ケアプランとは?種類や内容、作成の流れ、自分で作成する場合のメリット・デメリットも解説

ケアプランって何が書いてある?自己作成・セルフケアプランのメリット・デメリット 介護コラム

この記事を監修したのは

介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役

河北 美紀

要支援や要介護の認定を受け、介護保険サービスを利用するときに必要となるのがケアプラン(介護サービス計画)です。一人ひとりの状態や希望によって必要な介護サービスは異なるため、利用者の状況に応じたケアプランが作成されます。この記事では、ケアプランについて詳しく知りたい方向けに、ケアプランの種類や内容、作成の流れ、自分たちで作成する場合のメリット・デメリットなどを解説しています。

★こんな人に読んでほしい!

  • ケアプランの種類や内容について詳しく知りたい方
  • ケアプランの作成の流れや手順について知りたい方
  • 作成されたケアプランをチェックポイントについて知りたい方
  • 自分たちでケアプランの作成を考えている方

★この記事で解説していること

  • ケアプランとは、「介護(介護予防)サービス計画書」のことで、要支援・要介護認定者が介護(介護予防)サービスを利用する際に必要となる
  • 要支援の場合は、地域包括支援センターの職員が、要介護の場合は、ケアマネジャーがケアプランを作成する
  • ケアプランには、「介護予防サービス計画」、「居宅サービス計画」、「施設サービス計画」の3種類がある
  • ケアプランをケアマネジャーに作成依頼する場合には、要介護者や家族の希望、不安、目標など些細なことでもすべて伝えることが大切
  • 自分たちでケアプランを作成する「セルフケアプラン」では、納得のいくプランを作成することができるメリットがある反面、情報収集やその判断が難しいことや、煩雑な手続きを自分たちで行わなければならないデメリットがある
  • ケアプランの作成は、介護のプロであるケアマネジャーに依頼をするのがおすすめ


1. ケアプランとは

1-1.ケアプランは介護サービスを利用するのに必要となる計画書

ケアプラン*1とは「介護(介護予防)サービス計画書」のことで、要支援や要介護と認定された方が介護(介護予防)サービスを利用する際に必要になります。

要介護者の状態や希望により、必要な介護サービスは人それぞれ異なります。ケアプランでは、介護サービスの利用者の状況に応じて、いつ、どのようなサービスを、どのくらいの頻度で利用するのか、サービスの種類や内容、利用回数、時間などを記しています。

1-2.「要支援」の場合は地域包括支援センター、「要介護」の場合は居宅介護支援事業所がケアプランを作成する

プランの説明をする男性

ケアプランを作成する人は、「要支援」と「要介護」で異なります。

要支援の場合は、地域包括支援センターの職員が作成しますが、要介護の場合は、地域包括支援センターなどで貰える居宅介護支援事業所のリストから事業所を選び、その事業所に所属するケアマネジャーに作成を依頼します*1

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、介護全般のサポートを行う専門職で、ケアプランの作成以外にも、利用者やご家族への相談・助言や、サービスが適正に行われているかの確認を行います。

また、2024年の制度改正からは居宅介護支援事業者が予防支援の指定を受けることができます。ケアマネ事業所が予防支援の事業所指定を受けていれば、利用者とケアマネ事業者が地域包括支援センターを介さずに直接契約し、予防ケアプランを作成することができるようになります。詳細はこちらの記事をご参照ください。

ケアプランは自分たちで作成することも可能ですが、多くの方はケアマネジャーに依頼し、作成してもらいます。ケアプランを自分たちで作成する場合のメリット・デメリットについては「6.自分たちでケアプランを作成する場合のメリット・デメリット」で解説しています。

2.ケアプランには「介護予防サービス計画」、「居宅サービス計画」、「施設サービス計画」の3種類ある

ケアプランは利用する介護サービスの種類や内容により、3種類に分けられます*1

種類対象となる方内容
介護予防サービス計画書要支援1~2要介護状態となるのを予防するサービスを利用するための計画
介護予防サービス(介護予防訪問看護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーションなど)
介護サービス計画書要介護1~5在宅介護のサービスを利用するための計画
訪問サービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリなど)
通所サービス(通所介護、通所リハビリなど)
短期入所サービス(ショートステイなど)
その他サービス(福祉用具レンタルなど)
施設サービス計画書要介護1~5施設のサービスを利用するための計画
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設
介護療養型医療施設

