この記事を監修したのは
介護認定審査会委員/株式会社アテンド代表取締役
河北 美紀
デイケアは正式名称を「通所リハビリテーション」といいます。リハビリ施設に日帰りで通い、医学的なリハビリテーションを受けることができるのが特徴です。この記事では、デイケアの概要や料金、デイサービスとの違い、自分に合った施設の探し方などを徹底解説しています。この記事を読めば、デイケアの上手な活用方法が分かります。ぜひ、最後までご覧ください。
★こんな人に読んでほしい!
- デイケアについてまだよくわかっていない方
- 退院後など集中的にリハビリを受けたい方
- 自分にあったデイケア事業所を探したい方
★この記事で解説していること
- デイケアとは、専門的なリハビリを行う通所施設
- デイケアとデイサービスの違いは、医学的なリハビリを行うか否か
- デイケアの料金は、介護度や利用回数、事業所ごとの加算や地域により異なる
- デイケアの利用頻度や時間は個人の状態により異なる
- デイケアは福祉用具、デイサービス、ヘルパーと併用している方が多い
- デイケアを探す際は、自身の希望する条件をケアマネに提示し比較検討する
1. デイケアとは
1-1. デイケアとは、日常生活の自立や心身機能維持・回復を目的に医療的なリハビリを行う通所施設
デイケアとは、正式名称を「通所リハビリテーション」といいます。介護施設などに通って専門的なリハビリテーションを受ける、介護保険サービスの一種です。
デイケアの根拠となる介護保険法では、その目的を「居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、介護老人保健施設、介護医療院、病院、診療所その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、当該施設において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションをいう。」*1と定めています。
つまり、理学療法士や作業療法士などが中心となって医学的なリハビリを提供し、利用者の日常生活に必要な心身機能の維持・回復を図ることが主な目的です。専門的なリハビリに加えて、入浴や食事に関する介護や医療的ケアを必要とする方も利用することができます。
1-2. デイケアでサービス提供する職員
デイケアには、医師や看護師、リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)に加えて介護職員などが配置されています。配置が義務付けられている職種の役割や仕事内容は以下の通りです。
職種*2 | 業務内容 |
医師 | 利用者の心身状況に応じたリハビリテーション計画書の作成や指導・指示 |
看護師 | 利用者の身体状態確認、必要に応じた医療ケア、利用者に体調変化が生じた際の対応(医師への報告・相談)など |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 医師の指示に基づくリハビリテーションの実施、リハビリテーション計画書の作成・評価など |
介護職員 | 利用者に対する身体介護やレクリエーション活動の提供など |
なお、上記でご紹介した以外に、独自に生活相談員や栄養士などほかの職種が配置されている事業所もあります。また、厚労省の資料*2によると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者100人ごとに1人以上、医師以外の職種の合計が利用者10人ごとに1人以上配置されていればよくなっています。デイケアの施設によって職種ごとの人数が異なるため、サービス内容の対応可能な範囲にも違いが生じる場合があるので覚えておきましょう。
1-3. デイケアのサービス内容
デイケアでは、リハビリ専門職によるリハビリテーション以外にも送迎・入浴・食事・レクリエーション・医療的ケアなどのサービスを受けることができます。実際に行われているサービス内容を、とある事業所の1日のタイムスケジュールに沿ってご紹介します。
時間 | 支援内容 | 解説 |
8:30 | 送迎 | 事業所の車両が自宅までお迎えに行きます。車椅子が必要な方には、リフト車での対応も可能です。なお、なかには自家用車で施設に通う方もいらっしゃいます。 |
9:00 | 体調確認 | 看護師が中心となり、体温・血圧・脈拍などの測定や問診による体調確認を行います。 |
9:30 | 個別リハビリ入浴 | リハビリテーション計画書に基づき、専門職がマンツーマンでリハビリを実施します。入浴介助も受けることができます。施設によっては、寝たきりの方でも対応可能な特殊浴槽もあります。 |
12:00 | 昼食 | 利用者の嚙む力・飲み込む力に応じた食形態で昼食を提供します。自力で食べることが難しい方については食事介助も行います。 |
