ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。
今回の質問は、介護のにおい問題で頭を悩ませている方からです。
質問「在宅介護のにおいが気になります」
今年90歳を迎える義理の父と、夫・長男・長女の5人で暮らしています。
父は年齢のせいもあってトイレまで歩くのもやっと。間に合わずに尿や便を失禁することもあり、リハビリパンツを使用するようになりました。夜中は部屋にポータブルトイレを置いて用を足してもらっています。
認知症といっても、主治医からは年齢相応と言われている程度で、そこまで手がかかるというわけではありません。
私が一番困っているのはにおいの問題です。
ポータブルトイレからのにおいや、処理した後の紙おむつからの排せつ物のにおい、義父の体臭・口臭。毎日の生活の中に常に不快なにおいがあるので、精神的に参ってしまいます。一度義父ににおいのことを言ったら、本人も気にするようになってお風呂に入る回数を増やしているようなのですが、においは改善しません。
ふたりの子供も、義父のにおいを大変気にして、「友達を呼びたくない」「家にいたくない」と言うようになりました。
介護のにおいを解決するためにはどうしたらいいでしょうか。
―――という質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。
介決サポーターがお答えします!
ご相談ありがとうございます。
在宅介護における「におい」に困っているということですね。
在宅介護では介護が必要な方とご家族が同じ空間を共有するので、においの問題は避けて通ることはできません。介護・介助にともなう身体的な負担だけでなく、においなどによる精神的な負担も在宅介護の大きな課題です。
在宅介護のにおい、これを少しでも改善できるよう、提案をさせていただきます。
在宅介護における様々なにおい
在宅介護におけるにおいには様々な種類があります。主なにおいはこの3つです。
- 失禁やポータブルトイレへの排泄による排せつ物のにおい
- 口臭
- 体臭
消臭剤で知られるエステー株式会社が自宅で介護をする人を対象に行った介護の困りごとのアンケートでは、「介護時のにおい」が「自分の精神的負担」「自分の身体への負担」「要介護者の食事の準備」に次ぐ第4位にランクインしています。およそ30%の介護者が介護のにおいに困っていることが調査によって明らかになっています。
においの問題は深刻です。実際に介護をしている時間だけでなく、そこで生活している以上は常に逃れることができません。
家族団らんのときにも、おいしい食事を食べるときにも、体を休めているときにも、においがずっと離れないのは精神的に大きな苦痛になります。
中には、においに対して過敏になりすぎて、自分の衣服にもにおいがついているのではないか、と外出することを躊躇してしまう方もいます。
介護のにおいの問題は根本的に解決することはできません。でもちょっとの工夫で改善できる可能性もあります。今回はにおいを軽減するためのポイントを紹介していきます。
介護のにおいを軽減する3つの方法
在宅介護のにおいを少しでも軽減したい、と考えているあなたに試してほしい方法を3つご紹介します。いずれもすぐに取り組むことができるものを集めました。
においの改善方法、ひとつずつ解説していきます。
こまめに換気をする
在宅介護のにおいを軽減する方法、ひとつ目はこまめに換気をすることです。
例えばおむつ交換をした後、窓を閉めたままにしていませんか?おむつ交換をした後や、失禁があった後など、排せつのにおいが部屋の空気中に漂います。このにおいが部屋の壁や床に付着し、部屋の中に不快なにおいが残ってしまうのです。
まずは、このにおいを部屋の中にとどまらせないこと。そのための換気です。
換気する上で重要なのはタイミング。強いにおいが発生したときにはすぐに換気し、においを追い出しましょう。
窓を二か所開けるか、窓とドアを開ける、窓を開けて換気扇を回すなど、空気の通り道を作ってあげて、不快な空気を外に追い出すようにしましょう。窓を一か所開けているだけでも効果はありますが、空気の通り道ができないため循環が悪くなります。空気が出入りできるように窓やドアなど、二か所以上を換気のために開けましょう。
排泄があったときだけに限らず、高齢者は部屋に閉じこもる時間が増えやすいため、部屋に臭気がとどまりやすく、体臭・口臭なども残りやすいです。こまめに換気することで、空気を入れ替えることを意識しましょう。
介護を長く続けていくためには介護に適した環境が必要です。
もちろん、ウイルスや感染症対策のためにも換気は重要です。換気をする習慣をつけることを心がけましょう。
