介護認定の結果に不満!認定やり直しの方法。区分変更申請と審査請求ってどう違うの?

介護認定の結果に不満! 介護のことはじめ
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

介護保険サービスを利用するのに必要な要介護認定。要支援1・2、要介護1~5という7段階に分かれる介護認定の結果によって、利用できるサービスの種類や利用できる限度額が異なります。

介護を行う家族にとっては気になる要介護認定の結果ですが、必ずしも家族が望む通りの結果が出るとは限りません。認定結果に不満がある時はどうしたらいいのでしょうか

ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。

質問「介護認定が軽くなった。どうしたらいい?」

同居している母の介護保険認定を更新しました。今まで要介護2だったのですが、来月からは要介護1になりました。本人の状態は今までと変わらない、むしろ足取りも悪くなり、病気も進行していて悪くなっている気がします。年齢が経てば人は衰えるのが当然なのに、去年よりも介護度が軽くなるって、そもそもおかしくないですか?意味がわかりません。
介護認定の結果に不満がある場合はどうしたらいいのでしょうか。教えてください

介護認定の結果に不満があるという方からの質問でした。
では、在宅介護の強い味方「介決サポーター」からのアドバイスをお願いします。

いえケア編集部
いえケア編集部

ご相談ありがとうございます。
介護認定が以前よりも軽くなったという結果に対して不満があるということでした。
まず、介護認定がどのように決められているのかをお伝えした上で、その対応について紹介したいと思います。

要介護認定の仕組みについて理解する

まずは要介護認定の仕組みについて簡単に紹介します。

このサイトで紹介する「介護のことはじめ」でも紹介されている通り、介護認定が決定されるまではいくつかのプロセスを経なければいけません。

具体的には以下のような手順が必要になります。

介護保険申請からサービス利用するまで

介護認定を決定には、介護認定の調査だけでなく、主治医の先生が書いた意見書の内容も反映されます。

認定結果が届くまで、申請から1か月、時間がかかる地域では2か月くらいになる場合があります。

認定結果が出るまでのプロセスの中でどのような問題が起きていたのか。なぜ予想していた認定結果が出なかったのかを具体的に解説していきます。

認定調査で調べるのは「介護にかかる手間」

まず認定調査についてお伝えします。

認定調査で調査員が何を見ているのかを知ることで、認定の結果に対する疑問を解く手掛かりになります。

結論から言うと、認定調査で調べている内容は「介護にかかる手間」です。では、介護の手間とは何か、詳しく説明していきます。

介護の手間とは?

調査員

認定調査で調べている介護の手間とは何かをお伝えします。

認定調査では、74項目の調査を通して介護にかかる手間を時間軸に置き換えてどのくらいの介護度が妥当かを判定しています。これが認定の一つの目安となります。

逆に言えば、介護にかかる手間が増えていなければ介護の認定が上がることはあまりありません。介護の手間としてカウントされない要素が変化したとしても、認定には反映されないことが多いのです。ここに着目して認定調査を見ていくことが重要です。

前回の調査時よりも、病状が悪化していた、筋力が低下していた、認知症が進んでいたとしても、介護の手間が増えていなければ介護認定が変わる可能性は少ないのです。

たとえば、以前よりも歩行がおぼつかなくなったとします。でも、自分で歩いている状況は変わらないし、家族が介助をしているわけではない。転倒もしていない。ということであれば、介護の手間は増えているわけではありません。

認知症が進んだ、といっても介護サービスを利用しながら一人暮らしで生活できており、前回の時よりもサービスが多く必要になったということでなければ、介護の手間は増えていないということになります。

前回調査時と比較して、介護の手間が増えているのかどうかを見て、介護認定が妥当だったのかを判断する材料にすることができます。

介護の手間が少なくなれば介護度が軽くなることも

74項目の認定調査の内容と照らし合わせてみて、介護の手間が増えていないということであれば、介護認定が上がる可能性は少ないということを覚えておきましょう。

もちろん、自分でできることが増えれば、介護の手間は減り、介護度が軽く判定される可能性もあります。介護度は必ず今までよりも重く判定されるわけではなく、軽くなることもあります

年齢が経てば人は衰えるというのは間違ってはいないかもしれませんが、福祉用具や住宅改修などによって生活環境が整うことで、1人でできることが増えれば介護度が軽くなることも十分あり得ます。

要介護の人が要支援の認定になる事もあります。要支援認定の人が、介護認定で非該当という認定、つまり自立という認定を受けることもあります。

介護度は必ず重くなるわけではないことを理解しましょう

寝たきりになったのに介護度が軽くなった

さらに踏み込んで言うと、今までは歩いていた方が、寝たきりになった。それなのに介護度が軽くなる。そんな不思議なケースもあります。

これは認知症の方の認定結果によく起こる例です。

例えば、今までは歩けたので夕方になると頻繁に徘徊してしまい、それを連れ戻すことが大変だったという方がいるとします。骨折をきっかけに歩けなくなり、寝たきりに。となると、徘徊することなども無くなり、介護の手間自体は少なくなります。

