いえケア 編集部
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いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
要介護の認定には有効期間があることをご存じでしょうか?一度認定された要介護度はずっと変わらないわけではなく、有効期間に応じて見直しがされます。見直しの結果、介護度が上がることもあれば下がることもあります。現在、介護保険の認定有効期間は最長48カ月となっています。
父が介護保険の認定を受けたのですが、有効期間が1年で、1年後にはまた更新しなきゃいけないんです。でも、認定有効期間は最長48カ月だって聞きました。面倒なので期間は長い方がいいと思っているのですが、なんで48カ月にならなかったんですか?
ありがとうございます。確かに介護保険の認定有効期間の最長は48カ月ですが、全ての方がこれに当てはまるわけではないんです。その人の状況を介護認定審査会で検討した結果、認定有効期間が設定されているんです。
この記事では、長期間で認定されるパターンや、長期間の認定になることのメリット・デメリットなども含め、詳しく解説します。
【この記事をお勧めしたい人】
- これから要介護認定を受けるが、どのくらいの期間で認定されるのか気になる人
- なぜ認定有効期間が短かったのか、なぜ長くなったのか知りたい人
- できるだけ長い期間の認定が出るためにはどうしたらいいか知りたい人
【この記事でお伝えしていること】
- 要介護認定の有効期間、最長は48カ月
- 状態の安定性を評価して有効期間が設定される
- 必要なタイミングで区分変更が可能
要介護認定の有効期間、パターンと判定方法
要介護認定の有効期間はなぜ必要か
介護保険には7段階の要介護状態区分(要介護度)があります。
要介護度の状態区分には、必ず有効期間が設定されています。これは、高齢者の状態や介護にかかる手間は常に一定ではなく、内的要因や外的要因によって変化するためです。状態が悪化したらその分サービスの量が必要になるため、状態に合わせて適切な介護度が設定される必要があります。
そのため、介護保険制度では要介護状態区分に一定の有効期間を設定し、見直しがされる仕組みとなっています。要介護認定の仕組みの基本についてはこちらをご覧ください。
要介護認定の有効期間のパターン
要介護認定の有効期間は、いくつかのパターンで設定されています。
基本的には以下のルールに則って認定期間が設定されます。
申請区分 | 原則の認定有効期間 | 延長可能な認定有効期間 | |
---|---|---|---|
新規申請 | 6ヵ月 | 3ヵ月~12ヵ月 | |
区分変更申請 | 6ヵ月 | 3ヵ月~12ヵ月 | |
更新申請 | 要支援→要支援 | 12ヵ月 | 3ヵ月~48カ月 |
要支援→要介護 | 12ヵ月 | 3ヵ月~36ヵ月 | |
要介護→要支援 | 12ヵ月 | 3ヵ月~36ヵ月 | |
要介護→要介護 | 12ヵ月 | 3ヵ月~48カ月 |
それぞれの認定期間の目安としては以下のようなものが考えられます。
6ヵ月 | 「状態が不安定」であることを理由に要介護1認定になるなど、急激な状態の変化が予想される場合や、短期間での再評価が必要な場合に設定されます。 |
1年 | ある程度安定しているものの、定期的な確認が必要とされる場合や、新規認定・区分変更時などに適用されます。 |
2~3年 | 状態が比較的安定しており、頻繁な見直しの必要がない場合に設定されます。 |
4年 | 更新時に適用される最長の有効期間で、前回と介護度が変わらず、状態が非常に安定している場合に限られます。 |
このように、有効期間の設定に大枠のルールはありますが、具体的な部分は利用者の状態の安定性によって設定されます。認定期間は1つの区切りとなるため、ケアマネジャーは認定期間に応じたケアプランを作成しなければいけません。つまり、認定有効期間は、ケアプランやその後のサービス利用にも大きく影響するのです。
状態の安定性を判断するのは介護認定審査会
認定期間を決めるための判断基準が状態の安定性であることはお伝えした通りです。それでは、何をもとにその安定性を判断しているのでしょうか。介護認定審査会が判断材料としているものとしては、以下の情報があります。
- 認知症高齢者の日常生活自立度:認定調査結果と主治医意見書に記載された「認知症高齢者の日常生活自立度」を比較し、両者に差異がある場合は、状態の安定性を慎重に評価します。
- 主治医意見書の内容:主治医意見書に記載された疾病や症状の経過、治療内容、今後の見通しなどを総合的に判断し、状態の安定性を評価します。
- 特記事項の確認:認定調査時に記載された特記事項を精査し、利用者の生活環境や支援状況、家族の介護力なども考慮して評価を行います。
これらの情報を総合的に分析し、介護認定審査会は利用者の状態が安定しているか、または維持できる可能性があるのかを判断しています。その結果、有効期間が設定される仕組みとなっています。
初回認定で認定有効期間が48カ月になることはない?
