介護認定が届かない!?介護保険証の発行が遅れる理由と、その対策。

介護認定はいつ届く?認定が遅れる原因と対策 介護の相談/介決サポーター
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

「介護保険の認定を申請したけれど、まだ保険証が届かない!いつ届くの?」届かない保険証にヤキモキされている方も多いかと思います。

今回は介護保険の認定遅延の問題について、ユーザー様からの質問に回答します。

介護者様
介護者様

先日、夫の介護保険の申請をしました。夫の認知症が進んでしまって、早くデイサービスに行けるようになったらいいなと思っています。ただ、申請してもうすぐ2ヶ月になるのに、まだ保険証が届かないんです。主治医の先生にも書類をお願いしたし、認定調査もすぐに来てもらったのに。

2ヶ月も介護保険証が届かないということなんてあるんでしょうか?保険証はいつ届くんでしょうか?

質問どうもありがとうございます。ご主人の介護をしながら介護保険の認定結果を待つ日々、不安ですよね。

介護保険の保険証が遅すぎるという疑問、介決サポーターに相談してみましょう。

【この記事を読んでほしい人】

  • 要介護認定を申請したけれどまだ届かずに不安な人
  • 要介護認定にどのくらい時間がかかるか知りたい人

【この記事で伝えていること】

  • 介護保険の認定が届くまで60日以上かかるケースも多い
  • 介護認定の申請者が増え、介護認定にかかる事務や主治医の書類作成が追い付かない。
  • 暫定ケアプランで認定申請中にサービスを利用することも可能だが、注意が必要

介護保険の認定が出るまで2カ月以上かかることも

介護保険の認定が30日以内に届く確率は2%(大阪市調べ)

介護保険の認定には時間がかかります。法律上では30日間で結果を通知すると明記されていますが、多くの自治体では認定申請から結果が通知されるまで平均30日以上かかっています。認定まで2カ月かかることもあります。

2019年に大阪市で行った調査によると、法律で規定している30日以内に認定できたのは全体のおよそ2.0%のみということでした(*1)。

申請日からかかった日数30日以内31日~59日60日~89日90日以上
割合2.0%51.4%44.6%2.0%
大阪市社会保障審議会調べ(2019年)

結果から見ると、およそ半数は2カ月以上の時間が経過した後に認定が出されているということになります。

認定結果が遅くなることでサービスの導入が遅れるなど、介護現場に大きな影響が出てしまいます。

大阪市の認定の遅さはかなり深刻ですが、これは大阪市だけの問題かというと、そうではありません。全国的に見ても介護保険の認定で平均30日以内に通知される市町村は少ないのが現実です。

2022年度の下半期の調査データでは、利用者の申請から認定までにかかる期間は平均で40.2日。介護保険法で定められている原則30日以内を大幅に上回っており、中央値は39.4日と報告されています。つまり、平均で見ても申請から認定まで40日かかっているということがわかります。さらに、認定から郵送で自宅に保険証まで届くのにはもう少し時間がかかります。

要介護認定が長期化 最大2ヵ月半超も 30日以内の市町村は5%のみ 厚労省が対策検討 | 介護ニュースJoint
厚生労働省は9日、介護保険制度の見直しを議論する審議会(社会保障審議会・介護保険部会)を開催し、審査期間の長期化が課題となっている要介護認定を俎上に載せた。【Joint編集部】 全国の市町村の厳しい状況を報告した。 それ

なぜこのような事態になっているのか、詳しく解説していきます。

介護保険認定までの流れ

介護保険制度は、介護が必要な方々が安心して生活できるように支援するとともに自立を促進するための制度です。この制度を利用するためには、「要介護認定」が必要です。介護保険認定は、どの程度の介護が必要なのかを判定するものであり、その結果によって介護サービスやサービスの利用限度額が決まります。

介護保険利用の流れと要介護認定の役割

介護保険を利用する流れは次のようになります。

介護保険申請からサービス利用するまで
  1. 介護保険の認定申請: 市区町村の窓口で介護保険要介護認定申請書を提出します。市区町村の窓口以外にも、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)でも可能です。
  2. 認定調査: 認定調査員が申請者の自宅や入院中の病院等を訪れ、身体状況や現在受けている介護について調査を行います。家族の意見も取り入れながら、介護の手間を確認します。
  3. 主治医意見書: かかりつけの主治医が意見書を市区町村に提出します。これにより、医学的な観点からの評価が行われます。
  4. 介護認定審査会: 介護認定審査会によって、申請者の要介護度が判定されます。判定は要支援1・2もしくは要介護1~5までに区分されます。
  5. 認定結果の通知: 市区町村から認定結果が通知され、要介護度に応じたサービス利用が可能になります。

