いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
訪問介護サービスは自宅にホームヘルパーが訪問し、身体介護や生活援助といったサービスを提供します。サービス利用者の生活の基盤を支える重要なサービスですが、何でもできるわけではありません。
ヘルパーさんにお願いしたら「それはできません!」って言われて。
なんで?別に時間余ったらそれくらいやってくれてもいいじゃない、と思ったんですけど、ヘルパーさんは「できない」「決められているので」の一点張り。ちゃんと説明してくれればいいのに。なんでできないのか理由をちゃんと教えてしてほしい。
ヘルパーさんは在宅介護を支えてくれる本当に心強い存在なのですが、なんでもお願いできるわけではないんです。なかなかそれが知られていないので、いらぬ誤解や混乱が生まれてしまうんですよね。
誤解を生みやすい訪問介護サービスの提供内容についてわかりやすく解説していきます。
【この記事をお勧めしたい人】
- 訪問介護を利用していて、介護保険で他のことも頼めるか悩んでいる人
- 訪問介護に依頼できる内容を確認したいケアマネさん
【この記事でお伝えしていること】
- 訪問介護でできることとできないこと
- 訪問介護・介護保険でできないことをどう解決するか
訪問介護はお手伝いさんや何でも屋さんではない
最初に結論からお伝えするのですが、訪問介護はお手伝いさんや何でも屋さんではありません。利用者に言われたことを何でもやる仕事ではなく、できることと、できないことがあります。これは訪問介護のルールとして定められているのです。
なぜ訪問介護のサービス内容は細かく決められてしまうのか、なぜ使いにくいと感じてしまうのか、訪問介護サービスの特徴も含めてお伝えします。
介護保険の制度上、定められたサービスしか提供できない
訪問介護サービスは介護保険のサービスです。制度に定められたサービス内容・ケアマネジャーがプランに位置付けたケア内容しか提供できません。
なぜそんなに融通が利かないのか。それは、介護保険と言う保険から給付されるサービスだからです。
全額介護保険を使わずに100%自腹で払う契約であれば、制度上の縛りはありません。契約内容が両者合意できていれば、制度上のルールを気にすることなく希望するサービスをお願いできます。
ただし、介護保険制度のサービスとして行われる以上は、費用の7割から9割分は介護保険から事業者に支払われます。利用者が支払うのは1割から3割分だけなのです。その介護保険の財源となっているのは、国民が支払う保険料と税金です。保険料と税金を投入するサービスを、利用者の希望だからといって、好きなように使って許されるわけはありません。
要介護認定を受けているというだけで、何でもかんでも好きなように介護保険でサービスを利用することはできません。ルールを逸脱した介護保険サービスの利用は、不正利用・不適切なサービスとみなされます。
不適切なサービス提供に関しては、事業者側も不正受給として処分を受けるため、事業者側としては厳格にルールを守らなければいけません。
このように、介護保険サービスである以上、ルールに則っていないサービスは提供できないという事情があるのです。
訪問介護サービス事業所やケアマネジャーに相談を
では、訪問介護サービスってどこからどこまで大丈夫なの?という疑問が生まれます。
もちろん、厳格にルールで定められている部分もありますが、個別具体的な状況によってAさんは必要性が認められるけれど、Bさんはダメ、という場合もあります。また、市町村によって判断が分かれるケースもあります。
どこからどこまで介護保険で認められるのか、これは訪問介護でお願いしていいのか、疑問があれば、訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者、担当のケアマネジャーさんなどに質問してみましょう。いずれにしても、担当しているヘルパー個人で可否の判断することはできないので、責任者やケアマネジャーさんとの協議が必要です。
訪問介護事業所の責任者やケアマネジャーだけで結論が出ない場合は、市役所などに確認してもらうことや、代替手段を活用するなど別の解決策を提案してもらう方法もあります。
ひとりで悩まないで相談することが一番です。
では、次の章から、訪問介護でできることとできないことを解説していきます。