初回認定の有効期間の特徴
はじめて介護保険の認定を受けることを初回認定と言います。
初回認定の際、有効期間がどのくらいになるのか疑問に思う方も多いでしょう。できれば長めの期間の認定が出たらいいのにと思う方が多いと思います。しかし、初めての認定では、最長48カ月の有効期間が適用されることはほとんどありません。これは、初回認定時には利用者の状態がまだ安定していないことが多く、頻繁な見直しが必要とされるためです。
初回認定では、6カ月から12ヵ月という期間が設定されます。この期間中に、利用者の状態や介護サービスの適切性を確認することができます。認知症の進行度やリハビリの効果などにより、初期の介入によって利用者の状態は大きく変わるのです。
例えば、脳出血で入院した利用者でも、早期のリハビリの介入の結果で状態が大幅に改善することがあります。救急搬送後は様々な後遺症によって完全看護の状態だった利用者であっても、リハビリの結果要介護1や要支援の状態まで一気に改善することがあります。
初回認定ではそれ以降に大きく状態が変わる可能性があるため、要介護認定の有効期間を短く区切ることとなっています。短いスパンで評価することにより、適切なサービス利用につなげたいという狙いが見られます。
状態が変化した場合の区分変更申請
介護サービスを利用している間に、急激に利用者の健康状態が変化することも珍しいことではありません。例えば、既往の疾患の悪化や転倒などの事故などによる状態悪化。または、リハビリの効果により状態が回復することなどもあります。このような場合、現在の要介護度が実際の状態に合わなくなることがあります。
このようなときに利用できるのが、区分変更申請です。これは、有効期間中の要介護度を変更するための手続きで、利用者の状態に応じた適切な支援を受けるために必要です。
区分変更申請が必要な具体例
あくまで参考例ですが、区分変更が必要な事例を紹介します。
- 認知症の進行:認知症の進行により、家族の介護負担が増え、常に見守りが必要な状態になったため、現在有効な介護度では必要な日数のデイサービス利用ができない。
- 転倒・骨折による入院:自宅での転倒・大腿骨頸部骨折による入院。リハビリを行い、自宅に戻る方針となったが、身体的な機能低下、長期間の入院による認知機能の低下、介助の量も増える。現在の介護度では退院後のリハビリ・看護などの体制が不十分。
- 疾患による状態悪化:パーキンソン病の症状が悪化。筋肉の固縮が強く、足を踏み出せなくなり、転倒も増えている。一人暮らしの生活を続けるためにはサービスの量を増やす必要がある。
このように、状態の悪化に伴って、より多くのサービス利用が必要な場合に区分変更申請を行います。
なお、区分変更申請の場合も、新規申請と同じく認定期間は最長12ヵ月で設定されます。
状態が改善したときに要介護認定を軽くするために区分変更申請を行うこともできます。要介護度が軽い方が、1回当たりのサービス利用料金が安くなるというメリットがありますが、再度状態が悪化することへの不安などもあり、軽度にするための区分変更を行う例は少ないのが実際のところです。
「頑張ってリハビリしたから」区分変更して要支援1か自立になりたいっていう方がいて、区分変更申請をしたこともありました。でも、申請時に役所の人にも「なんでそんなことをするの?」みたいに言われました。確かに認定にコストもかかるので役所の気持ちもわからなくもないのですが・・・。
区分変更申請について、詳しくはこちらの記事に書いていますのでご確認ください。
認定有効期間が最長48カ月になった理由と経緯
介護保険制度導入当初の有効期間設定
要介護認定の有効期間の最長期間が48カ月となったのは実は最近のことです。
2000年に介護保険制度が導入された当初、要介護認定の有効期間は次のように設定されていました:
- 新規認定:6カ月~12カ月
- 更新認定:12カ月~24カ月
このように短期間での設定となった背景には、利用者の健康状態が変化しやすく、介護サービスが適切に提供されるよう頻繁な見直しが必要だったことが挙げられます。
2005年の介護保険制度改正
