2024年介護報酬改定【共通事項】。介護職員処遇改善加算一本化、BCP未作成減算、重要事項ホームページ掲載!制度改正変更点まとめ

2024年介護報酬改定共通事項まとめ 介護コラム

2024年の介護報酬改定について、事業種別ごとの変更もありますが、共通した改定事項もあります。今回はサービス種別共通の改定内容を紹介していきます。

いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

【この記事を読んでほしい人】

  • 在宅の介護サービス事業所の管理者
  • 居宅介護支援事業所のケアマネジャーや地域包括支援センター職員
  • 介護事業を運営する法人関係者

【この記事に書いてあること】

  • 介護職員の賃上げを目的に、介護職員処遇改善の見直し・一本化が行われる
  • 業務継続計画(BCP)未作成事業所は基本報酬が減額されるという罰則
  • 運営規程の概要など重要事項は事業所内に掲示するだけでなく、ホームページ上にも掲載することが義務となる

まず、今回の介護報酬改定について、大枠で紹介します。「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」と「その他」という5つの柱から構成されています。

介護報酬改定2024の概要

前回までに、訪問系サービスの改定内容と、居宅介護支援の改定内容は別記事にまとめています。個別サービスについて詳しく知りたい方は併せてこちらもご参照ください。

処遇改善加算3種類の一本化

介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるようにする観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。その際、令和6年度末までの経過措置期間を設けることとする。
また、以下の見直しを行う。

  • ア 職種間の賃金配分について、引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとしつつ、職種に着目した配分ルールは設けず、一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める。
  • イ 新加算の配分方法について、 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、一番下の区分の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。 その際、それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。
  • ウ 職場環境等要件について、生産性向上及び経営の協働化に係る項目を中心に、人材確保に向け、より効果的な要件とする観点で見直しを行う。
女性介護職員イメージ

介護職員の待遇を改善するために、介護職員のキャリア支援・賃金アップなどの取り組みをしている事業所には介護職員処遇改善加算を受けることができました。この加算が開始してからも、全産業平均賃金に、介護職員の賃金はまだまだ届かず、介護職員処遇改善加算に加えて、介護職員特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算が加わりましたが、高齢化のピークまでに必要な介護職員数を確保することは困難な見通しです。

そこで、介護職員のさらなる賃上げを目指し、処遇改善加算の見直しが行われることになりました

3つあった処遇改善加算を一本化することで手続きを簡素化しつつ、介護職員ひとりあたり6千円の賃上げを目指す計画です。処遇改善加算の見直しは2024年4月ではなく、2024年6月からスタートします。訪問看護や通所リハビリなど医療系サービスが診療報酬改定に合わせて6月に改定されますが、その時期に合わせて加算の一本化が行われます。

こちらの記事に処遇改善の概要について詳細を掲載していますので、ご参照ください。

処遇改善加算、一本化・見直し後のイメージ

介護給付費分科会資料より

また、2月から6月までの間はこれまでの処遇改善加算3種類に加えて、処遇改善支援補助金の申請を行うことができ、介護職員の賃上げが行われる見通しになっています。詳細はこちらのページをご参照ください。

【対象事業所】
訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院

業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する

その際、一定の経過措置を設ける観点から、令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととする。

なお、訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、令和3年度介護報酬改定において感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備が義務付けられてから間もないこと及び非常災害に関する具体的計画の策定が求められていないことを踏まえ、令和7年3月31日までの間、これらの計画の策定を行っていない場合であっても、減算を適用しないこととする。

業務継続計画は自然災害や感染症のまん延時にも、事業の継続もしくは優先順位を決定して最低限の事業を継続、または早期の再開をするための計画です。前回の介護報酬改定時に、全ての指定介護保険事業所に作成が義務付けられていました(猶予期間あり)。

ただ、業務継続計画の作成が進んでいない事業所も多い状況です。こちらの記事にも記載していますが、2023年7月時点の自然災害BCPは全体のうち「策定完了」が26.8%、「策定中」が54.9%、「未策定(未着手)」が17.1%となっています。まだ全事業所のうち策定完了しているのは4分の1しかないという状況です。