13:00 | 自由時間 | お昼寝をしたい方のために、ベッドが用意されています。必要がない方はテレビ鑑賞や脳トレなど、自由に過ごしていただける時間です。 |
14:00 | 集団リハビリ個別リハビリレクリエーション | 利用者皆さんで一緒に脳と身体を動かす体操でリハビリテーションを行います。午前中に個別リハビリを行えなかった方については、午後から実施することもできます。リハビリのあとはレクリエーションやゲームで盛り上がります。 |
15:00 | おやつ | おやつとお茶で談笑の時間です。 |
16:00 | 送迎 | 朝と同様に、ご自宅まで事業所の車両でお送りします。 |
デイケアでは、介護職員が自宅に送り迎えをします。ただし、デイケアに出かける準備や帰宅後のオムツ交換などには基本的に対応していません。送迎前後に介護が必要な場合は、事前に担当のケアマネジャーに相談するようにしましょう。
1-4. デイケアの対象者は、要支援1以上の認定を受けている方
デイケアを利用できる方は、要支援1以上の要介護認定を受けている方です。要支援1~2の方は「介護予防通所リハビリテーション」、要介護1~5の方は「通所リハビリテーション」として利用します*3。認定を受けている方の中で、たとえば「退院後に集中的にリハビリを受けたい」「脳梗塞後遺症の左マヒを改善したい」といった専門的なリハビリを必要としている方が対象です。
利用を希望する方は、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。相談を受けたケアマネジャーは利用者の主治医に利用の可否を書面で確認したあと、本人・家族・事業所関係者が一堂に会するサービス担当者会議を開催します。その場でケアプランに合意を得れば、デイケアの利用開始となります。デイケアは目的や利用期間を明確に定めて利用する必要があります。利用した結果、心身の機能が改善した場合はサービス修了になります。とくに2021年4月の介護保険改訂により、要支援1~2の方は利用期間1年間が目安と定められています*4。
厚生労働省の資料によると、デイケアを利用している方は年々増加しています。利用している方は軽度〜中等度(要支援1〜要介護3)が全体の約9割を占めています。なかでも要介護1~3の方が全体の約6割で、近年は要支援1~2の利用者が増えています*3。さらには、デイケアを利用するきっかけとなった病気は脳卒中と骨折の合計が全体の約50%を占めており、後遺症による機能回復の維持・回復を目的に利用している方が多いことを示しています*3。
このことからも、デイケアは介護度の悪化を防ぐ目的で利用されていることが分かります。
1-4. デイケアを利用開始して半年後に約3割改善している
デイケアは心身機能の維持・回復を目的としたサービスです。厚生労働省のデータでは半年間の利用継続によって約6割の方が身体機能を維持しており、さらに約3割の方が利用前と比較して改善したことが明らかになっています。とくに要支援1~2の方は機能維持している方の割合が多く、要介護度が重度であればあるほど改善率が高くなっています*3。
このことから、デイケアは要支援の方は状態が悪化して要介護になることを防ぐことができ、重度の要介護度の方でも身体機能の改善が期待できることが分かります。とくに退院前に満足のいくリハビリを受けられなかった方や、病気の後遺症で不自由な身体に悩んでいる方は、積極的にデイケアを活用していくことがおすすめです。
2. デイサービスとデイケアの違いは「医師の指示による専門的な医療ケアがあるか否か」
デイサービスとデイケアは、一見すると違いが分かりづらく、なかには言い方の違いだけで実際は同じサービスだと考えている方もいらっしゃいます。しかし実際は、この2つには大きな違いがあります。
違いを大まかにまとめると、以下のようになります*3。
デイサービス | デイケア | |
正式名称 | 通所介護 | 通所リハビリテーション |
主な目的 | 日常生活上の介護、社会的孤立の解消、家族の負担軽減 | リハビリテーションによる機能維持・回復 |
医師の配置 | 不要 | 選任の常勤医師1名以上 |
種類 | 機能訓練特化型認知症対応型地域密着型(小規模のデイサービス)療養型 | 病院や診療所のデイケア介護老人保健施設のデイケア介護医療院のデイケア |
利用に向いている方 | 一人暮らしで日中の介護が必要な方閉じこもりがちな方介護者が介護疲れをしている方 | 専門的なリハビリテーションを希望する方医療的ケアが必要な方 |
