介護保険 認定調査に立会いは必要?立会いの準備と当日の流れを徹底解説

認定調査の立会は必要? 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

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いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

自分の親がはじめて介護保険の認定調査を受ける。心配ですよね。

どんな質問をされるのか、本人がちゃんと正しくこたえられるのか。そして、想定していた認定が出るのかどうか。

利用者家族
利用者家族

介護保険の申請を出して、今度、父が初めて認定調査を受けます。立会いをするつもりでいますが、立会いって何をすればいいですか?何か準備することはありますか?

できれば要介護の認定が出た方がいいなと思っているんですけど、本人は頑固だし、自分ができないことを認めようとしないからちゃんとした認定が出るか不安で。

どうしたらいいですか?

介護保険の認定調査、本人が正しく状況を伝えられない場合も大いにあります。そこで大事になるのが立会人の存在です。今回の記事では介護保険認定調査の立会いについて解説します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 親がはじめて介護保険認定調査を受けるので、調査の立会いをするご家族
  • 認定調査の立会が必要かどうか知りたいご家族
  • 介護認定でどうしても要介護1以上の認定にしたいと考えているご家族

【この記事に書いてあること】

  • 介護保険認定調査に立ち会うことの意味
  • 調査の立ちあうときの準備
  • 本人の前で伝えにくいことを調査員に伝えるテクニック

介護保険認定調査の立会いの意味

介護保険サービスを利用するためには、市町村から派遣される調査員による認定調査介護にかかる手間を適切に判定してもらう必要があります。認定調査では、調査員が本人やその家族にヒアリングや観察、動作確認を行い、本人が日常生活を送るためにどの程度の支援が必要かを確認します。

この調査結果をもとに、要介護認定の区分が決定します。認定区分によって、利用できるサービスの種類やサービスを利用できる量が決まります。必要なサービスを必要なだけ利用できるようにするためには、正確な認定調査を受けることが重要です。

高齢者が正確な情報を伝えられない

本人が何でも「できる」と言い張るので驚いて訂正する家族

認定調査において起こる問題のひとつは、本人が日常生活の様子を正確に伝えられない場合があることです。

特に高齢者の中には、認知症や記憶力の低下により、自身の実際の状況や支援の必要性について理解しにくい方もいます。その結果、調査の際に「全部自分でできる」と平然と答えたり、周囲に心配をかけたくない気持ちから支援が必要であることを隠してしまうケースがあります。

また、長年の自立心やプライドから、人の手は借りていない、と無理をしてアピールしてしまう方もいます。こうした誤った情報提供が、認定結果に影響し、適切な介護度につながらない原因となり得ます。極端な例で言うと、要介護・要支援でもなく、非該当(自立)と判定されることもあります。

他人の前で気を張ってしまう問題

無理して杖なしで歩こうとする高齢者と杖を使うように説明する家族

また、調査員や他人の前では気を張り、普段はできないことも頑張ってできるように見せてしまう場合もあります。

たとえば、日常的には机に手をついて立ち上がっているのに何もつかまらずに立ち上がって見せようととしたり、いつもは杖や歩行器を使っているのにそれらを使わずに歩こうとしたりすることがあります。

その一瞬しか見ることができない調査員には一見「自立している」と映るため、本人の実際の介護ニーズが見えづらくなり、結果的に介護度が低く判定されてしまうことがあります。

本人が一時的に「たまたま」できた動作や、無理をしてできた行為だけが評価の基準になることで、本人が日常的に支援を必要とする実態が正確に反映されない問題が生じます。

あくまで調査の対象は「できるADL」ではなく「しているADL」なのです。

認定調査の結果が不十分な支援につながるリスク

こうした誤解により、認定調査の結果が実際よりも軽く評価されてしまうことがあります。結果、必要な介護度が認定されず、十分な支援が受けられないというリスクが生じます。

たとえば、週5日間デイサービスが必要な状況でも、本人が「自分でできる」「何でもやっている」と答えたために介護度が低く設定され、限度額の関係で必要な回数の利用ができない場合があります。

十分な支援が得られず、本人の安全や生活の質が損なわれる恐れがあるのです。

家族の立会いが重要な理由

こうした問題を避けるためにも、家族が認定調査に立ち会い、普段の様子を調査員に正確に伝えることが非常に重要です。

家族が立ち会うことで、本人が無理をして普段の様子と異なる状態を見せてしまった場合でも、その場で家族が「実際は普段このようなサポートが必要です」と補足説明を加え、誤った情報を修正することができます。また、日常生活で家族が介助している具体的な場面(たとえば「食事はいつも細かく刻んでいます」「着替えは自分でしているけど背中がよれていたりボタンをかけ間違えているから指摘したり直したりしています」など)について家族から伝えることができます。