2005年の介護保険法改正では、認定有効期間の見直しが行われました。この改正により、更新認定時に利用者の状態が安定していると判断された場合、有効期間が最大36カ月に延長されました。
この変更の目的は、認定業務の効率化と利用者・家族の負担軽減にありました。頻繁な手続きを減らすことで、市区町村の業務負担も軽減されることが期待されました。
2021年の介護保険制度改正:最長48カ月へ
さらに、2021年の法改正により、有効期間の上限が36カ月から48カ月へと延長されました。この改正の背景には、以下の理由が挙げられます。
- 業務の効率化
市区町村の認定業務が年々増加している中、業務負担を軽減するための対策として、安定した状態の利用者には長期の有効期間を付与する必要があった。 - 利用者・家族の手続き負担の軽減
頻繁な認定更新は、利用者やその家族にとって精神的・時間的な負担が大きい。長期認定によってその負担を軽減することが期待された。 - ケアマネジャーへの信頼
ケアマネジャーが対応しているケースに関しては、利用者の状態をケアマネジャーが十分把握しており、必要なタイミングで区分変更申請が可能。認定期間を細かく区切る必要はない。
改正によるメリットと今後の課題
最長48カ月の有効期間が適用されることで、以下のようなメリットが得られました。
- 手続きの頻度が減り、利用者・家族の負担が軽減される。
- 市区町村の業務負担が軽減し、より迅速な認定業務が可能となる。
一方で、長期認定中に利用者の健康状態が変化するリスクがあるため、家族やケアマネジャー等が状態とサービスの利用状況を確認し、必要に応じて区分変更申請を行うことが重要です。
これらの経緯を踏まえ、介護保険制度は利用者の利便性向上と制度運用の効率化を両立させる方向で改善が進められています。
長期認定のメリット・デメリット
長期認定のメリット
最長48カ月の長期認定は、介護保険制度の中で利用者や家族にとって利便性が高くなります。以下はその主なメリットです。
- 更新手続きの負担軽減
認定更新の頻度が少なくなるため、訪問調査や手続きにかかる負担が大幅に軽減されます。高齢者にとって、頻繁な手続きは大きなストレスとなるため、長期認定が適用されることで心理的な負担が減少します。 - 介護サービスの継続性
介護度の変更によって利用サービスや時間帯が変更すると、これまで積み上げた生活パターンやリズムが失われる可能性があります。認定が長期間で設定されれば、長期にわたって同じサービスを利用できるため、生活リズムが安定し、利用者にとって安心感があります。サービス事業所との関係も深まり、小さな状態の変化にも気づきやすくなります。 - ケアマネージャーの業務効率化
更新手続きが減ることで、ケアマネージャーが他の利用者の支援に注力できるようになります。ケアマネジャーの作成するケアプランは、認定有効期間を超えた期間で作成することはできません。認定有効期間により、本人の希望や状態に合わせたケアプランの作成が制限されてしまいます。認定が長期間であれば、より自由度が高く、利用者の状況にあったケアプランの作成が可能となります。
長期認定のデメリット
一方で、長期認定にはいくつかのデメリットも存在します。
- 状態変化の見逃し
長期認定では再評価の頻度が少なくなるため、利用者の健康状態や介護の必要性の変化が見逃されるリスクがあります。ケアマネジャーが常に状態を把握しているケースであればあまりそのような状況は起こりませんが、介護認定を受けていてサービスを利用していない人や、要支援で福祉用具のみの利用などで状態把握の頻度が少ない場合などにはタイミングを見逃すリスクがあります。 - ケアプランの適切性低下
状態が変わってもケアプランがそのまま維持される場合、提供されるサービスが適切でなくなる可能性があります。訪問介護のサービスを週5日利用していたものの、状態が改善。しかし、利用者がサービスを継続して希望していた場合、サービスを減らすことはなかなか難しい傾向があります。有効期間が長いため、プランを見直すきっかけを作りにくいというデメリットはあります。
これらのデメリットを軽減するためには、家族や介護者が日常的に利用者の状態を確認しつつ、適切なサービスなどについて常に検討していくことが必要です。
要介護認定が期限切れになったらどうなるの?