デイサービスは医師の配置が不要でさまざまな種類がある一方、デイケアは医師の配置が義務付けられており、医療機関が運営している点が特徴です。デイサービスでも機能訓練は実施しますが、医師の指示は不要で理学療法士などのリハビリ専門職の配置も義務付けられていません。なかには「パワーリハビリデイサービス〇〇」「リハビリステーション〇〇」等の名前で運営されている機能訓練特化型のデイサービスもありますが、医師や理学療法士などの専門職の配置は不要で、代わりに柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などが配置されています。
デイケアを設置している法人で最も多いのは介護老人保健施設、いわゆる老健です。老健についてはこちらの記事にまとめています。
デイサービスは身体介護や閉じこもり予防が主な目的なので、一人暮らしや同居家族の仕事などで日中介護を受ける必要がある方や、閉じこもり傾向にある方、家族の介護負担を軽減させたい方に向いています。一方、デイケアはリハビリが主な目的の施設です。病気の後遺症や退院直後で専門的なリハビリを受けたい方や、医療的ケアが必要な方に向いています。
なお、要支援1~2の方の場合デイサービスとデイケアを併用することはできませんが*5、要介護1以上の方は併用が可能です。
デイサービスとデイケアの違いについては以下の記事で詳しくご紹介しています。もっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
3. デイケアの料金
3-1. 要支援1〜2の場合
要支援1〜2の場合のデイケアの料金は、基本単位が定額制であることが特徴です。要支援1の場合は週1回、要支援2の場合は週2回の利用を想定した価格になっています。詳細は以下の通りです*5*6*7。
項目 | 要支援1 | 要支援2 |
基本単位病院又は診療所の場合介護老人保健施設の場合介護医療院の場合 | 2,268円/月 | 4,228円/月 |
※1単位=10円、自己負担割合1割の場合
上記のほかにも、サービスの種類や働いているスタッフの処遇改善によって加算されます。
3-2. 要介護1〜5の場合
要介護1〜5の場合は、要支援と違って基本単位が1回当たりの料金になります。また、介護度や事業所の規模(一日当たりの定員数)によっても料金が異なります。
以下は、事業所の数が多い通常規模事業所の料金です*6*7。
【通常規模事業所の場合】
※通常規模=前年度の1ヶ月当たりの利用者が750人以内*8
項目 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
1時間以上2時間未満 | 369円 | 398円 | 429円 | 458円 | 491円 |
2時間以上3時間未満 | 383円 | 439円 | 498円 | 555円 | 612円 |
3時間以上4時間未満 | 486円 | 565円 | 643円 | 743円 | 842円 |
4時間以上5時間未満 | 553円 | 642円 | 730円 | 844円 | 957円 |
5時間以上6時間未満 | 622円 | 738円 | 852円 | 987円 | 1,120円 |
6時間以上7時間未満 | 715円 | 850円 | 981円 | 1,137円 | 1,290円 |
7時間以上8時間未満 | 762円 | 903円 | 1,046円 | 1,215円 | 1,379円 |
以降1時間ごと延長 | +50円/1時間 | ||||
事業所が送迎を行わない場合 | -47円/片道につき |
※1単位=10円、自己負担割合1割の場合
上記のほかにも、サービスの種類や働いているスタッフの処遇改善によって加算されます。
3-3. その他、加算の有無や事業所の規模、地域によって費用が変わる
デイケアの料金は、さまざまな条件で料金が変わります。
1回当たりの利用時間や要介護度以外にも、上記でご紹介した通り事業所の規模によって基本料金が変わります。通常規模事業所よりも大規模事業所の方が料金が安くなります。
事業所規模は前年度の利用実績によって決められています。加算についても事業所によって算定しているものが異なります。たとえば「サービス提供体制強化加算」や「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」などは事業所ごとに違います。
また、基本は1単位=10円で料金が計算されますが、地域によって1単位=10〜11.4円と幅があります。とくに、都市部であればあるほど単価が高くなります*9。さらには、利用者の年収などによって設定される「自己負担割合」によっても料金が変わります*10。
介護保険サービスの正しい料金の計算は、ケアマネジャーや介護保険事業所が使用している計算ソフトがないと困難です。実際に利用するデイケア事業所を決める場合は、担当のケアマネジャーに希望する条件を伝えたうえで複数の事業所を提案してもらい、比較検討することをおすすめします。
