定福祉用具として購入の対象となっていました。福祉用具に関するまとめはこちらをご確認ください。

第7回のあり方検討会では「廉価である程度中長期の利用が実態上見受けられる」条件に該当している品目を絞り込み、固定式スロープ・歩行器(歩行車を除く)・多点杖・単点杖の4種類に限定することとなりました(*6)。対象となる種目については後ほど詳しく紹介します。

医師やリハビリテーション専門職等の医療職の意見が必要

第9回のあり方検討会では、選択制の対象者の判断プロセスとして、以下のような文言が加わっています(*7)。

○選択制の対象となる福祉用具を利用する場合は、利用者等の意思決定に基づき、貸与又は販売を選択することができることとする。

○貸与と販売の選択について検討を行う際は、医師やリハビリテーション専門職等の医療職を含めた多職種の意見を反映させるためにサービス担当者会議等を活用することとするほか、介護支援専門員が各専門職への「照会」により意見を聴く方法も可能とする。

○介護支援専門員又は福祉用具専門相談員は、取得可能な医学的所見等に基づきサービス担当者会議等で得られた判断を踏まえ、利用者等に対し、貸与又は販売に関する提案を行う。

貸与か販売かの選択を行う際には、医師やリハビリテーション専門職等の医療職を含めた多職種の意見を反映するために、サービス担当者会議を開催するか、医療職の意見を確認するために照会をしなければいけないとされています。

レンタルと購入の選択制にすることで自立支援、利用者自身の選択とか言っておりますが、結局医療職の判断が優先されてしまうというのがとても腑に落ちない部分なのですが。

簡単にフローにするとこうなります。

利用者
利用者

家の中を車いすで移動しているけれど、寝室の入り口に段差があって寝室に入れない。スロープがあれば上がれるので、スロープを借りることはできないですか?介護保険伝えると思うのですが。

ケアマネ
ケアマネ

あ、はい。でも、介護保険ではスロープをレンタルするにも購入するにも「医療職の意見」が必要なんです。主治医に確認しないといけないんです。

利用者
利用者

医者・・・。主治医は総合病院の先生だけど。家には来たことがないから段差がどんなものかわからないし、家で使っている車いすは外用の車椅子と違うから見たこともないし、病院では段差もないから段差を上がる動作も見たことない。なのに先生の意見って何を聞くんでしょうか?

ケアマネ
ケアマネ

そうなんですけど、決まりなので。担当の先生は非常勤で水曜日しか病院に来ないんですよね。来週水曜日に先生に相談します。

--------------

ケアマネ
ケアマネ

○○さん担当のケアマネです。先生、○○さんがスロープを借りたいんですけれど、購入とレンタルどちらが適切か、先生の意見を伺わなければいけないので電話させていただきました。レンタルが適切だと思うのですが、いかがでしょうか。

医師
医師

え?何それ?そんなことも決められないのになんでケアマネやってるの?こっちだって忙しいのにそんなことで電話してこないでよ! ガチャン

--------------

ケアマネ
ケアマネ

すいません。先生から意見を頂けなかったので、介護保険は使えません。実費で購入してもらえますか?

利用者
利用者

スロープを使いたいだけなのに・・・。どうしよう。これから廊下に出るときにも誰かを呼ばなきゃいけないのか。

冗談のようで本当に起こりうる未来です。ちょっと想像すればどれだけ多くの人に影響があるか、現場にいる人には誰でもわかります。医療者側としたら、介護の領域にも関わらず無理やり医療に責任を負わせ、医師の業務負担を増やそうとしているようにしか見えないでしょう。

厚生労働省は医療と介護の連携を主張していますが、結果的に医療と介護の分断を深めるだけになるでしょう。

いえケア編集部
いえケア編集部

主治医の意見書にレンタル利用が必要な福祉用具としてチェックできるような欄でも作ってもらえたら確認することができるのですが。どうにかできないでしょうかね。いや、利用してはいけない福祉用具・推奨しない福祉用具の欄を作ってもらって、ノーチェックだったらレンタル利用していいことにでもしてもらえないですかね(願望)。

