在宅介護で看取りはできますか?ターミナルケアの強い味方となる在宅医療・在宅介護

在宅介護で看取りはできますか? 介護のことはじめ

ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。

今回いただいた質問はご自宅での「看取り」に関してのものです。

質問「在宅介護で看取りはできますか」

まずは今回頂いた相談内容を紹介します。

70代の両親と私の三人で暮らしています。
先日、父が病院で「末期がん」であると宣告されました。膵臓がんだったようですが、すでにリンパ節や肝臓にも転移し、手術はできないと言われました。治癒が困難な状況のため、治療を選択せず、緩和で最期を迎えることになりました。
もっと早く異変に気付くことができなかったのか、もっと早く検査に連れていけばよかったのにと、後悔ばかりが頭をよぎります。父はその事実を落ち着いて受け止めているようでしたが、落胆している様子でした。
せめて、最後の最後まで、住み慣れた自宅で過ごさせてあげたいというのが家族の願いです。私も仕事があるので毎日つきっきりで介護をすることはできないですし、母も介護の経験はありません。それでも、父は病院嫌いで、入院はしたくないと言っており、せめてその願いはかなえてあげたいと思っています。
これからの方針について病院と相談する予定なのですが、自宅で看取りをすることはできるのでしょうか自宅で看取りをするためにはどんな準備をすればいいのでしょうか。教えてください。

―――という質問でした。

では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。

介決サポーターがお答えします!

お父様が末期がんと告知されたということで、大変な中ご相談いただきありがとうございます。ご家族として、お父様の願いをかなえてあげたいという想い、とても大切なことだと思います。

できるだけ自宅で過ごさせてあげたいという想いと、そんなことができるのかという不安で揺れているのかと思います。

では、自宅で看取りをできるのか、ポイントを解説していきたいと思います。

自宅で看取りはできるのか

自宅での看取り

結論から先に申し上げますと、自宅で看取りはできます

現在、多くの方は病院で最期の瞬間を迎えていることは紛れもない事実です。厚生労働省「人口動態統計」によると、死亡者のうちおよそ7割の方は病院で亡くなっています。自宅で亡くなる方はおよそ2割。続いて施設、その他となっています。
病院で生まれ、病院で最期を迎える。
けれど、その人は本当にそれを望んでいたのでしょうか

厚生労働省による「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」によると、人生の最後をどこで迎えたいかという質問に、69.2%の方が「自宅」と回答しています。全体の7割の方が自宅で最期と迎えることを望んでいるのにも関わらず、7割の方が病院で亡くなっているという事実があるのです。なぜこうなっているのかというと、「最後は病院で迎えるのが常識」という誤った理解が浸透してしまったからなのです。
「最後は病院で迎えるもの」という常識が生まれたのは、実は最近のことなのです

最期を迎える場所の推移

もともとは圧倒的に自宅で亡くなる方が多く、1951年は82.5%の方が自宅で亡くなっていました。だんだんと病院で亡くなる方が多くなり、自宅と病院の割合が逆転したのが1975年。その後、その差が広がり、「最後は病院」という認識が定着したのです。現在はそれ以外にも「施設での看取り」という選択肢も増えたことや、在宅で看取りをする方も増えたことにより、その差も縮まっています。

病院じゃなきゃいけないという理由はありません自宅で最期を迎えたいという本人の想いと、それを叶えたいという家族の思いがあれば、在宅で看取りをすることはできます。
とはいえ、在宅で看取りといっても、医者でも看護師でもない家族が看取りだなんて、できるのかしら。と不安になるのも当然です。自宅での看取りは家族だけの力ではできません。
自宅で看取りを行うための準備も必要です

では、どんな準備をすればいいのか、次の章で重要なポイントを紹介します。

自宅で看取りをするために重要なポイント3つ

自宅で看取りをするために重要なポイントを3つ紹介します。

★この記事で解説していること

  • 要支援1の認定には要介護認定等基準時間を目安としている
  • 要支援1は地域包括支援センターがケアマネとなり介護予防ケアプランを作成する
  • 要支援1は総合事業・介護予防サービスを利用できる
  • 要支援1の区分支給限度額は1ヶ月当たり5万320円
  • 介護負担が増えてきたら認定直後でも区分変更は可能
  • 要支援1でも一人暮らしは可能

3つのポイントについてひとつずつ解説していきます。

看取りに対応する訪問診療医

訪問診療医

自宅で看取りをするために重要なポイント、ひとつ目は「看取りに対応する訪問診療医」です。

通常、患者が医師による診察を受けるためには、病院へ通うか、入院するというのが一般的です。しかし、病気に蝕まれ、衰弱していく中で病院まで通うことは現実的ではありません。自宅で看取りをするためには、医師が自宅を訪問して診察を行う「訪問診療」が必要です。
急な体調不良時などに受けるのは「往診」ですが、計画的に医師が訪問して診察するのが「訪問診療」です。24時間対応で訪問診療・往診の機能を強化して行っている医療機関を「在宅療養支援診療所」と言います。在宅看取りのためには、訪問診療と往診を行う「在宅療養支援診療所」が必要です。

がん末期の方であれば、がんによる疼痛に対する鎮痛剤の処方・点滴などにより、痛みの緩和を行います。医者が行うのは病気の治療ではありません。末期がんの場合は「治療=病気を治す」ことはできません。行われるのは治療ではなく、苦痛を和らげ、穏やかな時間を過ごすための医療です。これを「緩和ケア」と言います。
医療機関のうち、がんの方が痛みの緩和を受けながら最後を迎える場所を一般的に「ホスピス」と言いますが、ホスピスで行うケアを自宅で行っているのです。これが末期がんの方に対する在宅医療であり、その中心となるのが訪問診療医です。

