2024年介護報酬改定【訪問系サービス編】。サービス種別ごとの変更点まとめ|訪問介護・訪問入浴・訪問看護等[3/18最新]

介護報酬改定2024、訪問介護・訪問入浴・訪問看護 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

2024年の介護報酬改定、ようやくその大枠が決定しました。今回は決定した2024年報酬改定の詳細を紹介します。

【この記事をお勧めしたい方】

  • 訪問系サービスの事業所管理者をされている方
  • ケアマネジャーさんや地域包括支援センターの職員

2024年介護保険制度改正・介護報酬改定の概要について

大きな目玉となっていた「自己負担2割利用者の拡大」「要介護1・2の総合事業への移行」「ケアプラン有料化」「訪問介護+通所介護の複合型サービス」は全て導入見送りとなり、異例の制度改定となりました。

さらに、診療報酬の改定が6月に行われるため、医療系サービス(訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・居宅療養管理指導)のみ、それに合わせて6月に報酬改定されるという二段階改定となります。

まさに異例だらけの報酬改定。

大幅な物価高が続く中で自己負担を増やすことによる反発や、政治スキャンダルからの支持率低下がありさらなる信頼悪化を避けたい政府の思惑が反映された形になります。

2024年介護報酬改定の概要(厚生労働省資料)

第236回社会保障審議会介護給付費分科会資料

目を引く改定内容は少なくなったものの、注目すべき変更点についてサービス種別ごとにまとめましたのでご参照ください。このページでは訪問介護・訪問入浴・訪問看護・訪問リハビリ・定期巡回・居宅療養管理指導等の訪問系サービスについての変更点をお伝えしていきます。

通所系サービスや居宅介護支援に関してはまた別の記事として紹介し、共通する変更事項はまた別記事でまとめたいと思います。

訪問介護

訪問介護は自宅にホームヘルパーが利用者のご自宅を訪問して身体介護・生活援助などのケアを提供するサービスです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 訪問介護における特定事業所加算の見直し
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
  • 高齢者虐待防止の推進
  • 身体的拘束等の適正化の推進
  • 訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直し

【2.自立支援・重度化防止に向けた対応】

  • 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携 の強化

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
  • テレワークの取扱い

【4.制度の安定性・持続可能性の確保】

  • 訪問介護における同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬の見直し

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
  • 特別地域加算の対象地域の見直し

【全サービス事業種別共通】

  • 人員配置基準における両立支援への配慮
  • 管理者の責務及び兼務範囲の明確化等
  • いわゆるローカルルールについて
  • 「書面掲示」規制の見直し

訪問介護に関しては人材不足が非常に深刻な事業形態です。訪問介護と通所介護の複合型サービスの検討が行われていましたが、この新サービス導入は見送りになりました。

訪問介護の人手不足の解消はめどが立っておらず、求人倍率15倍と言われる人材難は依然として大きな課題です。

訪問介護に関しての大きな変更点について紹介します。

看取り期の利用者に対するサービス提供の評価

まずは、看取り期のサービス提供に関しての評価に関する項目です。

訪問介護:看取り期の利用者へのサービス提供の実態

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料より

訪問介護サービス事業所のうち、39.8%の事業所は看取り期(終末期)の対応実績があり、終末期ケアでも訪問介護は大きな役割を担っています。しかし、訪問看護などのサービスと異なり、訪問介護には看取り期のサービス提供に関する評価がないことから、見取り期の利用者に対するサービス提供を適切に評価することとしています。具体的には特定事業所加算の重度者対応要件として「看取り期にある者」の要件を追加することとしています。

看取り期の利用者宅への訪問・ケアの実施だけでなく、訪問看護事業所も含めた関係機関との連携や、終末期のケアに関する研修なども必要になるでしょう。

看取り期の利用者への対応も含め、特定事業所加算は全体的に要件の見直しが行われるようです。

中山間部の訪問に関する適切な評価

また、中山間地域では移動距離が大きくなるため事業運営が困難なことから、非効率にならざるを得ない地域を適切に評価していくこととしています。移動距離が長ければ、ガソリン代もかかりますし、訪問サービス提供以外の時間も多くなり、非効率になります。調査の結果でも、中山間地域では赤字の事業所が多いことがわかります。事業継続が可能になるように評価を見直していくこととなっています。

