いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。
今回はお父様を遠距離で介護している娘様からの質問を紹介します。
質問の内容は「デイサービスに行きたがらない父をデイサービスに行かせるためにはどうしたらいい?」というものです。
質問「父をデイサービスに行かせるにはどうしたらいい?」
※画像はイメージ
それでは相談者からの質問を紹介します。
(質問内容)
はじめまして。質問いたします。
現在80代の父が一人暮らしをしています。2年前に母を亡くし、それから一人で暮らしています。膝が悪く、杖を手放せませんが、買物は自分でできています。だんだんとできないことも増えているので、掃除などの手伝いに兄と協力して時々行くようにしています。物忘れかなと思うことも増えてきているので心配ですが、私も仕事と自分の家庭があるのでそんなに頻繁に顔を出すこともできません。
父はもともと人付き合いも苦手なタイプで、老人会や自治会にも顔を出すことはありません。先日、介護保険の認定を受けて要支援2という認定を受けました。
そこで、父にデイサービスの利用を勧めているのですが、本人が首を縦に振りません。「知らない人のいるところに行きたくない」「わざわざ行って“ちいちいぱっぱ”のような幼稚なことはしたくない」「今の生活で何も不自由していない」と、いろいろと理由をつけて応じようとしません。人と話すことも少なくなっているので、できればデイサービスに行ってほしいと思っているのですが、父のような人にデイサービスに行ってもらうことは難しいのでしょうか。父でも喜んで行くようなデイサービスはないのでしょうか。
―――という質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。
【この記事を読んでほしい人】
- 父親にデイサービスを勧めてもまったく聞いてもらえないご家族
- 男性利用者にデイサービスを紹介しようと思っているけれど、どんなデイサービスを選ぶか悩んでいるケアマネ
- 男性の利用者の定着率が低く、男性にも喜ばれるデイサービスにしたいと思っている職員
【この記事に書いてあること】
- 男性高齢者の特徴とデイサービスに行きたくないという心理について
- 男性高齢者が行きたくなるデイサービスの特徴
介決サポーターがお答えします!
ご相談ありがとうございます。
デイサービスに行きたがらない一人暮らしのお父様のことを心配されているということですね。
質問のポイントは2点ですね。
では質問にお答えしていきたいと思います。
※「デイサービス」がどんなところか知りたいという方は先にこちらの記事からご覧ください。
男性高齢者の多くはデイサービスに抵抗を感じている
まずご理解いただきたいポイントとして、男性高齢者の多くはデイサービスに行くことに抵抗を感じているということです。
多くの男性高齢者は仕事をリタイヤ後、社会とのつながりを持つ機会が圧倒的に少なくなります。地域の自治会や老人会に積極的に参加する男性高齢者はごくわずかです。
趣味の付き合いを通して交流機会を持つ高齢者もいますが、年齢を経るに従ってその趣味を楽しむことができなくなります。
このように地域とのつながりを失い、地域で孤立化していく高齢者は少なくありません。かといって、デイサービスという環境に飛び込むことには抵抗を感じています。その理由は主に以下の5点となります。
1. 男性としてのプライドと介護への抵抗感
男性高齢者は長い間「家族を支える存在」であった場合が多く、介護を受け入れることに抵抗を感じることがあります。特に、自立した生活を続けてきた男性ほど、他人の助けが必要であることを認めたがりません。これまで築き上げたプライドや自尊心を傷つけられることを不安視しています。
また、周囲の目を気にし、「弱さを見せること」を避けたいという心理的な抵抗感があります。こうした背景から、デイサービスを「自立心を損なう場」と捉えがちで、介護の受け入れに対して頑なになるケースが多いです。
2. 社交的な場への不安
デイサービスは他の利用者と交流する機会が多いため、男性にとっては心理的なハードルが高くなります。特に、人と関わることが得意でない男性や、これまで仕事中心の生活を送っていた人は、新しい人間関係の構築が難しく感じます。
また、他者との比較によるストレスや、自分の身体的な衰えを見せたくないという気持ちも影響します。人づきあいで失敗したくない、人間関係でトラブルになりたくないという守りの姿勢が強くなりやすい傾向があります。このため、安心して参加できるような環境作りや、個別に配慮された活動が必要とされます。
3. 活動内容と興味の不一致
多くのデイサービスで提供されるアクティビティは、手芸や料理といった女性向けの内容が中心で、男性には魅力を感じにくい場合があります。男性高齢者にとっては、興味を引く内容がないと参加意欲が湧きにくく、デイサービス自体を退屈で無意味と感じることがあります。
そのため、男性が興味を持てるような趣味活動や、運動系のプログラムを提供することで、参加意欲を高める工夫が重要です。男性が興味を持ちやすい特徴的なデイサービスについてはこの後で紹介します。
