いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。
今日も介護をされている方からの質問にお答えします。
質問「介護の愚痴を聞いてほしい」
夫の母親と同居しており、介護しています。義母は78歳ですが、認知症もあり、要介護1の認定を受けています。病院で認知症と診断されてからもう3年。最近はますます被害妄想が強くなり、「嫁に財布を盗まれた」「食事を出してもらえない」など言うことも多いようで、標的にされることも少なくありません。今はデイサービスやショートステイなどのサービスを使いながら、自宅での介護を続けています。
夫は仕事で忙しいのもあるのですが、介護にはあまり協力してくれません。もちろん、仕事が優先ですから、協力してくれることを期待していたわけではないのですが、愚痴くらい聞いてほしいというのが本音です。ただ、夫にとっては大切な実の母親ですので、あまり悪口も言うこともできないです。
私の地元は遠方なので、実家や昔の友達とも会うこともできず、近所にも仲良くしている人はいません。
愚痴を聞いてもらったからといってこの状況が何も変わらないのはわかっているのですが、ずっと介護を続けていることで気が滅入ってしまい、自分まで認知症になってしまいそうです。
どうストレスを解消していけばいいのでしょうか。
―――という質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。
介決サポーターがお答えします!
ご相談ありがとうございます。
同居している義理のお母様を介護されているということですね。認知症の周辺症状でもある「物盗られ妄想」もでているようですね。これは、一番身近にいる人が標的にされやすいので、相談者さんが標的にされているのですね。身内の方からこのように言われるのは、相手が認知症だとわかっていても本当につらいですよね。
愚痴を言える相手もいないということで、苦しい胸の内をずっと抱え込んでいらっしゃるということですね。
では、相談者さんのお悩みに応えていきたいと思います。
在宅介護のストレス
今回の相談者と同様、同居家族の介護にストレスを抱えている人はとても多いです。
厚生労働省が行った国民生活基礎調査の概況調査(平成28年)によると、同居の主な主介護者のうち、68.9%の方が悩みやストレスがあると回答しています。その割合は女性介護者の方が72.4%と多くなっています。これは、男性介護者の場合は、職場の同僚などに話をすることなどでストレスを緩和できる反面、女性介護者は介護によって社会とのつながりを失ってしまうケースが多いことが影響しています。
介護のストレスが蓄積されると「介護うつ」といううつ病を発症します。介護うつには、以下のような症状があります。
このような症状が出る前に、ストレスに適切に対処していくことが必要です。
介護うつについてはこちらのページでも紹介していますので、ご参照ください。
また、介護のストレスがたまり、介護の問題を無理に力で解決しようとすると「虐待」に発展することもあります。家庭内で、殴る・つねるなどの身体的虐待や、食事を与えないなどの介護放棄(ネグレクト)といった虐待に発展する可能性もあります。
介護のストレスは放っておけば積み重なり、介護うつや虐待など、重大な問題につながります。介護のストレスは我慢して放置していても、解決するものではありません。自分自身を守るためにも、介護のストレスを解消する手段を持ちましょう。
介護のストレス解消法としては、適度な運動や趣味などを持つこともひとつの方法ですが、介護や家事に追われ、そのようなまとまった時間をとることができないという方も多いです。そんな場合でも、自分の話を聞いてもらうことができれば、少し心が軽くなるなど心理的効果を得ることができます。
誰かに介護の愚痴を話すことで、共感してもらい、介護を続ける活力を得ることができるのです。愚痴というと生産性のない話のように聞こえるかもしれませんが、介護の悩みやストレスを解消するための大事な手段のひとつでもあるのです。
では、介護の愚痴を言える場所にはどんなところがあるのでしょうか。次の章で具体的に紹介していきます。
介護の愚痴を言える場所2つ
介護の愚痴を言える場所を2つ紹介します。
ひとつずつ紹介していきます。
介護者教室・介護家族の集い
介護の愚痴を話すことができる場所、ひとつ目は「介護者教室・介護者の集い」です。
地域で在宅介護をしている家族等を対象にした集まりがあります。多くは自治体の介護福祉担当部署や、地域の高齢者の相談窓口である地域包括支援センターなどが主催しています。
それぞれ集まりによって目的は異なります。家族を対象に介護の技術を教えるためのものや、認知症の方への対応方法を教えるもの、疾患についての講演などを行うものもあります。技術や知識を身に付けるためのものだけではなく、在宅介護をしている家族や在宅介護経験者が集まって座談会を行う集まりもあります。