これは訪問介護だけに限らず、訪問系サービス全てに共通した内容となっています。

訪問介護:中山間部の事業所は赤字の割合が多い

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料より

同一建物等居住者への訪問のさらなる減算

訪問介護事業所と同一建物内で訪問介護サービスを提供した場合には同一建物減算がありますが、これがさらに拡大されそうです。

サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなどに居住している利用者に対して、同じ建物内に併設する訪問介護ステーションが訪問を提供する場合には介護報酬を引き下げますよ、というのが同一建物減算。移動時間が少なく、効率的にサービスが提供できることがその理由となっています。

厚生労働省は、同一建物内の利用者だけでなく、建物外の地域に暮らす方にもサービスを提供することを求めていました。しかし、下図の通り、建物外の利用者にはサービスを提供していないという事業者が半数以上であることが報告されています。

訪問介護:同一建物減算算定事業所、建物外訪問を行っていない事業所が半数

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料より

このように建物外へのサービスを行っていない事業所にはさらなる減算を考えているようです。

訪問介護に関する大きな改定はこのような内容となっています。

  • 看取り期の利用者へのサービス提供評価
  • 中山間部でのサービス継続評価
  • 同一建物減算の厳格化

介護報酬改定に関する審議報告では訪問介護についてこのように言及しています。

訪問介護員等の人材不足は喫緊の課題であり、就労希望者が少ない要因に、1人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が挙げられているところ、ハラスメント対策・ICTの活用等を含めた働きやすい職場づくりに向けた取組を引き続き推進するとともに、質の高い介護サービスを担保できる体制等の検討を進めるほか、介護技術の向上や適切な評価を通じて、必要なサービスを安定的に提供することができるよう、人材確保に係る課題を把握した上で、更に訪問介護人材の確保に資する対応を総合的に検討していくべきである。

いえケア編集部
いえケア編集部

今回、「喫緊の課題」であるとした訪問介護員の人材不足。ただ、報酬改定の項目としては人材不足解決の抜本的な対策は含まれていませんでした。人材の確保のために介護報酬は引き上げられることが濃厚だと思います。 まさかのマイナス改定でした、驚きました(1月22日更新)。

訪問介護基本報酬

訪問入浴介護

訪問入浴介護はご自宅に訪問入浴者というボイラーを搭載した車両で訪問し、看護師+2名のスタッフで入浴を介助するサービスです。主に浴槽をまたぐことができない、デイサービスで入浴できない方などが対象となるサービスです。

この記事のアイキャッチ画像が女性3人になっていますが、基本的には男性1人・女性2人で訪問することが多いサービスです(画像は生成AIで作成しています)。

訪問入浴介護の変更点は以下の通りです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 訪問入浴介護における看取り対応体制の評価
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入★
  • 高齢者虐待防止の推進★
  • 身体的拘束等の適正化の推進★
  • 訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直し★

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化★
  • テレワークの取扱い★

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する 者へのサービス提供加算の対象地域の明確化★
  • 特別地域加算の対象地域の見直し★

★は予防サービス(要支援認定者対象)も含む

看取り期の利用者に対するサービス提供の評価

訪問介護と重複する部分も多いので割愛しますが、こちらも同様に看取り対応の評価が追加されました。

訪問入浴:看取り期の利用者へのケア

通常の訪問入浴サービスよりも褥瘡の保護や防水処理、創傷等のスキンケアなどが必要になります。呼吸状態や意識状態の観察、医師や訪問看護師等との連携体制など、多くのタスクが必要とされます。

訪問入浴:看取り期の利用者へサービス提供を依頼された経緯

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料より

1~2日程度でサービス提供体制を作ることが求められる場合も多いなど、訪問入浴事業所にとっても看取り期の利用者への対応は非常に労力の大きいものとなっています。

看取り期の利用者へのサービスにも適切な評価が必要とされています。

その他、訪問介護と同様、中山間部のサービス提供には評価が追加される模様です。

  • 看取り期の利用者に対するサービス提供の評価
  • 中山間部の訪問に関する適切な評価
いえケア編集部
いえケア編集部

訪問入浴は今回看取りに関する評価が追加されます。訪問看護のターミナルケア加算のような形態が近くなると思いますが、終末期入浴のニーズはやはり大きく、また皮膚の状態を保つためにもとても重要なケアです。