窓を長時間開けていると暑い・寒いというときもあります。そんな場合は、空気清浄機を使うこともおすすめです。消臭効果の高い空気清浄機や消臭・脱臭機能に特化した空気清浄機などもあります。においをセンサーが感知して強力消臭を行う機能がついているものもあります。
空気清浄機の効果に不安な場合や、在宅介護が必要な期間だけ使いたいという方もいらっしゃると思います。そんな場合は空気清浄機のレンタルがおすすめです。
タイミングよく、効果的に換気をすることで、フレッシュな空気を取り入れるよう心がけましょう。
在宅介護のにおいを軽減する方法ひとつ目、換気をすることを解説しました。
消臭剤を利用する
在宅介護のにおいを軽減する方法、ふたつ目は消臭剤を利用することです。
においを消すための消臭剤も種類が増えています。消臭剤メーカーも近年、尿臭や体臭など介護のにおいの問題に取り組み、積極的に商品開発を行ってきました。
従来の消臭剤では便や尿などの強いにおいを消すことはできず、においが消えませんでした。かといってトイレ用の消臭・芳香剤は狭い空間で使用する目的に作られているため、部屋の中に漂うにおいを取り除くことができません。においをにおいで誤魔化すために芳香剤を置く方もいますが、においが混ざり合って余計に嫌なにおいになってしまうこともあり、介護のにおい問題を解決することはできませんでした。
介護のにおいを取り除くためには、介護のにおいに特化した消臭剤が効果的です。
花王やエステー、アース製薬など、消臭剤の大手メーカーからも、介護のにおいに特化したシリーズで商品展開しています。各社商品に特徴がありますが、商品としては以下のようなものがあります。
ドラッグストアなどに行くと、消臭剤コーナーではなく、介護用品コーナーで販売していることも多いのでチェックしてみましょう。また、ネットショッピングなどで購入するのもおすすめです。以下に一例を紹介します。
介護のにおいには介護のにおいに特化した消臭剤を使いましょう。
在宅介護のにおいを軽減する方法ふたつ目、消臭剤を利用することを解説しました。
排せつ物の処理方法を工夫する
在宅介護のにおいを軽減する方法、みっつ目は排せつ物の処理方法を工夫することです。
介護のにおいの中で最も強く不快感につながりやすいのが尿や便による排せつ物のにおいです。捨てた後も、においが残ることが多く、介護者の頭を悩ませます。
排せつ物の処理方法を工夫することが、においの軽減につながります。
紙おむつの中の排せつ物を処理するとき、そのままビニール袋に入れてゴミ箱に捨てるという方が多いと思います。しかし、ビニールで密封しているはずなのに、においはビニール袋の隙間から外に漏れだして、不快なにおいが残ってしまいます。これをひと工夫してにおいを軽減しましょう。
まず、排せつ後のおむつをすぐに丸めてビニール袋に入れるのではなく、トイレに流せそうな排便があればまずトイレに流しましょう。使用後の紙おむつをビニール袋に入れるときも、そのままビニール袋に入れるのではなく、紙おむつをいったん新聞紙などでくるむと、新聞紙がにおいを吸ってくれますので、ビニール袋の外ににおいが漏れにくくなります。紙おむつを入れたビニール袋は、屋外の蓋つきポリバケツなどに入れておきましょう。もちろん、ポリバケツにも消臭スプレーをするなど、におい対策をしておきましょう。
ポータブルトイレのにおい対策も重要です。ポータブルトイレのバケツには消臭液を入れておくだけでなく、排せつ物は早めに捨てる、使わないときはポータブルトイレのバケツの蓋は閉めておくなどの対策が有効です。
ポータブルトイレの選び方も重要です。ポータブルトイレの中には消臭・脱臭機能がついた商品もあります。ポータブルトイレが排せつ物を一回ごとに密封して処理、においを閉じ込める商品もあります。
水洗ポータブルトイレを利用する方も増えています。水洗ポータブルトイレは介護保険の特定福祉用具として購入補助も受けられます。水洗ポンプのついたポータブルトイレで、排せつ物は専用ホースを通して下水に排出されますので、排せつ物のにおいを残さないのはもちろん、排せつ物処理の手間もありません。
ポータブルトイレにも様々な種類がありますので、においを残さない商品を選びましょう。詳しく知りたい方は福祉用具専門相談員に相談しましょう。
在宅介護のにおいを軽減する方法みっつ目、排せつ物の処理方法について解説しました。
在宅介護のにおいを軽減する方法を3つ紹介しました。
まとめ
在宅介護の大きな悩みのひとつであるにおいの問題について解説しました。
根本的な解決は難しい問題ですが、ちょっとした工夫で介護のにおいは減らしていくことができます。少しでも快適な生活空間にしていくことで、ストレスから自分を守りましょう。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)