訪問介護が介護保険でできること
まずは、介護保険で訪問介護サービスができることについて解説します。
訪問介護サービスは大きく2つの種類に分かれます。
まずはこの2種類の訪問介護サービスの特徴と違いを説明します。
身体介護
身体介護は、簡単に言えば利用者の身体に触れて介助を行うサービスです。定義としては以下のように定められています。
- 利用者さんの身体に直接接触して行う介助サービス
- 利用者さんのADL・IADL・QOLや意欲の向上のために、利用者さんと共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
- その他専門的知識・技術をもって行う利用者さんの日常生活上・社会生活上のためのサービス
具体的なケアの内容は以下のようなものになります。
これに加えて、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアに関しても、一定の研修を受けた介護職員であれば実施できます。
身体介護では見守り的援助というケアも認められています。利用者本人の自立支援のために家事を行う際に、見守りや声掛けでサポートすることも身体介護に含まれます。利用者自身の自立支援のためにヘルパーと利用者がともに行う家事は身体介護、ヘルパーだけが行う家事は生活援助として区分されます。
生活援助
生活援助は主にヘルパーが行う家事の支援です。
具体的には以下のような内容となっています。
利用者の代わりにヘルパーが掃除・調理・洗濯・買物といった家事を行うのが生活援助です。
身体に直接触れて日常生活上の介護を行う身体介護に対し、生活援助は利用者の身体に触れずに利用者の代わりに家事を代行するサービスです。家族の中に家事を行うことができる同居家族がいれば、生活援助のサービスは認められません。
身体介護と生活援助が基本ですが、それ以外にも通院等で車両への乗降介助を行う通院等乗降介助というサービスがあります。通院等乗降介助は通院や官公庁への手続き・選挙・介護施設の利用(ショートステイなど)・郵便局など、目的の場所が限定されます。趣味のための外出、外食などの利用目的は認められません。
この3種類に該当しないサービスは介護保険では認められません。
訪問介護サービスについての詳細やサービス事業所の選び方はこちらの記事をご参照ください。
では、介護保険では認められないサービスとは、どのようなものがあるのか。次の章で具体的に紹介していきます。
訪問介護が介護保険でできないこと
具体的に、訪問介護でお願いすることのできない内容を確認していきたいと思います。
ただし、特殊な事情などにより、保険者である市町村の判断で許可が出る場合もあります。ここから紹介するのはあくまで原則的なルールとして理解いただければと思います。
介護保険ではできないこと
介護保険ではできないことの例として、11の例を紹介します。
訪問介護で介護保険対象外となる理由を1つずつ詳しく見ていきます。
利用者の「家族」の分の掃除・調理・買い物など
訪問介護の生活援助で行うサービスは、家族の支援はできません。あくまで本人への支援となります。同居家族がいる場合、生活援助のサービスは厳しく制限されると理解しましょう。
例えば、買い物ついでに家族分の食品を購入するようにお願いしたり、家族分の衣類洗濯をお願いしたり、家族の部屋の掃除をお願いすることはできません。
掃除に関していえば、同居家族との「共有部分」であるトイレ・浴室などの掃除はヘルパーにお願いすることは原則としてできません。掃除をすることができる家族が同居しているのであれば、同居家族が掃除をするか、保険外で掃除業者に依頼することになります。
同居家族がいたら生活援助のサービスは絶対に認められないわけではなく、認められる内容もあります。夫婦がともに介護認定を受けている場合や、もしくは介護認定を受けることができない事情がある場合、または虐待などの問題によりヘルパーが支援しなければいけない場合なども生活援助の利用が可能になる場合があります。
1人暮らしであっても、生活援助の利用は要介護認定区分ごとに一か月ごとの基準回数が定められており、頻回な生活援助の利用は認められない場合があります。
草むしり・庭の手入れ
庭の手入れや草むしりなどは介護保険では認められません。
