見逃さないで! 遠距離介護のポイントと認知症の兆候。介護のための交通費助成

遠距離介護は成立する?認知症の兆候チェックポイント 介護コラム

夏休みや正月休み、両親の住む実家に久しぶりに帰ったら、
「あれ?ちょっとおかしくない?」と違和感を感じることがないでしょうか。ひょっとしたらそれは認知症のサインなのかも。

親の認知症の兆候を発見するためには、そして遠距離介護を成功させるためにはどうすべきか。

家族の絆を大切にしながら、遠距離を超えて、親の健康と地域での暮らしを支えるための具体的な手段やアプローチについて考えていきましょう。遠距離介護の課題と可能性について理解することで、家族一人ひとりがより良い介護を行えるようになるでしょう。

いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

この記事を読んでほしい人

  • 久しぶりに実家に帰ったら親の異変が気になった人
  • 遠距離介護に不安を抱えている人
  • 呼び寄せをするか遠距離介護をするか悩んでいる人

この記事で伝えていること

  • 認知症の兆候を早期発見する方法
  • 遠距離介護を成功させるポイント
  • 遠距離介護の経済負担を少なくするコツ

遠距離介護の課題

遠距離介護とは

遠く離れて暮らしている家族を介護することを遠距離介護と言います。物理的に離れているので、日常的に直接身体的な介護をすることはなくても、関係者と電話で連絡を取り合ったり、サービスなどの契約手続きをしたり、金銭の管理をしたりと、家族が行わなくてはいけないことは多岐にわたります。さらに、通院の付き添いや必要な日用品の買い出し、ヘルパーでは行うことができない家事を支援するなど、実際に家族の元を訪問して対応しなければいけないこともあります。

本人の現在の状態を確認することができないため、不安の大きさも遠距離介護には伴います。

比較的近い距離に住んでいるものの別居している場合、近距離介護といういい方もします。どこからどこまでが遠距離でどこからどこまでが近距離かという明確な規定はありませんが、離れて暮らしている家族を支えるのには様々な苦労や課題もあります。

離れて暮らす家族を介護する割合は年々増加している

介護家族

いま、別居している家族が親の介護を遠距離で行うケースや、距離は近いけれど別居して介護を行う近距離介護のケースが増えています。実際、厚生労働省が行う国民生活基礎調査の統計によれば、主な介護者が別居の家族であるケースが全体の13.6%を占めており、年々増えています。同居ではなく、今までの生活スタイルを尊重し、離れて暮らしながら介護を支えるパターンが増えています(*1)。

遠隔地に住む家族が、親の健康や生活の変化を適切に把握し、的確なケアを提供することは決して容易なことではありません。特に、認知症の症状が見られる場合、適切な介護や支援の重要性は一層高まります。しかし、現実には地理的な距離や時間の制約によって、遠距離介護や近距離介護を行う家族にはさまざまな困難が立ちはだかります。

認知症の兆候を見逃さずに早期発見する方法、遠距離介護でのコミュニケーション方法や支援ネットワークの構築、専門家のアドバイスを活用する重要性など様々な課題があります。

これらの課題を解決していくことが遠距離介護を成功させるためのポイントです。

認知症の兆候が見られたら

離れて暮らす親の認知症に気が付くか

年齢を重ねる中で、親の行動や態度に変化が見られることは珍しくありません。しかし、その変化が認知症の兆候である可能性も考えなければなりません。認知症とは、疾患や障害などの影響を受けて脳の機能が低下する状態で、主に記憶力や認識力、判断力が徐々に低下する症状を指します。遠距離介護を行う際には、親の振る舞いに変化がないか、これらの認知症の兆候を見逃さないようにすることが重要です。

認知症の基本的な理解: 認知症は、年を取るにつれて発症することが増える病気で、疾患や障害により脳の中で神経細胞がダメージを受けることが原因です。この結果、記憶の喪失や物忘れ、判断力の低下などの症状が現れます。例えば、同じことを何度も尋ねたり、日常のタスクが難しくなったりすることがあります。この症状が進行すると、普段の生活に支障をきたすこともあり、家族や介護者にとっても大きな負担となります。