家族の立会いにより、調査員が本人の実態を把握しやすくなり、正しい介護度が認定される可能性が高まります。


認定調査の場で家族が「普段の生活の姿」を伝え、適切な在宅介護サービスを受けられるようにサポートするため、介護保険認定調査の立合いは非常に重要です。

調査への立会いを希望するには?申請書への記載方法

認定調査の立会いをしたい場合はどうするのか。

介護保険認定申請書には立会希望する人の名前や連絡先を記載する欄があります。

下記は横浜市の認定申請書の例です。⑬訪問調査当日の立会者の欄に、氏名・住所・連絡先・申請者との関係などを記載します。

書式は市町村によって異なりますが、大半の認定申請書には立会希望のチェック欄や記載欄などがあります。これらに記載があれば、市町村側も家族の立会い希望を把握し、調査員が立会希望者とスケジュールを調整するか、立会希望者のスケジュールに合わせた日程調整を行います。

家族が立ち会うことで調査員が本人の状況を理解しやすく、より正確な評価が期待できるため、立会い希望を明記することが重要です。

また、調査員側も、確実な日程調整ができることや、本人との直接一対一の調査よりも立ち合いがいた方が正確な情報収集ができるメリット、第三者がその場にいることで正当な調査が行われたことの証明ができることもあり、立会いの同席を原則としている場合もあります。なので、「立会いは調査の邪魔にならないかしら」などと遠慮することなく、堂々と記載し、当日も同席しましょう。

調査立会い前の準備と心構え

エピソードをメモしておく

立会いの時には、気持ちの余裕がなく、伝えたいことを伝え忘れてしまうことがよくあります。重要な情報が伝えられないことで、場合によっては介護度の判定に影響する可能性もあります。

確実に伝えたいことを伝えるためには、メモを用意しておくことです。具体的に何をメモしておくべきかというと、「介護の手間」に直結するエピソードです。そして、その頻度がどのくらいあるかもメモしておきましょう。

  • 先日、大事な書類を失くしてしまって家族みんなで探した。月に2回くらいそういったことがある
  • 洋式便器に立って排尿しているけれど便器の周りを汚すことが多くて毎日くらい掃除している
  • 手伝おうとしたら怒って手で払われた。月に1回くらいはそういうことがある

このように情報を整理してまとめておくと、慌てず認定のために正確な情報を伝えることができます。

また、他の家族や近隣の方などが状況を把握している場合は、事前に情報を集めておくといいでしょう。

調査の内容の全体像を把握しておく

認定調査での本人の振る舞いに驚く家族

認定調査の項目は以下の通りとなっています。

この項目すべてを覚えることはできないと思いますが、全体像を理解しておくことがいいです。

  • 身体機能・起居動作:本人の動作を実際にやってもらって確認します。
  • 生活機能:普段の日常的な生活動作にどの程度の介助を受けているかを確認します。
  • 認知機能:認知機能そのものがどれだけ維持できているかを確認します。
  • 精神・行動障害:認知機能等により家族等が対応しなければいけないような問題があるか
  • 社会生活への適用:社会生活上で受けている介助など
  • 特別な医療:医療行為を受けているか

このような質問内容のリストになっています。

調査員はこれらの全ての項目をチェックします。もし、このリストを見て、「ここは伝えておかなくちゃ」と思う項目があれば事前にチェックしておきましょう。

認定調査の詳しい流れはこちらの記事に掲載していますのでご参照ください。

本人への説明

本人に認定調査の意味などを伝えておくことも重要です。

「認定結果が悪いと施設に入れられてしまう」と勘違いして無理に元気そうに装う人もいます。ありのまま、いつも通りを見てもらうためのものだということは事前に伝えておきましょう。

当日、調査員が来たのに本人が拒否をしてしまうということもありますので、確認のためにも調査前には本人に説明を繰り返し伝えておきましょう。

リラックスして臨む

初めての立会いでは不安を感じると思います。ただ、認定結果が明らかにおかしい場合はケアマネジャーや地域包括支援センター等とも相談して、区分変更の申請をすることができます。これは認定期間中に介護保険の認定をもう一度やって新たに認定をしてもらうための制度です。もし認定の結果によってサービス利用に深刻な影響が出ている場合は区分変更すればいいと思ってリラックスして臨みましょう。

立会いの目的は「良く見せる」ことでも「悪く見せる」ことでもなく、普段の様子を正確に伝えることです。ありのままの状況を話すことで、認定を受けることができます。変に小細工などをすることなく、リラックスして、日々の状況をそのまま伝えるという心構えで臨みましょう

ケアマネや別の家族が立ち会う場合の注意点

家族が立会えない場合、代理の方に立会いを依頼することも可能です。他の家族やケアマネジャーが立会することもあります。その際には立会人に伝えておいて欲しいことを事前に話しておきましょう。

