高齢者の一人暮らしと食事の課題:栄養バランスと共食の重要性

一人暮らし高齢者の食事。孤食の課題と栄養バランスについて 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

近年、高齢者の一人暮らしの高齢者が増えています。

高齢者の一人暮らしには様々な課題があります。そのひとつが食事です。高齢者一人暮らしの食事にフォーカスしてその課題と解決策を解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 家族や近しい人に一人暮らしの高齢者がいて心配な人
  • 自分自身も一人暮らしで、食事に不安を感じている人

【この記事で解説していること】

  • 高齢者一人暮らしの食事に関する現状と問題点
  • 共食による効果
  • 解決策としてのサロンやデイサービス、配食サービスの利用について

孤食の広がりと問題

社会の変化や高齢化の影響により、ひとりでの食事をすること、通称「孤食」が急速に広がっています。この現象は、食事の健康面への影響や栄養バランスの偏りをもたらすという重要な問題を引き起こしています。孤食が選択として好まれる場面もあれば、一人暮らしの高齢者など、状況によっては「望まざる孤食」に直面する人々も少なくありません。

農林水産省の2019年の調査(食育に関する意識調査)によれば、1日の食事をすべて一人で食べる頻度が増加しており、「ほとんど毎日」と答えた人の割合は13.7%となりました。この割合は11年の7.1%から倍近く増加しています。性別や年代を考慮すると、特に70歳以上の女性が27.6%と最も高く、20歳代の男性が23.8%で続いています(*1)。

令和2年度版農林水産省 食育に関する意識調査

高齢の一人暮らしの増加も孤食の問題を深刻化させています。2023年版高齢社会白書(*2)や20年の国勢調査(*3)によれば、65歳以上の人口に占める一人暮らしの人の割合は20年において男性が15.0%、女性が22.1%で、総数で約671万7千人に達しています。この割合は高齢者の約5人に1人が一人暮らしをしていることを示しており、これが将来的には40年には約896万3千人に増加すると推計されています。

介護保険の認定を受けている方であっても、要支援の方や要介護度の軽度な方であれば自宅でサービスを活用しながら生活している方が多いです。施設でなくても、食事の問題がクリアできていれば、可能な限り自宅で生活したいという人は多いのです。

こうした状況から、孤食が引き起こす栄養不足や健康リスクがますます顕在化してきています。栄養の偏りは、特に高齢者にとって重要であり、適切な栄養摂取が健康な生活を維持するために欠かせない要素です。

孤食の背景と課題

高齢者一人暮らしの食事=孤食の課題

高齢者の一人暮らしの増加により、孤食となる高齢者が増えています。

孤食が引き起こす問題の一つは、栄養不足です。孤食の際、食事の内容や量の管理が難しく、食事に必要な栄養素を適切に摂取することが難しくなります。また、高齢者の中には調理や食材の調達が難しいと感じる人もいるため、栄養バランスを考えた食事を摂ることが難しくなります

さらに、一人暮らしの高齢者は孤立感や寂しさを感じることがあるため、食事の時間が楽しいコミュニケーションの場となることがありません。これにより、食事のモチベーションが低下し、食事の質や量が低下してしまうリスクがあります。このような状況が続くと、健康問題が発生しやすくなり、体力の低下や免疫力の低下などが懸念されます。

孤食の背景にあるこれらの課題に対処するためには、新たなアプローチや支援策が必要とされています。健康な食事環境を提供し、高齢者が栄養を適切に摂取できるような取り組みが求められています。

共食の重要性とメリット

一人暮らしの高齢者にとって、共食は新たな可能性をもたらすアプローチです。共食とは、複数の人が一緒に食事をすることを指します。このアプローチは、孤食の問題に対する解決策として注目されており、さまざまなメリットがあります。

食事の配膳をする女性

共食の重要なメリットの一つは、会話やコミュニケーションの増加です。食事を通じて人と交流することで、孤立感や寂しさを和らげることができます。高齢者にとって、日常的なコミュニケーションの機会を提供することは、心の健康にも良い影響を与えます。食事中に笑顔で話すことや、他の人との共有が、食事を楽しいものに変えることがあります。

また、共食によって食事がおいしく感じられることも重要なポイントです。多くの場合、人々が一緒に食事をすると、食べることが楽しみになります。特に地域の高齢者サロンや食事会などでは、美味しい料理を楽しむことができ、食事そのものが楽しみとなるでしょう。食事を通じて人々が笑顔でつながることで、心地よい食事体験が提供されます。

