いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
今まで父は訪問看護師さんにお風呂に入れていただいていたんですけれど、だんだんと足も出なくなってきて、浴槽をまたげなくなったんです。看護師さんもよくやってくれているんですけれど、父は体格も比較的大きく、看護師さんから「訪問入浴が安全かもしれません」って言われたんです。お風呂を積んできて家の中で入るサービスって説明されたけれど、まったくイメージができなくて。
お湯は給湯器からとるのか、タオルは用意した方がいいのか、かかりつけの先生に相談したらいいのか、わからないことが多すぎて心配です。今度、ケアマネさんが話をしに来てくれるって言うけれど・・・
どうもありがとうございます。訪問看護師さんも大変でしたね。入浴は事故も起こりやすいので、やはり安全が第一。訪問入浴は安全になおかつ快適に入浴を維持するためのいい選択肢です。煙突が付いた訪問入浴の車が走っていることは見たことがあるけれど、どんなサービスか実際見たことがないという人はこの業界で働いている人の中でも多いです。
知っているようで知らない、訪問入浴についてわかりやすく解説します!
訪問入浴、正式には訪問入浴介護という名称ですが、介護保険制度に位置づけられた在宅介護サービスのひとつです。
聞いたことはあるし、車も見たことがある。でも、相談者様が質問されたように、実際どんなサービスなの?訪問入浴のお湯ってどうやって沸かしているの?マンションでもできるの?など、素朴な疑問を持たれる方も多いと思います。
また、ご自宅で介護をしていて、デイサービスや訪問看護などで入浴が難しくなり、訪問入浴を利用する際に、何を用意したらいいのか、心配になる方もいると思います。
今回は訪問入浴サービスについてわかりやすく解説していきます。
【この記事をお勧めしたい人】
- 訪問入浴サービス利用に心配なご利用者様ご家族様
- 訪問入浴の内容について確認したいケアマネジャーや地域包括支援センター
【この記事で書いていること】
- 訪問入浴サービスの概要・利用の流れ・対象者
- 訪問入浴の利用に必要な準備
訪問入浴サービスとは
訪問入浴はその名の通り、利用者のご自宅を訪問して行う入浴サービスです。
訪問入浴車で自宅を訪問、看護師を含むスタッフ3名で入浴の介助を行います。
最大の特徴は訪問入浴車です。有名な車両ではデベロ社のバスカなどがあります。車の種類はいくつかありますが、いずれもボイラーを搭載し、浴槽を車両に積載しています。
基本的にはご自宅の湯沸かしでお湯を沸かすのではなく、ご自宅の水道から水をホースで訪問入浴車に取り込み、車両のボイラーで沸かしたお湯を自宅に届け、そのお湯で入浴します。
スタッフ3名で介助します。うち1名は看護師ですので、健康状態の観察などを行います。浴槽はスタッフが自宅に運び、3人で介助ができるよう、ご自宅のリビング・居室など広めのスペースに設置します。浴槽は分割されるものが多いため、狭い家屋内でも運び込むことができます。
スタッフ3名で利用者を浴槽内に移送し、入浴の介助を行います。
これが訪問入浴サービスの大まかな説明になります。次の章からは具体的なサービス利用についての説明をしていきます。
サービスの利用について
サービス利用対象者
サービス利用対象者は介護保険の認定を受けている人です。原則として、自宅で入浴ができない人が対象のサービスです。もっと細かく言うと、ご自身で浴槽をまたげない人が対象です。
もちろん、入浴が自宅の浴室でできない場合は、デイサービスで入浴することも解決策です。ただ、体力的にデイサービスに行くことがつらい、集団になじむことができない、デイサービスへの移動ができないなど、デイサービスに行くことが難しい場合もあります。そんな場合にも訪問入浴は非常に有効な選択肢となります。
サービスを利用する流れ
訪問入浴のサービスを利用したい場合、相談から利用までの流れを紹介します。
介護保険の認定を受けていることが前提になりますが、ケアマネジャーに相談してサービス利用の調整を依頼します。
ケアマネジャーから訪問入浴サービス事業所にサービス提供の打診をします。
サービス提供が可能であれば、訪問入浴サービス事業所のスタッフとケアマネジャー、本人・家族で事前に打ち合わせ・サービス担当者会議を行います。このときに、本人の状態・緊急時の連絡先・提供日時などを確認します。また、サービス提供時に必要となる電源・給水・排水の場所も確認します。
当日、訪問入浴車で3名のスタッフが訪問します。看護師が体温や血圧なども含めた健康状態を観察し、入浴サービスを安全に提供できるかを確認します。体調に問題がなく、本人も同意すれば入浴サービスを提供します。
浴槽の設置、脱衣の介助、移動の介助、洗体・洗髪の介助を行い、湯船でしっかりと体を暖めます。
浴後は体をタオルで拭き、洋服を着替え、ドライヤーで髪を乾かします。体温や血圧なども計測し、問題がなければサービス終了となります。入浴に使用したお湯は排水し、片付けを行います。
これが大まかなサービス利用までの流れになります。
利用する側が用意すること
利用者側で特別用意するものはありません。以下のものの用意があるといいでしょう。
シャンプーやボディソープなども用意してくださる事業者が多いです。ただ、肌の状態の関係で特別なものが使いたいという場合は利用者様側で用意されたものを使用する場合もあります。
体を洗うタオルなども事業者側で用意する場合が多いです。
ほぼお任せしする形ですので、安心して見守っていて大丈夫です。
ただ、入浴サービスを行うための場所の確保だけはしておくといいでしょう。3人のスタッフで利用者本人を囲むようになるので入浴を行うための場所が必要です。入浴で使用する場所にはあまりものを置かないようにするなど注意しましょう。
訪問入浴のよくある質問
ここまで聞いてもやっぱり心配、という方も多いので訪問入浴の疑問に答えます!ただ、一般的な回答ですので、業者によって対応が異なる場合も多いのでご了承ください。
感染症がある人は入れないですか?
