介護保険の自己負担はどうやって決まる?自己負担割合の判定やサービス利用時の自己負担額の目安についても解説

介護の負担割合はどうやって決まるの? 介護コラム

この記事を監修したのは

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役

河北 美紀

介護保険サービスの利用料金の自己負担額は、所得に応じて1〜3割となります。ご自身の自己負担の割合は「介護保険負担割合証」で確認することができます。この記事では、介護保険の自己負担割合について詳しくお知りになりたい方向けに、自己負担の割合の判定基準やサービス利用時の自己負担額の目安について詳しく解説しています。

★こんな人に読んでほしい!

・自分や家族が介護保険を利用する場合の負担割合を知りたい方

・届いた介護保険負担割合証を何に使用するのか分からない方

・介護サービスを利用した場合の自己負担額の目安が知りたい方

★この記事で解説していること

・介護保険の自己負担の割合は、所得に応じて1~3割のいずれかに判定される。介護保険サービスを利用する場合は、自己負担分の割合に応じて利用料を支払う必要がある

・介護保険料の滞納などにより未納期間がある場合、保険給付を制限する措置が取られ、介護サービスを利用する際の金銭的負担が増大する可能性がある

・介護保険の自己負担割合は毎年7月に届く介護保険負担割合証で確認することができ、適用期間は1年間である

・介護保険負担割合証は、介護保険被保険者証と一緒に保管し、介護サービスなどを利用する際には、サービス事業者や施設に必ず提出するようにしましょう

・住宅改修(介護リフォーム)や特定福祉用具購入の際にも介護保険の自己負担割合が適用され、介護保険による給付を受けることができる


1. 介護保険の自己負担割合は前年の所得によって決まる

1-1. 介護保険制度とは

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして設けられた国の制度*1です。40歳以上の国民すべてが介護保険の加入者(被保険者)となり、徴収される保険料が財源となっています。被保険者に介護が必要となった場合には介護サービスが提供され、収入に応じて1~3割の自己負担で介護サービスを利用することができます。原則、介護保険を利用できるのは要介護認定を受けた65歳以上からですが、40~64歳の方も介護保険で規定されている特定疾病が原因で介護が必要と判断された場合は、介護サービスが利用できます。

介護保険制度の仕組みや対象者など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

1-2. 介護保険の自己負担割合は所得に応じて1~3割

介護保険の負担割合は1割・2割・3割負担の3種類

介護保険サービスを利用した場合の利用者の自己負担額は、前年の所得に応じて負担割合が1~3割となります。以前までは、1割または一定以上の所得のある方は2割の負担割合でしたが、介護保険法の改正により、2018年8月から現役並みの所得がある方は負担割合が3割となりました*2

支払い方法は、制度上、一度利用者が全額を支払い、あとで市区町村から自己負担の割合に応じて7~9割の費用を受け取る「償還払い」となっていますが、実際は利用者の便宜を考え、自己負担割合に応じて市区町村がサービス事業者に利用料の7~9割を支払う「現物給付」となっています。そのため、利用者がサービスを利用した場合、利用者は自己負担分の支払いのみで済みます。

所得区分と自己負担の割合の判定表*3.4.5

所得区分自己負担割合
65歳以上で次の①、②の両方を満たす方①65歳以上で本人の合計所得金額(※1)が220万円以上②年金収入(※2)+その他の合計所得金額(※3)が・単身で340万円以上 または・65歳以上の方が2人以上いる世帯で463万円以上3割
65歳以上で次の①、②の両方を満たす方で、3割負担とならない方①65歳以上で本人の合計所得金額(※1)が160万円以上②年金収入(※2)+その他の合計所得金額(※3)が・単身で280万円以上 または・65歳以上の方が2人以上いる世帯で346万円以上2割
次のいずれかの方・65歳以上で本人の合計所得金額(※1)が160万円未満の方・40~64歳の方・生活保護を受給している方・住民税が課税されていない方1割

※1:収入金額から必要経費に相当する金額(収入の種類により計算方法が異なる)を控除した金額のことで、所得控除(扶養控除や医療費控除など)をする前の金額。なお、分離譲渡所得に係る特別控除がある場合は、合計所得金額から特別控除額を控除した額を用いる。

※2:非課税年金(障害年金・遺族年金)を含まない

※3:合計所得金額から、年金収入に係る雑所得を除いた金額

介護保険料を滞納している場合は、上記の所得区分に関わらず、給付制限に応じた割合の自己負担割合となります。くわしくは、次の「1-3.介護保険料の未納期間がある場合の負担割合は?」をご覧ください。

1-3.介護保険料の未納期間がある場合の負担割合は?