早期対策の重要性: 認知症の兆候が見られたら、すぐに対策を考えることが大切です。なぜなら、早期に気づいて適切なケアを行うことで、生活の質を保つことができるからです。専門家の助言を受けたり、医師の診断を受けることで、どのように対処すべきかを学ぶことができます。脳を刺激する活動や健康的な生活習慣を維持することも、認知症の進行を遅らせるために重要です。水頭症など、疾患によっては手術などによって治療が可能な認知症もあります。

認知症について詳しくはこちらの記事で解説していますのでご参照ください。

遠距離介護を行う場合でも、親の日常生活に注意を払うことで、認知症の兆候を早期に察知することができます。例えば、電話やビデオ通話を通じてコミュニケーションを取ることで、親の様子や言動に変化がないかチェックすることができます。家族全体で協力して、早めの対応を心がけることが、親の健康と生活を守るための一歩となるでしょう。

認知症の兆候チェックポイント

遠距離介護?認知症のチェックポイント

具体例として、認知症の兆候として気が付きやすいチェックポイントを解説します。

  1. 物忘れの増加: 親が以前よりも物をよく忘れたり、同じ話や質問を繰り返したりすることが増えた場合、認知症の可能性が考えられます。例えば、鍵の場所や電話番号など、普段覚えていた情報を忘れることがあるかもしれません。
  2. 家事が苦手になってきた: 親が家事など日常のタスクをこなすのが以前よりも難しくなっている場合、注意が必要です。例えば、家電製品のリモコンの操作方法を忘れていたり、季節外れの洋服を出したりすることがあるかもしれません。
  3. 時間や場所の混乱: 親が時刻や日付、現在いる場所を混乱させることが増えた場合、認知症の兆候かもしれません。例えば、今日が何曜日かわからなかったり、自宅の住所が言えなくなっているかもしれません。ゴミ出しの曜日がわからなくなって、ゴミがたまっていることがあるかもしれません。
  4. 言葉の詰まりや理解の遅れ: 親が言葉に詰まったり、他人の話を理解するのに時間がかかることが増えた場合、注意が必要です。会話がスムーズでないことや、指示を理解するのが難しいことがあるかもしれません。
  5. 興味や趣味の変化: 親の興味や趣味が急に変わったり、以前楽しんでいたことに興味を示さなくなったりする場合、認知症の兆候かもしれません。例えば、好きだった料理や趣味を急にやめてしまうことがあるかもしれません。他人とのコミュニケーションに失敗することを恐れて、人と会う機会を割けてしまう傾向があります。

これらのポイントに注意を払うことで、親の日常生活に変化が現れた際に、認知症の兆候を感じ取ることができます。ただし、これらの兆候が1つだけ現れたからといって必ずしも認知症とは限りません。複数の兆候が重なる場合や、変化が急激である場合には、早めに専門家の意見を求めることが重要です。

次の章では実際に遠距離介護を行う場合、どんなサポート体制が必要になるかを解説します。

遠距離介護のポイントと認知症の対応策

遠距離からの介護は、親の健康と生活を守るために欠かせない役割を果たします。特に認知症の兆候が見られる場合、遠く離れていても親のケアとサポートを考えることが重要です。情報共有のカギは在宅生活を支えるケアマネジャーとの連携にかかっています。

ケアマネジャーとの情報共有の重要性

スーツ姿の女性

遠距離からの介護において、親の健康状態や日常の変化を正確に把握するために、ケアマネジャーとの情報共有は非常に重要です。ケアマネジャーは地域で親のケアを担当し、訪問時に状況を観察しています。また、利用するサービス事業者からの情報もケアマネジャーに入ってきます。そのため、ケアマネジャーとの連絡を通じて、離れて暮らす親の様子や健康状態を的確に理解することができます