3.ケアプランの作成の流れと記載内容

3-1.ケアプランの作成から介護サービス開始、ケアプランチェックや見直しまでの流れ

ケアプランは、以下の手順で作成されます。

①状態の調査と課題分析(アセスメント)

介護サービスを利用するご本人やそのご家族との面談により、利用者の健康状態や居住環境、家庭環境などの状態を調査・分析し、どのような暮らしを目標としているか希望を聞き、そのために必要な介護サービスなどを検討します。

アセスメントは、要介護者の状態や周辺環境に変化があったタイミングでも行われます

②具体的なサービス計画を作成

課題分析をもとに、解決すべき課題や目標、サービス内容・種類、事業者名、頻度、期間など、具体的な計画を立ててケアプランの原案を作成します

③ケアプラン原案の確認

ケアプラン原案を利用者とご家族に説明し、内容に問題がないか確認します

④ケアプランの完成

介護サービスを提供する事業者の担当者、主治医などの関係者と「サービス担当者会議」を開き、ケアプランを完成させ、ご家族の同意を得ます

⑤ケアプランに基づき、サービス事業者を調整し、介護サービスの利用を開始する

完成したケアプランに基づき、サービス事業者と契約し、介護サービスを利用します

⑥実施状況の把握(モニタリング)とケアプランの見直し

ケアプランで立てた目標が達成されるように、各サービスが適切に実施されているか調査します。利用しているサービスがうまく支援に結びついていないと考えられる場合は、再度ケアプランを調整したり、①状態の調査と課題分析(アセスメント)に戻り、再度ケアプランを見直し・適宜更新したりします

モニタリングは月一回の訪問が義務付けられているため、ケアマネジャーが自宅を訪問しています。

3-2.ケアプランの記載内容・文例

ケアマネジャー

ケアプランに記載しなければならない内容などについて、居宅サービス計画書を例に解説します。

居宅サービス計画書は、第1表から第7表の計7枚で構成されています。

居宅サービス計画書の様式は、日本介護支援専門員協会のサイト*2や、都道府県の福祉保健局のサイト*3などでも公開されており、様式に変更があった場合などは厚生労働省の配布する「介護保険最新情報」*4でも随時通知されます

居宅サービス計画書の主な記載内容*3

名称主な記載内容
第1表居宅サービス計画書(1)・利用者および家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
・介護認定審査会意見など総合的な援助方針
第2表居宅サービス計画書(2)・生活全般の解決すべきニーズ
・上記ニーズに対応した目標、援助内容
第3表週間サービス計画表・週単位の支援やサービスの時間帯を、曜日と時間の表中に記載
・利用者の生活活動とサービス提供状況を分かりやすくする
・主な日常生活上の活動や週単位以外のサービスの記載
第4表サービス担当者会議の要点・出席者・欠席者とその理由
・検討項目、照会内容、回答、検討内容、結論
・残された課題など
第5表居宅介護支援経過・モニタリングを通じて把握した、利用者やその家族の意向・満足度、目標の達成度、事業者との調整内容、居宅サービス計画の変更の必要性など
第6表サービス利用票(兼居宅サービス計画)・サービスの時間帯、サービス内容
・サービス事業者名、月間実績
・記録
第7表サービス利用票別表・区分支給限度額の管理
・利用者負担の計算

居宅サービス計画原案とは、上記の第1表から第3表、第6表、第7表の計4枚を指します。第4表、第5表は情報を整理するために必要な書類で、利用者に交付はせず、ケアマネジャーが所持しています。

ケアプラン文例

記載項目文例
利用者および家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果・(本人)不自由なことや一人暮らしは不安があるが、住み慣れたこの家でくらしていきたい
・(娘)持病の関節リウマチで動けない日もあるため心配。自分の家庭や仕事を調整してなるべく様子を見に行きたい。日々のことはしてやれないので、在宅サービスを利用し、安心して暮らしてもらいたい
総合的な援助の方針・体調の変化をとらえ、早めに受診につなげられるようご本人や娘さんとの連絡を密にとる
・身体の痛みをが軽減でき、生きがいをもって一人暮らしを続けられるよう支援する
長期目標・ひとりでも娘の家まで歩いていくことができる
短期目標・毎日公園への散歩を続けることができる

4.ケアマネジャーにケアプラン作成を依頼する際の注意点

ケアプランは、介護サービスを利用するご本人やご家族のニーズに基づいて作られます。ケアマネジャーが作成するからといって任せきりにするのではなく、要望や不安、どのような暮らしや生き方をしていきたいかなど、些細なこともすべてケアマネジャーに伝えることが大切です。