後ほど紹介しますがQ&Aでは、

追加で医師に照会することが望ましいが、主治医意見書や診療情報提供書、アセスメント等の情報から利用者の心身の状況を適切に把握した上で、貸与・販売の選択に必要な情報が得られているのであれば、必ずしも追加の照会は要しない。

と記載があります。ただ、「貸与・販売の選択に必要な情報」とは何か、記録に記載するとしたら何を残したらいいのか。このあたりは明確になっていない状況です。

選択制の対象となる福祉用具について

廉価である程度中長期の利用が実態上見受けられる福祉用具が選択制の対象となりました。どんな福祉用具が今回の選択制の対象になるか、品名も含めて具体的に紹介します。

固定用スロープ

介護保険でレンタルできるスロープは大きく分けて二種類。固定用スロープと、携帯用スロープです。

固定用スロープはその場に設置して常時置いておくタイプのもので、室内の段差を車いすで上り下りする際に使われます。具体的な商品で挙げると以下のようなものが該当します。

【ダイヤスロープ(シンエイテクノ)】

【木製段差解消スロープ(マツ六)】

床に置いている状態ですが、滑り止め加工などでずれないタイプです。

これに対して携帯用スロープは取り外しができる屋外用や折りたたみ式のものなどが該当します。携帯用スロープに関しては今回の対象から除外されています。

歩行器

歩行器というと、車輪がついたシルバーカータイプのものを連想する方が多いと思います。ここで言う歩行器は固定式のタイプで、車輪の付いた「歩行車」は対象外となります。具体的には以下のような商品が対象となります。

【アルコー10型(星光医療器製作所)】

【セーフティーアーム交互式(株式会社イーストアイ)】

ピックアップと呼ばれる脚が4本の固定している歩行器や、交互式といって左右2本ずつの脚を交互に前進させる歩行器などが今回の対象となります。

ゴムキャップがすり減ったり、高さの調整などのメンテナンスが必要になる場面はありますが、シルバーカータイプ(歩行車)と比べると室内で使うことが多く、タイヤのように異音がしたり、回りが悪くなるというトラブルはありません。

多点杖

多点杖は歩行補助つえの中で、杖の先が複数に分かれているタイプのものです。いわゆる4点杖などがそれにあたります。

【テイコブアルミ製四点杖(幸和製作所)】

【ヒューゴステッキオフセット多点杖(株式会社竹虎)】

ベースが広いタイプは一般的に凹凸や斜面の少ない屋内で使われます。屋外ではベースの小さいタイプが使われることが多いです。ベースの小さいタイプのものでは、杖先が可動するタイプも多く、斜面などでもしっかり地面をグリップしてくれるため、屋外でも使われることが多いです。

単点杖

単点杖ってなかなか聞きなれない言葉ですが、今回対象になったのは肘支持型の歩行補助つえ。代表的なものでいうとロフストランドクラッチと呼ばれるものです。

ロフストランドクラッチの他にも、カナディアンクラッチといった呼び方もありますが、いずれにしても肘で支えるタイプのものです。エルボークラッチという、握り部の付いた腕支え(ベース)があるタイプも対象です。
腋窩(脇)で支持する松葉づえも介護保険の対象商品ですが、こちらは選択制の対象外となりました。

紹介した4種類の福祉用具が今回の選択制の対象となり、レンタルか購入かを選択することができます。ただ、レンタルと購入のどちらを選ぶにしても医療職の意見が必要ということには変わりありません。

医療職の判断を必要とする福祉用具かと言われると疑問ですが、今回の選択制に該当する福祉用具に関しては医療職の確認というひとつのハードルができた、と言えます。

今回の制度改定、福祉用具専門相談員にとっても非常に大きな悩みの種となっています。

選択制導入に関しての疑問

不安に感じることも多いと思われますが、現在公表されている段階で、厚生労働省の資料をベースに選択制の疑問を整理していきます

レンタルを選択した場合は今まで通り使えるの?

利用者が選択した結果、レンタルを希望した場合は今まで通りの利用ができますか?

