退院が迫っている/一人にできない/末期がんで状態が急変している。
介護はいつでも待っていてくれません。身体状態も変わり、認知症による周辺症状も変わり、周りの環境が変わることもあります。突発的に対応しなければいけない事態が数多くあります。
特に、介護保険の認定をまだ受けていない、ケアマネジャーや地域包括支援センターとつながっていない方にとっては、相談する人もいないという状況に陥ります。
まず何からすればいいのか。急いで申請したいけれど、どうすればいいのか。そして、最短で介護サービスを利用するにはどうしたらいいのか。
今回は介護認定を急いでいる方向けの情報をまとめております。
要介護認定はどれくらいかかる?
まず、介護認定の仕組みから先にお伝えします。
要介護(要支援)認定は、原則として申請日から30日以内に行う扱いです。これは介護保険の制度がスタートして以来変わりません。しかし、現実的には30日以内に認定が出ているわけではありません。

介護保険の認定を申請したのち、調査員による認定調査、主治医による意見書作成が行われ、その情報をもとに介護認定審査会が行われて介護認定が決定します。この一連のプロセスの中で、何らかのトラブルがあって時間がかかると認定が遅くなります。
また、介護認定の申請状況によって、大幅に遅れる市町村もあります。2019年に大阪市が行った調査によると、30日以内に認定できたのはおよそ2.0%。半数近くが2ヵ月以上経過してからの認定だったという報告があります。地域による差も大きいですが、必ず30日で認定が届くわけではないということをご理解ください。
1. 急ぐのであれば今すぐ申請する
介護保険の認定が必要であれば、とにかく早く申請をすること。まずは一日も早く提出することです。
介護保険の申請窓口に行き、介護保険認定申請書を提出しましょう。
以前は印鑑による押印が必要だった自治体もありましたが、今は押印を求める自治体はないと思います。申請書に自分の連絡先を書く場合には、連絡のつきやすい連絡先を記入しましょう。認定調査の日程調整がスムーズに行えます。
2. 申請先は市役所?地域包括支援センター?どこがいい?
介護保険の認定の申請を提出する場所は、市区町村の役所・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所などがあります。
どこに申請するのが一番早いかというと、市区町村の役所の担当窓口です。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などで申請を受け付けてくれますが、この場合は代行申請という形になります。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所の職員が市区町村の窓口に行って申請書を提出するまで、申請は受理されたことになりません。つまり、代行申請の場合は、申請書作成・提出から役所での受理までの間にタイムラグが生まれてしまうのです。
一番早く認定を受けるということで考えれば、直接役所に行くことが最短ルートとなります。
もちろん、代行申請のメリットもあります。地域包括支援センターで相談も受けてくれますし、早ければケアマネの調整などの相談も受けてもらうことができます。
役所の場合は受理した後、相談窓口として地域包括支援センターを紹介されるパターンが多いです。つまり、二か所に行かなければいけないという手間が発生します。サービスの利用までを考えると、申請をした後にそのまま地域包括支援センターまで相談に行くというのが最短と言えます。
3. 暫定ケアプランのメリットとリスク
介護保険の認定が届くまでサービスは利用できないかというと、そうではありません。介護保険では「暫定ケアプラン」という仕組みがあり、認定前から介護保険サービスを利用することができます。
介護保険の認定は申請日にさかのぼって有効となります。
たとえば、10/1に介護認定の申請をして、11/20に要介護2の認定が届くとします。申請日は10/1なので、介護保険の認定が有効になるのは10/1から。10/1にさかのぼって要介護2という認定が有効になるのです。
このように、要介護認定が出ていなくても、申請をすでに提出しており、認定がつくのであれば、見込みで「暫定ケアプラン」としてサービスを利用することができます。急いでサービスを利用する必要がある場合には大きなメリットになります。
暫定ケアプランのデメリット・リスク
暫定ケアプランの利用は便利なようにも思えますが、認定結果が想定と違うと、介護保険の上限を越えるため負担が増える/調整が必要になるという可能性があります。
例えば、要介護5が出ると見込んで毎日サービスを利用していたものの、結果が届いたら要介護2だった、という場合もあり得ます。要介護5と要介護2では利用可能な限度額が大きく異なるため、要介護2の限度額内で収まらず、上限をオーバーしてしまう可能性もあります。
サービスによっては介護度によってサービス利用単価自体が異なるもの、一定の介護度以上でないと利用できないサービス・福祉用具などもあります。非常に複雑な制度なので、安易に暫定プランを導入すると、後でそれが大きなリスクになっていることもあります。ぜひよく相談してからサービスを利用しましょう。
4. 末期がんの場合は、申請時に必ず伝える
特に末期がん等で状態変化が急速な場合、速やかに介護保険の認定を行うことが決められています。