庭が荒れ放題になっている、草が伸びて虫も湧いてくる、など庭の手入れをお願いしたい事情はそれぞれにあるのだと思います。ただ、介護保険では認められません。
ヘルパーにはお願いできないため、シルバー人材センターや地域のボランティア団体などにお願いする場合が多いようです。
日常生活で使用しない場所の掃除
本人が日常生活で使用しない場所に関して、ヘルパーは掃除できません。
2階に上がることはないのに、2階も掃除してほしい、というのはできません。本人以外の部屋ももちろん掃除できません。あくまで日常生活で使用しているかどうかがポイントになります。
ペットの散歩・餌やり
ペットの世話もヘルパーにはできません。
餌やりや散歩、ペットの排せつ物の処理もできません。買い物のついでにペットフードを購入することもできません。ペットも大事な家族の一員で心の支えになっている、とはいえ、家族分の食事や介護ができないのと同様、ペットに対するケアも介護保険対象外となります。
エアコンクリーニング・換気扇の掃除などの日常的ではない掃除
日常的な家事として行わない大掃除などは訪問介護の対象にはなりません。
油にまみれたレンジフードの掃除・換気扇を取り外しての掃除、エアコンクリーニングなどは介護保険の対象になりません。あくまで日常的な掃除を提供するのが訪問介護です。
エアコンのフィルター掃除などについては判断が自治体によって分かれることもあるようです。利用者が気管支ぜんそくのためにホコリでぜんそくの悪化の恐れがあるなどの場合は、ホコリの溜まりやすいフィルターや電球の傘なども掃除が認められる傾向があります。
同じ理由で、窓ふきも日常的な家事と認められないことが多く、介護保険対象外となる場合が多いです。ただ、窓の外を眺めるだけしか楽しみがない寝たきりの高齢者が、窓が汚れ、外を見ることすらできなくなる、というケースで窓ふきが認められた事例なども過去にはあります。
どこまで介護保険の範囲で認められるか、自治体の見解や個別の判断に委ねられる場合もありますので、確認しましょう。
家具・家電の修繕・移動・模様替えなど
部屋の模様替えをしたい、このタンスを動かしてほしい、と言われても訪問介護では対応できません。
男性のヘルパーさんなどもいますので、力仕事をお願いしたくなることはあるかもしれませんが、介護保険で行うことはできません。パソコンや携帯電話が壊れたから直してほしい、というのもヘルパーの業務範囲ではないので、専門業者に相談しましょう。コンセントが抜けたから差してほしいとかはできますが、専門外のことをお願いしてトラブルになる可能性もあり、ヘルパーで対応することはできません。
衣類の整理や夏・冬物の入れ替え(衣替え)などは訪問介護の内容として認められています。
電球交換については自治体によってルールが異なり、独居などの理由があればOKとしている地域もありますので、ケアマネジャーさん等によく確認することをお勧めします。詳細はこちらの記事をご確認ください。
酒・たばこなどの嗜好品の購入
酒やたばこは嗜好品として、訪問介護での買物では認められません。
「買物のついでだからいいじゃないか」という声もよく聞かれます。
訪問介護で購入できるのは日常的に必要な品物に限定されることや、酒やたばこは健康被害につながることから保険給付に馴染まないという見解です。以下の記事に示す通り、要介護状態になるきっかけとして、生活習慣が大きく影響しています。
特に健康リスクの大きい酒やたばこの習慣化を促進する行動を訪問介護が行うことは認められていません。
それ以外にも、宝くじやお中元やお歳暮の購入なども介護保険では認められません。
マッサージ
訪問介護ではマッサージを行うことも認められていません。これは、身体介護のメニューの中にマッサージが含まれていないためです。専門的知識のないマッサージで保険請求することは認められていません。マッサージに関しては医療保険対応の訪問マッサージを利用するのが基本となります。
入浴介助で体を洗うことや足浴で足をこすることなどはありますが、マッサージとしての提供は訪問介護のメニューではありません。
散髪
ヘルパーに髪を切ってもらうことも訪問介護では認められません。ただ、電気シェーバーを使った髭剃りなどは整容として訪問介護のサービスで可能です。日常的に行われることかそうでないことかで区分けされると考えるといいでしょう。外出ができない場合の散髪等は、訪問理美容などを利用することもできます。