3-4. 少しでも費用を減らしたい場合の対応方法
デイケアの料金を少しでも抑えたい場合は、以下6つの方法を試しましょう。
ここからは、デイケアの料金を抑える方法をご紹介します。
3-4-1.送迎を家族対応にする
上記の料金表に「事業所が送迎を行わない場合」と言う項目があったのにお気付きでしたでしょうか?じつはデイケアの基本料金には、送迎に関する費用も含まれています。そのため、家族が送迎すればその分の費用が安くなります。
具体的には、事業所が送迎しなければ一回当たり片道47円(往復94円)の値引き*6です。少しでも費用を抑えたいのであれば、家族送迎を検討しましょう。
3-4-2.半日利用ができる事業所を利用する
デイケアの料金は、事業所に滞在した時間によって1時間ごとに増えていきます。「リハビリの時間は半日程度で大丈夫」「1日ずっと外にいるのは疲れる」と考えているのであれば、半日利用に対応した事業所を選択すると料金も安上がりになります。
たとえば、要介護1の方が通常規模事業所を利用した場合、7.5時間利用した場合の単価は757円ですが、半日利用である3.5時間の場合の単価は483円*6です。ただし事業所によっては半日利用に対応していない場合もあるので、担当のケアマネジャーを通じて確認しておくとよいでしょう。
3-4-3.利用料の上限を決めて利用する
デイケアを利用する際、ケアプランを作成するケアマネジャーに対し月額の予算を伝えておくと費用を抑えることができます。もし支払える金額に制限がある場合、ケアマネジャーは介護保険利用料に食費などの実費負担分を加味した上で利用回数や事業所を提案してくれます。
実際にデイケアを利用して請求書が届いたあとに支払えなかった場合、強制的に契約を解除されて利用できなくなってしまう場合があります。支払える金額に制限がある場合は、ケアマネジャーへ事前に予算を伝えるようにしましょう。
3-4-4.大規模型の事業所を利用する
デイケアの事業所は、事業所の前年度実績に応じて「通常規模」・「大規模型1」・「大規模型2」と3段階の料金体系に分かれています。一日当たりの利用者数が多ければ多い事業所ほど、1回当たりの単価が安くなるように設定されています。
たとえば、「通常規模」の事業所を要介護1の方が7.5時間利用した場合の基本料金は757円ですが、最も単価が安い「大規模型2」の事業所の場合は708円です*6。ただしデイケアを利用している人のなかには「利用者が多い施設は賑やかすぎて嫌だ」「利用者の人数が多すぎて、自分のことをちゃんと見てくれない」と感じる人もいます。事業所を検討する際は、通うことになる本人の意見と料金とのバランスを考慮して決めましょう。
3-4-5.食事を持参する
デイケアを利用すること自体は介護保険により1~3割の自己負担で利用することができます。しかし、デイケアを利用するときの食事代やオムツ代は実費請求です。昼食代の相場は1食700〜900円程度となっているので、利用回数が増えると結構な金額になってしまいます。
食事代の負担が気になる場合は、昼食を持参するようにすれば利用料金を抑えることができます。ただ、デイケア事業所の多くは利用者が昼食を持参することを想定していません。万が一の事故やトラブルを防ぐために食事の持参自体を断られる場合や、自己責任で持参することになるケースが多いので、覚えておきましょう。
3-4-6.オムツ代の補助を受ける
普段から尿や便の失敗がある場合は頻繁な交換が必要になるので、その費用もかなりのものになります。デイケア利用中のオムツ代は自己負担となっているので、なんとか費用を抑えていきたいものです。そこで活用できるのが、市区町村が実施しているオムツ支給の制度です。
たとえば東京都墨田区の場合は、以下の条件を満たした場合に月額500~700円で所定のオムツ類を現物支給してもらえます*11。
- 要介護3以上の方
- 要介護認定が要介護2以下の方で常時失禁状態の方
宮城県仙台市の場合は、要介護4以上の認定を受けている方のうち市民税非課税世帯に該当する場合に年間最大75,000円分のオムツなどを1割負担で購入することができます*12。
このようなオムツ助成は幅広い市区町村で実施していますが、市町村ごとの独自の取り組みのため助成内容や条件に大きな違いがあります。オムツ代でお悩みの場合は、お住いの市区町村や担当のケアマネジャーに問い合わせてみましょう。
また、紙おむつ代の節約についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
4. デイケアの利用頻度と利用時間
4-1. 利用頻度は要介護の状態によって異なる
デイケアを実際に利用している人の利用頻度は、要介護度によっても異なります。要支援認定の方は週1~2回の頻度で利用している方が多く、要介護1以上の認定を受けている方は週1~3回の範囲で利用している方が多くなっています*3。