※参照:厚生労働省「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」
つまり、末期がんの場合は、通常の認定よりも早く対応をしてもらうことができます。なので、暫定プランを利用する市内に関わらず、該当する方は必ず窓口でその旨を伝えましょう。
5. 主治医意見書を早める4つのコツ
介護認定が遅れる理由のうち、おそらく最上位になるのが「主治医の意見書」です。
医師も忙しい勤務の合間をぬって書類を作成するので、遅れることもあります。また、医師によっては非常勤のため出勤日が限られ、書類を書くのが遅れてしまうという場合もあります。
主治医の意見書をいかに早く書いてもらうか、これが最大のハードルと言っても過言ではないでしょう。
早く書いてもらうためのコツは3つ
- 主治医に申請すること、または申請したことを必ず伝える
主治医に必ず申請のことを伝えましょう。突然意見書記載依頼が役所から届いても、詳しい情報を聞いていなければ意見書は書けません。これから申請をすること、または申請をしたことを必ず医師に伝えましょう。 - 定期受診は必ず
受診していなければ医師も直近の状態がわかりません。意見書の記載内容には、身長や体重、利き手など、細かい項目もありますので、受診していなければ書くことはできません。申請と受診はセットです。 - 主治医意見書原本を受け取り、医師のところに直接持っていく
これは市町村や医療機関によって対応が異なりますが、役所から医療機関へ意見書を直送する場合や、本人や家族に書類を渡してそれに書いてもらうように伝える場合があります。書類を受け取って、すぐに医師のもとに診察に行き、書類を書いてもらうのが一番早いように思います。 - 主治医がいない場合は相談を
主治医がいない、どこにも連れていくことができない、または主治医だった医師のところで事情があって意見書を書いてもらえない、という状態の場合は、まずは地域包括支援センターに相談しましょう。市区町村によっては、往診対応で意見書を作成するために医師を派遣する取り組みもあります。
補足:介護保険以外のサービスも利用する
介護保険では暫定ケアプランなども利用できますが、「利用したい」といえばその日にすぐに利用できるわけではありません。
まずケアマネが不足している中ですぐに対応できるケアマネがいるかどうか。そして、ケアマネとの契約。サービスを提供する事業所の調整。ケアプランの作成。サービス事業所との契約。サービス担当者会議。このようにいくつかのプロセスを経なければ暫定であっても介護サービスを利用することはできません。
介護保険を使わず、もしくは介護保険は最小限にして、介護保険以外のサービスを使うのも一つの方法です。
- 食事は民間の配食サービスを利用する
- もし指定難病やがん末期の場合は訪問看護が介護保険ではなく医療保険優先になるため医療保険で訪問看護サービスを利用する
- 他の家族や近隣に協力を依頼する
介護保険だけではなく、様々なサービスの選択肢があります。状況に合ったサービスは何か、ケアマネさんと一緒に検討していきましょう。
まとめ
急ぎで介護保険を申請するときのポイントをまとめました。
介護認定には時間がかかります。
その時間を短縮していくことで、安心して計画的にサービス利用ができます。
もちろん、急ぐときもあるかもしれませんが、認定の申請も早め早めにしておくことがいざというときの助けになります。介護認定はお早めに。

この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)








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