ケアマネジャーとの連携により、親の健康状態や認知症の状況を把握・相談することで、適切なケアプランを提案してもらうことができます。ケアマネジャーは専門家として親の状態をアセスメント・評価し、必要な対応を提案してくれる存在です。親の日常生活や行動の変化を共有することで、ケアマネジャーが遠隔地からの介護における効果的なアドバイスを提供してくれるでしょう。

最近はLINEWORKSやchatworkといったチャットツールで連絡できるケアマネジャーも増えています。遠隔地からでも連絡しやすいツールを使ってコミュニケーションをとり、信頼関係を作っていくことをお勧めします。

また、ケアマネジャーは地域のサービスや社会資源にも詳しいため、親の近況や健康状態に応じて地域の介護保険サービス事業所や介護保険外のサービスの支援策を提案してくれます。情報共有を通じて、親が地域のサービスを活用する方法を検討し、その中で親の心身の健康を維持する方法を見つけることができます。

遠隔地からの介護において、ケアマネジャーとの情報共有は親の健康と生活を守る上での鍵となります。親の様子や健康状態を共有することで、遠隔地からでも親の希望に合わせたアプローチを考え、適切なケアを提供することができるでしょう。

認知症の進行予防と社会参加の促進

認知症の進行を遅らせることも重要です。認知症とは、記憶力や判断力、認識力が低下する状態を指し、高齢者によく見られる症状です。認知症が進行することで、日常生活において様々な課題が生じる可能性があります。ただし、脳を活性化させることにより、認知症の進行を遅らせることも可能です。

具体的には、親の興味や趣味に合わせて地域の集まりやデイサービスへの参加を検討しましょう。親が好きな活動や趣味を通じて、脳を刺激することができます。自治会や老人会で行われる集まりやサロンなど、人と出会う機会を持ち、脳を刺激することができます。これにより、認知症の進行を予防すると同時に、社会的なつながりを築く機会を得ることができるでしょう。

近隣の人や友人との連携を促す

遠距離からの介護でも、近隣の人や友人との連携は非常に重要です。親の健康状態や様子を共有し、親の社会的な交流や地域の活動をサポートすることで、親の生活の質を向上させることができます。地域の人々とのつながりを活かすことで、親は孤立感を感じることなく、楽しい日々を送ることができるでしょう。

具体的な連携方法としては、近隣の人や友人と定期的に連絡を取ることが挙げられます。電話やLINE等のメッセージを通じて、親の様子や健康状態を共有し合うことで、遠隔地からでも親の状態を把握するチャンスを増やすことができます。

認知症に詳しい医療機関へ通院することの重要性

医師による診察

親の認知症の兆候が進行する場合、認知症に詳しい医療機関への通院が重要です。認知症は進行性の病気であり、早期に適切な診断を受けることで、適切なケアプランにつながります。専門医療機関の診断やかかりつけ医のアドバイスを受けることで、親の状態を正しく評価し、適切なサポート策を見つけることができるでしょう。

医療機関への通院においては、親の症状や変化について正直に医療従事者に伝えることが大切です。医師や看護師は、親の状態を正確に把握することで適切な診断とアドバイスを提供できます。認知症疾患に対応した医療機関は、その専門性を活かして親の認知症に関する検査や評価を行います。これにより、親の状態の進行度やケアプランについて詳細な情報を得ることができるでしょう。

専門家のアドバイスを受けることは、遠隔地からの介護においても非常に重要です。これにより、遠く離れた場所にいるにもかかわらず、親の状態を適切にケアする手助けが可能です。

また、服薬管理についての情報を得ることも重要です。医師の指示に従って適切に薬を服用できているかを把握することも必要です。訪問薬剤師や訪問看護師などによる内服状況の確認や指導も、認知症の進行を遅らせるために重要です。

医療機関との連携を通じて、親の認知症に対する適切な対応策を見つけ、親の健康と生活をサポートしていきましょう。

遠距離介護に役立つ交通費の負担軽減

遠距離介護で気になるのは交通費です。移動距離が長ければその分交通費もかさみます。移動回数が多ければなおさら、経済負担は大きくなります。

民間会社のアンケートによると、遠距離介護の往復交通費で一回あたり1万円以上かかっている人は全体の17.8%となっています。遠距離介護の交通費は、介護者にとって大きな経済的負担となっていることがわかります。