4. 新しい環境への抵抗感
男性高齢者は、長年住み慣れた自宅を離れ、新しい場所に通うことに対して強い不安を感じることがあります。環境の変化に適応することが難しい、または環境に慣れるまでに時間がかかる場合が多く、それまではデイサービスに通うこと自体がストレスとなる場合があります。
また、外出するための準備や移動が負担となり、自宅で過ごす方が楽と感じるケースも少なくありません。自分の生活のペースを乱されたくない、自分でコントロールできない環境にいたくない、という気持ちも強くあります。
5. 固定観念とデイサービスのイメージ
「デイサービスは介護されている高齢者の集まりで、自分にはふさわしくない」という固定観念を持つ男性は多く、サービスの実態が十分理解されていない場合もあります。また、他の高齢者と同じように扱われることへの抵抗感があり、デイサービスに通うことが「自身の老化を受け入れること」と感じるケースもあります。
このような固定観念を解消するには、デイサービスのメリットや、デイサービスが自立支援を目指している場所であることを具体的に説明し、そのニーズに合わせた提案が必要です。
私も長い間ケアマネジャーとして現場に立っていましたが、男性高齢者に
と提案して、即答OKをする方というのは本当にごく稀です。
デイサービスのイメージとして、高齢者が集まって童謡を歌ったり、風船バレーや塗り絵をしたりするような、幼稚な遊びをする場所という認識を持つ人もいます。「なんでそんなことをさせられなきゃいけないんだ」と言う人もいます。
男性高齢者にとってデイサービスはハードルの高いサービスです。周囲が思っているほど簡単に導入が進みません。
でも、男性高齢者のいるデイサービスはあります。男性でも行きたくなるデイサービスとは、どんなデイサービスでしょうか。
男性高齢者の多いデイサービスの特徴をお伝えします。
男性高齢者が行きたくなるデイサービス
男性高齢者はどのようなデイサービスに行くのでしょうか。
デイサービスも介護保険制度の成熟とともに、様々なタイプの事業者が増えてきました。男性に好まれるデイサービス、特徴的な3つのタイプを紹介します。
機能訓練特化型デイサービス
機能訓練特化型のデイサービスは比較的男性高齢者にも好まれます。リハビリをすることの必要性は男性高齢者の多くは実感しています。歩けなくなることで、家族に迷惑をかけたくないという思いからデイサービスに参加される方もいます。
マシントレーニング機器を設置し、筋力トレーニングを中心としたメニューを行います。無理のないように、回数や負荷を調整しながら、目標達成のために適切なプログラムを作成します。
運動中心なので、無理に他の人とコミュニケーションをとる必要もないので、人付き合いが苦手な方でもすんなり溶け込むことができます。お遊戯のようなプログラムをすることもありません。
理学療法士や機能訓練指導員の指導の下、トレーニングを積んでいけば、運動の効果が実感できます。多くの機能訓練特化型デイサービスでは体力テストを定期的に行っています。片足立ちや歩行スピードの測定などの測定を行い、トレーニングの効果について評価します。トレーニングすることで数字という目に見える結果が残るので、大きなモチベーションになります。
また、利用時間も3時間から4時間程度のところが多く、半日の利用となります。一般的なデイサービスでは昼食やおやつをデイサービスで食べるのですが、それもありません。昼食代の負担もないので、経済的な理由でデイサービス利用が難しい方にとっても利用しやすいのが機能訓練特化型デイサービスです。
ただし、機能訓練することが目的のデイサービスなので、認知症のために指示通りに運動ができない方や、他の利用者との間にトラブルを起こす方に関しては利用をお断りされることがありますのでご注意ください。
このような機能訓練特化型デイサービスは比較的男性の高齢者でも参加しやすく、男性利用者の方が多い事業所もあります。「リハビリのために」というアプローチでお父様を誘ってみるというのもいいのではないでしょうか。
機能訓練特化型のデイサービスは事業所数も多く、運動の内容も特徴があります。ちなみに、ムキムキのボディビルダーがインストラクターをしてくれるデイサービスなどもあります。
リハビリテーションの専門職が医師の指示のもとにリハビリを行う通所リハビリというサービスもありますので、通所リハビリも選択肢に入れるといいかもしれません。デイサービスとデイケア(通所リハビリ)の違いについてはこちらの記事を参考にしてください。
趣味活動ができるデイサービス
もともと何かの趣味を持っていた方であれば、その趣味を楽しめる場所があれば参加したいと思うかもしれません。デイサービスでは各事業所多彩なプログラムを用意しています。
例として、デイサービスではこのようなプログラムを行っているところもあります。
昔はこんな趣味を持っていた、というのがあればデイサービスにつながるひとつのヒントになるかもしれません。
