最後まで自宅で過ごすために。在宅看取りのために知っておきたい予備知識と心構え

最期まで自宅で過ごすためには 介護のことはじめ

最後を過ごす場所は、病院?施設?それとも自宅

「どこで人生の最後を迎えるか」人生のエンディングに向かう上でひとつの大きなテーマとなります。どこで、誰と、どう過ごすか。最後まで自分らしい生きたい。その願いをかなえる場所に、どんな選択肢があるのでしょうか。そして、本人が自宅を希望した場合、どうすればその願いをかなえることができるのでしょうか。

増える選択肢

まずはいま、日本人がどのように人生の最期を迎えているのかをお伝えします。

死亡場所の推移
かつて、日本人が最後の瞬間を迎える場所としては自宅が圧倒的に多かったのです。
上のグラフは厚生労働省の人口動態統計の調査をもとに作られた死亡場所の推移を示しています。1951年には82.5%の人が自宅で亡くなっており、医療機関で亡くなる人はたった11.6%しかいませんでした。
それが1975年を境に逆転。それ以降、最期を迎える場所としては病院が圧倒的になりました。いつしか、「人生の最後は病院で迎えるもの」という固定観念が根付いています。しかし、最後は病院で亡くなるものという固定観念が生まれたのもごく最近のことに過ぎないのです。

現在は、病院で亡くなる方は減っており、自宅で最期を迎える方や施設で最期を迎える方も増えています。最期を過ごす場所の選択肢が広がっていると言えるでしょう。

では、最期を迎える場所として、どのような選択肢があるのか

「病院」「施設」「自宅」と3つに分けて、具体的に紹介していきます。

病院で最期を迎える

今も最期を迎える場所として圧倒的に多いのが病院・医療機関です。

命をつなぎとめるために可能な限りの手を尽くして欲しい、少しでも長く生きてほしい。という家族の思いも大きいかもしれません。

それだけでなく、最後は病院に入れるべきという「世間の目」や、間違った認識もそれを後押ししています。「病院で治療をさせてあげないなんてなんて薄情な家族だ」「自宅で介護なんてできるわけがない」「こんなに弱っているのに救急車を呼ばないなんてひどい」という世間の声に押されて、最終的に入院し、最期を病院で迎えるというケースも少なくありません。

人生の最終段階で、できる治療がなくなったとき、最後の時間を過ごす場所は、本当に病院がふさわしいのか。ただ生活感の感じられない白い壁を見つめながら、削られていく残り時間を過ごすことが本当に正しいことなのでしょうか。

施設で最期を迎える

ここ数年で、介護施設で最期を迎える人も増えています

以前は、終身型の施設に入所したとしても、終末期になったら施設から病院に移され、病院で最期を迎えるというケースが圧倒的でした。現在は、特別養護老人ホームや有料老人ホームでも、終末期看取り対応をする施設が増えています。

訪問診療などの外部医療機関と連携しながら、馴染みのあるスタッフに支えられる暮らし。家族が宿泊できるスペースを確保し、終末期の看取りをご家族と一緒に行うこともできる施設も増えています。

もちろん、施設によって医療体制は異なりますので、頻回なたん吸引ができない場合や、持続点滴などの対応ができない場合などは、医療設備の整った別の施設や病院に移らなければいけないという可能性があります。最後の場として施設を考えているのであれば、どの程度の医療対応が可能なのかを事前によく確認しておく必要があります。

家族の介護負担を少なくすることができ、穏やかに最後を迎えることができる場所として施設に入所するということもひとつの選択肢となります。

自宅で最期を迎える

最後に紹介するのは自宅です。

実は、最期を迎える場所として「自宅」を望んでいる人はとても多いことが明らかになっています。下のグラフで紹介する通り、人生の最後を迎えたい場所についてアンケート調査を行ったところ、51%の人が自宅と回答しています。特に男性にその傾向は強く、女性でも年齢が上がるほど自宅を希望する人の割合が増えていることがわかります。