上記でご紹介した通り、要支援1の方は週1回・要支援2の方は週2回利用を想定した制度設計になっており*5、事業所もこの通り受け入れているところが大半です。
要介護の場合は制度上利用回数の制限はありません。そのため、利用者ご本人の希望や必要性、事業所の受け入れ可能範囲を総合的に判断して回数が決定されます。
具体的な利用回数については、担当のケアマネジャーや利用するデイケアの事業所と3者間で相談することになります。話し合うときは、事前に週何回利用したいのか、なぜその回数を利用したいのかを整理しておくようにしましょう。
4-2. 利用時間は要介護度に関わらず、6〜7時間が最も多い
デイケアは1時間単位で料金が設定されており、利用者の事情によって利用時間の調整が可能です。多くの事業所では、以下3種類のいずれかの利用時間を想定したプログラムが組まれています。
なお、厚生労働省の集計によると、最も利用者が多いのは要介護度に関わらず6~7時間の終日利用型であり、ほとんどの事業所が終日利用を基本形としていることが分かります*3。それ以外に、一部の事業所が半日型や短時間利用に対応しています。なかには午前と午後で利用者を入れ替える完全半日型や、短時間利用型の体制を取っている事業所もあり、1〜2時間利用や3〜4時間利用の利用率も比較的高めになっています。
終日利用型は午前中に入浴・午後からリハビリとさまざまなプログラムを受けることができるので、リハビリだけでなく入浴やレクリエーションといった複数のサービスを利用したい人に向いています。一方で半日型や短時間利用型は、心身の状況により長時間利用が難しい人や、リハビリと自宅の家事を両立したい方などの拘束時間を短くして時間を有効活用したい人に向いています。
5. デイケアと併用している・修了後に利用している介護保険サービス
厚生労働省の集計では、デイケアと併用している方は「福祉用具貸与」「訪問介護」「通所介護」を併用している方が多くなっています。また、リハビリを終えてデイケアの利用を修了したあとは「通所介護(デイサービス)」に移行していく方が圧倒的に多くなっています*3。
そもそもデイケアを利用する方は骨折や脳卒中によって身体機能に課題を抱えている方が多いので、家庭内での生活環境を整える「福祉用具貸与」が有効です。また、身体機能が低下している場合は家庭内での介護が必要になっているはずですので、家族の介護負担を軽減するために「訪問介護」や「通所介護」との併用が効果的です。
一方、「通所介護」はデイケアのようにリハビリの専門家の配置は義務付けられていませんが、引き続き機能訓練を行うことが可能です。また、デイケアよりもレクリエーションや通われている他の方との交流促進に重きを置いているところも特徴です。そのため、デイケアでのリハビリを修了した方が心身機能や活動性の維持を目的に「通所介護」へ移行するケースが多くなっています。
ケアマネジャーは、単に利用者の「デイケアを利用したい」と言う希望を叶えるためにケアプランを作っているのではありません。利用者の生活状況を総合的に判断し、将来予測を立てながら現在最も適切なサービスを導き出してケアプランに組み込んでいます。「なぜデイケアを利用したいのか」、「リハビリを終えた後はどうしたいのか」を念頭にケアマネジャーと相談することが、最適なケアプラン作りにつながっています。
6. 自分にあったデイケアを探すときのおすすめのポイント6選
6-1.ケアマネジャーから複数の候補を提案してもらい、比較検討する
デイケアを探すときに最も重要なのが、ケアマネジャーから複数の事業所を提案してもらい、比較検討して選定することです。デイケアの事業所は事業所規模・職員配置・サービス内容・設備・施設の雰囲気・送迎対応などたくさんの要素によって構成されており、専門的な知識がないと適切な事業所を見つけ出すことが難しいからです。
口コミやネット上の評価を参考に決める方も増えています。事業所の雰囲気やサービス内容など、自分に合った事業所を検索することもできます。このサイト「いえケア」でも事業所検索機能がありますので、お近くの事業所を検索することができます。
ネット検索にはデメリットもあります。本来必要とする専門的な支援を受けられない可能性があるだけでなく、ご自身に合わないデイケアを利用した場合は、通所が気乗りせずお休みがちになったり、思った以上に金銭的負担になるというリスクもあります。
その点、ケアマネジャーは介護保険制度のことを知り尽くした専門家で、地域の介護保険事業所に関するたくさんの情報を持っています。利用者の希望や心身機能・生活状況・家族の事情などを総合的に考慮して事業所を提案してくれます。それぞれの事業所の長所短所を確認したうえで比較検討すると、よりよい事業所に出会えるでしょう。