介護保険料の滞納があると、保険給付を制限する措置が取られます。保険料の未納期間によって給付制限内容は異なります。

未納期間と給付制限内容*6.7.8

未納期間サービス利用時の給付制限内容
1年以上償還払い(一度利用者が全額を支払い、あとで市区町村から所得に応じて7~9割の費用を受け取る)となる
1年6ヶ月以上償還払いとなるが、滞納している介護保険料が納付されるまで、その後申請しても保険給付9割(一定以上の所得がある方は8割または7割)が支払われず差し止めとなることがある。また、滞納が継続している場合は、差し止められている保険給付から滞納している分の介護保険料に充てられることがある
2年以上2年で時効となるため未納分の保険料の徴収はないが、自己負担割合が3割(一定以上の所得がある方は4割)に引き上げられたり、高額介護サービス費の支給が受けられなくなる

災害や収入の著しい減少などの特別な事情で一時的に保険料が支払えない方は、徴収の猶予や減額、免除が受けられる場合がありますので、お住まいの市区町村にご相談ください。

介護保険料を納めない状態が続くと、介護が必要になったときにご自身やご家族の金銭的負担が増大する可能性があるため、きちんと納めましょう。

2. 介護保険の自己負担割合はどこで確認できる?

2-1. 自己負担割合は「介護保険負担割合証」で確認しましょう

介護保険負担割合証イメージ

ご自身の自己負担割合が1~3割のいずれになるのかは、「介護保険負担割合証」に記載されています。介護保険負担割合証は、要介護認定(要支援含む)を受けているすべての介護保険被保険者に交付されます。

すでに要介護認定(要支援を含む)を受けている方には毎年7月中に介護保険負担割合証が届きますが、新たに要介護認定(要支援含む)を受けた方は認定結果の通知と合わせて、交付されます。介護保険負担割合証の適用期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。

2-2. 適用期間中でも介護保険の自己負担割合が変更になる場合があります

介護の費用

介護保険負担割合証の適用期間中でも自己負担が変更になる場合は以下の通りです。

  • 所得更正がある場合
    修正申告などにより本人または世帯の方(65歳以上)の所得が変更され、負担割合が変わる場合は、負担割合の適用期間が開始された直近の8月まで(新規認定の方は認定開始日まで)さかのぼって変更される
  • 世帯構成の変更があった場合
    世帯の方(65歳以上)の転出入や死亡により負担割合が変わる場合は、該当月の翌月初日(該当日が1日の場合はその月)から変更される
  • 65歳になった場合
    64歳までは一律1割負担だが、65歳に到達し負担割合が変更になる場合は、誕生月の翌月初日(誕生日が1日の場合はその月)から変更されるあらかじめ65歳到達前と到達後の利用者負担割合と適用期間が介護保険負担割合証に記載される。

2-3. 介護保険負担割合証はサービスを利用するときに必ず提出しましょう

介護保険負担割合証は、介護保険被保険者証と一緒に保管し、介護サービスなどを利用する際には、サービス事業者や施設に必ず提出するようにしましょう。介護保険負担割合証を忘れると、本来の負担割合で介護サービスを受けられない場合がありますのでご注意ください。

また、負担割合証が更新された場合はケアマネジャーさんや利用しているサービス事業所に提示しましょう。特に、負担割合が変更された場合は早めに伝えることをお勧めします。

紛失した場合は、市区町村の介護保険課などで再交付の申請ができます。詳しくはお住まいの市区町村の介護保険課にご相談ください。

3. サービス利用時の自己負担額の目安

3-1.在宅でサービスを利用する場合の自己負担額目安

デイサービスに行く男性高齢者イメージ

介護保険から給付される1ヶ月あたりの上限額を「区分支給限度額」といいます。区分支給限度額は、要介護度別に異なり、それぞれに必要と考えられる標準的なサービスの組み合わせ利用例に応じて設定されています。介護サービスを利用するにはケアプラン(サービス計画書)を作成する必要があり、ケアプランは原則、区分支給限度額に収まるように作成することになっています。そのため、区分支給限度額から1ヶ月あたりの自己負担額の見当をつけることができます。区分支給限度額を超えてサービスを利用することもできますが、その分は全額自己負担となります。

