いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
加齢に伴い、人間の聴力は低下する傾向にあります。
疾患などによる影響もありますが、加齢のみによって聴力が低下する老人性難聴などもあります。内耳にある音を感じる神経が減っていくことで、音が聞こえにくくなると言われています。
要支援2の父親と同居しているのですが、最近、ますます耳が遠くなっているようで、大声でなければ聞こえないようなんです。
都市だから仕方ないかなと思うので、コミュニケーションの部分はこちらが注意すればいいと思っています。
ただ、困っているのがテレビの音なんです。
いつもすごい大きな音量でテレビを見ているので、うるさくて困っています。別の部屋にいてもうるさくて近所迷惑になっているんじゃないかと思ったり、リビングでの会話も聞こえにくいし、夜遅くでも大きな音を出しているんです。
テレビくらいしか楽しみがないと思うので、こちらもあまり言いたくはないのですが、四六時中これではストレスになります。どうしたらいいでしょうか。
難聴の家族と暮らすことによるストレスからの相談です。
実際、ずっと一緒に暮らす家族としては大きな苦痛になりますよね。では、この音量問題、どう解決したらいいのか解説したいと思います。
【この記事を読んでほしい人】
- 難聴の高齢者と同居しているご家族
- テレビの音が聞き取りにくくて困っている方
- 難聴の方の支援をしているケアマネジャー
【この記事で書いてあること】
- 老人性難聴のメカニズムと周囲に与える影響
- テレビの音が聞き取りにくい問題の解決方法4つ
テレビ音量問題の原因と家族への影響
高齢者がテレビやラジオの音量を必要以上に大きくしてしまう問題は、多くの家庭で見られる悩みの一つです。この問題は、単なる生活音の調整以上に、家族間のストレスやコミュニケーションの障害を引き起こす要因となっています。特に、夜遅くに大音量のテレビを観ることで、他の家族が眠れなくなったり、リビングでの会話が聞き取りにくくなったりすることが日常的に起こり得ます。
また、テレビの音量が大きいと近隣住民からクレームを受けることもあり、家族全体が精神的に負担を感じることも少なくありません。
このような状況が生じる背景には、多くの場合、高齢者の「老人性難聴」が関係しています。老人性難聴は、加齢に伴って聴力が徐々に低下する自然な現象であり、特に高音域の音が聞こえにくくなることが特徴です。
これにより、テレビの音声がはっきりと聞き取れなくなり、音量を上げてしまうことが頻繁に起こります。
老人性難聴の原因とメカニズム
老人性難聴の主な原因は、内耳の蝸牛(かぎゅう)や聴覚神経の老化によるものです。加齢により、これらの部分の細胞が機能を失い、特に高音域の音が聞こえにくくなります。この聴覚の低下は徐々に進行するため、本人が自覚しにくい場合が多く、周囲の家族が最初に異変を感じることがよくあります。
また、難聴が進行すると、テレビの音声だけでなく、日常会話や電話の音声も聞き取りにくくなるため、家族とのコミュニケーションが減少し、孤立感を感じる高齢者も少なくありません。このような状況が続くと、家族全体の人間関係にも影響を与え、より大きな問題に発展する可能性もあります。
この問題をどのように解決するか、テレビの音量問題を解決する具体策を紹介します。
解決策1.手元スピーカー
高齢者がテレビの音量を大きくしてしまう問題は、多くの家庭で見られる悩みの一つです。この問題を効果的に解決するための手段として、「手元スピーカー」の導入が注目されています。手元スピーカーを使用することで、テレビ本体の音量を必要以上に上げることなく、高齢者に近距離からクリアな音声を届けることができます。手元スピーカーは同居家族のストレス軽減に役立つでしょう。
手元スピーカーの利便性とメリット
手元スピーカーの最大のメリットは、音声を高齢者のすぐ近くで再生できる点です。これにより、テレビ本体の音量自体は通常のレベルに保ちながら、高齢者が音声をはっきりと聞き取れるようになります。このシステムは、家庭内の音量トラブルを解消し、家族全員が快適に過ごせる環境を整える効果があります。
特に、手元スピーカーは高齢者向けに設計されているため、操作が簡単なタイプが多いです。多くの製品がワイヤレスで、手元に置くだけで使用できるため、場所を選ばずに設置可能です。充電式で長時間使用できるものも多く、テレビ視聴の際に気軽に使えます。
手元スピーカーを使うことで、高齢者が自身の生活の質を維持しつつ、周囲とのコミュニケーションを円滑に保つことができます。
手元スピーカーの選び方と使用方法
手元スピーカーを選ぶ際のポイントとして、まず音質が挙げられます。高齢者の聴力に合わせて、音声をクリアに再生するスピーカーを選ぶことが重要です。特に音声強調機能を持つモデルは、テレビの音声をより聞き取りやすくし、日常のテレビ視聴を快適にします。
接続方法の簡便さも重要です。ワイヤレスモデルは、ケーブルが不要で、どこにでも持ち運べるため利便性が高いです。また、最近の手元スピーカーにはBluetooth接続機能が搭載されているものが多く、簡単にテレビと接続できる点が大きな魅力です。
テレビとスピーカーを接続し、スピーカーを高齢者の手元や座っている場所に置くだけで、すぐに使用できます。音量はリモコンやスピーカー本体で調整でき、テレビ本体の音量を上げずに、最適な音声環境に調整できます。
手元スピーカーの導入により、高齢者がテレビの音を聞き取りやすくなるだけでなく、家族全体が快適な生活を取り戻せるでしょう。