ケアプラン作成時にケアマネジャーに伝えるポイント

  • 現在の要介護者の心身の状況
  • ご家族が困っていることや不安なこと
  • かかりつけ医からの指導やアドバイス
  • どのような暮らしを目標としているか
  • 介護費用の月々の予算など
  • 経済的な状況
  • 要介護者との同居への考え
  • ご家族の介護と仕事の両立の状況や考え

ケアプランを見直す際にも重要な情報となるため、要介護者の状態や家族の状況など周辺環境に変化があった場合には、速やかにケアマネジャーに伝えるようにしましょう。

5.作成されたケアプランのチェックポイント

ケアプランの原案を確認する際のチェックポイントをご紹介します。

ケアプランのチェックポイント

  • 長期目標、短期目標に沿った介護サービスとなっているか
  • 本人やご家族の希望が反映されているか
  • 困りごとや不安が解消できる介護サービスが含まれているか、頻度は適切か
  • 経済的に無理のないケアプランとなっているか
  • 福祉用具のレンタルや購入などが適切に組み込まれているか

6.自分たちでケアプランを作成する場合のメリット・デメリット

セルフケアプランってなに?
親族の協力を得る

ケアプランは、ケアマネジャーに作成を依頼することがほとんどですが、自分たちで作成することも可能で、自分たちでケアプランを作成することを「セルフケアプラン」といいます。

現在、ケアプランは、利用者の自己負担なしでケアマネジャーに作成してもらうことができます(2023年1月時点)。しかし、今後、他の介護保険サービスと同様にケアプランの作成も利用者負担を導入することも検討されており*5、介護保険法の改正により、ケアプランに自己負担が導入された場合、自分たちでケアプランを作成するという方も増えることが予想されます(2024年4月からの法改正ではケアプランの自己負担導入は見送られました。詳細は下記記事をご参照ください)。

セルフケアプランのメリット

  • 希望するサービスを自由に組み込むことができる
  • サービスを厳選し、納得のいくプランを作成することができる
  • 担当者会議やモニタリングを省略することができる
  • 介護保険制度に関する理解が深まる
  • ケアマネジャーを介さず介護サービス事業者と直接やりとりをすることで、関係性が深まる
  • 介護サービス中、要介護者がどのように過ごしているかなどを聞く機会が増え、困りごとなどの相談や連携もとりやすい。

セルフケアプランのデメリット

  • 介護事業所や施設、サービスに関する情報収集やその判断が難しい
  • 煩雑かつ複雑な手続きを自分たちで行うことになる
  • 自己負担額の計算などが難しい
  • 市区町村がケアマネジャーに代わって給付管理を行うため、難色をしめされる可能性あり
  • サービスの適切な選択が難しい
  • ケアプランの有効期限を過ぎないように更新、期日管理を行う必要あり
  • 介護に携わってくれるプロのメンバーがひとり少ない状態。万が一の際に駆けつけてくれるのはケアマネジャーであることも多い
  • 介護サービス事業者とトラブルが起きた時、介する人がいない。地域包括支援センターへ相談することはできるが、直接やりとりを自身で行うため時間と労力がかかることがある
  • セルフケアプランに記載した介護報酬のコードや単位などが相違していると、介護サービス事業所に報酬が入らない、あるいは遅延するため迷惑がかかる。正確に行う必要あり

セルフケアプランを作成する場合は、あらかじめ地域包括支援センターや市区町村の介護保険課などに申し出をし、手続きの詳細な流れや作成書類について確認しましょう。

ケアプラン作成の利用者負担導入は、あくまで検討段階であり決定事項ではありません。セルフケアプランにより、自立につながらないケアプランが増えることを懸念する意見もあります*6。現在は利用者の自己負担なしで、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらえることができるため、情報や知見をもった介護のプロであるケアマネジャーに作成を依頼することをおすすめします。

AIでケアプランを作ることもできなくはないと思いますが、AIに渡す情報の質が低ければ十分なケアプランは作成できません。そこにたどり着くまでにはケアマネの専門的なアセスメント(情報収集・課題把握)能力などが必要になります。

ケアマネが人手不足が進んでおり、不足する人材を補うために準ケアマネという資格を創設するなんて案もでているようです。安心して信頼できるケアマネジャーとつながれる社会になるといいですね。

参考文献

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いえケア 在宅介護の総合プラットフォーム
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