趣味や娯楽目的の外出
通院のための外出付き添いなどは認められていますが、趣味や娯楽目的の外出はできません。例えば、ヘルパーと一緒に映画を見に行くことや、一緒に魚釣りに行くことなどは、訪問介護のサービスとして提供できません。
スーパーへの買い物の同行などは介護保険で認められます。「散歩」という内容では趣味や娯楽目的に分類されやすいのですが、「買物」という名目であれば、缶コーヒーひとつ買うだけでも(それが本人の生活習慣と結びついていれば)、ヘルパーと同行の外出も計画上認められる可能性もあります。
※厳密にはケアプランの目標達成につながるかどうかが重視されますので、ケアマネジャーと相談することをお勧めします。
病院内待ち時間の付き添い
通院介助の際、病院内での待ち時間は介護保険の対象になりません。病院内は医療機関の中ということで、訪問介護は適用外となってしまいます。病院内では病院が責任を持って対応するのが原則的なルールとなっているため、訪問介護はサービスを提供できないことになっています。
ただ、病院が人手不足などの事情で対応できないという事情や、頻回なトイレ介助や認知症のために座っていることができないなどの事情により訪問介護が対応する必要がある場合は介護保険の適用が認められています。この部分に関してはケアマネジャー・訪問介護事業所・病院も含めた判断が必要になります。
医療行為
医療行為も訪問介護では提供できません。ヘルパーは医療従事者ではないため、医師法第17条“医師でなければ、「医業」をなしてはならない。”というルールにより、医療行為はできません。
医療行為が必要な場合は、医師の指示を受けた訪問看護師などが対応することが基本です。ただ、たん吸引や経管栄養の注入などは、研修を受けた介護職員に限り可能なルールもあります。
また、以下の行為は医療行為に当たらないとされていますので、訪問介護でも対応することが可能であるという見解が示されています(医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知))。
たん吸引や経管栄養(胃ろう・経鼻経管栄養など)も医療行為として含まれます。ただし、たん吸引と経管栄養に関しては、医師による指示や研修を受講した特定のヘルパーであるなどの条件を満たせば認められる場合があります。
医療行為に該当するのか、ヘルパーで対応可能なのかは、ヘルパー事業所やケアマネジャーとよく相談して確認しましょう。
訪問介護で対応できない内容について解説しました。
できること、できないことを表で整理します。
できる | できない | |
身体的な介護 | 食事介助、排泄介助、更衣、洗面、入浴介助、体位変換、移乗、移動、服薬介助、通院や外出の介助 | マッサージ、散髪、趣味や娯楽目的の外出 |
家事に関する支援 | 利用者の生活スペースの掃除、一般的な食事の支度、洗濯、日用品の買い物、薬の受け取り | 利用者の家族のための掃除や調理、草むしり、家具・家電の修繕や移動、日常生活で使用しない場所の掃除、エアコンクリーニング、換気扇の掃除、ペットの世話(散歩・餌やり)、嗜好品の購入 |
医療行為 | (医療行為でないもの) つめ切り(爪・爪周囲に異常がなければ可)、湿布のはり付け、医師からの処方を受けた軟膏塗布・座薬挿入・薬の内服の介助、浣腸(市販のディスポーザブルグリセリン浣腸)、検温、血圧測定、 (特定の条件下において) たん吸引、経管栄養 | 医療行為 |
通院等乗降介助 | 医療機関・官公庁・銀行郵便局・選挙・介護保険施設等 | 趣味や娯楽のための外出・外食・冠婚葬祭など |
保険給付である以上、ついついお願いしたいと思ってしまう内容でも、保険内で提供できないことが多いことがわかります。
でも、「できません」と杓子定規に言われても困ってしまいます。訪問介護でできないのであればどんな方法で解決できるのか、次の章でそんな「困った」の解決法をお伝えします。
介護保険でできない場合の解決方法
介護保険で解決できないときには、これから紹介する3つの方法を検討してみましょう。
民間の保険外サービスを利用する
介護保険で対応できないことは、介護保険外で対応しましょう。
すべての困りごとを介護保険だけで解決するということはできません。介護保険外のサービスも組み合わせて課題を解決することが必要です。