褥瘡の処置・点滴ポンプの対応・在宅酸素の対応など、医療的ケアが含まれるとその処置にかかる労力は非常に大きいです。終末期に限らず、処置の内容に応じて、訪問看護でいう特別管理加算のような処置のタスクに応じた加算があるといいのになと、入浴スタッフの皆さんを見ていて思います。

訪問入浴介護 基本報酬

訪問看護

訪問看護の変更点をまとめます。訪問看護はご自宅に看護師や准看護師、保健師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問して、在宅療養の支援、医療的ケアなどを行うサービスです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 専門性の高い看護師による訪問看護の評価★
  • 円滑な在宅移行に向けた看護師による退院当日訪問の推進★
  • 訪問看護等におけるターミナルケア加算の見直し
  • 情報通信機器を用いた死亡診断の補助に関する評価
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入★
  • 高齢者虐待防止の推進★
  • 身体的拘束等の適正化の推進★

【2.自立支援・重度化防止に向けた対応】

  • 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化★

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • テレワークの取扱い★
  • 訪問看護等における24時間対応体制の充実★
  • 訪問看護等における24時間対応のニーズに対する即応体制の確保★
  • 退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化★

【4.制度の安定性・持続可能性の確保】

  • 理学療法士等による訪問看護の評価の見直し★

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化★
  • 特別地域加算の対象地域の見直し★

専門性の高い看護師による訪問の評価「専門管理加算」

2024年の診療報酬改定ですでに導入することが決定している「専門管理加算」と足並みをそろえるような形で介護保険でも看護師の専門性を評価する加算が追加されます。

医療ニーズの高い訪問看護利用者が増える中で、適切かつより質の高い訪問看護を提供する観点から、専門性の高い看護師が指定訪問看護、指定介護予防訪問看護及び指定看護小規模多機能型居宅介護の実施に関する計画的な管理を行うことを評価する新たな加算を設ける。

看護師には特定の看護分野に熟練した特定行為研修や専門看護師・認定看護師といった研修制度があります。認定看護師になるには非常に大きいハードルがあるのですが、この専門性を評価する加算が追加されます。「緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合」加算を得られるようにすることを考えています。

2024年3月18日追記
具体的な研修内容について、厚生労働省のQ&Aでは以下のように示しています。

問38
専門管理加算のイの場合において求める看護師の「緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門及び人工膀胱ケアに係る専門の研修」には、具体的にはそれぞれどのようなものがあるか。

(答) 現時点では以下の研修が該当する。
① 褥瘡ケアについては、日本看護協会の認定看護師教育課程「皮膚・排泄ケア」
② 緩和ケアについては、
・ 日本看護協会の認定看護師教育課程「緩和ケア※」、「乳がん看護」、「がん放射線療 法看護」及び「がん薬物療法看護※」
・ 日本看護協会が認定している看護系大学院の「がん看護」の専門看護師教育課程
③ 人工肛門及び人工膀胱ケアについては、日本看護協会の認定看護師教育課程「皮膚・排泄ケア」
※ 平成30年度の認定看護師制度改正前の教育内容による研修を含む。
例えば「緩和ケア」は、従前の「緩和ケア」「がん性疼痛看護」も該当し、「がん薬物療法看護」は従前の「がん化学療法看護」も当該研修に該当する。

問39
専門管理加算のロの場合において求める看護師の特定行為研修には、具体的にはどのようなものがあるか。

(答) 現時点では、特定行為に係る看護師の研修制度により厚生労働大臣が指定する指定研 修機関において行われる以下の研修が該当する。
① 「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」、「ろう孔管理関連」、「創傷管理関連」及 び「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」のいずれかの区分の研修
② 「在宅・慢性期領域パッケージ研修」

介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

円滑な在宅移行に向けた看護師による退院当日訪問の推進

要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する新たな区分を設ける。

退院当日の訪問看護について、これまで様々な規制があり、訪問できない・訪問しても算定できないケースが非常に多かったです。特別指示で医療保険だったら算定できる場合などもありますが、入退院時の連携を促進して切れ目ない医療・看護ケアを提供するために退院当日の初回訪問を評価することになりそうです。

ターミナルケア加算の見直し

ターミナルケア加算について、介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様であることを踏まえ、評価の見直しを行う。