最期を迎えたい場所についてのアンケート結果

無機質で冷たい感じのする病院で最期を迎えることを望まない人や、延命を目的とした治療を望まない人も多くなりました。

それでも病院で最期を迎える人が多いのは、いくつかの理由があります。

  • 自宅での医療・介護体制が整わない
  • 介護をする家族がいない
  • 病院で最期を迎えるべきという思い込みや無理解

そして、一番大事なのは本人の思いです。本人が自宅で最期を迎えたいのであれば、どうすれば実現できるのかを一緒に考えていくことが必要です。

次の章からは自宅で最期を迎えるために必要な条件を解説します。

在宅看取りのために必要な条件

医療・介護体制

在宅で最期を迎えるためには、そのための環境を整えなければいけません。

まずは、医療・介護の体制を整えることが必要になります。以下のようなサービスを活用することが在宅での看取りも可能です。
最期まで自宅で過ごすことは可能

  • 訪問診療
  • 訪問看護
  • 福祉用具
  • 訪問介護

1つずつ、各機関の看取り期における役割を解説していきます。

訪問診療

訪問診療は、定期的に医師が訪問し、診察を行います。

それだけでなく、看取り期においては体調の急変に応じて、臨時の往診を24時間体制で行っていることが必要です。このような在宅見取りを含めた訪問診療機能が強化された医療機関を在宅療養支援診療所といいます。

看取り期において訪問診療を行う医療機関は、がん性の痛みのコントロール、必要な内服薬や座薬などの処方、在宅療養についてのアドバイスを行います。最期を迎えたときには死亡確認し、死亡診断書の作成を行います。

在宅で最期を迎えるためには24時間対応している訪問診療を利用することが必要です。かかりつけ医療機関での通院治療が困難になった時点で、訪問診療に切り替えることをかかりつけ医療機関に相談します。診療情報提供書(紹介状)を作成してもらい、訪問診療を行う医療機関に診療依頼を行います。

訪問看護

看取り期において、最も身近な存在としてサポートする役割を担うのは訪問看護です。

終末期においては、排便の処置・座薬の挿入・たん吸引・点滴の処置など、医療的なケアが必要になる場面もあります。これらの対応には訪問看護が欠かせません。家族が行う場合にも、訪問看護による指導やアドバイスを受けることができますので、安心して対応ができるようになります。

24時間のオンコール体制で対応してくれるため、体調が急変した時や、不安で相談したい時などに連絡することもできます。訪問診療を行う医療機関も24時間対応を行いますが、処置やケアなどを担うのは訪問看護が中心になるので、まずは訪問看護に連絡をするのが一般的です。

訪問看護は医療機関から発行される訪問看護指示書の内容に基づいて訪問を行います。24時間緊急体制のある訪問看護事業所を医療機関やケアマネジャーから紹介してもらいましょう。

また、末期がんや難病の場合などは、訪問看護は介護保険ではなく医療保険に切り替わります。そのため、介護保険のサービス利用限度枠を気にせずに訪問看護の緊急対応を依頼することが可能です。

お近くの訪問看護事業所をこのサイトから検索することもできます。

[事業所検索ページへのリンク]
在宅介護の事業所検索 いえケア

福祉用具

在宅療養の環境を整えるため、介護保険で福祉用具を利用することが可能です。

介護用のベッドや、床ずれ予防のためのマットレス、ベッドからの移動の負担を少なくするためのポータブルトイレなど、福祉用具で状況に合わせて療養環境を変えていくことができます。福祉用具によって身体的な負担を軽減することで、穏やかな生活を送ることができます。