介護保険の認定の流れについてはこちらの記事に記載していますのでご参照ください。

訪問調査から認定通知までの手順と時間の目安

申請から認定通知までの期間は通常、30日以内に行われることが法律で定められています。認定調査、主治医意見書、介護認定審査会などのステップが含まれますが、30日という期間内に結果が通知されることが本来の流れです。

しかし、実際には遅れるケースも多く、すでにお伝えした通り、認定まで60日を超えるケースも少なくありません。介護保険サービスを利用したい方にとって、要介護認定のスムーズな進行は重要です

認定が遅れることでこのような影響が考えられます。

  • 利用したいサービスが利用できない。
  • 暫定(認定が出る見込み)でサービスを利用したが想定よりも低い介護度が出たため、自己負担の出費が大きかった。
  • せっかく信頼できるケアマネジャーにつながれたのに、要支援の認定になってしまったのでケアマネジャーとの契約が白紙になった

もちろん、ケアマネジャーや介護サービス事業者も、介護認定が決まらない中で暫定のケアプランやサービス計画を作成したり、何度も書類を取り交わさなければいけないなど、かなり大きな負担がかかります。

このように、介護保険の認定が遅れることで大きな影響が生まれています。

介護認定が遅れる原因と課題

介護保険認定の遅れは、申請者やその家族にとって大きなストレスや困難をもたらす可能性があります。では、なぜ認定が遅れるのでしょうか。認定の遅れが発生する主な原因について紹介します。

  1. 認定調査員の不足: 介護保険の認定調査員は、対象者の自宅(入院中の場合は病院)を訪問し、その方の日常生活や介護にかかる手間、医療的な情報などを情報収集して、要介護度を判定する材料となる情報をまとめます。
    しかし、高齢化社会の進行に伴い、介護保険の認定申請者が増え、認定調査員の数が不足しています。これにより、訪問調査のスケジュールはすぐに埋まってしまい、調査が実施されるまでの期間が長くなることがあります。認定調査員の人材確保や育成の改善が求められています。
  2. 主治医意見書作成の遅れ: 介護保険の要介護認定には、対象者の主治医が健康状態や医療的な支援の必要性について記した意見書を提出する必要があります。しかし、多くの主治医は多忙な日々を送っており、意見書の作成に時間を割くことが難しい場合があります。医師の働き方も様々で複数の病院で勤務しているため、出勤回数が少ない医師は理由書が遅くなってしまう可能性があります。
    また、意見書の書き方が煩雑であったり、必要な情報が不足していたりすることも遅れの一因です。意見書作成のために医師が普段の状況を聞き取りすることもありますので、しっかり答えることも大切です。また、普段から定期的に通院して普段の状況を知ってもらうことも大事です。
  3. 認定審査会の開催頻度の少なさ: 介護保険の認定審査会は、要介護認定の最終的な判定を行う場です。この場で要支援1・2、要介護1~5の要介護認定区分が決定します。
    しかし、審査会の開催頻度が不十分であるため、申請者の認定結果が遅れることがあります。これは、審査会を開催するための人員や予算の制約、手続きの複雑さなどが影響しています。オンラインで認定審査会を開催する市区町村も増えてきましたが、医師や介護関係者など普段から多忙な専門家が審査会のメンバーを務めているため、審査会の適切な運営を支える体制の強化が必要です。

高齢化が進む中、認定申請者の増加に対して市区町村の窓口が対応しきれていないという現実があります。迅速かつ公平な形で介護保険による支援を受けるためには、認定プロセスのスムーズ化や効率化が求められます。