ターミナルケアの利用者数の増加

ターミナルケアというと医療保険でがん末期の方が対象となるイメージが強いのですが、がん以外の疾患でのターミナルケアも多く、介護保険でターミナルケア加算を算定する場合も多くあります。介護保険のターミナルケア加算の報酬を見直しして、診療報酬の金額に近づけることになります。

訪問看護等における24時間対応体制の充実

緊急時訪問看護加算について、訪問看護等における24時間対応体制を充実する観点から、夜間対応する看護師等の勤務環境に配慮した場合を評価する新たな区分を設ける。

訪問看護における24時間対応について、看護師等に速やかに連絡できる体制等、サービス提供体制が確保されている場合は看護師等以外の職員も利用者又は家族等からの電話連絡を受けられるよう、見直しを行う。

訪問看護の緊急時訪問看護加算を算定するためには24時間利用者や家族からの連絡に看護師が直接受けなければいけないという要件があるのですが、これが看護師にとって大きな負担になっているという問題です。

電話の内容は緊急性のあるものだけでなく、訪問日時の確認や時間変更など、すぐに対応しなくてもいい電話連絡も含まれているということが報告されています。

看護師の夜間休日対応の負担を減らすために、看護師以外の職員がまず電話を受けて、内容に応じて看護師等が対応する仕組みが認められました。

また、夜間対応などによる看護師の勤務負担の軽減のため、「ICTの活用」や「夜間対応した翌日の勤務体制の調整」などを行っている事業所を評価する仕組みも設けられます。

理学療法士等による訪問看護の評価の見直し

理学療法士等による訪問看護の提供実態を踏まえ、訪問看護に求められる役割に基づくサービスが提供されるようにする観点から、理学療法士等のサービス提供状況及びサービス提供体制等に係る加算の算定状況に応じ、理学療法士等の訪問における基本報酬及び12月を超えた場合の減算を見直す。

訪問看護ステーションに所属する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーションは、前回の介護報酬改定でも大きく削減されましたが、今回もまた影響を受けそうです。訪問開始当初から12か月に関してはバーセルインデックスという生活動作を行う機能の向上が見られたものの、12か月以降は維持の状態で大きく変化がないことから12か月以降のリハビリテーション訪問の報酬を引き下げることとしています。

また、リハビリ職員の訪問回数が看護師の訪問回数を上回っている、もしくは緊急体制加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも取得していない事業所のリハビリ訪問は8単位減額されることになりました。リハビリに特化している事業所にとってはかなり大きな痛手になると思われます。

2024年3月18日追記

理学療法士等の訪問は2単位もしくは3単位を連続で行うケースが多いのですが、このカウント方法について、単位に応じて2回もしくは3回とカウントするのか、それとも1回の訪問は1回とカウントするのかが明確になっていませんでした。これに対して、Q&Aで厚生労働省が回答しています。

問28
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)による訪問看護の減算の要件である、前年度の理学療法士等による訪問回数は、連続して2回の訪問看護を行った場合はどのように数えるのか。

(答) 理学療法士等による訪問看護の減算に係る訪問回数については、理学療法士等が連続 して2回の訪問を行った場合は、1回と数える。例えば、理学療法士が3月1日と3月3日にそれぞれ2回ずつ訪問を実施した場合、算定回数は4回であるが、訪問回数は2回となる。また、理学療法士等が3月5日の午前に1回、午後に連続して2回訪問を実施した場合は、算定回数は3回、訪問回数は2回となる。

介護保険最新情報Vol.1225(「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」の送付について)

ということで、1回の訪問で連続して2コマ・3コマの提供をしても、それは1回の訪問なので1回でカウントしてくださいね、というものでした。訪問回数でもカウントしなきゃいけないのは面倒ですが、減額を免れ、安心したという事業所も多いのではないでしょうか。

  • 専門性の高い看護師
  • 退院当日訪問の評価
  • 緊急時対応・電話当番の負担軽減
  • 12か月以降のリハビリテーション訪問の報酬引き下げ
  • リハビリ職員の訪問が看護師の訪問回数を上回るまたは緊急体制加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも取得していない事業所のリハビリ訪問引き下げ
いえケア編集部
いえケア編集部

