今なら間に合う業務継続計画(BCP): 自然災害対策。減算・運営基準違反にならないBCPを作るには?

今ならまだ間に合うBCP(業務継続計画) 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

突然の自然災害、大規模な地域的な問題、あるいは感染症の拡大など、予測できない出来事が事業に影響を及ぼす可能性は、介護事業者にとって大きな課題です。厚生労働省は、このようなリスクに備え、事業の継続性を確保するために業務継続計画(Business Continuity Plan=BCP)の作成をすべての指定介護保険事業所に義務付けています。今から適切な対策を講じることで、大規模自然災害にも感染症にも立ち向かい、事業を守ることができるのです。

この記事では、「今なら間に合う業務継続計画」をテーマに、BCPの基本から実践的な手順までを詳しくご紹介します。法令遵守のために作成するというのはもちろん、介護事業者として、事業継続性を強化し、利用者とスタッフの安全を確保する方法に焦点を当ててみましょう。大規模災害や感染症に備えて、今から始めるBCPの作成についてのアドバイスをお届けします。

【この記事を読んでほしい人】

  • まだBCPの策定に着手できていない介護事業所の方
  • BCP、作ってみたはいいけれどこれで十分なのか半信半疑の介護事業所の方

【この記事で解説していること】

  • BCPは大規模災害や感染症があっても重要な業務が継続もしくは迅速に再開するための計画。
  • BCP作成は全介護事業所に義務付けられ、作成期限は令和6年3月末日。
  • すぐに取り組むことができるBCPの作成ステップ

1: 業務継続計画(BCP)の基本

1.1 BCPの基本的理解

BCP/業務継続計画とは

業務継続計画(Business Continuity Plan=BCP)は、事業が予測できない出来事によって中断されるリスクに対処し、事業の継続性を確保するための戦略です。BCPは、災害、感染症の拡大、物流や通信の停止、人為的な事件など、さまざまなリスク要因に対処するためのプロセスと手順を含みます

事業継続計画の主要な目的は、以下の点を達成することです:

  • 事業継続性の確保: BCPは事業の重要な機能を維持し、中断を最小限に抑えることを目指します。これにより、利用者へのサービス提供やスタッフの安全性が確保されます。
  • リスク軽減: BCPは事前のリスクアセスメントに基づいてリスク要因を特定し、軽減策を導入します。これにより、リスクの最小化と対処が可能となります。
  • スムーズな回復: BCPには、事業が中断した場合の迅速な回復策が含まれます。これにより、事業の中断期間が短縮され、損失を最小限に抑えることができます。
  • 法的要件への遵守: 厚生労働省は、特定の業種にBCPの実施を義務付けることがあります。BCPの策定と実施は法的要件への遵守にも関連しています。

BCPはすべての事業にとって重要ですが、特に介護事業者にとっては利用者の生活や安全性を守るため、その意義が重視されています。

1.2 介護保険制度改定による業務継続計画の義務化

2021年の介護保険制度改定により、すべての介護保険指定事業所は業務継続計画を作成することが義務付けられました。これは、特別養護老人ホームやグループホームなどの入所施設・入居系サービスだけにとどまらず、訪問介護や訪問看護などの訪問系サービス、福祉用具貸与、ケアマネによる相談事業である居宅介護支援事業所も対象となっています。

業務継続計画作成には猶予期間が設けられ、2024年の3月末までに作成することが義務付けられました(→介護報酬減算適応が開始します)。これは介護保険事業の運営基準にも明記される内容ですので、この義務を守らない事業所は保険者(市町村)から「運営基準違反」を指摘される可能性があります。当然、罰則・ペナルティが課されることもありますので、介護保険事業者はこれを守り、業務継続計画を策定する必要がります。

業務継続計画作成の義務化についてですが、2024年介護報酬改定審議の中で、計画未作成事業所は基本報酬を減算されることに決定しました。

ただ、2025年3月31日までの間は猶予期間として、作成途中でも構わないという緩和策もできています。大きな災害はいつ起こるかわかりません。早め早めに準備していきましょう。

ちなみに、作成の大幅に遅れている訪問系サービス・居宅介護支援・福祉用具貸与に関しては2025年3月31日までは作成に着手していなくても減算はありません。詳しくは下記の記事をご参照ください。