地域の情報に精通したケアマネジャーさんであれば、この活動ができるデイサービスがどこにあるか、幅広い情報を把握しています。趣味を通してなら人と交流することへのハードルも低くなりますし、それを楽しみに継続して参加することもできるでしょう。
また、これらのプログラムもただ遊んでいるだけではなく、趣味を通して手先や脳を刺激することで、認知症予防や機能改善に結び付けることができます。
趣味の活動に参加する場を失っていた高齢者にとって、デイサービス利用が「渡りに船」になるかもしれません。
ちょっと変わったデイサービスも
実は日本にはちょっと変わったデイサービスもたくさんあります。デイサービスも多様化し、ユニークな取り組みをしているところが増えていますのでご紹介します。
カジノ型デイサービス
ルーレットやカードゲームなどのテーブルゲームを中心にしたデイサービスがあります。もちろん現金をかけることなどはありませんが、疑似通貨などを使うことはあります。疑似通貨はデイサービス内でのみ利用ができて、リハビリをすると通貨がもらえるなど、自立支援のための様々な仕掛けをしています。
ゲームを通して脳に刺激を受けることや、点数を計算することなどを通して、心身の機能改善に効果があるとされています。
「ちょっとオシャレをして行きたくなるような雰囲気」というのも高齢者にとっては刺激になり、特に男性に人気です。
スポーツ型デイサービス
高齢者がスポーツなんて・・・というのは今や昔。高齢者でも生涯にわたってスポーツを楽しむことが生きがいのために大切です。
ゴルフデイサービスというデイサービスもあり、ゴルフ練習場を日中デイサービスとして解説しているところもあります。もちろんパターゴルフだけでなく、しっかりスイングの練習もします。回旋動作の練習やバランスを保つための筋力強化など、ゴルフの動作を通してリハビリ効果を得ることもできます。ホールをラウンドできるようになることを目指すという変わったデイサービスもあります。
他にも卓球をするデイサービスなどもあります。
農業リハビリ型デイサービス
農業をされていた方、趣味で野菜などを育てていた方など、畑が大好きな方にはうれしいデイサービスです。実際に農作物を育てて収穫し、お昼に食べるという一連の体験をすることができます。土や自然と触れ合うことでの癒しの効果、作業をすることで得られる運動効果、自分で収穫し食べるという達成感など、農業はリハビリテーションとしての効果が高いと言われています。
音楽デイサービス
音楽を通してリハビリテーション効果を得ることを目的としたデイサービスです。
発声練習による肺機能の活性化、楽器の操作による運動効果、他の利用者とセッションすることでのコミュニケーションなど、音楽を通して心身に刺激を受けることができます。これらは音楽療法と呼ばれるセラピーをベースにしています。
音楽を趣味にしていた方や音楽を仕事にされていた方であれば興味のあるデイサービスではないでしょうか。音楽療法士が関わっているデイサービスなどもあります。
一例を紹介しましたが、日本全国を探せばもっと特徴的なデイサービスがたくさんあります。そんなことでリハビリ効果あるのかしら?と疑問に思うのかもしれませんが、夢中になって何かに取り組む姿勢があれば、それだけで十分リハビリテーション効果が得られているのです。気持ちがポジティブになり、姿勢もよくなり、大きな声で笑ったり、他の人と励ましあったり。本人が夢中で楽しめるものがあればそれはチャンスと思いましょう。
まとめ
デイサービスに行きたがらないお父様についてのお悩みに対して、男性でも参加しやすいデイサービスの特徴をお伝えしました。
男性でも参加しやすいデイサービスとして、3つのタイプを紹介しました。
まずはケアマネジャーさん(要支援の方は地域包括支援センターの職員さん)に相談し、一緒にどんなデイサービスだったら気軽に参加できるか考えてみましょう。
土曜日や日曜日に利用したいというニーズに応えてくれるデイサービスもありますので、相談してみてください。
利用前にデイサービスの見学ができます。見学することで、本人にとってのデイサービスのイメージが変わる場合もあります。
このサイトではデイサービスの事業所検索ができますので、お近くにどんなデイサービスがあるか調べてみましょう。
まだ介護が必要のない状況でも、早い段階から地域との接点を持っておくことで、将来的にデイサービスへの抵抗感が少なくなる傾向があります。
自治会やサークルへの参加などで、地域の人との交流を持つ機会ができれば、社会に出ていくことにも抵抗感が少なくなります。知らない人とも関係を作ることに自信が持てる方はデイサービスなどの場に参加することも抵抗が少なくなります。
いずれ、父にはデイサービスに行かせたい!と思っている場合は、元気なうちから地域社会の場に参加する機会を持つように促していくことをお勧めします。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
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