・貸与後のモニタリングのあり方

○選択制の対象となる福祉用具を貸与した場合、福祉用具専門相談員は、
福祉用具専門相談員のモニタリングの実施時期の実態や分岐月数を踏まえ、利用開始後少なくとも「6ヶ月以内に一度」モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討を行うこととする。

上記の記述通り、できれば販売に切り替えてほしいのが財務省・厚生労働省の狙いのようです。なので、6か月に一度はモニタリングをし、貸与を継続するか購入に切り替えるかを確認してほしい、となっています。

なお、厚生労働省が算出した平均的利用月数などを提示した上で、長期利用であれば購入した方がお得ですよ、という説明をしなければいけないというルールになっています。

ただし、修理や交換などに関しては本人と福祉用具事業所との間の個別契約となります。

販売後のメンテナンス等にかかる費用の取扱いについては、利用者と事業所の個別契約に基づき、決定されるものと考えている。

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

もし故障もなく、何のメンテナンスも必要なく利用し続けることができれば購入にした方が得なのかもしれませんが、メンテナンスが必要な場合は完全に実費負担となることが想定されます。購入した方がメンテナンスの費用によるコストがかかるとなると、やはりレンタルの方が割安というケースが多いのではないでしょうか。

特定福祉用具は同一品目を複数購入できないが?

特定福祉用具は同一品目の購入ができないはず。でも、段差がいくつもあって固定用スロープを複数個所利用する場合もあるが、複数購入することはできないのか?レンタルにしないとできないのか?

○「固定用スロープ」等については、複数個の使用が必要とされる場合があるため、購入される場合には必要に応じて複数個支給を認めるよう、国から自治体に対して周知を行うこととする。また福祉用具専門相談員に対しても、必要性について十分に検討することを求めることとする。

固定用スロープに関しては複数でも購入ができるようになるそうです。固定用スロープの場合の説明が掲載されていましたが、ロフストランドクラッチを両側で使う場合などもおそらくこの考えが適用されるのではないかと思います。

特定福祉用具の購入枠10万円はそのままですか?

特定福祉用具の年間の購入限度枠は10万円ですが、それとは別枠で購入ができますか?10万円の枠は10万円のままでやりくりしなきゃいけないんですか?

〇 特定福祉用具販売における同一年度の支給基準限度額については、選択制導入による限度額への影響や限度額を超過する利用者の傾向等について、選択制導入後に実態を把握し、その結果を踏まえ、今後検討を行うこととする。

とりあえず制度導入時点では現行制度の10万円の限度額そのままでスタートしそうです。限度額いっぱいまで使うケースは少ないからという根拠を提示していましたが、必要な時期が重なるので、10万円の限度額の上限に達してしまうケースも増えると思われます。

医師が許可しなかった場合は?

医療職の見解を確認するのはわかったのですが、もし主治医が「必要ない」という場合は購入もレンタルもできないということでしょうか?そもそも主治医が購入とレンタルのメリットデメリットを把握していると思えないのですが。

・・・!?

今回のとりまとめでは医療職の範囲を定めていません

医療職は医師だけに限らず、看護師や理学療法士なども含めるのであればそういった医療職に相談することができるのかもしれません。医療系サービスを使っていればそういった医療職でカバーできるのであれば安心ですね。身近な医療職で、デイサービスの看護師や地域包括支援センターの保健師などが対象になるのか。詳細は正式なQ&Aが発出されるまではわかりません。

そもそも医療職が判断できるという前提で制度設計されているので、「ダメ」と言われた場合は想定していないように思います(何のための確認なのか?)。

2024年3月16日追記
厚生労働省のQ&Aが発出され、このような情報が掲載されました。

福祉用具について
問112
選択制の対象福祉用具を居宅サービス計画又は介護予防サービス計画(以下「居宅サービス計画等」という。)に位置付ける場合、主治医意見書や診療情報提供書に福祉用具に関する記載がない場合は、追加で医師に照会する必要があるか。

