住宅改修における扉の変更:ケアマネジャーが抑えたい理由書の具体的な書き方・ポイントは?(例文付き)

住宅改修理由書の書き方、扉の変更のポイント、文例・記載例 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

介護保険の住宅改修には「住宅改修が必要な理由書」の作成が必要です。この書類がなければ申請が通りませんし、保険適応の工事ができなくなってしまいます。そんな理由書の作成でこんな声をよく聞きます。

ケアマネジャー
ケアマネジャー

理由書を作るときに困るのが「扉の交換」。たまに折れ戸に変更するとか、引き戸に変更するとかの工事があるんだけれど。どう書いたらいいのかわからない。開けやすくなるのはわかるんだけれど、それを具体的に必要性が伝わるように書くって難しくないですか?

いえケア編集部
いえケア編集部

それよく言われるんです。理由書の書き方で一番困るのが「扉の変更」だって。なんとなくイメージはできるけれど文章に起こすのが難しい!って。具体的な書き方・例文も含めて紹介します!

【この記事を読んでほしい人】

  • 住宅改修理由書を作成するケアマネジャー
  • 住宅改修の提案をする福祉用具専門相談員
  • その他理由書を書く機会がある専門職

【この記事に書いてあること】

  • 扉の変更の利点
  • 理由書の書き方ポイント
  • 理由書の例文

開き戸のリスクと問題点

まずは開き戸のリスクと問題点について紹介します。

多くの住宅で開き戸が採用されている理由

多くの日本の住宅では開き戸が採用されています。東京都が平成28年に調査したデータによると、室内扉の76.2%は開き戸となっています。扉の形状としては、開き戸が圧倒的に多数を占めていることがわかります(平成28年度調査 ドアの安全性に関する調査報告書:東京都生活文化局消費生活部)。

開き戸が多く採用されている理由としては以下のようなものがあります。

  • 断熱性・気密性が高い
  • 遮音性が高い
  • デザインの自由度が高い
  • スペースの確保がしやすい

このような理由から開き戸が多く使われています。ただ、高齢者の住まいとして、必ずしも開き戸が最適解になるわけではありません。デメリットについても紹介します。

開き戸のリスクと問題点

日本の住宅で多く採用される開き戸にも様々な問題点があります。

  • 開閉時のデッドスペースが大きい
  • 開閉時に前後の重心移動が必要になる
  • ドアの前に物を置けない

以前にもこちらの記事で紹介したように扉はその形状によって様々なメリットデメリットがあります。

特に高齢者や介護を必要とする方にとっては開き戸が大きな壁になってしまう場合もあります。

例えばこのような場面、想像できませんか?

外開きの開き戸を引いたときに、後方に体を避けようと思って後ろに一歩足を引こうと思った瞬間にバランスを崩して転倒する

開き戸の扉を押して中に入ろうとしたら、足がすくんで前に出ない。手がドアノブから離れず、そのまま前方に向かって倒れてしまう。

内開きの浴室開き戸。浴室の洗い場が狭く、シャワーチェアも置いているので体を避ける場所がない。浴室内から外に出るために扉を開けると、扉の開閉でスペースが奪われ、浴室内のスペースが少なくなり、立つ場所がない。浴室内で介助している家族も一緒に転倒してしまう。

こんな事故を無くすために、扉の変更は非常に有効な手段となっています。

もちろん、折れ戸や引き戸の変更には建物構造上の制約もありますが、転倒を予防するという観点で見た場合、ひとつの有効な解決策となります。

理由書の書き方ポイント

扉の変更、理由書の書き方ポイント

具体的な困難な状況

では、具体的に理由書の書き方の説明に移ります。

今回は標準様式と言われるこちらの様式(裏面)をもとに記載のポイントと具体例を紹介していきます。

住宅改修理由書標準様式
具体的な困難な状況

理由書では、「改善を必要とする動作について、具体的な困難な状況」を記載します。

扉の開閉にかんする動作で開き戸であることがどのような課題・困難さを生んでいるかを記述します。

その場の状況もよく観察しましょう。ただ単に扉が開き戸であるという事実だけではなく、扉周辺のスペースにある障害などもよく観察しましょう。足場が悪い状況ではないか、滑りやすい床面ではないか、そのような事情もふまえて記載するといいでしょう。
扉のサイズが大きければ大きいほど、扉の開閉時に必要になるスペースが大きくなります。