疥癬やMRSAなどの感染症があっても入浴は可能です。感染対策のために防護具などを着用して介助することもあります。ただ、他の人に感染するリスクを防ぐため、入浴をその日の最後の時間帯にしていただくなどご協力いただくことも多いです。
かかりつけ医の診断書や許可は必要ですか?
医師からの指示や診断書などは特に必要ありません。医療情報はケアマネジャーを通していただきます。ただ、医療機器の使用や血圧や呼吸の状態など、注意が必要な場合はケアマネジャーを通してかかりつけ医に確認をする場合もあります。
医療機器を使っている人も入浴できますか?
人工呼吸器・胃ろう・腸ろう・CVポート・IVH・在宅酸素・人工肛門・尿道留置カテーテルなど、医療機器・カテーテル類を使っている方でも利用できます。看護師が対応しますが、状況に応じて訪問看護を利用されている場合は担当の訪問看護師とも情報交換することがあります。
訪問入浴の事業所の選び方
訪問入浴のサービス事業所は、訪問介護や訪問看護などのサービスと比較して、事業所数自体は多くありません。全国で1662事業所が介護保険の指定を受けてサービスを提供しています。
地域によっては選択肢がないという場合もあるかと思いますが、どんな事業所のサービスを利用するか、事業所選びも大切です。事業所の選び方がわからない、という方に事業所選びのヒントを紹介します。
車両台数の多い事業所
介護サービス情報公表システムという厚生労働省の検索システムを使うと、訪問入浴の事業所情報が掲載されています。訪問入浴サービス事業所を選ぶときに一番注目してほしいのは「事業所の詳細」>「サービス内容」の中にある「使用している入浴車両の台数」という項目です。台数が多ければそれだけたくさん稼働していることがわかります。台数・スタッフ数も多いので、変更などが発生した場合も比較的調整がしやすく、柔軟に対応してもらえる場合が多いです。逆に少ない台数で回しているときにはスタッフの欠員やトラブル発生などでサービスの利用に支障が出る可能性が高くなる傾向があります。入浴車両の台数はまず確認しておくといいでしょう。
常勤の看護師配置があるか
訪問入浴サービス事業所の特徴ですが、派遣の看護師が多い傾向があります。もちろん長くひとつの事業所で続けている派遣の看護師さんもいますが、入れ替わりが多く、看護師間の情報の伝達などがうまくいかない場合があります。
同じくサービス情報公表システムを使って「事業所の詳細」>「従業者情報」を見ると、職種別の人員が表示されています。あまり事業所数としては多くありませんが、常勤の看護師配置があると、医療機器を使っている場合の対応や、褥瘡など皮膚状態に対するケア、訪問診療医・訪問看護等の関係機関との連携などもスムーズにいく傾向があります。看護師配置の状況はチェックしてみるといいでしょう。
あくまで事業所選びの方法の一例ですが、ヒントになればと思います。
まとめ
訪問入浴のサービスについて紹介しました。もちろん自分の力でご自宅の浴室でお風呂に入ることが一番かもしれません。でも、入れなくなったとしても、清潔や保温など、入浴は高齢者にとって非常に重要な意味を持ちます。これは個人的な思いも含まれますが、日本は入浴の文化が非常に豊かに発展していて、日本人にとって特別な意味を持つ部分もあります。
だからこそ訪問入浴というサービスが日本で発展し続けているのだと思います。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)
コメント