いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。
今回の質問は「介護うつ」と診断された方からのものです。
質問「介護うつと診断されました」
自宅で80歳の義理の母を介護しています。夫と私の三人世帯で、近所には姉夫婦も暮らしています。息子は家を離れ、今は一人暮らしをしています。
私は専業主婦なので、義母の介護は主に私が行っています。昨年から認知症が進み、被害妄想が強く、先日は徘徊することもありました。
一番つらいのは夜中の介護です。突然夜中に起きて、「家の権利書がどこにもない」とか、「お父さんの大事にしていた背広がない」と、部屋中をひっかきまわしているのです。制止しようとすると、敵意をむき出しにして罵声を浴びせるのです。そんなことが何度も続き、私も心身共に疲れ果ててしまいました。
最近は、不安で眠ることもできず、胃が常に痛みを感じているようで、食欲もありません。何をするにもだるく、気力もなくなってしまいました。ごみを捨てに行くことすらできず、部屋にごみも溜まってきてしまいました。
義母を見ていただいている精神科の先生にそのことを相談したら、「介護うつ」と診断されました。「うつ病」と言われ、精神科なんて自分とは無縁のものだと思っていたのでショックを受けています。
この病気は治るのでしょうか。精神科の病気を持っているとは、できれば人に知られたくないので、このことはまだ夫にも話していません。どうしたらいいのでしょうか。
―――という方からの質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。
介決サポーターがお答えします!
ご相談ありがとうございます。
義理のお母様の介護に疲れて、病院で相談したら「介護うつ」だと診断されたということですね。「うつ病」と診断されたことを誰にも話すことができず、今も義理のお母様の介護に向き合っているという状況ですね。
誰にも相談できず、大変な不安と苦しさをひとり抱えていることがわかります。
では、介護うつとは何か。介護うつとどのように向き合っていけばいいか。この2点を中心にご説明したいと思います。
「介護うつ」とは
最初にお伝えしたいことは、「介護うつ」は誰にでも起こりうるという点です。
2005年に行われた厚生労働省の調査ですが、在宅介護者のおよそ4人に1人が「介護うつ」の症状を持っていることがわかっています。
在宅介護というのはそれだけ精神的に負担の大きいことなのです。
「私がうつ病なんかになるはずがない」「うつ病になるのは気持ちが弱い人だけ」という誤解を持っている方も少なくありません。
うつ病は真面目で責任感が強い人の方が起こりやすいと言われています。介護うつに関しても同じことが言えます。責任感を持って生真面目に介護をしようとしても、想定外の行動やトラブルで計画通りにはことが進みません。そんな介護へのストレスが積み重なり、うつ症状を発症することがわかっています。
むしろ、適度に肩の力を抜いて、柔軟に物事を進めることができる人の方がうつ病にはなりにくいとされています。いい方は悪いのですが、上手にサボることができる人、上手に手を抜くこと、細かいことを気にしない人は、介護における精神的なストレスにもうまく対処できる傾向があります。
「介護うつ」は責任感を持って介護に向き合ってきたからであって、別に恥ずかしいことでも何でもありません。「介護うつ」は在宅介護者であれば誰にでも起こりうることです。隠すことではありません。特に身近な人には話しておくといいでしょう。
介護うつの症状は、人それぞれに異なります。主な症状としては、以下のようなものがあります。
このような症状を抱えながらも、在宅介護は待ったなしです。「介護うつ」と診断された方が、この症状と付き合いながら在宅介護を続けるためにどうするべきか。ポイントを解説していきます。
「介護うつ」になったときの解決方法4つ
「介護うつ」になってしまったとき、どのような行動をとるべきでしょうか。4つの方法を提案します。
4つの方法をひとつずつ解説していきます。
ショートステイを利用する
「介護うつ」になったときの解決方法、ひとつ目は「ショートステイを利用する」ことです。
ショートステイは介護保険サービスのひとつです。短期間、施設等で利用者を預かり、食事や排せつ、入浴などのサービスを提供します。
短期入所サービスは、特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設や、介護老人保健施設、有料老人ホームなどの施設に併設されている場合と、ショートステイのみのサービスを行う単独型があります。
ショートステイの機能のひとつにレスパイトと呼ばれるものがあります。利用者をショートステイ事業所が短期間預かることで、在宅介護を行う家族が心身の休養を得てリフレッシュできます。
長期間にわたって在宅介護を行うためには、介護者の休息は欠かせません。ショートステイの利用は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員と相談し、どの施設に申し込むか、いつ、どのくらいの日数で申し込むのかなど、よく相談しましょう。また、希望の日程があれば早めに申し込みましょう。ショートステイの受付は基本先着順ですので、レスパイト目的でショートステイを利用するのであれば、二か月・三か月前から申し込みし、予定をあらかじめ確保しておくことがおすすめです。
施設によっては中・長期の宿泊利用ができる場合もありますし、希望や施設の空き状況によってはそのままショートステイ利用からそのまま長期入所というパターンも可能です。
ショートステイを利用し、介護者自身が体を休める期間を持ちましょう。プロの手に委ねることは恥ずかしいことでも、人に批判されるようなことでもありません。在宅介護を長続きさせるために上手に活用していくことをお勧めします。ショートステイについてはこちらの記事にまとめていますのでご参照ください。