(答) 追加で医師に照会することが望ましいが、主治医意見書や診療情報提供書、アセスメント等の情報から利用者の心身の状況を適切に把握した上で、貸与・販売の選択に必要な情報が得られているのであれば、必ずしも追加の照会は要しない。

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

ポカーンとするQ&Aなのですが。

追加で医師に紹介する必要はない、としながらも、「貸与・販売の選択に必要な情報」とは何を意味しているのか、「心身の状況を適切に把握」するのはいったい誰なのか?ケアマネのアセスメントだけで認められるのか、医師以外の誰がそれを判断するのか、が何も書いていない。

アセスメントの結果ケアマネの判断が尊重されるのであればいいのですが、保険者の見方によって大きく変わりそうです。

たとえば、「専門職の意見聞いていないし、判断の根拠が書いていないので、一発NG報酬返還!」と言われてしまうリスクもあります。ちゃんとした回答が欲しいですね。

現在レンタルしている福祉用具も対象になるの?

今利用している固定用スロープや4点杖も対象になるの?3月末までにレンタルか購入を選択してもらわなきゃいけないの?

・・・!?

このあたりも具体的な説明はありません。介護保険の改正自体が6月に後ろ倒しになる可能性も出ていますので、具体的なタイムスケジュールはまだ不透明です。おそらく改定の時期に合わせて確認する流れになると思いますが、かなり大きな混乱が予想されます

2024年3月16日追記
Q&Aでこの回答がありましたので詳細掲載します。

問 99
厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目及び厚生労働大臣が定める特定介護予防福祉用具販売に係る特定介護予防福祉用具の種目(平成11 年厚生省告示第94号)第7項~第9項にそれぞれ掲げる「スロープ」「歩行器」「歩行補助つえ」(以下、「選択制の対象福祉用具」という)を施行日以前より貸与している利用者は、施行日以後に特定福祉用具販売を選択することができるのか。

(答) 貴見のとおりである。なお、利用者が販売を希望する場合は福祉用具貸与事業者、特定福祉用具販売事業者、居宅介護支援事業者において適切に連携すること。

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

問100
施行日以降より選択制の対象福祉用具の貸与を開始した利用者へのモニタリング時期はいつになるのか。

(答) 施行日以後に貸与を開始した利用者に対しては、利用開始時から6月以内に少なくとも1回モニタリングを実施することとしているが、施行日以前の利用者に対しては、利用者ごとに適時適切に実施すること。

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

つまり、改定前からレンタルしている福祉用具も選択制の対象になるということです。つまり、以前からレンタルしていた商品についても、新品にするので買取にしませんか?と聞き取りしなきゃいけないということですね。そして質問するにあたっては以下の情報を毎回ていねいに伝えなきゃいけないということです。

利用者の選択に当たって必要な情報としては、

・ 利用者の身体状況の変化の見通しに関する医師やリハビリテーション専門職等から聴取した意見

・ サービス担当者会議等における多職種による協議の結果を踏まえた生活環境等の変化や福祉用具の利用期間に関する見通し

・ 貸与と販売それぞれの利用者負担額の違い

・ 長期利用が見込まれる場合は販売の方が利用者負担額を抑えられること

・ 短期利用が見込まれる場合は適時適切な福祉用具に交換できる貸与が適していること

・ 国が示している福祉用具の平均的な利用月数(※)
等が考えられる。
※ 選択制の対象福祉用具の平均的な利用月数(出典:介護保険総合データベース)
・ 固定用スロープ:13.2ヶ月
・ 歩行器 :11.0ヶ月
・ 単点杖 :14.6ヶ月
・ 多点杖 :14.3ヶ月

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

(うわーしんどい)利用者側としてもゴン詰めされている感覚でしょうね。

医療職の意見を求めず、介護保険で固定用スロープを利用する方法

2024年4月現在、医療職の意見に関する判断が非常にあいまいな状況になっていますので、改めてこの部分は加筆修正してまいります。すでにお伝えしているQ&Aの内容をご確認ください。

追加で医師に照会することが望ましいが、主治医意見書や診療情報提供書、アセスメント等の情報から利用者の心身の状況を適切に把握した上で、貸与・販売の選択に必要な情報が得られているのであれば、必ずしも追加の照会は要しない。