24時間対応なので、処置や診察が必要な状況でも対応してもらうことができます。亡くなった後、死亡診断や検死のために病院に運ばれることもありません。訪問診療医が死亡を確認し、死亡診断書を作成します。
訪問診療を受けることがご自宅で看取りを行うために欠かせない大きな要素となります。訪問診療医を紹介してもらうには、今までかかっていた病院の医師や地域連携担当の相談員、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員などに相談するといいでしょう。ご希望に合った地域の在宅療養支援診療所を紹介してもらえるかと思います。

自宅での見取りをするために重要なポイントひとつ目、看取りに対応する訪問診療医を紹介しました。

24時間365日対応の訪問看護

訪問看護師

自宅で看取りをするために重要なポイント、ふたつ目は「24時間365日対応の訪問看護」です。

前の章では、看取りに関しては訪問診療医が在宅医療の中心を担うことを説明しました。ただ、すべての医療的ケアを医師が行うことはできません。実際にケアを行うのは医師ではなく看護師です。看護師は訪問診療を行う医療機関からではなく、訪問看護ステーションから派遣されます。
訪問看護事業所は介護保険及び医療保険の指定を受け、看護師が利用者の自宅を訪問し看護サービスを提供します。自宅に訪問する看護師は医師の指示に基づき、健康状態の観察や服薬の指導、排便の処置や清潔の介助、点滴や在宅酸素などの医療機器の管理などを行います。また、家族に対して介護方法の指導や相談などにも対応しています。

24時間365日対応の訪問看護事業所もあります。夜間や休日でも連絡を受けて相談や緊急訪問の対応が可能なので、状態の変化があってもすぐに看護師に対応してもらうことができます。診察や処方が必要な場合には、訪問看護師を通して訪問診療医と連絡調整をしてもらうことができます。

介護保険認定を受けている方への訪問看護のサービスは原則的には介護保険が適用されます。ただ、末期がんを含め、特定の疾患を持っている方への訪問看護は、介護保険ではなく「医療保険」が適用されます。訪問看護が医療保険適用になることで以下のようなメリットがあります。

  • 介護保険では一か月の利用限度額に上限が定められているが、医療保険には限度額がないため、頻回なサービス利用も可能(末期がんの場合は利用回数の制限がない)
  • 高額療養費などによる負担金額の減免を受けることができる
  • 訪問看護が介護保険から外れるため、訪問看護が抜けた分介護保険サービスの利用を増やすことができる

このように末期がんの方への訪問看護は制度的にも利用しやすくなっていますので、上手に活用していきましょう。

訪問看護師は身体的なケアだけでなく、患者本人と家族の精神的なケアも担っています。起こりうる状態の変化や、終末に至る過程などもわかりやすく説明してくれるので、不安を軽減することができます。また、死後のケア(エンゼルケア)として、身体の清拭や化粧など死後処置も行ってくれます。家族と看護師が本人との想い出や感謝を語り合いながら、一緒に旅立ちの支度をすることができます。

このように、迅速で丁寧な対応ができる訪問看護ステーションのサポートがあれば、介護の経験がなくても、安心して自宅での看取りをすることが可能です。訪問看護ステーションを選ぶ際は、ケアマネジャーに相談するか、医療機関に相談することをお勧めします。また、このサイトでもお近くの訪問看護ステーションを検索することが可能ですので、ぜひご活用ください。

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在宅介護のいえケア バナー

自宅での見取りをするために重要なポイントふたつ目、24時間365日対応の訪問看護を紹介しました。

ケアマネジャー

ケアマネジャー

自宅で看取りをするために重要なポイント、みっつ目は「ケアマネジャー」です。

在宅介護のかじ取りを行う司令塔がケアマネジャーです。必要な介護サービスの調整などを行います。
医療系のサービスについては先ほど紹介しましたが、看取り期には介護サービスも必要になります。
例えば、浴室までの移動ができないなど入浴の浴室でできない場合は、訪問入浴サービスを利用します。家族でオムツ交換ができない場合には訪問介護のサービスを利用することもあります。
そして、多くの時間を過ごすことになる介護用ベッドや床ずれ予防用のマットレス、車いすなどの福祉用具のレンタルサービスは特に重要です。これらの介護サービスの調整を行うのがケアマネジャーです。医療系のサービスと介護系のサービスとご本人・ご家族を含めた連携の要として、ケアマネジャーを欠かすことはできません。

緊急時にも相談ができるよう、土日や祝日でも対応してくれるケアマネジャーさんの事業所に相談するといいでしょう。医療機関や地域包括支援センターに相談すると、ケアマネジャー事業所を紹介してもらうことができます。訪問看護ステーションとケアマネージャーの事業所が併設しているところもありますので、その方が事業所間の連携がスムーズにできる場合があります。
このサイトでもお近くのケアマネジャー事業所を検索することが可能です。

[介護事業所検索ページ]

在宅介護のいえケア バナー

自宅で看取りをするために重要なポイントみっつ目、ケアマネジャーを解説しました。

自宅で看取りをするための重要なポイント、3つを解説しました。自宅での看取りにはこれら専門職のサポートが必要です。

まとめ

自宅での看取りについて解説しました。
「自宅で最期を看取るなんて、私にはできない」と不安になってしまう方も多いと思います。でも、本人や家族にその意思があれば専門職の支えを受けて看取りを行うことはできます。最初から無理と決めつけず、まずは医療機関やケアマネジャーと相談することからはじめてみましょう。

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