このように、共食は栄養だけでなく、心の健康にも良い影響をもたらすことが分かっています。地域の高齢者サロンや食事会の取り組みは、高齢者が共食を通じて新たな社交の場を見つけ、心地よい食事体験を享受できるようサポートしています。

共食の重要性を理解し、地域コミュニティや公的機関の協力を得ながら、高齢者の食事環境を改善していくことが、健康な高齢生活を支援する一環として重要です。

解決策と取り組み

高齢者の一人暮らしにおける食事課題に対処するためには、さまざまな解決策と取り組みが考えられます。以下に、高齢者の食事課題への対策として検討すべき3つのポイントを紹介します。

1.配食サービスを利用する

まず一つ目の解決策は、配食サービスの活用です。高齢者が自宅で栄養のある食事を摂るためには、適切な食材を手に入れることが重要です。しかし、足腰の不自由や買い物が難しい場合があります。栄養バランスを考えた食事を作ることになると、必要な食材も多くなり、食事のコストや食品のロスも大きくなります。そこで民間企業やNPO等が提供する配食サービスを利用することで、栄養バランスの取れた食事を手軽に受けることができます。また、インターネットを活用した食材通販も便利な手段の一つです。手渡しで食事を届けてくれる業者もありますので、そこでコミュニケーションも生まれることで生活に潤いを生むことができます。
配食サービスについて、興味がある方はこちらの記事をご参照ください。

2.サロンや食事会、デイサービスへの参加

次に、サロンや食事会への参加が考えられます。地域の高齢者サロンや食事会は、食事を共にする場を提供しています。こうした場での食事は、孤食とは異なる楽しみやコミュニケーションの機会を提供します。地域の交流を深めながら、健康な食事を楽しむことができるでしょう。
また、要介護認定もしくは要支援認定を受けている方にはデイサービスの利用も一つの選択肢です。デイサービスでは食事だけでなく、様々な活動や交流が行われるため、高齢者が充実した時間を過ごすことができます。サロンや食事会などに行くためには自力で目的地まで到達しなければいけないというアクセスの問題がありますが、デイサービスであれば送迎があるので、足が不自由な方でも参加することが可能です。
デイサービスについてはこちらの記事をご参照ください。

3.訪問栄養指導・栄養に関する勉強会

さらに、訪問栄養食事指導など、個別に合わせた支援策を検討することも重要です。栄養士やケアマネージャーが高齢者の家を訪問し、食事のアドバイスやサポートを行うことで、栄養バランスの取れた食事を実現することができます。訪問看護師に栄養について指導してもらう方法もあります。
また、地域コミュニティや医療機関等が提供する様々な支援プログラムも活用することで、高齢者の食事課題に対処する手助けを受けることができます。地域の介護予防教室や、病院で行われる疾患別の栄養に関する勉強会や管理栄養士等による食事指導などを受けることで、食事についての理解が深まります。栄養バランスの改善だけでなく、楽しい食事にする方法や、手間をかからずに調理する方法などを教えてもらうこともできます。

これらの解決策や取り組みを組み合わせながら、高齢者の一人暮らしにおける食事課題に向き合い、健康な食事環境を築くことが大切です。地域社会や公的機関の支援を受けながら、高齢者が栄養バランスを考えた食事を楽しむことができるよう取り組んでいくことが、健康な高齢生活の一環として重要です。

まとめと展望

高齢者の一人暮らしと食事の課題は、日本の高齢化が進む現代社会において重要な問題となっています。孤食が栄養バランスの偏りや健康リスクを引き起こす一方で、共食の導入や適切な支援策の利用によって、この課題に対処する新しいアプローチが模索されています。

配食サービス

高齢者の一人暮らしにおける食事課題を解決するためには、地域社会やケアマネジャーをはじめとする介護福祉の関係者、公的機関等の協力が不可欠です。これからの展望として、以下のポイントが考えられます。

配食サービスの利用地域の高齢者サロンや食事会などの取り組みも、高齢者の食事課題に対する解決策の一つです。地域の社会資源の情報を確認し、孤食の防止や栄養バランスの取れた食事を意識的にとることを目指しましょう。

このように、高齢者の一人暮らしと食事の課題に向き合い、適切な解決策を選択することが、高齢者の健康と幸福な生活を支える大切な一歩です。地域社会と個々の努力が結びついて、健康な高齢生活を実現するための道を切り拓いていくことが、今後の課題と展望と言えるでしょう。

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参考資料

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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