解決策2.補聴器の活用
手元スピーカーが高齢者のテレビ音量問題を効果的に解決する手段である一方、補聴器は難聴の方の生活全般を解決する方法です。補聴器は、テレビ視聴時だけでなく、日常生活全般での聴力をサポートする機器であり、日常会話の聞き取りやすさにも大きな影響を与えます。
補聴器の優れた機能と日常生活への影響
補聴器は、手元スピーカーと比較して、より精密でパーソナライズされた音声補正が可能です。これは、補聴器が高齢者の個別の聴力状態に合わせて調整されるためであり、特定の周波数帯を強調することで、テレビの音声だけでなく、日常会話や環境音も聞き取りやすくします。補聴器を使用することで、高齢者はテレビ視聴時に音量を上げる必要がなくなるだけでなく、家族や友人との会話もよりスムーズになります。
会話が聞こえないから行ってもつまらない、とデイサービスの利用を嫌がる方もいます。そういった場合にも、適切に調整された補聴器の利用はひとつの解決策となります。
また、補聴器にはノイズキャンセリング機能や音声強調機能が搭載されているため、騒がしい環境でも必要な音をクリアに聞き取ることができます。テレビの音声だけでなく、日常生活全般における音の聞き取りが改善され、高齢者の生活の質が大幅に向上します。
補聴器の価格と使用の限界
補聴器は高機能で医療機器でもあるため、手元スピーカーと比べるとコストが高額です。安くても数万円、数十万円といった価格帯になるため、導入に際しては費用面での負担を考慮する必要があります。また、補聴器は個別の調整が必要であり、耳鼻科の診察や専門家によるフィッティングやメンテナンスを受けることが推奨されます。
ただ、補聴器にも限界はあります。聴力の低下が進行しすぎた場合、補聴器では完全に音を補正しきれない場合があります。特に、内耳や聴覚神経の機能が大幅に低下した場合、補聴器の効果は限定的となり、音声の歪みや聞き取りにくさが残ることがあります。このため、聴力低下が軽度から中度の段階で早期に補聴器を導入することが重要です。これにより、音質が最適な状態で維持され、生活の質が向上します。
手元スピーカーが特定のニーズに対する効果的な解決策であるのに対し、補聴器はより広範囲で長期的な聴力問題を解決する機器です。ただし、その導入にはコストや定期的なメンテナンスが必要であり、聴力が極端に低下している場合には効果が限定されることもあります。これらを総合的に考慮して、自分のニーズに最も適した選択をしましょう。
解決策3.最新のテレビ機能を活用
テレビの音量問題を解決するために、テレビの機能を活用することも非常に効果的です。近年のテレビは、音声をより聞き取りやすくするための多くの機能を備えており、これらを上手に活用することで、家族全員が快適に過ごせる環境を整えることができます。
音声強調機能とクリアボイス機能
最新のテレビには「音声強調機能」や「クリアボイス機能」といった、音声をより明瞭に聞き取れるようにするための機能が搭載されています。これらの機能は、背景音や効果音に埋もれがちな人の声を強調することで、音量を上げなくても重要な音声をはっきりと聞き取れるようにするものです。
例えば、テレビの設定が重低音を強調するような設定になっている場合、高い音から聞こえにくくなる高齢者は高い音を拾えません。テレビの音声設定を変更し、聞き取りにくい音を強調することがおすすめです。
老人性難聴で多い「高い音が聞き取りにくい」症状に対しては、低い音を弱くし、高い音を強調するような設定にすることで、弱った聴力を補うことができます。
また、テレビのメーカーによって名称の違いはありますが、「クリアボイス機能」や「快聴モード」など、聞きやすさを改善するための機能が標準で備わっていることもあります。これらの機能をオンにすることで、音量自体は上げることなく、聞き取りやすさを向上することもできます。
サウンドバーや外部スピーカーの活用
テレビ本体のスピーカーに問題がある場合もあります。最近のテレビは正面にスピーカーがついているわけではなく、背面や下向きで音声が出る場合があります。壁などへの反射によって音を届けるため、音が直線的に伝わりにくい問題があります。
サウンドバーや外部スピーカーを別途追加することで音質が改善し、聞き取りやすさが向上します。人物の位置によって音の方向性を変える機能などがついている製品もあります。
テレビの機能で生かし切れていない部分があるかもしれませんので、まずはテレビの設定から見直してみましょう。
解決策4.耳鼻科の受診も
難聴がひどい場合は耳鼻科に行くことも選択肢のひとつです。年のせいだからと放置しないで、あまりにひどいときは早めに耳鼻科を受診しましょう。
以前、あまりに難聴がひどくて耳鼻科に行ったところ、耳垢が溜まりすぎていて聞こえなかったという方もいました。耳の掃除をすることで、クリアに音が聞こえるようになったという事例もありますので、耳鼻科という選択肢も考えておきましょう。
まとめ
「聞こえ」の問題は高齢者の生活の質に大きく影響します。
テレビやラジオなどの音が聞こえにくくなったら、娯楽が失われるだけでなく、必要な情報を入手する手段も限られてしまいます。
テレビの聞こえやすさも大切にしてあげたいですね。もし、最近テレビの音量設定が大きくなってきているなと気がついたら、今回紹介した解決策をいくつか提案してみてはいかがでしょうか。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
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