介護をしている方のお悩みや疑問に、在宅介護の専門家がお答えします。
今回のお悩みは介護用ベッドのレンタル利用についてです。質問をご紹介します。
質問「要支援の認定だとベッドを借りることができないって本当なの?」

(質問内容)
いま実の父の介護をしている者です。
父はもともと膝や腰に痛みがあり、筋力も弱って最近は布団からなかなか起き上がることができません。調子の悪い日には私が手を引いて立ち上がらせている状況です。
先日、介護認定を受けましたが、結果は要支援2というものでした。地域包括支援センターに相談し、近所のケアマネジャーさんに担当していただくこととなりました。
布団からの起き上がりや立ち上がりができないので、介護用のベッドを借りたいとお話ししたのですが、「要支援では介護保険でベッドのレンタルができない」と言われてしまいました。
認定の結果でレンタルできない商品があるというのですが、本当なのでしょうか。
知り合いの方が要支援でもベッドをレンタルしていると聞いたので、そんなことはないと思うのですが、詳しく聞けなくてモヤモヤしています。
要支援の方がベッドをレンタルできないというのは本当なのでしょうか。
また、このまま寝たきりになってしまうのは困るので、一人で布団から出れるようにしてほしいのですが、解決策を教えてほしいです。
―――という方からの質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。
介決サポーターがお答えします!
ご相談ありがとうございます。
介護保険ではベッドを借りることができないと言われたということですね。このまま一人で起き上がれなくなることも心配されているのですね。
では、この質問にお答えしたいと思います。
軽度認定者は介護保険で介護ベッドのレンタルができない

これは介護保険制度導入当初、要支援や要介護1という軽度認定者による介護ベッドレンタル利用が非常に多く、本来必要のない状態での利用が多いという批判が多かったことが影響しています。
安易な介護用ベッドのレンタル利用により、利用者自身の自立の妨げや廃用につながっているのではないかという指摘もありました。それ以上に、膨らみ続ける介護給付費を抑制するために、介護用ベッドの利用制限を設けたという側面が色濃く見られます。
このようにして、介護用ベッドのレンタル利用は要介護2以上(要介護2・3・4・5)の認定を受けている方に限定されることとなりました。要支援1・2もしくは要介護1の認定者が介護用ベッドのレンタル利用をするには、原則として介護保険の給付が受けられないため、全額自己負担での利用となります。
福祉用具の利用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

今回のご質問で、質問者さんの担当ケアマネジャーがおっしゃっていたことは間違っているわけではありません。
では、どうして要支援の認定でも介護ベッドのレンタルをしている人がいるのでしょうか。
その理由と解決策を次の章から解説していきます。
どうしたら介護用ベッドをレンタルできるの?
軽度認定者は介護保険でのベッドレンタル利用が「原則」できないことをお伝えしました。
では実際、介護用ベッドをレンタルしている人はどのような方法を使っているのでしょうか。
2つの方法があります。

具体的に一つずつ解説します。
例外給付

ひとつ目の方法は「例外給付」と呼ばれる手続きを行うというものです。
先ほどから軽度者が介護保険ではベッドのレンタルができないことをお伝えしましたが、あくまで「原則としてはレンタルができない」というものです。ということは、例外もあるということになります。
それが「例外給付」というものです。
介護保険での認定が要支援や要介護1であっても、介護用ベッドがどうしても必要な理由がある、このような例外的な状況では市町村に手続きをすることで介護用ベッドのレンタルを利用することが可能になります。
例えば、以下のような状況が考えられます。
ただ単に、ベッドの方が立ち上がりやすいから、ではなく、特殊寝台による頭部を挙上する機能が必要でなければいけません。明確な根拠がなければ例外として認められません。
ケアマネジャーに相談し、例外給付に該当する可能性があるかを確認しましょう。手続き方法については各市町村で取り扱いが異なります。状況によっては主治医への確認や主治医の診断書が必要になる場合もあります。また、福祉用具貸与事業者やケアマネジャーも含めた担当者会議でその必要性を確認しなければいけないなど、細かいルールが設定されています。
要支援や要介護認定の場合は「原則として」介護保険のベッドレンタルは利用できませんが、必要性が認められる例外的な状況であれば介護保険のベッドレンタルが可能です。例外給付の手続きをして介護保険で介護用ベッドをレンタルする方法を紹介しました。
では、例外的な状況ではない場合はどうしたらいいのでしょうか。
もうひとつの方法を次の章で解説します。
自費でベッドをレンタルする
もうひとつの方法は自費で介護用ベッドをレンタルするというものです。
介護保険であれば1割~3割の金額でレンタルができるのですが、自費となると10割負担。となると、ベッド本体だけでも一か月あたり1万円以上・・・。そんな金額毎月払えない!
そんな声も聞こえてきそうですが、そんなに大きな金額を支払う必要はありません。
福祉用具事業者の多くは、介護保険の経度認定者を対象にした自費レンタルベッドを保有しています。最新モデルではないものや、現在の安全基準に合致していないものなど、介護保険レンタル対象にしていない介護用ベッドの在庫などを抱えているのです。このようなベッドを経度認定者向けに保険対象外商品として割安にレンタルをしている場合があります。介護用ベッド本体とマットレスとベッド柵などのセットでも3,000円以下で提供している場合が多いです。
ケアマネジャーさんや地域包括支援センター職員に相談し、軽度者向けの自費ベッドをレンタルしている事業者さんを紹介してもらうといいでしょう。
ただし、福祉用具事業者によっては利用条件などがあります。要介護2以上の認定が出たら介護保険用のベッドに切り替えて契約をしなければいけないなどの条件が付いている場合もありますので、契約時にはよく確認しましょう。
また、軽度者向けのベッドレンタルでは商品を選択することができない場合が多いです。マットレスの変更ができないことや、ベッドサイドテーブルなどの付属品がレンタルできないなど、制限も多く、必要な機能を満たすことができない場合もあります。
介護保険での例外給付と、自費ベッドレンタルという2つの方法を紹介しました。
それ以外に、実費で介護用ベッドを購入するという選択肢もないわけではありません。ただし、購入してしまうと、身体状況に応じて商品の変更ができないことや定期メンテナンスが受けられない、廃棄をする場合にもコストがかかることなど、デメリットも多くありますので注意しましょう。
介護用ベッドをレンタル利用する方法を二つ紹介しました。
本当に介護用ベッドが必要なのか
また、介護用ベッドにこだわらず、別の解決策を考えることもできます。
例えば、ベッドからの立ち上がりができない状況であれば、ベッドサイドに手すりを設置することで、手の力を利用して立ち上がりができる場合もあります。または、リハビリによって身体に負担の少ない起き上がり方や立ち上がり方を習得できる場合もあります。
介護用ベッドを利用しなければ解決できない問題なのか、別の方法があるのかも含めて検討することも必要です。介護用ベッドをレンタルするというのは課題を解決するための手段のうちのひとつであって、レンタルをすること自体が目的ではないのです。
いずれにしても、担当のケアマネジャー(要支援の方の場合は地域包括支援センター)と相談し、どのような解決策があるか相談してみましょう。
まとめ
要支援や要介護1の認定を受けた方が介護用ベッドをレンタルする方法について解説しました。
原則として要支援や要介護1の方は介護用ベッドを介護保険でレンタルすることはできません。ただし、例外的な取り扱いとしてかかりつけ医が必要性を認める場合などには利用が認められる場合がありますので、該当するかケアマネジャーに相談しましょう。
また、福祉用具事業者が提供している軽度者対象のレンタルベッドを利用する、またはベッドレンタル以外の解決方法も含めて検討していきましょう。