このような具体的情報も加味してなぜ困難なのか、どんなリスクがあるのかを文章にしていきましょう。

改修の方針

改修の方針

改修を行った結果どうなることが期待されるかを書きます。

つまり、開き戸を引き戸もしくは折れ戸に変更した結果、利用者の動作はどのように変わり、利用者の生活がどう好転するかを書くのです。

転倒のリスクが軽減することや本人の不安が軽減されること、介護者がいなくても動作が自立できることなどが記載されているといいですね。

ただ、本人の自立支援として直結しない内容は基本的にNGです。たとえば、以下のような内容だと、住宅改修が必要な理由として認められないことが多いです。

  • 扉周辺のスペースが広くなって荷物を置く場所を作れる
  • 扉の外にがいるのに気が付かずに扉を開けてしまい、本人と扉がぶつかる事故が起きなくなる
  • トイレ内で倒れるようなことがあっても扉を外から開けることができるようになる

以上のような記載方法のポイントを踏まえて理由書を作成しましょう。

住宅改修理由書の記載例

具体的に例文として書き起こすと以下のような内容になります。パターン別に3つ紹介します。

[排泄] トイレ出入口の出入(扉の開閉を含む)

(具体的な困難な状況)
トイレの扉は外開きの開き戸で、入室時に扉を引く際には後方に体を避ける必要がある。疾患による姿勢保持困難があり、立位バランスが保てず、後方に転倒するリスクが高い。
また、トイレから出る際にはすくみ足の症状があり、一歩が踏み出しにくい。扉のドアノブを握りこんだまま離すことができず、前方に体が引っ張られてしまい、転倒するリスクも高い。

(改修の方針)
トイレの扉を開き戸から引戸に変更することにより、前後の重心移動をすることなく、その場に立ったままの状態で扉の開閉を行うことができる。トイレ出入口の出入りの動作時における転倒リスクを軽減し、排泄の自立を維持することができる。

[入浴] 浴室出入口の出入(扉の開閉を含む)

(具体的な困難な状況)
浴室扉は内開きの大きな開き戸。扉を開くときには後方に体を避ける必要があり、後方への重心移動でバランスを崩して転倒する危険性がある。浴室床面はタイルのため滑りやすく、左下肢の踏ん張りがきかないことから転倒のリスクが高い。
また、浴室スペースは狭く、扉の開閉時にはさらにスペースが制限され、立つ場所も限られる。妻が浴室内で入浴の介助をしており、妻のスペースも限られ、本人含めた多重事故になる可能性も大きい。

(改修の方針)
浴室の扉を内開きの開き戸から折れ戸に変更することによって、扉開閉時に重心移動が少なくなり、安全な操作ができるようになる。また、開閉スペースが小さくなることで、その場に立ったまま体を避ける必要はなくなり、限られたスペースでも安全な移動が可能となる。
転倒リスクを軽減し、今後も自宅浴室での入浴が継続できる。

[外出] 出入口の出入(扉の開閉を含む) 歩行器利用の場合

(具体的な困難な状況)
玄関扉は外開きの開き戸。本人は歩行器を使用して外出をしている。帰宅時、玄関扉の前まで歩行器で移動するものの、歩行器が開口部を塞いでしまうため、扉を開くことができない。歩行器を無理に避けようとして歩行器語と転倒する危険性あり。また、歩行器から離れるとふらつきがあるため転倒のリスクが高い。

(改修の方針)
玄関扉を開き戸から引き戸に変更することにより、帰宅時にも歩行器で立位を保持したまま扉を開くことができる。歩行器のまま玄関の中まで移動することができるようになる。転倒リスクが軽減し、本人の不安感が軽減され、外出の機会維持につなげることができる。

どうでしょうか。だいぶ表現が具体的になっているように見えませんか?あくまで参考例ですので(コピペしても構いませんが)、必ず申請が通ることを保証するものではありません。

まとめ

ケアマネが意外と頭を悩ませることが多い扉の変更に関する住宅改修理由書の書き方を紹介しました。参考になったでしょうか。

理由書の作成は手のかかる作業で、具体的な文章に書き起こすというのは慣れていないと時間もかかります。ケアマネジャーは普段、もう少し大枠で利用者本人の動作や行動を見てプランなどを作成していると思うのですが、理由書の場合はよりピンポイントの場面で状況を掘り下げて観察・文書を作成するという作業になります。ケアマネジャーの業務としては、ちょっと毛色が異なるものという印象もあります。

ただ、理由書に記載する内容のポイントを把握することで、時間の短縮・業務効率化ができます。

こちらの記事にも書きましたが、住宅改修が本人の自立支援に結び付いており、他のサービスに比較して費用対効果があり、保険者(市町村)を納得させるものであることが大事です。

自信をもって理由書を作成できるようになれるといいですね。

参考資料

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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