立会人への情報提供

日常生活をともにしている人が代理で立ち会うのであればある程度の情報は把握できているでしょう。しかし、そうでない場合は必要な情報を調査員に伝えられない場合があります。

日常生活で手間がかかっている・支援が必要になっている部分を具体的に伝えておきましょう。具体的な状況を共有しておくことで、調査員に正確な情報を伝えることができます。

メモの用意

あまり情報のない家族が立会う際には、必要な情報を残さず伝えられるよう、メモを準備すると効果的です。困難な場面や支援が必要な状況をまとめたメモがあれば、スムーズに説明しやすくなります。

本人の前で伝えにくいことを調査員に伝えるテクニック

認定調査の際、本人の目の前で生活上の困難や支援が必要な状況を話すのが難しい場合があります。

本人の自尊心を傷つけてしまう可能性が高い場合や、認知症により自身が記憶しておらずその場で否定されそうな場合など、本人に聞かれたくない話もあります。本人に気づかれないように、調査員に情報を伝えるためのテクニックを紹介します。

介護保険の認定申請書類に状況を記載する

認定申請の段階で先に本人の状況を記載する方法があります。申請書類に具体的な状況を書き込んでおけば、調査員がそれを元に本人の状況を事前に把握できます。事前に前情報が入っていれば、調査員はそれを意識して質問し、本人の状況を注意深く確認しようとしてくれます。

認定調査の日程調整の際に電話で先に状況を伝える

調査日時を決める際、調査員に直接電話で本人の状況を伝えることも有効です。本人がその場にいないのであれば、本人に聞かれない情報についても話しやすくなります。例えば「本人は家のことは何でも自分でしているというが、実際は家族のサポートがないとできない」など、状況を詳しく伝えることができます。

調査が終わった後、家の外まで送ると言って家の外で状況を説明する

調査が終了した後、調査員を家の外まで送ると言って、立ち話で追加の情報を伝えるのもひとつの方法です。この場合、本人の目の届かない場所で状況を伝えられるため、本人に配慮しつつ、調査員に必要な情報を補足できます。

「さっきはあんなこと言っていたが実際はそうじゃない」「本当は今日の調査があることも忘れているくらい物忘れが多い」など、追加の補足があればこの機会を活用しましょう。

よくある質問

認定調査の立会いをすることに関して、よくある質問と回答を紹介します。

Q
休みが土・日曜日しかなくて、平日にも休みが取れない。誰も替わりに立会をしてくれる人がいないけれど、どうしたらいい?
A

事情を伝えて市町村に相談すれば、土・日の認定調査も可能です。市町村の職員ではなく、委託の調査員が訪問するなど、土日での調査への対応もできますので、相談してみましょう。

Q
ひとり暮らしなのですが、普段よくしてくれている近所の方も同席を希望しています。複数名での立会いはできますか?
A

複数名での立会いも可能です。親族でなくても、本人の状況をよく把握している方であれば立会いできます。別の視点から普段の状況を伝えることができます。

Q
介護認定が悪くなるように嘘をついたりしたら、バレますか?
A

あまりよくない話ですが、より重い要介護度になるように演技をさせたりする方がいます。ただ、一次判定システムでは調査内容の矛盾をチェックする機能があります。Aの動作ができるのにBの動作ができないのはおかしい、など、矛盾があった場合はエラーとなります。
本人と話の口裏合わせをしていたとしても話のつじつまが合わなくなることもあります。
特に市町村の調査員は毎日調査をしていますので、下手な嘘を見抜くスキルはあります。正しくリアルな情報を伝えることをお勧めします。

介護認定では重い認定になった方がメリットが大きいと思う方が多いのも事実です。もちろん利用できるサービスの選択肢やサービスの量なども変わります。施設に入所することを考えれば要介護3以上の認定が欲しいです。

ただ、必ずしも重い認定の方がメリットが大きいとも限りません。デイサービスやショートステイの利用では、要介護度が高くなるほど一回当たりのサービス利用金額が大きくなります。もし要介護1で必要な回数のサービスを利用できていれば、要介護5で同じサービスを利用している人に比べて、介護報酬の点数は半分以下になり、経済的です。

こういった経済的なメリットなども踏まえて、認定調査に臨んでいただければと思います。

まとめ

認定調査に家族が立ち会うことは、本人の生活実態を調査員に正確に伝えるための大切な役割を担います。

申請書に立会い希望を記載し、日常の具体例や補足情報を準備しておくことで、スムーズに立会いを進められるでしょう。本人の前で話しにくい内容は、事前の申請や調査員とのやり取りで工夫して伝え、適切な認定が受けられるようサポートしていきましょう。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

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