【介護アンケートVer.14】遠距離介護の帰省頻度は?介護状況に関するアンケート
介護施設のマッチングプラットフォーム「ケアスル 介護」において、介護経験がある250名を対象に、現在の介護状況に関するアンケートを実施しました。 遠距離介護の帰省頻度や交通費なども伺ったため、遠距離介護を続けている方は、ぜひ参考にしてみてく...

ただ、遠距離介護の経済的負担を軽くするための割引制度もあります。

具体例を紹介します。

ANA(全日空)介護割引

離れて暮らすご家族を介護する方にご利用いただけます。

ご搭乗日によって運賃が異なりますのでご注意ください。
ピーク期:2023年3月1日~3月31日、2023年7月1日~2023年8月31日、2023年12月1日~2024年1月3日、2024年3月1日~31日、2024年5月3日~5月6日、2024年7月1日~8月31日
通常期:上記以外の期間

適用範囲
要介護または要支援認定された方の「二親等以内の親族(満12歳以上)」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」に限りご利用いただけます。詳細は「介護割引の適用範囲」をご覧ください。

適用路線
介護する方と介護を必要とされる方の最寄り空港を結ぶ1路線限定でご利用いただけます。
ANAの直行便がない場合は、出発地と目的地を結ぶ経由地を2箇所まで指定することができます。(同一日もしくはご予約可能な最短の日程に限ります)
一部区間が他社便またはJRなどの他交通機関を含む場合は適用できません。

ご予約、ご購入、ご搭乗時には、「介護割引情報登録」済みのANAマイレージクラブカードが必要です。カードをご提示いただけない場合、割引は適用されません。(*2)

JAL(日本航空)介護帰省割引

満12歳以上で要介護または要支援認定された方の「二親等以内の親族の方」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」に限りご利用いただけます。

介護帰省割引の適用範囲
居住地の最寄り空港を結ぶ一路線限定(経由便の場合は、JALグループ便で経由する全区間に対し適用)でご利用いただけます。

経由便で購入いただいた場合、一部区間のみの払い戻しはできません。
オリエンタルエアブリッジ(ORC)とのコードシェア路線には設定がございません。
航空券の購入および搭乗手続きの際、介護帰省割引のお客さま情報登録済みのJMB/JALカードが必要です。

割引率
各種運賃より10%割引(*3)

他にもソラシドエアやスターフライヤーなど航空各社に介護割引がありますので確認してみてください。ただし、JRでは介護帰省割引はないようですのでご注意ください。

遠隔地からのICTコミュニケーションを活用

働きながら遠距離介護を成立するためには、介護休業や介護休暇などの制度を活用することが重要です。

とはいってもそう簡単にまとまった仕事の休みをとることもできません。介護休暇や介護休業にも限度があります。そこで、遠隔地から実家まで長時間移動しなくても、自宅にいながらテクノロジーの力で解決する方法もあります。

例えば、センサーなどを活用して生活状況をモニタリングする方法や、異常を検知する方法もあります。ビデオチャットなどでコミュニケーションをとることができれば双方の安心につながります。

現地に行かなくても解決できる手段を増やしていくことも遠距離介護成功の秘訣です。無理をせずに続けられる方法を目指していきましょう。

まとめ

遠隔地からの介護は大変ですが、親の健康と生活を守るためには重要な役割です。親の認知症の兆候を早期に発見し、適切なケアを提供する方法について紹介しました。情報共有やケアマネジャーとの連携、認知症の進行予防、そして医療機関のサポートが鍵です。

遠隔地でも、テクノロジーを使ったコミュニケーションや専門家のアドバイスを通じて、親の健康と生活を支えることができます。愛情と情報共有を大切にし、困難な状況でも家族の生活をサポートしましょう。

参考資料

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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