また、その際にたまったゴミや不用品などを整理することもおすすめします。本人がいるとなかなか片付かないことも多いのですが、ショートステイで不在の期間に整理・片付けをし、不用品の処分などもするといいでしょう。自分の力では解決できない場合は専門の方に相談するのもひとつの方法です。
このサイト上でもショートステイの利用できる事業所を検索することができますので、お近くの事業所を探してみてください。
「介護うつ」になったときの解決方法ひとつ目、「ショートステイを利用する」ことを解説しました。
家族・近隣・友人の協力を得る
「介護うつ」になったときの解決方法、ふたつ目は「家族・近隣・友人の協力を得る」ことです。
介護はひとりではできません。精神的にパワーダウンしているときには、助けを求めましょう。
「介護うつ」の症状に悩む人の多くは責任感が強く、自分ひとりで介護を抱え込もうとしてしまう傾向があります。抱え込むのではなく、周囲に協力を求めることが大事です。怠けているのではないか、責任放棄なのではないか、と自分を責める必要はありません。介護というのはそれだけ負担の大きな問題なのです。
身近な家族にもできることは協力してもらいましょう。特に夜間の対応を代わってもらう・夫婦交代制で行うことができれば、夜間安眠する時間を確保でき、精神的にも負担軽減につながります。
介護ができなくても、少しの間見ていてもらう、代わりに家事をやってもらうなど、できることはお願いしてみましょう。夫婦関係だけでなく、離れている兄弟姉妹などとも相談しながら、金銭的な支援や短期間預かってもらうなど、不公平感がないように負担を何らかの形で分担するといいでしょう。
協力できそうな家族がいない場合、近隣や友人にも協力してもらいましょう。
買物などで家を空ける際、本人が家でひとりになるときには気にかけてもらうよう近隣に声をかけることや、昔から親しくしていた近隣の方がいればお茶のみに誘ってもらうこともいいでしょう。友人には、代わりに買物をしてもらうことや、愚痴を聞いてもらうこともいいでしょう。
他人に助けを求めるのは勇気がいることかもしれませんが、自分ひとりだけで解決しようとすると必ず無理が出ます。長く在宅介護をするためには、協力してくれる人を増やすことが重要なポイントになります。
「介護うつ」になったときの解決方法ふたつ目、「家族・近隣・友人の協力を得る」ことを解説しました。
専門医療機関を受診する
「介護うつ」になったときの解決方法、みっつ目は「専門医療機関を受診する」ことです。
介護疲れなどから心身に異常をきたすようになったら、専門医療機関を受診することをお勧めします。精神科クリニックなどを受診することに抵抗がある方もいるでしょう。ただ、心身が悲鳴を上げている状況を放置するよりも、適切なケアを受けることが優先です。
介護が終われば、眠れるようになるし、気力も回復するはず、と考える方もいます。しかし、死別や施設入所などで在宅介護が終わった後も、無気力状態が続く「燃え尽き症候群」と呼ばれる無気力状態になることもあります。あと少しの辛抱だから、もうちょっと我慢すれば、と無理をすることは避け、体の不調を感じたら専門医療機関に相談しましょう。
うつ病の診察は、精神科・心療内科・神経精神科・メンタルクリニックなどの病院・クリニックで行われています。介護をしながら通院することも考え、できるだけ通いやすい医療機関に行くことをお勧めします。
うつ病で診察を受けることは決して恥ずかしいことではありません。うつ病の治療を行いながら仕事や学校を続ける人も多く、社会生活を維持することも可能です。エネルギーが不足しているときには専門家のサポートを受けることも必要です。
「介護うつ」になったときの解決方法みっつ目、「専門医療機関を受診する」ことを解説しました。
訪問系サービスを利用する
「介護うつ」になったときの解決方法、4つ目は訪問系サービスを利用することです。
うつで人に会うのもつらいのに、家の中に知らない人に来られるのは余計につらい。と思うかもしれません。
ただ、介護うつの大きな原因は孤独感や孤立感・不安からきています。訪問介護や訪問介護などのサービスでは介護・看護を提供するだけでなく、負担の少ない介護方法のアドバイスなども行います。また、介護に関する悩みや問題について気軽に話すことができますので、不安感の解消に大いに役立ちます。
実際、訪問系サービスを利用することで介護者の不安感は大幅に軽減されているという調査データもあります。詳細はこちらの記事をご参照ください。
「介護うつ」になったときの解決方法、4つを紹介しました。
まとめ
「介護うつ」は在宅介護をしている方は誰にでも起こりうる状態です。心身の不調を感じたら、無理せず、人に相談しましょう。在宅介護はそれだけ大きな負担を伴うものです。
十分な休養と、周囲のサポートを得て、無理のない在宅介護を続けていきましょう。
介護うつについて、もっと詳しく知りたい方は以下のサイトも見ていただくと、介護うつになりやすい人の特徴やリフレッシュ方法なども紹介されていますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
リフレッシュしながら介護を続けていくことが大切です。各自治体では介護者向けのリフレッシュ事業として、マッサージの利用助成・温泉施設の割引優待・介護者交流会などが行われていますので、お住まいの地域で利用できるものがあるかも調べてみることをお勧めします。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
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