有効期間の失効の影響
要介護認定の認定期限が切れたらどうなるのでしょうか。要介護認定が期限切れになると、介護保険を使った介護サービスが一時的に利用できなくなります。訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなどの提供が中断されるか、もしくは自費利用になる可能性があります。利用者本人だけでなく、本人・家族・事業者にも大きな影響を及ぼします。
失効前に必要な手続き
認定が失効しないよう、要介護認定は更新の手続きをしなければいけません。更新手続きは有効期限の60日前から受け付けられます。一般的に、ケアマネジャーが担当している場合は更新の手続きをケアマネジャーが代行してくれる場合が多いです。
ケアマネジャーが担当していない場合、サービスを利用していない場合は、市区町村から更新手続きの案内が郵送されます。書類の内容を確認し、早めに申請することが重要です。
更新申請を有効期間内に提出すれば、現在の有効期間後の要介護認定を受けることができます。
有効期限5月31日までの認定であれば、4月1日から市町村での認定更新手続きが可能。6月1日以降の要介護認定を判定するための認定調査が行われます。
更新手続きを忘れて、6月1日以降に申請をする場合は更新の手続きではなく、新規の介護保険申請扱いとなり、申請日から有効となる要介護認定を行います。
ケアマネジャーも忘れないように有効期間の管理をして、60日前に更新申請ができるように準備をしていますが、ごく稀に忘れることなどもあります。有効期間は意識しておきましょう。
認定期間をできるだけ長期にするためのポイント
認定期間はできるだけ長期間の方がいい。という方が多いと思います。もちろん、介護認定審査会が決定するので、利用者や家族の希望があるからといって長期になるわけではありません。ただ、このような方は比較的状態の安定性が評価され、長期に設定される可能性が高いです。
前回の介護度と変わりがない
これは48カ月の認定期間を得るためには絶対条件なのですが、更新時に前回の介護とと変更がないことです。この条件を満たしていなければ48カ月の認定が出ることはありません。
例えば、要介護3から要介護2になった場合、有効期間は最長で36カ月となります。要介護度が前回と同じであれば認定期間が最長48カ月となります。
前回と同じ認定だったとしても、認定期間が短く設定される場合もあります。短い期間の認定を避けるためには以下のような点に注意しましょう。
定期的な受診と主治医とのコミュニケーション
主治医意見書の内容が要介護認定期間に影響する可能性があります。
普段状態をあまり見ていない医師は、正確な状態を把握することができず、詳細な状況を意見書に記載することができない場合があります。
状態が安定していると油断してしまい、薬がまだあるから大丈夫といって受診の感覚が延び延びになってしまうことがよくあります。安定している時こそ、普段の状態をしっかり見てもらうことをお勧めします。
また、しっかり主治医とのコミュニケーションをとり、状態が安定しているのであれば不必要な誇張はせず、今の状況を伝えていくことがいいでしょう。
認定調査時には家族等も立会い、情報を補足する
認定調査の際、本人だけで受ける認定調査では説明が不足する部分もあります。
いくら本人がしっかりしていたとしても、客観的な情報がなければその信頼性も不十分と映る場合があります。できれば第三者の視点から本人の状況を伝えることで、状態を正確に伝えていくことが求められます。
軽度に見せる必要はありません。ただ、急に状態が悪くなったのではなく、この状態がどのくらい続いているのかをできるだけ正確に伝えましょう。認定調査の立会いについてはこちらの記事をご参照ください。
もちろん、認定期間は介護認定審査会が決定しますし、その市町村の方針で48カ月がバンバン出る市町村もあれば、比較的短い期間で区切る市町村もあります。必ず長期で出る方法などはありませんので、ご了承ください。
まとめ
要介護認定の有効期間について解説を行いました。介護保険の制度改正に伴い、認定期間の最長期間は長期化する傾向があります。要介護認定にかかる業務負担やコストを削減するため、今後も認定期間が長期化していく可能性もあります。
状況に合わせて区分変更申請をするなど、必要なサービスを利用できるようにケアマネジャー等と相談していきましょう。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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