訪問マッサージと訪問リハビリの違い。医療保険で併用できる?大きく異なる3つのポイントを整理。

訪問マッサージと訪問リハビリの違い。 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

介護が必要になってサービスを利用することになると、似ているサービスがあることに気が付きます。そのうちのひとつが、訪問マッサージと訪問リハビリ

どちらも家に来てもらって、マッサージやリハビリをしてもらうサービス、ということはわかるのですが、この二つのサービスはどう違うのでしょうか。

また、この二つのサービスを同時期に利用する「併用」はできるのか。

実際に利用するとしたらどちらのサービスの方がいいのか。

そんな悩みをこの記事で解決していきたいと思います。ぜひお付き合いください。

この記事で解説していること

  • 訪問マッサージと訪問リハビリの違いについて
  • 訪問マッサージと訪問リハビリは併用できるかどうか
  • 訪問マッサージまたは訪問リハビリはどんな人におすすめできる?

この記事をお勧めしたい人

  • 訪問マッサージもしくは訪問リハビリを検討している人またはそのご家族
  • サービスの導入を検討しているケアマネジャーさん

訪問マッサージ・訪問リハビリとは

訪問マッサージとは

訪問マッサージはあん摩マッサージ指圧師がご自宅を訪問し、あん摩・マッサージ・指圧などの療法で施術することをいいます。血液やリンパの循環を改善することや関節を動かすことで、痛みを緩和し、動きにくくなった関節を動きやすくすることを目的としています。

利用者の多くは高齢者で、自力での通院が難しい方に限定されます。

料金は医療保険で定められていますが、施術する部位の数・往療料(出張費用)・保険の負担割合で異なります。

近年、高齢化が進むとともに、訪問マッサージの事業者の数も大幅に増えています(※1)。

訪問リハビリとは

訪問リハビリは介護保険のサービスのひとつで、自宅を理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのセラピストが訪問し、リハビリテーションを行うものです。医師の指示に基づいて、計画的にプログラムを実施し、機能改善を目指すサービスです。

詳しくはこちらの記事に掲載していますのでご参照ください。

訪問マッサージと訪問リハビリの大きな違い3点

まず結論から申し上げますと、訪問マッサージと訪問リハビリは根本的に異なるサービスであるということ。

その大きな違いを3つのポイントから解説していきます。

訪問マッサージと訪問リハビリの比較。

サービス提供者の違い

まず、誰がサービスを提供しているかの違いを説明します。

訪問マッサージは国家資格であるあん摩マッサージ指圧師の資格を持ったマッサージ師が自宅を訪問します。あん摩マッサージ指圧師は、「あん摩」「マッサージ」「指圧」という技術を用いて、利用者の体に直接触れて施術を行います(※2)。

これに対して、訪問リハビリは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という国家資格を持ったセラピストが自宅を訪問します。それぞれの専門領域を活かしつつ、利用者の自立支援のために運動プログラムを実施しています。

サービス提供者が異なるだけでなく、運営母体・法人も異なります。

訪問マッサージは法人ではなく、個人事業主でも保健所や税務署の認可を受ければ保険適用のサービスを提供することが可能です。

それに対して、訪問リハビリは介護保険で訪問リハビリ事業所の指定を受けたクリニック・病院・介護老人保健施設などの医療機関に限られます

このように、訪問マッサージと訪問リハビリでは、サービスを提供する主体が異なります。これがひとつめの大きな違いです。

訪問マッサージ訪問リハビリ
サービス提供者あん摩マッサージ指圧師(国家資格)理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(国家資格)
運営母体法人・個人事業主も可クリニック・病院・介護老人保健施設
(介護保険指定訪問リハビリ事業所)
サービス提供者による訪問マッサージと訪問リハビリの違い

利用する制度の違い

次に、利用する制度・保険の違いについて説明します。

訪問リハビリテーションの様子

訪問マッサージは医療保険の対象になります。ただし、これは医師による同意書が発行された場合に限ります。同意書は最長半年の期間で発行され、同意書の期限内であれば保険適用となるため、医療保険の負担割合に応じて訪問マッサージを受けることができます。
同意書を発行する医師はかかりつけ医や介護保険上の主治医に限らず、本人を診察している医師であれば診療科を問わず発行することができるものとなっています。
医師の同意が得られなかった場合は、自費(保険適用外)で訪問マッサージを受けることが可能です。

これに対して、訪問リハビリは介護保険の対象サービスとなります。介護保険認定(要支援1以上で利用可能)を受けている方であれば、1割~3割の自己負担でサービスを受けることができます。
訪問リハビリでは、リハビリ医による指示書が必要になります。指示書は訪問リハビリ事業所に勤務する医師が発行します。かかりつけ医が別の医療機関に勤務する医師であっても、かかりつけ医からの情報提供を受けて訪問リハビリ事業所の医師が指示書を発行する形になります。

また、制度の違いにより、訪問マッサージには交通費がかかるものの、訪問リハビリにはかからないなどの違いがありますので注意しましょう。

訪問マッサージ訪問リハビリ
制度医療保険介護保険
利用条件医師の同意書がある
医療保険加入者である
リハビリ指示書がある
介護保険認定を受けている
交通費かかるかからない