食事の確保に関しては配食サービスの利用もひとつの解決手段です。保険適用ではありませんが、毎日食事の心配をしなくても済みますし、栄養バランスの取れた食事を確保できます。
掃除であればハウスクリーニング業者に相談する、という方法もあります。また、専門業者でなくても、便利屋などに依頼することもひとつの方法でしょう。金額は業者によって異なりますので、よく検討しましょう。
自費サービスオプションを利用する
訪問介護事業所では、介護保険外の自費サービスをオプションとして提供している場合があります。保険で対応できない部分を、ヘルパーが保険外の料金をもらって対応します。
ペットの世話や庭の手入れ、家族の分の食事なども含めて保険外のサービスを提供することが可能です。ただ、ヘルパーにも能力的にできないことがあります。例えば、高所での危険な作業や専門知識が必要なことなどは対応できません。どんなサービスが提供できるのかは事前に確認しましょう。
一般的に、介護保険分と介護保険対象外の分を続けて提供することが多く、1時間は介護保険分・30分介護保険外分も追加のように設定をします。
料金は事業所ごとに異なります。介護保険の訪問介護の契約とは別に自費サービス契約が事前に必要になりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
シルバー人材センターやボランティア団体などを利用する
地域のシルバー人材センターやボランティア団体にお願いすることもできます。
シルバー人材センターには庭の剪定や家具の移動などを得意とする男性ボランティアの方も多く登録しています。介護保険で対応できない作業も対応してくれます。地域の高齢者等がボランティアで自主グループを作り、地域の困りごとの解決をしてくれる場合もあります。
料金は団体や作業量によっても異なります。作業料以外に年間登録料などがかかる場合もありますので、事前に料金を確認しましょう。
介護保険だけに頼るのではなく、地域の助け合いなども活用しながら生活を維持する。厚生労働省の目指す「地域包括ケアシステム」では様々な主体が地域の課題解決に積極的にかかわることを理念としています。地域にどんな社会資源があるのか、ケアマネジャーや地域包括支援センターに確認しておくといいでしょう。
訪問介護、できる?できない?Q&A
いくつか、Q&A形式で訪問介護にできること、できないことを整理します。
- Qひとり暮らしで、自分で薬を飲むことができません。薬をセットして、飲ませることはできますか?
- A
訪問介護では服薬介助できる内容に制限があります。訪問介護でできる内容は以下の通りです。
- 病院の処方箋を薬局に出す・薬局に薬を受け取りに行く
- 服用時の水を準備する
- 配薬されている薬を確認し、セッティングする
- 薬を飲むように声を掛ける、必要に応じてコップに手を添えるなどして手伝う
- 飲み忘れ等がないかの確認
- 服薬後の後片付け
- 服用後の体調を確認
ヘルパーにできることは限られています。例えば、薬を服薬カレンダーにセッティングすること、まとまって入った袋の中から薬を選んで取り出すこと、薬を口の中に入れることなどはヘルパーにできません。薬の管理などは訪問看護を利用して、服薬カレンダーにセットしてもらえれば、ヘルパーはカレンダーから取り出して薬を利用者に用意することができます。
- Q買物を代行するのですが、利用者の希望が一番近くのスーパーではなく、もう少し先のスーパーでした。普段から少し歩いてでもそのスーパーで買っていたということですが、これは認められますか?
- A
認められます。必ずしも一番近い場所で買わなければいけないというルールではありません。それまでの日常生活で普段買物をしていた日常生活範囲であれば認められます。同様に、コンビニとスーパーがあって、コンビニの方が近いけれど、スーパーで普段買い物をしていたのであればスーパーで買物をお願いすることができます。ただ、時間などの制約があるため、不可能な場合もあります。
- Q高齢者夫婦2人暮らしで、奥様のケアに入っています。ご主人も足が悪くて買い物もできないので、奥様分の買物だけで訪問しています。ご主人のサービスは提供していないのですが、明らかにご主人分と思われる買物もお願いされます。これはいいのでしょうか?