主治医意見書や診療情報提供書、アセスメント等の情報とありますが、このアセスメント等が必ずしもケアマネによるアセスメントを意味しているものとは断言されておらず、医療職ではないケアマネのアセスメントを根拠とするかは不確実です。アセスメントの根拠が不十分であるとして、返戻となる可能性も否定できません。判断に迷う場合は保険者に確認することをお勧めします。

スロープ

医療職の意見が必要という点ですが、軽度者の介護用ベッドレンタルの例外給付の確認も同様、ケアマネにとってはとても手がかかる作業です。医療職の確認をとるのがとても負担のため、自費のベッドレンタルが普及したという経緯もあります。

今回の福祉用具も同じような展開になるのかもしれません。軽度者のベッドレンタルと決定的に違うのは、要介護度に関わらず医師の確認が必要だということです。

それでも福祉用具事業者が自費レンタルを行うのであれば、介護給付費をまるまる削減できるので財務省の思う壺、と言えるでしょう。

利用者のために固定用スロープを介護保険を使いたい。でも、医療職の意見を確認することは負担。というケアマネさん、ひとつの提案です。

いえケア編集部
いえケア編集部

それ、住改でよくない?

ダイヤスロープやつみきスロープなどの固定用スロープですが、介護保険のレンタル対象商品ですが、実は住宅改修の対象商品でもあります

同じスロープ、固定するか固定しないかの違いで福祉用具貸与か住宅改修で分かれます。福祉用具に関しては医療職の意見を求めなければいけませんが、住宅改修であれば医療職の意見は必要ありません

固定用スロープ 介護保険利用までの3つの方法

ビスを使って固定することに問題がなければ住宅改修に切り替えてしまってもいいのではないでしょうか?

2024年3月16日Q&Aより
スロープの取り扱いについて、このようにQ&Aで回答されています。

〇 スロープの給付に係るサービス区分に係る判断基準ついて
問105 スロープは、どのような基準に基づいて「福祉用具貸与」、「特定福祉用具販売」、「住宅改修」に区別し給付すればよいのか。

(答) 取り付けに際し、工事を伴う場合は住宅改修とし、工事を伴わない場合は福祉用具貸与又は特定福祉用具販売とする。

○介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

スロープに関して、住宅改修は医療職の判断を必要とせずに保険適応できる有力な選択肢になりそうですね。

スロープの住宅改修について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

財務省の本当の狙いは「手すり」?

今回の福祉用具選択制導入ですが、誰のためのものでもなく、財務省が給付削減するためだけの法改正です。しかもその効果はおそらく限定的です。

ケアマネ・福祉用具相談員や医師の負担だけが爆上がりする展開が予想できます。

なぜこのような制度改定を行ったのか。あくまで推論ですが、これまでの議論の経過を見る限り、おそらく、今回対象にした4種類はあくまでも足がかりで、今後、選択制の対象とする福祉用具を増やしていくのだろうと思います。

財務省の最大の狙いはおそらく、手すりを介護保険レンタルから外すことにあると思われます。

福祉用具の請求額、種目別で見ると最も多いのは特殊寝台ですが、それに次いで二番目に多いのは手すりで、全体の22%を占めています(*9)。上の資料はありかた検討会第一回のものですが、手すりとシルバーカータイプの歩行器も含めた請求額の情報を提示していることからも、財務省の狙いはここにあると考えられます。

今回の選択制で成功すれば次のターゲットはレンタル手すりになることが予想されます。多くの福祉用具事業者にとっても、手すりがレンタルから除外されるとなると大打撃になります。

手すりを含めた福祉用具が利用者の日常生活にとってどれだけ重要な役割を果たしているか、コストパフォーマンスを発揮しているか、そして専門性の高い選定やサポートを行っているか。福祉用具と福祉用具専門相談員、そしてケアマネジメントの質を証明していくことがますます重要になるのではないでしょうか。

居宅介護支援の報酬改定に関する情報はこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。

参考資料

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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