区分支給限度額は「単位」で表され、サービスの種類や内容、居住地域によって1単位あたりの単価が異なります。以下は、1単位あたり10円で計算した場合の目安です。

要介護度別区分支給限度額と自己負担額の目安一覧*9

要介護度区分支給限度額自己負担額
1割2割3割
要支援15万320円5032円1万64円1万5096円
要支援210万5310円1万531円2万1062円3万1593円
要介護116万7650円1万6765円3万3530円5万295円
要介護219万7050円1万9705円3万9410円5万9115円
要介護327万480円2万7048円5万4096円8万1144円
要介護430万9380円3万938円6万1876円9万2814円
要介護536万2170円3万6217円7万2434円10万8651円

3-2.住宅改修(介護リフォーム)の自己負担額

介護保険の給付対象となる住宅改修を行った場合は、要介護度に関わらず上限20万円*10まで介護保険が適用され、利用者の所得に応じた負担割合によって、そのうち7~9割が支給されます。

支給方法は原則、償還払い(一度利用者が全額を支払い、あとで市区町村から7~9割の費用を受け取る)ですが、受領委任払い(保険給付対象の1割分を利用者が支払い、9割分を市が事業者に支払う制度)を導入している市区町村もあります。支給方法については、お住まいの市区町村や介護リフォームの事業者へご確認ください。

介護保険による住宅改修を利用するには、市区町村への事前申請が必要になる点に注意しましょう。介護保険の給付対象となる住宅改修の種類など、詳細はこちらの記事をご覧ください。

3-3.特定福祉用具購入の自己負担額

特定福祉用具を購入した場合、要介護度に関わらず同一年度で上限10万円*11まで介護保険が適用され、利用者の所得に応じた負担割合によって、そのうち7~9割が支給されます。

支給方法は原則、償還払い(一度利用者が全額を支払い、あとで市区町村から7~9割の費用を受け取る)ですが、受領委任払い(保険給付対象の1割分を利用者が支払い、9割分を市が事業者に支払う制度)を導入している市区町村もあります。

介護保険の給付対象となる特定福祉用具(6品目)*10・ 腰掛便座・ 自動排泄処理装置の交換可能部・排泄予測支援機器・ 入浴補助用具(入浴用いす、 浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)・ 簡易浴槽・ 移動用リフトのつり具の部分

4. 介護費用の自己負担額を軽減できるその他の制度

4-1.高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度とは、1ヶ月に支払った利用者の負担が高額介護サービス費の負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度*12です。対象となる方には、市区町村から支給申請書が送付されます。また、一度申請すれば、次回以降は原則として手続きを行わなくても自動的に支給されます。

高額サービス費の対象者区分と負担上限額*12

区分負担上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1160万円)以上14万100円(世帯)
課税所得380万円~690万円未満(年収約770万円~1160万円未満)9万3000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円未満(年収約770万円未満)4万4400円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税2万4600円(世帯)
前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方2万4600円(世帯)
1万5000円(個人)
生活保護を受給している方1万5000円(世帯)

以下は、高額介護サービス費制度の対象外となりますのでご注意ください。

・介護保険の利用限度額を超えてサービスを利用した料金

・福祉用具購入や住宅改修費の自己負担分

・デイサービスやショートステイ利用時の食費や宿泊費、日常生活費など

・介護保険の給付対象外の自己負担分

・医療保険を利用した際の自己負担分

4-2.高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは、一年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合計し、自己負担限度額を超えた場合にその超えた金額を払い戻すことで負担を軽減する制度*13です。高額介護サービス費制度と同じく、対象となる方には市区町村から支給申請書が送付されてくるので確認しましょう。ただし、転入などにより医療保険および介護保険の被保険者証が新たに発行された場合は、送付対象とならない場合がありますので、お住まいの市区町村の保険業務担当にお問い合わせください。

参考文献

この記事を監修したのは

河北 美紀

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
2013年介護事業を運営する株式会社アテンド代表取締役就任。
8年間父の介護をした経験と、江戸川区介護認定審査会委員を務めた経験をもとに介護保険外サービス『冠婚葬祭付き添いサービス』を拡大。
母体のデイサービスは、2017年株式会社ツクイ(東証一部上場企業)主催の介護コンテスト横浜会場にて最優秀賞受賞。メディア実績は、厚生労働省老健事業「サービス活用販促ガイド」、週刊ダイアモンド、シルバー新報、東京都「キャリアトライアル65」、経済界など複数。


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