2024年4月1日までに策定しなければいけなかったのですが、策定を開始していれば、猶予期間は1年間延ばすことになりました。ただし、作成していない事業所には基本報酬の減算という厳しいペナルティが待っています。特に策定率の低い訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援も2025年4月1日までに作成しなければいけません。

業務継続計画未策定減算の開始時期は以下のQ&Aにて示されている通りです。

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日

居宅介護支援事業所向けのオリジナルBCPテンプレートはこのサイト内でも配布しております。登録・ログインが必要になりますが、よろしければお使いください。

いずれの事業種別もこの1年でBCPを完成しなければいけないですので、しっかり計画を立てて進めていくことが必要です。

【対象事業所】
全サービス(居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く)

減算は100分の3もしくは100分の1ということで、額としてそこまで大きいわけではないようですが、今後原産の割合を大きくしていく可能性もありそうですね。

高齢者虐待防止研修の実施

利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、虐待の発生又はその再発を防止するための措置が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。

高齢者虐待防止の推進

高齢者虐待防止のための措置として、委員会の開催・指針の整備・研修の実施・担当者を定めることができていない場合は高齢者虐待防止措置未実施減算が適応されます。所定単位数の100分の1相当の減算となっています。

小規模事業者でも同様の扱いになるようです。

Q
問170
居宅療養管理指導や居宅介護支援などの小規模な事業者では、実質的に従業者が1名だけということがあり得る。このような事業所でも虐待防止委員会の開催や研修を定期的にしなければならないのか。
A

・ 虐待はあってはならないことであり、高齢者の尊厳を守るため、関係機関との連携を密にして、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会及び研修を定期的に実施していただきたい。小規模事業所においては他者・他機関によるチェック機能が得られにくい環境にあることが考えられることから、積極的に外部機関等を活用されたい。
・ 例えば、小規模事業所における虐待防止委員会の開催にあたっては、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等他委員会との合同開催、関係機関等の協力を得て開催することが考えられる。
・ 研修の定期的実施にあたっては、虐待防止委員会同様法人内の複数事業所や他委員会との合同開催、都道府県や市町村等が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催等が考えられる。
・ なお、委員会や研修を合同で開催する場合は、参加した各事業所の従事者と実施したことの内容等が記録で確認できるようにしておくことに留意すること。
・また、小規模事業所等における委員会組織の設置と運営や、指針の策定、研修の企画と運営に関しては、以下の資料の参考例(※)を参考にされたい。
(※)社会福祉法人東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター「施設・事業所における高齢者虐待防止のための体制整備-令和3年度基準省令改正等に伴う体制整備の基本と参考例」令和3年度老人保健健康増進等事業、令和4年3月。

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)

小規模事業所にとっては非常に負担が大きく、頭の痛い問題ですね。

【対象事業所】
全サービス

テレワークの取扱い

人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。

管理者も含めたテレワークに関して、事業所の人員配置基準を柔軟にし、規制を緩和することが定められました。ただ、テレワークに関しては職種によってできる業務が大きく異なるため慎重な判断が求められるということでした。具体的な内容に関しては今後明確化されていく予定です。

【対象事業所】
全サービス(居宅療養管理指導除く)

人員配置基準における両立支援への配慮

介護現場において、治療と仕事の両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、各サービスの人員配置基準や報酬算定について、以下の見直しを行う。

  • ア 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
  • イ 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。

「両立支援」というと、「介護と仕事の両立」や「育児と仕事の両立」などを連想することが多いと思いますが、今回位置づけられたのは「治療と仕事の両立」です。育児・介護休業法に、治療と仕事の両立支援が位置づけられ、介護職員自身が抱える持病などの治療を行いながら働き続けることを支援するという枠組みができました。

厚生労働省の策定した「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に記載の通り、該当者は週30時間以上の勤務で常勤換算の計算上「1(常勤)」とされることとなりました。