維持できているっていうことだけでも大きな効果だと思うのですが、悲しいことに厚生労働省的にはコスパが悪いと思っているようです。訪問リハビリテーション事業所がない地域も多いので、訪問看護のリハビリテーションはやはり地域リハには欠かせないですし、もっと評価してもらいたいですね。

全体的に訪問看護の事業所数は急激に増加していますので、差別化という意味でも専門性の高い看護師がいるということは大きなアピールになりそうですね。加算の分、自己負担が高くなりますが、専門的なケアを必要としている利用者にはとてもいいですね。

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションは、病院・介護老人保健施設・診療所などに併設され、医師の指示の下で理学療法士・作業療法士等が自宅を訪問してリハビリテーションを提供するサービスです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化★
  • 退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進 ★
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入★
  • 高齢者虐待防止の推進★
  • 身体的拘束等の適正化の推進★
  • 訪問リハビリテーションにおける集中的な認知症リハビリテーションの推進

【2.自立支援・重度化防止に向けた対応】

  • 訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進
  • 訪問及び通所リハビリテーションのみなし指定の見直し★
  • 要介護・要支援のリハビリテーションの評価の差別化★
  • 介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質の向上に向けた評価(予防のみ)
  • 退院直後の診療未実施減算の免除★
  • 診療未実施減算の経過措置の延長等★
  • ケアプラン作成に係る「主治の医師等」の明確化★
  • 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • テレワークの取扱い★

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化★
  • 特別地域加算の対象地域の見直し★

医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化

退院後のリハビリテーション以降の流れ

退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医師等の従業者が、入院中にリハビリテーションを受けていた利用者に対し退院後のリハビリテーションを提供する際に、リハビリテーション計画を作成するに当たっては、入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手し、内容を把握することを義務付ける。

退院後の訪問リハビリテーションを行うには、入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手しておくことが義務となりました。

入院している病院併設の訪問リハビリテーション事業所が訪問リハビリをする場合だったらなんてことはない話ですが、医療機関との退院時連携が重視される内容となっています。

退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進

退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医療機関からの退院後に介護保険のリハビリテーションを行う際、リハビリテーション事業所の理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する新たな加算を設ける。

こちらも同様に退院時連携を評価する加算です。訪問リハビリテーション事業所の理学療法士が退院前カンファレンスに参加する場合が対象になります。訪問看護事業所の理学療法士等がカンファレンスに参加する場合には対象となりません。

上記二つの改定内容は通所リハビリテーションと共通の改定内容となります。

訪問リハビリテーションにおける集中的な認知症リハビリテーションの推進

認知症のリハビリテーションを推進していく観点から、認知症の方に対して、認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力を最大限に活かしながら、当該利用者の生活機能を改善するためのリハビリテーションの実施を評価する新たな加算を設ける。

通所リハビリでは「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」がありますが、訪問リハビリでは認知症の方に対する集中的なリハビリテーションの評価がありませんでした。認知症の方への集中的なリハビリテーションを評価する加算が作られます。

要介護・要支援のリハビリテーションの評価の差別化

要介護者及び要支援者に対する訪問リハビリテーションについて、利用者の状態像に応じた、より適切な評価を行う観点から、訪問リハビリテーションと介護予防訪問リハビリテーションの基本報酬に一定の差を設ける。

これまで要介護も要支援も訪問リハビリの介護報酬は同じでしたが、その報酬に差をつけることになりました。要支援の方が自立度が高く、従事者の負担・労力が少なくなるという理由です。訪問看護も要支援は引き下げられましたので、同様に要介護と要支援で差をつけるということです。差をつけるという表現をしていますが、おそらく要支援の単位数が引き下げられる形になると思われます。

  • 退院時カンファレンス参加による共同指導の評価
  • 集中的な認知症リハビリテーションへの評価
  • 要支援の利用者への訪問の単位数引き下げ
いえケア編集部
いえケア編集部

訪問リハビリでは退院時連携など、医療機関との連携が重視された改正内容となっています。

居宅療養管理指導

居宅療養管理指導は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などが利用者の自宅を訪問して、適切な指導や管理を行うというサービスです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 患者の状態に応じた在宅薬学管理の推進★
  • 身体的拘束等の適正化の推進★