- A
基本的にはダメです。本人が卵アレルギーなのに、なぜか買物リストに卵が入っている、のような明白な場合であればこれは断らなければいけません。ただ、どちらが使うのか、どちらが食べるのかというのは四六時中見張っているわけでなければわかりません。ちょっと一人分にしては多いな、という場合も、明日食べる分と言われれば断りにくいでしょう。
ケアマネジャーと相談して、ご主人と奥様分二人分のサービスに組み替えてもらうなど、サービスを見直していくことをお勧めします。
- Q褥瘡(床ずれ)があるのですが、排便でガーゼが汚染していました。このままだと褥瘡部の汚染でさらに褥瘡が悪化してしまいそう。患部を洗浄してガーゼを交換することはできますか?
- A
難しい判断ですが、褥瘡の処置はヘルパーではできないことが前提です。これは事業所によっても判断が分かれると思います。
例えば、汚染したガーゼを取り除き、水で汚染部を流す、新しいガーゼで保護するもしくは患部を保護するために褥瘡部を保護するための尿取りパッドを当てる、という対処をするパターンなどもあります。褥瘡部の対応に関してはあらかじめケアマネジャーとサービス提供責任者、看護師等と話し合っておくといいでしょう。
訪問介護事業所の現状
最後に訪問介護事業所の現状について説明します。いま、訪問介護事業所はどんな問題に直面しているのでしょうか。
慢性的な人手不足
訪問介護は今、深刻な人手不足となっています。
訪問介護のサービスを提供するホームヘルパーのなり手が少なく、訪問介護事業所は人員を確保することが困難になっています。厚生労働省の調べでは訪問介護の有効求人倍率はなんと15倍となりました。
訪問介護の仕事をしたいという人ひとりに対して、15社の企業が求人を出しているという有効求人倍率、まさに事業者によるホームヘルパー争奪戦が起きています。
介護報酬の単価が少ないため給与も安く、移動時間も多いため拘束時間が長く、利用者からのハラスメント被害を受けることもあるなど、ホームヘルパーが働く環境はまだまだ改善しません。求人を出してもなかなかホームヘルパーをしたいという人は集まらないというのが現状です。
ホームヘルパーの高齢化
ホームヘルパーの高齢化も深刻です。
令和2年度の介護労働実態調査によると、ホームヘルパーのうち25.6%、つまり4人に1人は65歳以上であることがわかりました。
反対に30歳未満のホームヘルパーは4%にも届きません。
ホームヘルパーをお願いしたら自分よりも年齢が上の人が来たという話も、決して珍しいことではなくなりました。ヘルパーの年齢バランスが偏っていることから、ますますホームヘルパーの人手不足が加速していくことが予想されます。
利用制限の強化
訪問介護はますます使いにくいサービスになっている傾向があります。
生活援助サービスの回数制限、訪問介護サービスの割合が多いケアプランが行政による指導対象になるなど、訪問介護サービスを取り巻く制限が増えています。今後も、訪問介護への縛りは多くなり、自由に使えないサービスになっていくのではないでしょうか。
訪問介護は身体介護に特化したサービスにしていきたいという財務省・厚生労働省の意向が強く反映されており、ホームヘルパーの役割は少しずつ変わっていくのかもしれません。
ホームヘルパーへのニーズは依然として大きいものの、人手不足や利用制限などにより、ホームヘルパーを取り巻く環境は大きく変わっていくことが予想されています。
2024年の介護保険制度改正では訪問介護と通所介護を合体した新サービスがスタートすると言われていました。ただ、この案は土壇場で白紙になり、次回報酬改定(2027年)に向けて再度議論を重ねる予定となっています。
まとめ
訪問介護サービスにできること、できないことを紹介しました。
介護保険では対応できないことを、介護保険外のサービスを組み合わせることで解決していくことが求められています。ヘルパーさんに何でもお願いして解決する、という時代ではなく、自分でできることを増やす、いろんな人の協力を得るという形で在宅生活を維持することが求められています。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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