訪問介護

訪問介護のサービスを利用することも可能です。

オムツ交換などに家族が介護負担を感じる場合や、家族が不在になる時間のサポートをお願いしたい場合などに利用することをおすすめします。

家族で介護をする力があれば訪問介護を利用しない場合もありますが、やはりいてくれると心強い存在です。

その他

それ以外にも訪問入浴などの介護保険サービスを利用する場合もあります。

また、訪問マッサージによりリンパの循環を促すことや、薬剤師の訪問を受けて薬局から薬を届けてもらうということも可能です。

どのようなサービスを使って療養環境を整えていくか、どんなことに負担を感じているか、ケアマネジャーと相談しながら進めていきましょう。

介護保険サービスの種類についてはこちらのコラムをご参照ください。

[コラム:在宅介護のサービスについて]

また、ご自宅で看取りを行う場合に必要なサービスについては以下のコラムで紹介していますのでご参照ください。

家族の介護力

医療・介護の専門職だけではなく、家族による介護力も必要になります。

オムツ交換なんてやったことないのに・・・、弱っていく父にどう接したらいいかわからない、など不安も多く抱える方がほとんどです。

家族にできる介護について解説します。

1人だけで抱え込まない

家族で支えるイメージ
一番大事なことは、1人で抱え込まないということです。

自分がすべて面倒を見る。子供達には迷惑をかけられない。と意気込んで終末期のケアをされるご家族もいます。ただ、終末期の介護場面では、急激に状態も変化し、多くの家族は混乱します。明日、命が途絶えるかもしれないという状況で不安や葛藤を抱えながらの介護。そのストレスが重くのしかかります。

1人で抱え込むのではなく、協力してもらうことも必要です。子供や兄妹などの肉親にもかかわってもらい、介護から解放され息抜きやリフレッシュする時間を持つことで、落ち着いて介護に向き合うこともできます。つらさや苦しさを打ち明けるだけでも負担は軽くなります。

1人で抱え込まずに、多くの人と最後の別れの瞬間に向けての時間を共有しましょう。きっと、多くの人に見守られ、支えられることは、この世に別れを告げる人にとっても幸せなことでしょう。

介護ができなくても、家族にできること

オムツ交換や食事の介助などの介護ができなくても、家族にできることはあります。

やさしく声をかけること。手をしっかり握ってあげること。

きっとそれだけで心強く感じるはずです。

できないことは介護や看護の専門家にお願いし、家族は自分たちにできることにすべてを注ぐということもひとつの形です。こうしなければいけない、こうであるべき、という固定概念を持たず、相手の幸せが何かを真剣に見つめることが何より大切ではないでしょうか。

人生の最終段階をどう生きるか

最優先されるのは本人の意志

人生の最終段階を迎え、最期の瞬間まで残された時間をどう生きるか。

一番尊重されなければいけないのは本人の意志です。

どんな人と、どんな場所で、どんな時間を過ごしたいか。その思いを共有することから始めましょう。

望まない最期

介護者を支える手
誰もが理想の最期を迎えられるわけではありません。

本人が自宅で最期の瞬間を迎えたいと願い、その願いを叶えたいと思う家族がいて、それを支える介護・医療の体制が整っていたとしても、その望みが絶たれる場合もあります。

状態の急変に慌てて、訪問診療医ではなく救急車を呼んでしまい、病院へ救急搬送されてしまうケースが相次いでいます。延命のために最善の処置を尽くさなければいけない病院は、気管切開や点滴、心肺蘇生などあらゆる手を尽くし、体は傷つき、最後は冷たい病院で亡くなるということが多いのです。

望まない最期を迎えることがないように、医療や介護の期間が緊密に連携をとりながら、本人の思いの実現を支えていくことが必要です。

エンディングノート

本人が自分の思いを残される家族のために残すのがエンディングノートです。

書面に残しておくという意味では遺言書とも似ていますが、エンディングノートに残す内容は遺言に比べて幅広いです。また、死後だけではなく、認知症になるなど自分の意志を表現できなくなった場合にも有効な手段という意味では大きな違いがあります。