※ただ、報酬減算にならないとしても、2024年4月1日の義務化という事実は変わりません。大きな自信も起きている現状を考えれば、早めに進めるに越したことはないでしょう。

具体的な作成の手引きは厚生労働省のホームページに掲載されています(*1)。

介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料および動画を掲載しました。
いえケア編集部
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とはいえ、さすが厚生労働省。内容もわかりにくいし、ひな型(テンプレート)もゴリッゴリに盛り込んだフル装備の書式になっています。

これをやっていたら完成がいつになるかわからない・・・。

業務継続計画のテンプレートはいろんな業者が配布しているものもあります。厚生労働省書式にこだわることはなく、自分たちの事業種別に合ったものを探してみるのもいいでしょう。

いえケアではケアマネ用帳票書式テンプレートページにて、居宅介護支援事業所向け業務継続計画(BCP)を配布していますので、ケアマネさんはよろしければそちらをお使いください。

ここからは大規模災害用BCPを今から作るために必要なステップを解説していきます。この記事を執筆しているのは2023年の10月。2024年の3月末がタイムリミットですが、それまでにスキマ時間で完成する業務継続計画のアイデアを提供します。

2:業務継続計画策定の準備

2.1 BCPチームの設立

船頭多くして船山に上る、という言葉にあるように、スタッフ各人がめいめいに進めていてはいつまでも業務継続計画(BCP)の策定は進みません。まずはBCP策定の中心となるチームを設立することが不可欠です。BCPチームは、計画の策定、実施、会議の進行、モニタリングを担当し、緊急事態を想定した訓練などができるようにします。以下はBCPチームの設立に関する詳細です。

BCPチームの役割と機能

  • リーダーシップ: BCPチームにはリーダーが必要です。リーダーはBCPの調整と全体の監督を担当します。
  • コミュニケーション: BCPチームは内部および外部との効果的なコミュニケーションを確保する役割を果たします。スタッフや関係者への情報提供が含まれます。大規模災害が発生したときにどう発信するか、どのように情報を集約するか。また、事業継続のために近隣事業所や医療機関、行政等の関係機関との連携が重要になります。
  • 訓練と演習: チームはBCPの訓練と演習を計画し、実施します。これにより、スタッフは緊急時の対応に慣れ、BCPが実際に機能することを確認できます。訓練の起案や準備、評価などを通して、よりBCPの質を高めていくことができます。

2.2 リスクアセスメント

リスクアセスメントはBCPの基本的なステップです。大規模災害のリスク要因を特定し、優先順位を付けるために行われます。以下はリスクアセスメントの重要性とステップについての詳細です。

リスクアセスメントの重要性:

  • リスクの特定: リスクアセスメントにより、大規模災害のリスク要因を特定できます。これは対策の基盤となる情報となります。地域には市町村が策定しているハザードマップがあります。これを活用することで、浸水の恐れのある地域や、崖崩れ・土砂災害などの起こる危険性の高い地域などを把握することができます。自事業所・自施設の立地だけでなく、活動地域・営業地域全体のリスクを分析することができます。また、避難所・救護所などの情報を確認することもできます。
  • 優先順位付け: 特定のリスクを評価し、優先順位を付けることで、リソースを効果的に配分し、最も重要なリスクに備えることが可能となります。すべての業務を維持することはできません。事業の中核となる部分を維持し、利用者の生活の安全を守ることにリソースを傾ける必要があります。
  • 対策の計画: リスクアセスメントの結果に基づいて、具体的な対策と計画を策定できます。これにより、緊急時の対応がスムーズになります。定期的な会議の開催や訓練を行いながら、計画の見直しを行う頻度なども決めていくことが必要です。

リスクアセスメントのステップ:

  • リスクの識別: リスク要因を識別します。例えば、地震、洪水、電力や水道などのライフラインの中断などがあります。他にも物流や通信などがストップすることも大きなリスクとなります。
  • リスクの評価: 各リスクを評価し、その影響度と発生頻度を評価します。これは事業種別によっても大きく異なります。
  • リスクの優先順位付け: リスクの優先順位を付けて、最も重要なリスクに焦点を当てます。

