いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
在宅介護には費用がかかります。介護サービスの自己負担や紙おむつなどの消耗品、介護用品の購入や住宅改修など。介護の費用を少しでも取り戻したい、そう考えている人にお勧めなのは医療費控除です。
主任ケアマネジャー、ファイナンシャルプランニング技能士2級(ファイナンシャルプランナー)としての経験・知識をもとに、在宅費用の自己負担を少なくする方法をお教えしたいと思います。介護費用の節約術として、医療費控除ができる人、医療費控除の対象となる介護サービスなどを解説します。
★こんな人に読んでほしい!
- かかった介護費用を少しでも取り戻したいと思っている方
- 介護・医療に出費が多かった方
★この記事で解説していること
- 医療費控除の対象になるのは
- 介護サービスの費用でも医療費控除の対象になるサービスがある
- 紙おむつ代や交通費も医療費控除の対象になる
- 医療費控除は確定申告をしないと受けられない
1.医療費控除とは、医療にかかった費用を税金で控除してもらうこと
1-1.介護にかかる費用は一か月平均8.3万円
介護には費用がかかります。
生命保険文化センターが介護にかかる費用を調査したところ、一か月平均8.3万円という結果でした*1。これは介護保険サービスの利用時の自己負担と、住宅改修や介護用品の購入費用などの一時的支出も合わせた金額ですが、年間74万円というかなり大きな費用を介護に支出していることがわかります。
在宅介護は介護施設に比べて費用負担が軽くなるものの、それでも一か月平均4.8万円。経済的負担は決して軽い金額とは言えません。長期にわたる介護が続けば、それだけ費用負担は蓄積します。
「介護にかかる経済負担は少しでも軽くしたい」介護する家族に共通する思いです。
介護にかかった費用を取り戻す方法として、医療費控除があります。医療の費用だけでなく、介護の費用も一部医療費控除になることはあまり知られていません。
1-2.医療費控除の仕組み
医療費控除についてその全体像を解説します。
医療費控除は一年間で支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、もしくは総所得200万円未満の人であれば総所得金額の5%を超えた場合に所得控除が受けられるという仕組みです。つまり、医療費控除とは、支払った医療費が高額だった年に還付を受けられる制度のことです。
医療費で控除される金額は、以下のように計算されます。
医療費控除の対象となる費用は、診察費や入院治療費、薬代など、医療に係る費用となっています。国税庁のホームページ上で医療費控除の対象となる項目が具体的に書かれています*2。
2.医療費控除の対象となる介護サービス
医療費控除の対象となる項目の中には、
8.介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
という項目があります。
条件に当てはまれば、介護サービス利用にかかる自己負担金額も医療費控除の対象となります。
医療費控除は医療費の還付を受けるものと勘違いし、医療費控除の申請をせず、本当は取り戻せるはずの還付金を受け取り損ねている人が多いのです。
すべての介護サービスが医療費控除の対象になるわけではなく、一部の介護サービスに限定されています*3。そのため、どれが医療費の対象になるのか、非常にわかりにくい構造となっています。
そこで、どんな介護サービスが医療費控除に該当するかをわかりやすく解説します。
2-1.医療系サービス
- 訪問看護
- 通所リハビリテーション
- 訪問リハビリテーション
- 短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(看護一体型のみ)
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 居宅療養管理指導
(※ いずれも介護予防サービスも含みます)
上に紹介したサービスは、介護保険サービスの中でも「医療系サービス」と呼ばれるサービスです。看護師や理学療法士・作業療法士等のリハビリ職、医師などの医療スタッフの配置義務があるサービスが医療費控除の対象になります。
これらのサービス利用で生じた自己負担金額は医療費控除の対象となります。
2-2.医療系サービスと併せて利用すると対象になるもの
先に紹介した医療系サービスを利用している場合、次に紹介するサービスの自己負担金額も医療費控除の対象となります。
- 訪問介護(生活援助=調理、洗濯、掃除等の家事の援助 中心型を除く)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護
- 通所介護【デイサービス】
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護【ショートステイ】
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所)
(※ いずれも介護予防サービスも含みます)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
- 地域支援事業の通所型サービス
「併せて利用する」とは、同じ時間に一緒にサービスを受けるということではなく、同じ月に両方のサービスを利用している状態のことを意味します。たとえば、1月に訪問看護と通所介護(デイサービス)の2つのサービスを利用していれば、訪問看護の費用だけでなく、1月分のデイサービスの利用料金も医療費控除の対象となります。
医療系サービスが終了した場合、それ以降に利用した上記のサービスは医療費控除の対象となりませんので、注意しましょう。
3.在宅介護で医療費控除対象になるもの
在宅介護にかかわる費用について、介護保険サービス以外でも医療費控除に該当するものもあります。
紙おむつ代・介護サービス利用のために必要な交通費は医療費控除として認められます。
3-1.紙おむつ代
紙おむつ代は医療費控除の対象となります。
ただし、紙おむつ代を医療費として認めてもらうためには、以下の2つの条件をみたさなければいけません。
詳しくはこちらの記事に掲載していますのでご確認ください。
3-2.交通費
介護サービスを利用するために必要となった交通費も医療費控除の対象となります。医療費では、通院に係る交通費も医療費控除の対象として認められますが、それと同じと考えていただくといいでしょう。
デイサービスの利用に関しては、交通費は介護報酬の中に含まれているため自己負担がかかることは基本的にはありません。ただし、ショートステイを利用する際に事業所側で送迎の対応がないために交通費が必要になった場合、医療費控除の対象となります。