6-2.必要としているリハビリを受けられるか
デイケアの人員配置は多種多様です。とくに理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職員については各事業所によって配置されている職種と人数が違うため、デイケアを探すときは事前に希望するリハビリを受けることができるか確認しておきましょう。
たとえば脳梗塞後遺症で噛む力・飲み込む力に課題があってうまく食事を摂ることができない場合、言語聴覚士が配置されている事業所を選択します。言語聴覚士は、食事摂取に関するリハビリの専門家だからです。しかし、言語聴覚士はどこのデイケアにも所属しているわけではありません。
デイケアでは、「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職員」の合計が利用者10人ごとに1人いればよい*2とされています。そのため、必ずしも全ての専門職がいるとは限りません。希望するリハビリを実施できる体制が整っているかを、しっかり確認しましょう。
6-3.希望する利用形態に合致しているか
デイケアの事業所は多種多様です。終日利用型が基本ですが、なかには半日ごとに利用者を入れ替える完全半日型や2〜3時間で終了する短時間型の事業所もあります。事業所の形態が好みや希望に合っているかを事前に確認しましょう。
たとえば、体力的な問題や認知機能の低下がある場合、長時間の利用は難しい場合があります。また、普段自宅で家族が介護している家庭の場合は半日で利用を終えて帰ってくると家事が終わらなくて困ってしまう場合もあるでしょう。
本人の心身状況や家族の都合に合わせ、適切な利用形態の事業所を選びましょう。
6-4.スタッフの対応や施設の雰囲気は好みに合っているか
デイケアは事業所ごとに一日当たりの利用者数や、スタッフの雰囲気や接遇も違ってきます。利用者数が多ければその分人の出入りが増えて賑やかになりますし、施設全体の雰囲気もアットホームな施設から淡々とリハビリを提供する所までさまざまです。
たとえば、認知用のある方が大規模のデイケアを選んだ場合、周囲の人たちの動きや声を騒音や不快と感じて、帰宅願望につながるかもしれません。また、自尊心が高い方の場合はスタッフに求める接遇が高く、声掛けが少ないだけでも不満に思い利用拒否につながったりする可能性もあります。
デイケアの事業所を選ぶときは、利用者の特性や性格にあった事業所を選ぶことが重要です。まずは気になった施設を見学したり体験利用してみたりして、スタッフ対応や施設の雰囲気を確認しておきましょう。
6-5.送迎に対応しているか
デイケアは、基本料金に送迎にかかる費用が含まれています。しかし、人員体制や保有している送迎車両の関係で送迎可能な範囲を限定していたり、お身体の状態によっては送迎に対応できない場合もあります。
そもそも、デイケアを利用する方は身体機能に課題を抱えている方です。介護の資格がない一般の方が車椅子の方を自家用車に載せて毎回連れて行くのは大変ですし、その都度介護タクシーを手配して送迎してもらうと相当な出費となってしまいます。
デイケアの事業所を絞り込む段階で、まずは自宅の住所を伝えて送迎エリアに入っているかを確認してください。また、送迎前後の介助や車椅子対応の車両で迎えに来てくれるのかについてもあわせてチェックしておきましょう。
6-6.各種加算、昼食代などの料金体系は適切か
デイケアの各種加算には、事業所の職員体制によって自動的に利用料に上乗せされる「体制加算(介護職員処遇改善加算等)」と、オプションサービスとして提供した場合に上乗せされる「サービス実施加算(入浴介助加算等)」があります。また、昼食代は任意で設定されているので事業所により幅があります。これらの料金体系が自身の希望に合っているかを確認しましょう。
とくに各種の「体制加算」について算定している事業所は料金がかかるものの、人員体制や提供する介護サービスがより充実していることを表しています。また、各種の加算は基本サービスに加えて入浴介助や退院直後の集中的なリハビリを希望する場合に必要になります。逆に不要だと言っても理由をつけて加算を付けてくる事業所にはそのままにせず、ケアマネジャーを通して加算が必要な理由を確認してもらいましょう。納得できない理由の場合は利用継続するか検討しても良いでしょう。昼食代も事業所によって大きく異なる場合があるので、予算が限られている場合はしっかりチェックしましょう。
ここでご紹介した加算や昼食代については、ケアマネジャーに相談するとしっかり確認してくれます。専門的で分かりにくい部分もあるので、ケアマネジャーと相談しながら希望に合った事業所を探すようにしましょう。
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