BCPチームがBCPの策定においてリーダーシップを発揮し、リスクアセスメントを実施することで、事業継続性の強化に大きく貢献します。

3:業務継続計画を作成する

3.1 BCPの文書化

BCPは文書として保管・共有しなければいけません。BCP文書は、大規模災害発生時にスタッフがすぐに対応するために不可欠です。以下は、BCP文書化のポイントです。

  • 事業プロセスの文書化: まず、事業所の主要なプロセスや業務を文書化します。サービス種別によって異なりますが、主だった業務を可視化することで、優先順位を検討することができます。。
  • 緊急対応の計画: 大規模災害時の緊急対応を文書で記載します。これには避難、応急措置、利用者対応などが含まれます。また、BCPを発動させる災害レベルを決定する必要もあります。
  • 連絡先情報: スタッフ、利用者・利用者家族、行政窓口、連携事業所など、重要な連絡先情報を文書化します。
  • BCPの更新: BCP文書は定期的に更新しなければいけません。新たなリスク要因に備え、最新の情報を反映させます。

3.2 対策の設計

大規模災害に備えたBCPの策定には、具体的な対策の設計が含まれます。以下は介護事業所向けの対策の設計に関するポイントです。

  • 適切な装備と資材: 災害時に必要な物品を書き出します。サービス種別によって異なりますが、緊急時に必要な装備や資材を備蓄し、適切に保管する計画を立てます。施設や入居系サービスであれば非常食や毛布、発電機などが必要な場面も想定されます。
  • スタッフの訓練: スタッフに対して、BCPに基づく緊急時の対応訓練を行います。スタッフが対策を理解し、実施できるようにすることが大切です。大規模な避難訓練だけでなく、緊急時の安否確認の発信テストなども含めて訓練をすることも求められます。

大規模災害に備えたBCPの策定と対策の設計は、介護事業所の継続性を確保し、クライアントの安全性を守るために不可欠です。文書化と訓練を通じて、スタッフとクライアントが緊急時に迅速かつ適切に対応できるように準備しましょう。

4:業務継続計画の運用開始

4.1 BCPの実施

BCPは机上の計画策定だけで終わりません。実際に緊急時にBCPを実行できることが重要です。介護事業所でBCPを実施するためのステップとポイントについて説明します。

  • 緊急通報: BCPの実行は、緊急事態が発生した際に速やかに通報することから始まります。スタッフに対し、緊急事態が発生したことを報告し、必要な措置を取るよう指示します。
  • 避難手順: BCPには適切な避難手順(プロトコル)が含まれます。クライアントとスタッフが安全な場所に避難できるようにするための計画が必要です。
  • 医療応急措置: BCPには医療応急措置が含まれます。クライアントの健康と安全を確保するために医療スタッフが適切な処置を行います。

4.2 テストと演習

BCPの実効性を確認し、スタッフの訓練を行うために、定期的なテストと演習が不可欠です。以下はテストと演習に関するポイントです。

  • テスト計画: BCPテストの計画を作成し、テストの目標とスケジュールを設定します。
  • スタッフの訓練: スタッフに対してBCPに基づく訓練を行います。適切な対応や避難手順を確認させます。
  • 模擬演習: 大規模災害の模擬演習を実施し、スタッフの実際の対応能力を評価します。模擬演習はBCPが実際の状況にどれだけ適しているかを確認するための貴重な手段です。
  • 改善策の導入: テストと演習の結果を分析し、BCPを改善するための措置を導入します。BCPの改善は継続的なプロセスです。

BCPの実施とテストを通じて、介護事業所は緊急時に迅速かつ効果的な対応が可能となり、クライアントの安全性とサービス提供の継続性が確保されます。

5:業務継続計画の継続的な改善

5.1 定期的な振り返り

BCPの策定と実行は継続的なプロセスであり、定期的な振り返りが欠かせません。以下はBCPの継続的な改善に関するポイントです。

  • BCPの評価: BCPを定期的に評価し、その実行可能性と効果を確認します。変更や改善が必要かどうかを判断します。
  • リスクの変化: 新たなリスク要因や変化したリスクに対応するために、BCPを更新します。環境や業界の変化に注意を払いましょう。