財産のことに限らず、自分の生い立ちや伝えたい思い、葬儀屋お墓のことについてなど、残される人へのメッセージとなっています。終末期にどこで過ごしたいか、どのような人に支えられたいかなどを記入する部分もあります。

遺言と違い、法的拘束力はありませんが、自分の思いを整理し、あらかじめ伝えておく大事なメッセージです。早いうちに準備をしておくことが望ましいです。

最近は終活として生前整理をする方も増えています。本人だけでなく、家族の協力や、生前整理のプロに相談するという方法もあります。以下の記事が参考になるかと思いますので、詳しく知りたい方はご参照ください。

最近流行りの「終活」って何をするの?大切なのは親も子も楽しむこと! | 株式会社タイヨー|産業廃棄物の収集・不用品の回収・片付け・遺品整理
こんにちは、広島の不用品回収「まるごとスッキリ隊」です。 今日は「まだ8時か~」と思って起きたのですが、もう1度時計を見たら11時前だったという寝ぼけた行動から1日が始まりました。...

生前整理として不用品の処分が必要な際には専門業者に相談することがおすすめです。体力的に衰えている状況で一人で生前整理をすることは大変ですので、専門業者に依頼し、分別から回収まで手伝ってもらうといいでしょう。

【即日・格安】で不用品回収|日本不用品回収センター
【即日・格安】で不用品回収|日本不用品回収センター

人生会議

最後にどう生きるか、話し合う場をつくることもあります。それが「人生会議」です。

人生会議とは、もしものときのために、自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと話し合い、共有する場のことを言います。欧米で広まったアドバンス・ケア・ プランニング(Advance Care Planning)が、人生会議という名前で日本でも広がりはじめています。

本人が自分の意志を表明できる場合は本人の思いを尊重しますが、それができなくなった場合は家族や近しい人がその思いを推定します。家族等が本人の思いを推定することができない場合は、医療・ケアチームが本人の望む生き方を慎重に検討することになります。

自分の思いを伝えることができるうちに、自分が望む生き方を周囲に伝える機会を設けることが必要です。

大切な人との別れ

温かく寄り添う

大切な人との別れはいつか必ずやってきます。そのとき、残された人はどうするべきか。

呼吸が止まっても、心臓の動きが止まっても、慌てふためく必要はありません。訪問看護を呼ぶのも、訪問診療医を呼ぶのも、焦る必要はありません。別れに際し、感謝やねぎらいの言葉をかけてあげましょう。人間、最後に残る感覚は聴覚だという研究結果があるそうです。やさしく、あたたかく声をかけ、別れを伝えましょう

エンゼルケア

死後には、旅立ちのための準備が必要です。

昔は喪服を着せることが一般的でしたが、最近では、本人らしい服に着替えることが多いです。旅立ちの準備として、体をきれいにし、化粧をすることをエンゼルケアと言います。訪問看護師や葬儀業者が行います。

グリーフケア

仏壇のイメージ
大切な人を失った後、残された人は大きな喪失感を受けます。

その悲しみや苦しみに寄り添い、立ち直れるように支えていくケアのことをグリーフケアと言います

医療従事者やカウンセリングの専門家などが行うことで知られています。それ以外にも、グリーフケアを目的とした自助グループや遺族会などもあります。

深い後悔から故人のことを思い出したくない、その感情にふたをする人も少なくありません。その気持ちを言葉にし、思い出を分かち合うことで、深い悲しみや痛みから立ち直るきっかけをつかむことができます。

まとめ

最期まで自分らしく生きたい。誰もが強く願う思いです。

住み慣れた自宅でその思いを叶えることは可能です。

どこで、誰と、どう生きたいか。その願いを実現するためには、介護が必要になる前から家族や親しい人とのコミュニケーションが必要です。もしものときの備えをするのに、早すぎることはありません。

最期の瞬間は誰でも必ずやってくるのですから。

いえケア 在宅介護の総合プラットフォーム
タイトルとURLをコピーしました