サービス内容の違い

訪問マッサージと訪問リハビリの違い、最後はサービス内容の違いです。

立位・立ち上がりの練習

訪問マッサージは主に筋肉の緊張の緩和や痛みの緩和、リラクゼーションの促進を目的としています。「あん摩」「マッサージ」「指圧」だけでなく、鍼灸師の資格を持っているマッサージ師であれば鍼や灸による療法を提供することも可能です。領域としては主に東洋医学の分野となっています。

それに対して、訪問リハビリはリハビリテーション専門職による評価と計画に基づいた機能訓練を行います。身体的な障害や疾患、生活上の課題などに応じて、運動療法・作業療法・言語療法などを提供しています。西洋医学におけるリハビリテーション領域が専門分野になります。

痛みや不調を取り除くことを目的とした訪問マッサージに対して、機能の改善や日常生活の課題解決などを目的とした訪問リハビリという違いがあります。

訪問マッサージ訪問リハビリ
提供内容あん摩
マッサージ
指圧
鍼(有資格者のみ)
灸(有資格者のみ)
理学療法
作業療法
言語療法
サービスの目的筋緊張の緩和
痛みの緩和
リラクゼーション
機能の改善
日常生活上の課題解決

訪問リハビリが訪問マッサージ化しているという批判も耳にします。利用者の顧客満足として「快」を追求した結果、徒手的療法といわれるマッサージが中心になってしまう場合もあります。

もちろん、リハビリでのマッサージをすべて否定することはないと思います。関節拘縮の緩和や可動域の拡大など、機能訓練の一環としてマッサージが効果のある場面もあります。その行為の目的がどこにあるのかが明確になっているかどうかが重要であると言えます。

以上、3つの視点から、訪問マッサージと訪問リハビリの違いについて解説しました。

訪問マッサージ業者の中には「訪問リハビリマッサージ」と銘打っているところもあります。

あくまで訪問マッサージとして訪問を行うのですが、マッサージとあわせて可動域の訓練や歩行の練習なども行うというものです。ただ、訪問マッサージはあくまであん摩マッサージ指圧師が提供するサービスです。リハビリの専門資格を持っているわけではないので、リハビリという名称を使うことで誤解を招くという指摘もあります。

介護施設に入所している場合など、施設内でリハビリ職員がいない場合は外部から保険を使ってリハビリのサービスを利用することができません。訪問マッサージであれば保険対象になるため、リハビリに近いことを行うことが多い傾向です。

リハビリとマッサージ、ふたつの行為には明確な区分けがあるので、理解しておきましょう。

訪問マッサージと訪問リハビリは併用できる?

訪問マッサージと訪問リハビリ。この2つのサービスは、同時期に利用(併用)することができます。

リハビリでの歩行訓練

一般的に介護保険と医療保険の両方の制度を使ったリハビリの利用は認められていません(※4)。

そのため、「医療機関での外来リハビリ」と「介護保険の訪問リハビリ・通所リハビリ」は併用禁止となっています(※5)。

ただし、訪問マッサージは医療保険のサービスですが、「リハビリ」ではなく、「マッサージ」であるため、同じ時期に両方のサービスを利用することができます。たとえば、月曜日は訪問リハビリを利用して、火曜日と金曜日には訪問マッサージを受ける、ということもできます。

目的が異なるサービスなので、2つのサービスは対立するものではありません。それぞれの特徴・専門性を生かし、相乗効果を得ることも可能です。

目的に応じて必要なサービスを検討しましょう。

訪問マッサージと訪問リハビリ、どちらがおすすめ?

訪問マッサージと訪問リハビリ。どちらがおすすめか

これはサービスを利用する側が何を最も望んでいるか、によって異なります。

もし、体の痛みが強く、痛みを緩和したいという人であれば訪問マッサージを利用するといいでしょう。

転ばずに歩けるようになりたい、できる動作を増やしたい、という人であれば訪問リハビリを利用するといいでしょう。

このように目的に応じて利用するサービスを決めていくことが大事です。

具体的には、以下のような人におすすめしたいと思います。

訪問マッサージをお勧めしたい人

  • 体の痛みを緩和したい人
  • 体の拘縮が強く、緊張をほぐしたいと思っている人
  • 病気の影響で血流・リンパの流れが悪く、老廃物の排出などを促したい人

訪問リハビリをお勧めしたい人

  • 転倒しないように歩行や立ち座り動作の練習をしたい人
  • もともとやっていた趣味活動や外出などの一連の動作を回復したい人
  • 嚥下機能や、発語のトラブルを改善したい人

両方のサービスを併せて利用することで、相乗効果を得られる場合もあります。マッサージで痛みを緩和し、リハビリで昨日の改善を目指すこともできます。マッサージで関節可動域を改善し、リハビリでできる動作を増やすことも可能です。

介護保険制度では訪問看護以外に、訪問看護ステーションから理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問する「訪問看護」があります。

訪問リハビリと同じように機能訓練のサービスを提供しますが、単位数の違い、訪問看護師との連携や、かかりつけ医による訪問看護指示書が必要など、訪問リハビリとの違いがあります。

他のサービスとの組み合わせや事業所の選び方など、ケアマネジャーさんや地域包括支援センターと相談し、利用を相談しましょう。

参考文献

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


在宅介護のことはじめ

コメント

いえケア 在宅介護の総合プラットフォーム
タイトルとURLをコピーしました