【2.自立支援・重度化防止に向けた対応】

  • 居宅療養管理指導における管理栄養士及び歯科衛生士等の通所サービス利用者に対する介入の充実★
  • 居宅療養管理指導におけるがん末期の者に対する歯科衛生士等の介入の充実★
  • 管理栄養士による居宅療養管理指導の算定回数の見直し★

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • 薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し★

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する 者へのサービス提供加算の対象地域の明確化★
  • 特別地域加算の対象地域の見直し★
  • 居宅療養管理指導における高齢者虐待防止措置及び業務継続計画の策定等に係る経過措置期間の延長★

患者の状態に応じた在宅薬学管理の推進

薬剤師が行う居宅療養管理指導について、在宅患者に対して適切な薬物療法を提供する観点から、以下の見直しを行う。

ア 在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている患者に対して、注入ポンプによる麻薬の使用など在宅での療養の状況に応じた薬学的管理及び指導を行うことを評価する新たな加算を設ける。
イ 在宅中心静脈栄養法が行われている患者に対して、輸液セットを用いた中心静脈栄養法用輸液等の薬剤の使用など在宅での療養の状況に応じた薬学的管理及び指導を行うことを評価する新たな加算を設ける。
ウ 心不全や呼吸不全で麻薬注射剤を使用する患者は頻回な訪問が必要となることから、末期の悪性腫瘍の者及び中心静脈栄養を受けている者と同様に、週に2回かつ1月に8回を限度として算定することを可能とする。

訪問薬剤師が、医療用麻薬の持続注射・中心静脈栄養などの管理指導を行う場合や、終末期ケアの場合を評価してます。

在宅訪問を行っている薬局のうち、麻薬時持続注射療法の加算届け出を行っている薬局はおよそ2割。緊急時の対応なども多く、こういった薬局を評価する仕組みとなります。

居宅療養管理指導におけるがん末期の者に対する歯科衛生士等の介入の充実

居宅療養管理指導について、全身状態の悪化とともに口腔衛生管理の頻度が増加する終末期がん患者の歯科衛生士等による歯科衛生指導を充実させる観点から、終末期がん患者の利用者について居宅療養管理指導(歯科衛生士等が行う場合)の算定回数上限を緩和する。

がん疾患の患者の抱える問題として、疼痛に次いで、「食欲不振」が挙げられています。食欲低下の要因は疼痛緩和の薬剤などによって唾液が分泌されず、口腔内が乾燥し、傷つきやすい状態になることが挙げられます。味覚異常などもあり、食欲の不振は大きな苦痛となります。適切な口腔ケアをすることでその苦痛を軽減することもできることから、歯科衛生士の訪問を終末期がん患者の居宅療養管理指導の算定回数上限を緩和しています。

また、管理栄養士も同様にがん末期の方に対する追加訪問が認められるようになります。

薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し

オンライン服薬指導に係る医薬品医療機器等法のルールの見直しを踏まえ、薬剤師による情報通信機器を用いた居宅療養管理指導について、以下の見直しを行う。

ア 初回から情報通信機器を用いた居宅療養管理指導の算定を可能とする。
イ 訪問診療において交付された処方箋以外の処方箋に係る情報通信機器を用いた居宅療養管理指導についても算定可能とする。
ウ 居宅療養管理指導の上限である月4回まで算定可能とする。

情報通信機器を用いてオンラインで服薬指導することに関して、制限が緩和されています。すでに前回の改正でオンライン服薬指導は認められていますが、初回時の算定や、月4回まで算定できるなど、要件が緩和されています。

  • 医療用麻薬持続注射や中心静脈栄養の管理・指導への評価(薬剤師)
  • 末期がん患者への訪問上限緩和(歯科衛生士・管理栄養士)
いえケア編集部
いえケア編集部

がん末期の方の在宅療養などを充実させる方向性で改定が行われています。かかりつけ薬局があっても、「うちは医療用麻薬は扱ってません」っていうところが多いので、かかりつけ薬局が最後まで一貫してサポートできる、っていうところが増えるといいですね。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応訪問介護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、定期的な訪問介護と、24時間365日オンコールで対応できる随時対応による訪問介護・訪問看護をミックスしたサービスです。夜間対応訪問介護は夜間の訪問介護を行うサービスです。

【1.地域包括ケアシステムの深化・推進】

  • 総合マネジメント体制強化加算の見直し
  • 訪問看護等におけるターミナルケア加算の見直し
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
  • 高齢者虐待防止の推進
  • 身体的拘束等の適正化の推進
  • 訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算の見直し