認定の遅れへの対応方法

届かない介護保険証。認定の遅れへの対応方法を紹介します。

介護保険の認定が届かなかったら、まずは慌てずに確認してみましょう。

電話するスーツ姿の女性
  1. 送付先は間違えていなかったか?: 介護保険証の送付先情報の住所が正しいかどうかを確認しましょう。送付先の住所が誤っていたために届かず、郵便局保管や市区町村の窓口に戻されてしまう場合があります。申請した書類の写しなどを確認し、間違いがなかったかどうか見直してみましょう。
  2. 届いているのに紛失している場合も?:介護保険証が届いているにも関わらず見落としてしまっていることもあります。よく起きるパターンとしては、本人が認知症で、郵便で届いたものをすぐにどこかにしまい込んで(隠して)しまうということがあります。本人と一緒に再度確認してみてください。
  3. 市区町村の窓口への相談: 遅れの理由や審査会の予定日については、所属する市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。氏名や住所、生年月日、被保険者番号などを伝えると電話でも進捗状況を確認することもできます。
    遅れている理由なども教えてもらうことができます。いくつかパターンに分けて解決方法を紹介します。
Q
【まだ主治医の意見書が届いていない】場合はどうしたらいい?
A

多いのが主治医の意見書がまだ市区町村に届いていない場合です。主治医の意見書が現在どこで止まっているのかを確認する必要があります。病院に問い合わせると、まだ主治医が書いていないという場合もあります。先生も多忙という事情はあると思いますが、ここは病院に早めに書いてもらうように催促してみてください。
また、主治医の意見書を書くために診察が必要なときは、定期通院後に書いてもらえることがあります。通院が必要な場合は早めに診察を受けに行きましょう。

Q
【認定審査会が混みあっている】と言われたらどうする?
A

認定審査会が混みあっていてまだ審査会ができていないということもあります。これは審査会が行われるのをただ待つしかありません。最短でいつ頃になるか、確認をしてみましょう。

Q
【もうすぐ審査会予定】と言われたらどうする?
A

審査会の予定が決まっている場合もあります。通常であれば審査会が終わって翌日~数日後には介護保険証が発送されます。保険証の到着予定の目安が立ちますので、届いていないか、または不在票がポストに入っていないか確認しましょう。

介護保険証の紛失に関してはこちらの記事をご参照ください。

認定までには時間がかかります。ストレスなども大きいと思いますが、遅れている原因を確認し、対応し、少しでも早く保険証を受けとれるようにしましょう。

暫定のケアプランでサービス利用も

費用の相談

介護保険の認定がまだ届いていなくても介護保険サービスを利用することができます。それが暫定ケアプランです。

介護保険の認定は、介護保険の認定申請日にさかのぼって有効になります。つまり、介護保険の認定が出ることがわかっていれば、介護保険の認定が届く前にサービスを利用しても介護保険上で定められた手続きを踏めば保険給付が認められるのです。それを暫定ケアプランと言います。

暫定ケアプランを利用する場合は以下の点に注意しましょう。

  • 暫定で対応してくれるケアマネジャーさんにお願いしましょう。要支援の認定が出る可能性があるときには、要支援でも担当してくれるケアマネジャーさんに相談しましょう。ケアマネジャーさん探しは地域包括支援センターに相談することをお勧めします。
  • 介護保険は要介護度ごとに利用限度額が決められており、それを超える分は全額自費になります。要介護5が出るつもりで要介護5の限度額いっぱいまで使って、実際に認定が出たら要介護2が出るような場合もあります。利用限度額の枠内に収まらず保険対象外の出費・自己負担が非常に大きくなりますので、必要最低限のサービスを意識して利用しましょう。

介護保険の認定が出るまでは介護保険のサービスを利用せず、保険外サービスを利用する方法もあります。また、地域の方たちの協力、家族の協力などでサポート体制を整えておくことも重要です。「介護保険のサービス利用開始するまで」とお願いしておくと協力してもらえる場合も多いです。

介護保険の認定までに必要な支援がないか。担当していただくケアマネジャーさんが決まっている場合はケアマネジャーさんと、ケアマネジャーとの契約前であれば地域包括支援センターと相談しておくといいでしょう。

退院のタイミングまでに介護保険の認定が間に合わない・・・という場合も暫定のケアプランを検討しましょう。

認定が届くのが遅くなったうえで認定有効期間が6ヵ月の認定だと、保険証が届いたばっかりなのに、もうすぐに更新の手続きをしなきゃいけない!なんてこともあります。有効期間満了日の60日前から更新の申請ができるからです。

まとめ

介護認定が遅い原因と対策について解説しました。

介護認定の遅れに対しては、具体的なステップを踏んで対応することが大切です。冷静な対応と適切な情報収集を行いながら、暫定ケアプランの利用や保険外サービスを活用して、必要な介護サービスを受ける方法を見つけましょう。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

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いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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