5.2 スタッフへのフィードバックと教育

スタッフへのフィードバックと教育はBCPの継続的な改善に欠かせない要素です。以下はスタッフへの関与に関するポイントです。

  • 経験の共有: スタッフがBCPを実行し、模擬演習を経験した際のフィードバックを収集し、共有します。成功事例と課題を共有し、学びの機会を提供します。
  • 教育と訓練: スタッフに対し、BCPの変更や改善に関する教育と訓練を提供します。スタッフがBCPを理解し、実行できるように支援します。
  • BCPへの参加を奨励: スタッフがBCPの策定と改善に積極的に参加することを奨励します。彼らの意見とアイデアは貴重です。

BCPの継続的な改善は、介護事業所が変化するリスクに適応し、緊急時に迅速に対応できるようにするための重要なステップです。スタッフへの関与と協力はBCPの成功に不可欠です。

6:居宅介護支援事業所でBCPを作る4ステップ

ここからは居宅介護支援事業所が簡単にBCPを作るステップを4段階に分けて紹介します。

STEP① 基本方針について

  • 災害対策における基本方針
  • 体制(役割分担)
  • リスク把握(地域のハザードマップ等で確認)
  • 訓練の実施計画
  • 検証・見直しの計画・履歴

STEP②平時からの対応について

  • 耐震にリスクのある設備
  • 使用可能な通信手段の整理
  • 地域の災害情報(情報入手手段)の確認

STEP③緊急時の対応について

  • BCP発動基準
  • 個人の行動基準
  • 衆参基準
  • 利用者の安否確認基準
  • 他施設・他事業所・関係機関との連携

STEP④連絡先リスト作成

  • 職員名簿・連絡先のリスト化
  • 利用者名簿のリスト化と安否確認の優先度

とてもざっくりした内容ですが、このような内容を文書に落とし込んでおくことで、準備すべきこと、災害時にやるべきことが明確化されます。限られた人員・限られた設備・限られた時間の中で何を優先にすべきかを決めることがBCP。やることを次から次へと盛り込むのではなく、緊急時に優先度の低い業務を削ぎ落し、最優先すべきことに集中できるよう体制を整えることが必要なのです。

これらの内容はいえケアにユーザー登録するとダウンロードできるBCPシートにも掲載しております(*2)。

警戒レベルと防災気象情報

7:業務継続計画の策定状況

BCP、急いで策定しなくちゃと焦っている皆さん。今から取り組めば間に合います。実は訪問系事業所に関しては、まだまだ未策定の事業所も多いのが現状です。こちらは厚生労働省の社会保障審議会で提出された資料ですが、自然災害BCPの策定状況のアンケート結果です(*3)。

これは2023年7月の調査結果ですが、まだ完成している事業所は3割にも満たないことがわかります。

介護報酬減算がスタートする前に、慌てて準備をして間に合わせたという事業所が多いのかもしれません。

全体でみると、自然災害BCPは「策定完了」が26.8%、「策定中」が54.9%、「未策定(未着手)」が17.1%となっています。事業所種別によっても大きく異なり、特に策定の遅れている福祉用具貸与・販売では32.2%が未着手となっています。

訪問系や居宅介護支援事業所は猶予されている部分もありますが、できる限り早期に取り組むことをお勧めします。

Q
BCPが必要とはいっても、まずなにから取り組んだらいいのかわからない
A

まずはリスクの洗い出しから始めてみるといいのではないでしょうか。

BCPを作ろうと意気込んで、マニュアルを読んでみても、何のイメージもできない。なので、イメージしやすいことから始めていきます。訪問系サービスであれば、まずは地域のハザードマップを見て、このあたりはこんなリスクがあるんだ、この家は災害時危ないかも、という想定もできます。それをもとに、スタッフ同士で意見を出し合っていき、それを集約すればBCPができていきます。

まとめ

介護事業所において、大規模災害に備えたBCPの策定と実行は極めて重要です。BCPは利用者の安全性とサービス提供の継続性を確保するための戦略であり、厚生労働省の要件に従うことが求められます。

作成期限があるので、作ること自体がゴールだと感じてしまいそうですが、大事なのは適切に運用し、見直ししながらよりよい計画にしていくこと。作ることがゴールにならないよう、常に改善をしていきましょう。

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参考資料

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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