【2.自立支援・重度化防止に向けた対応】

  • 訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携 の強化

【3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり】

  • 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベ ースアップ等支援加算の一本化
  • テレワークの取扱い
  • 訪問看護等における24時間対応体制の充実
  • 退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化
  • 随時対応サービスの集約化できる範囲の見直し

【4.制度の安定性・持続可能性の確保】

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬の見直し

【5.その他】

  • 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する 者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
  • 特別地域加算の対象地域の見直し

総合マネジメント体制強化加算の見直し

定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び(看護)小規模多機能型居宅介護が、地域15 包括ケアシステムの担い手として、より地域に開かれた拠点となり、認知症対応を含む様々な機能を発揮することにより、地域の多様な主体とともに利用者を支える仕組みづくりを促進する観点から、総合マネジメント体制強化加算について、地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組を評価する新たな区分を設ける。 なお、現行の加算区分については、新たな加算区分の取組を促進する観点から評価の見直しを行う。

総合マネジメント体制強化加算は、定期巡回で90.4%が算定しているので、もう基本サービス費に内包化しちゃえば?という案も出ていました。

別にいいんじゃない?内包化して。加算少なくなって楽だし。という方もいるかもしれませんが、実はこれ、利用者の生活を考えると結構大きな問題なんです。これまで総合マネジメント体制強化加算の1000単位は介護保険の区分支給限度外だったので、加算があってもなくても点数の限度額には影響がなかったんです。これが内包化され、基本サービス費が増えると、利用できる限度額が狭まってしまい、他のサービスで利用できる枠が少なくなります。結果として利用していたサービスを利用できない方が出るなどの影響が出てしまいます。

でも、ふたを開けてみたら「評価の見直し」というどうともとれる表現になっています。このあたりはどうなるかちょっと読めない部分ですね。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬の見直し

定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の機能・役割や利用状況等を踏まえ、将来的なサービスの統合を見据えて、夜間対応型訪問介護との一体的実施を図る観点から、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬に、夜間対応型訪問介護の利用者負担に配慮した新たな区分を設ける。

最も大きい論点は、定期巡回と夜間対応の統合についてです。厚生労働省としては夜間対応訪問介護は定期巡回と統合したいと考えているのですが、それがなかなか進みません。大きな要因としては、夜間のみのニーズや緊急時の対応のみのニーズの方がいることにあります。

つまり、夜間や緊急時の対応だけ希望していて、平常時のサービスは必要じゃないですよというニーズが多く、そういった方が夜間対応訪問介護を利用しています。夜間対応訪問介護の76.5%の利用者は訪問サービスを月に一度も受けていないという報告も上がっています。

定期巡回の場合は、定期訪問が必要になり、出来高払いではなく、包括払いとなります。また限度額の大部分をこの定期巡回のサービスで占めてしまいます。必要としていない訪問に支払うのはもったいないし、他のサービスを利用できなくなってしまいます。

将来的にふたつのサービスを一本化するために、「激変緩和」として、出来高払いの要素を踏まえた定期巡回の新しい区分を作ることとしています。スマートフォンに例えるなら、ヘビーユーザー特化型のサービスだった定期巡回に、ライトユーザー用のプランができるという考え方がわかりやすいと思います。

  • 定期巡回に出来高払いを想定した新しい区分ができる。
  • 総合マネジメント体制強化加算の見直し
いえケア編集部
いえケア編集部

国は定期巡回を推進していきたいのになかなか事業所が増えない状況が続いています。撤退する事業所もかなり多く、介護職員の負担や利用者の確保が難しいという現実があります。その要因となっていた制度の使いにくさが改善されるような改正となっています。ただ、「激変緩和」という表現があるので、夜間対応訪問介護と統合するための一時的な対応にとどまる可能性も捨てきれませんね。

定期巡回 基本報酬

訪問系サービスまとめ

訪問系サービスの介護報酬改定内容をまとめました。

細かい変更が多くありますが、ご自宅での生活を支えるために重視されているのは、

  • 医療機関との連携
  • 終末期のケア

という部分になりそうです。

また追加情報があれば修正していきます。次回は居宅介護支援の改定内容をお知らせします!

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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