治療と仕事の両立支援ナビ ポータルサイト
治療と仕事の両立の支援にあたっての留意事項や準備事項、進め方をご案内するポータルサイトです。

【対象事業所】
全サービス

管理者の責務及び兼務範囲の明確化

提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者の責務について、利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨を明確化した上で、管理者が兼務できる事業所の範囲について、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。

これまで介護保険事業所の管理者の兼務には制限が多く、同一敷地内でなければ兼務が認められないなどのルールがありました。

管理者の兼務について

高齢と障害分野の事業所の管理者を兼務するケースも多くありますが、自治体の判断にゆだねられている現状です。より柔軟な基準にすることで限りあるリソースを有効活用していくことが必要ですね。

【対象事業所】
全サービス

いわゆるローカルルールについて

都道府県及び市町村に対して、人員配置基準に係るいわゆるローカルルールについて、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合には当該地域における当該ルールの必要性を説明できるようにすること等を求める。

人員配置基準におけるローカルルールについての見直しが行われそうです。が、具体的にどこがどうという内容ではないのですが、「事業者から説明を求められたらその必要性を説明できるようにする」というざっくりしたもの。

ただ、実際にあるんです。ローカルルールの壁。

人員配置基準ではありませんが、ケアプランの2表に事業所が算定する加算の名称が書かれていないから認められない、とか、この加算をとっているからケアプランは一律三か月以内で評価再作成をしなきゃいけない、とか。なんでか役所に問いただしましたが、根拠のある回答は結局なく、保険者である市の決めたルールということで従わざるを得なかったこともあります。

ローカルルール

人員配置基準だけに限らず、必要性を明示できないローカルルールはとっとと撤廃してほしいという心の叫び。

【対象事業所】
全サービス

「書面掲示」規制の見直し

運営基準省令上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等(※)については、原則として事業所内での「書面掲示」を求めている一方、備え付けの書面(紙ファイル等)又は電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる規定になっているところ、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととする。

※ 事業所の運営規程の概要等の重要事項、居室及び食堂の広さ、届出事項、特別な食事の提供に係る情報(内容及び料金等)、移動用リフト使用時の留意事項等

ホームページを更新する訪問看護師

介護保険事業所にはたいてい壁面に運営規程の概要などを記載した重要事項が掲示されています。これは事業所内の目につくところに掲示していないと、都道府県の実地指導などで指導されてしまうので、どこの事業所でもやっていることかと思います。

この書面掲示の見直しが行われます。

インターネット上で完結できるように、ネット上に掲載・公表しなさいというものです。法人のホームページ上に書面を掲示するか、介護サービス情報公表システムのいずれかに掲載することが義務付けられました。

介護サービス情報公表システムは年に一回は必ず更新しなければいけないのですが、結構入力も面倒なんですよね・・・。という事業所さんは法人ホームページに掲載することをお勧めします。

書面掲示規制の見直しで、インターネット上のウェブサイトに重要事項説明書掲載必須に

ただ、重要事項の内容も変更することが多いですよね。人員配置が変更した場合なども含めたらかなりの頻度で更新をしなければいけません。ホームページ制作業者に更新をお願いする機会が増えるかもしれませんね。いずれにしてもホームページを持つことによるメリットも大きいですよね。詳しくはこちらを参照してください。

今後、厚生労働省としては「デジタル原則」を推し進めたい考えですので、このような更新作業が増えることも予想されます。ましてや、ホームページを持っていない事業者様は急いで制作した方がいいかもしれません。書面掲示の見直しに関してはこちらのページにもまとめていますので、ぜひ参考にし、準備を進めていただければと思います。

ホームページ制作で迷っている事業者様、制作会社の変更やリニューアルをご検討の事業者様。実はいえケアは介護事業者向けのホームページ制作サービスも行っています。初期費用なしで月1万円で、書面の更新に追加費用は発生しません。

この機会にホームページについて見直したい事業所様は是非気軽にお問い合わせください。

【対象事業所】
全サービス

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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