「こんなことで困っている」という投げかけに、「私もそうだった」と反応してもらえれば、「同じ思いをしているのは私だけじゃない」と実感することができ、勇気をもらえます。また、「私はこうやった」「こうやったらうまくいった」といった他の方からの体験談を聞くことで、問題を改善するためのヒントを得ることもできます。
家族だけでなく、保健師や社会福祉士など、在宅介護の専門家が進行役・アドバイザーとして同席していますので、初めての方でも安心して参加することができます。
いつ、どこで開催しているのかは、行政の担当窓口に相談するか、お近くの地域包括支援センターで相談しましょう。地域の広報誌などに開催予定が掲載されている場合もあります。また、担当のケアマネジャーさんがいれば、そういった集まりがないか質問してみましょう。
自治体によっては食事会なども兼ねた交流会や温泉施設を利用しての交流会なども行っている場所もあります。お住まいの地域のサービスにどんなものがあるか、把握しておくといいでしょう。
介護の愚痴を話すことができる場所、ひとつ目「介護者教室・介護者の集い」を紹介しました。
認知症カフェ
介護の愚痴を話すことができる場所、ふたつ目は認知症カフェです。
認知症カフェは、オランダのアルツハイマーカフェをモデルに日本でも始まった認知症の方が集まるカフェです。2015年の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で認知症カフェが政策に位置付けられました。
自宅に閉じこもりがちになってしまう認知症当事者が安心して出かけることができる場所として各地で行われています。常設の認知症カフェもありますが、多くは特別養護老人ホームなどの介護施設や公共施設で月に数回という頻度で開催される非常設という形態をとっています。
認知症の方の多くはデイサービスなど介護サービスを利用することに抵抗を感じています。しかし、デイサービスには抵抗があっても、「お茶を飲みに行くだけだったら行ってみたい」と社会とのつながりが生まれ、そこから介護サービスを利用する糸口が生まれる場合もあります。
介護者にとっても、在宅介護を行う家族同士の有益なコミュニケーションの場となります。情報交換や介護の愚痴を話すこともできます。認知症カフェには介護関係者も多く参加されていますので、介護方法のアドバイスを受けることや、有効なサービスを紹介してもらう機会にもなります。
2020年度の調査では47都道府県1,518市町村で認知症カフェが開かれており、7,737カフェが運営されています。お住まいの地域の地域包括支援センターや担当ケアマネジャーに認知症カフェの開催状況について質問してみましょう。下に提示している画像は厚生労働省のページに掲載されている認知症カフェのパンフレットです。
認知症の方への適切な対応方法や心の持ち方を学ぶだけでも、落ち着いて対応できる機会が増えます。
介護の愚痴を話すことができる場所、ふたつ目「認知症カフェ」について解説しました。
その他にも、利用している介護施設の家族会や、医療機関などで介護家族の集いなどを開催することもあります。介護者を支えるための社会資源として、地域にどんな場があるのか、お住まいの市町村のホームページなどから調べてみるといいでしょう。
【介護職員向け】介護職も愚痴を聞いてほしい!
親の介護をする家族だけでなく、介護の仕事をしている介護職員もやはり多くのストレスを抱えています。「好きで介護の仕事をしている」とはいえ、やはりたくさんの利用者やそのご家族の対応をし、時にはパワハラやカスハラの被害に悩まされることや、夜勤や不規則な勤務で心身のバランスを崩すこともあります。介護職の人もやはり多くのストレスを感じています。
とはいえ、職場内で言えない話もたくさん。そんな介護職が集まる場所として注目されているのはkaigoカフェです。これは認知症カフェと異なり、介護の仕事をしている人たちが集まるカフェです。デイサービス、訪問介護、居宅介護支援、特養など、サービス種別を問わず介護の仕事をしている人たちが役職や職場に関係なく参加できる会です。全国各地に様々な会が存在しています。
介護職同士が互いに認め合い、理解を深め、介護という仕事の魅力を再発見することもできます。介護職員のみなさんは、ぜひお近くのkaigoカフェに参加してみてはいかがでしょうか。
まとめ
介護の愚痴を話すことができる場所について解説しました。
介護者教室などの介護者の集まり、認知症カフェなど、介護の専門家や経験者と話をすることで、介護のストレス軽減につながります。力になってくれる人がいる・心配してくれる人がいる・わかってくれる人がいる、そう思うだけでも、心強く感じるものです。介護で辛い思いをしても、そうして励まされることで乗り越えていくこともできます。
100%完璧な介護を目指す必要はどこにもありません。肩の力を抜き、ショートステイを利用する・訪問系サービスを利用するなど、上手にサービスを活用しながら、自分らしく、自分にできる介護をしていきましょう。
この記事を執筆・編集したのは
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