以上のように介護保険サービス以外にも医療費控除対象となるものもあります。
4.医療費控除の対象とならないサービス
4-1.対象外となる介護保険サービス
医療系サービスと併用しても医療保険の対象外とならないサービスは以下のとおりです。
これらのサービスにかかる費用はすべて医療費控除の対象外となります。
訪問介護のサービスのうち、身体介護に関するサービスは医療費控除の対象となりますが、掃除・洗濯・調理・買い物といった生活援助部分は医療費控除の対象となりません。ただし、どこからどこまでが身体介護でどこからどこまでが生活援助かを明確に区分することは非常に難しいというのが実情です。
4-2.食費・居住費
介護保険の在宅サービス利用時の食費も医療費控除の対象とはなりません。デイサービスやショートステイでは事業所・施設から食事が提供され、食費を実費負担しますが、これは医療費控除の対象外です*4。
また、ショートステイを利用したときの食費や居住費(部屋代)も同様に実費負担となりますが、医療費控除にはなりません。
ただし、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設に長期入所した場合は、食費と居住費が医療費控除の対象となるので覚えておきましょう
※特別養護老人ホームに関しては、施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額が対象となります
5.医療費控除の申請手順
医療費控除の申請から還付までの流れについて解説します。
大きく3つのステップに分けて説明します。
5-1.領収証を保管する
医療費を証明するための領収証は必ず保管しておきます。証明することができない医療費は控除対象になりません。
介護サービスに関しても同様です。介護サービスの場合は、領収証がサービス利用後の翌月に発行されることが多いと思います。領収証は捨てずに必ず保管しましょう。
介護サービス事業所が領収証を発行しない場合や領収証がない場合には、以下の条件を満たせば医療費控除の対象費用として認められます*5。
しかし、既に発行した領収証がある場合や介護保険法施行後、当面、上記2に掲げる通達の領収証の様式例に依り難い場合には、指定居宅サービス事業者は、領収証のほかに、利用者が医療費控除を受ける場合の確定申告書に添付又は確定申告の際に提示する書類として、1「居宅サービス計画を作成した介護支援事業者名」と2「医療費控除の対象となる金額」が記載した書面を交付することとなっている。
国税庁ホームページより
これらの書類を保管しておくことと、その書類に医療費控除の対象分が明記されているか、必ず確認しましょう。
介護サービス利用の領収証を紛失した場合はどうしたらいいの?
介護サービス事業所に領収証の再発行をお願いしても、基本的には再発行できないと返答されてしまうことが多いです。ただ、サービスを提供した事業所名と医療費控除の対象となる金額が明記されている書面であれば医療費控除を申請するために必要な要件を満たします。
サービス利用明細書などの書式で別途発行してもらうことなどもできますので、サービス事業所に相談してみることをお勧めします。
5-2.確定申告をする
医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。医療費控除に該当する領収証をもとに医療費控除の明細書を作成し、確定申告を行います。
確定申告の受付期間は、対象年の翌年2月16日から3月15日となっています。ただし、これは所得税納税のための申告期間なので、医療費控除の還付だけを受けたいときには、3月15日を過ぎてからも申告が可能です。還付金の申告が可能なのは該当の医療費を支払った翌年の1月1日から5年間となっています。そのため、5年分まとめて還付の申請をすることもできますが、忘れないうちに早めに申告することをお勧めします。
申告時には以下の書類が必要となります。
書類の作り方がわからない方はお住まいの地域にある税務署に確認しましょう。税務署の場所はこちらのホームページから検索することができます。
確定申告期間中は窓口が混みあいますので早めに準備することをお勧めします。
今はスマートフォンやパソコンを通して申告書の作成や申請ができます。
税務署に行くことができない方でもご自宅で申請することができます。
参考に国税庁の公開している動画を掲載しますので、ご参照ください。
また、マイナンバーカードをお持ちでマイナポータルと連携している方は医療費の情報をマイナポータルから取得することも可能になりました。マイナポータルの連携方法についてはこちらの動画をご参照ください。
5-3.還付金を受け取る
還付金は銀行口座への振り込みという形で受け取ることができます。
申告をしてからおよそ一か月から一カ月半くらいの期間の後に指定した銀行口座に振り込まれます。
以上が医療費控除のための確定申告の流れとなります。
まとめ
医療費控除の対象となる在宅介護サービスについて紹介しました。
ケアマネジャーさんや地域包括支援センターの職員は介護に関する相談については豊富な情報量と様々な選択肢を持っていますが、医療費控除をはじめとする節税などについての情報はあまり持っていない場合もあります。税金やお金のことについてはケアマネジャー任せにせず、自分たちでしっかり知識を身に付け、行動することをお勧めします。
手続きなど面倒な部分もありますが、介護には大なり小なりお金もかかりますので、出費したお金が取り返せるならうれしいですよね。介護には突然の出費が必要になる場合もあるので、上手に節約していくことが重要です。
これまでは、介護のために長い時間家を空けることができないなどの理由で、確定申告・医療費控除をあきらめていた方もいると思います。今はスマホやパソコンから申告する方法もありますので、上手に活用することをお勧めします。また、こういったときには家族で役割分担し、協力をお願いするといいでしょう。
ひょっとしたら控除が受けられるかも?と感じたあなた。まずは医療費控除の対象となるサービスの領収証があるかどうか、探してみることをお勧めします。
参考文献
1.公益財団法人生命保険文化センター:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?
3.国税庁ホームページ:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
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