状態は悪くなっているのに、介護の手間が減るので、必然的に介護度が軽くなる。という場合もあるのが介護認定なのです。

繰り返しお伝えしますが、認定調査で調査する内容は「介護にかかる手間」です。調査の時に、どのくらい手間がかかっているのかを正しく伝えることができなかったために、思うような認定結果が得られません。
また、家族の目からは、「状態が悪化している」と見えていたとしても、介護の手間自体は増えていないという場合もあります。

客観的に、「介護の手間」という視点で見ることが必要かもしれません。

主治医の意見書は誰に書いてもらうのがいい?

認定調査だけでなく、主治医の意見書の内容も介護認定に影響します

今の状態を主治医が正しく把握できていない場合もあります。

ちなみに、大学病院や総合病院の先生が書いた意見書の方が、クリニックの先生が書いた意見書よりも価値が高く、介護度が上がりやすい、と信じている方々もいます。これは明らかに間違いです。町医者が書こうが、大学病院の院長が書こうが、医師の名前で介護認定が左右されることは絶対にありません。

ということで、今の状態を最も正確に理解できている先生に意見書をお願いすることをおすすめします。いろんな診療科にかかっていて、誰が主治医として適切か判断ができない場合は、今の生活に一番支障を及ぼしている疾患が何かを基準に考えましょう。例えば、膝の痛みで生活に支障が出ているのであれば整形外科の先生に、心不全による呼吸苦が問題なのであれば循環器の先生に意見書を書いてもらうといいでしょう。

介護認定に必要な主治医の意見書は、今の状態を一番よく知っている先生に書いてもらいましょう。一番実態をよく反映した内容の意見書をもとに審査会で検討されます。

要介護認定のメカニズムについて解説しました。

詳しくはこちらの記事にもまとめてありますのでご参照ください。

これを踏まえて、認定結果に不満がある場合はどうすべきか。次の章で具体策を提案します。

認定に納得ができない人がとるべき行動

介護認定区分変更の申請書
介護の認定が出たものの、結果に納得がいかない。この場合の対応策としては大きく3つ方法があります。

  • 区分変更申請をし、もう一度介護認定をやり直す
  • 都道府県に審査請求を行う
  • 新しい介護度をポジティブに受け入れる

ひとつずつ紹介します。

区分変更申請をし、もう一度介護認定をやり直す

やはり介護認定の結果が不満なので認定を変更してもらいたい、という場合は区分変更申請ができます。区分変更申請は市区町村の役所や地域包括支援センターで提出することができます。担当のケアマネジャーさんに代行申請をお願いすることも可能です。

区分変更申請を行うと、今の認定が破棄され、介護認定のプロセスをまた一からやり直すことになります。もちろん、認定調査もまた来ますし、主治医の意見書ももう一度作成する必要があります。

区分変更申請をしたからといって、思い通りの介護度が得られるかというと、そうではありません。介護度が上がらずに同じになることもあれば、さらに軽く判定される可能性もあります。

区分変更申請をする際には、希望通りの結果が出ないこともあることを理解した上で申請しましょう。

前回の認定調査で反映できなかった「介護の手間」があるか

区分変更申請をするべきか、迷う状況もあると思います。申請するかどうか、判断のポイントは、前回の認定調査で反映できなかった介護の手間があるかどうか、だと思います。

調査にもう一度来てもらっても、調査に対する回答が全く同じだったら、同じ内容の調査所が出来上がり、また同じ認定結果になってしまうだけです。

申請する際には、前回の認定調査で反映されなかった「介護の手間」がないか確認しましょう。

前回の調査では伝えることができなかったけれど、実はこんな変化があった、ということがあれば認定調査に反映させていくこともできるはずです。

  • 実は薬をちゃんと指示通りに飲んでいなかった
  • 本当はここ数週間お風呂に入っていないことがわかった
  • 認知症が進み被害妄想からご近所トラブルを起こしていることがわかった

介護の手間として、確実に認定調査に反映できるポイントがあれば、認定調査の結果は変わる可能性もあります。

介護の手間が増えたことを立証できる材料を集めることでより高い介護度を得ることができます。逆に言えば、そのような材料を集めることができなければ、時間や手間をかけて認定の区分変更申請をしたとしても結果は変わらない場合が多いです。注意しましょう。

もし調査の際に立会いができなかったのであれば次回は調査に立ち会うことも重要なポイントです。

担当のケアマネジャーとも相談を

区分変更申請を行うかどうかは、担当のケアマネジャーさんとよく検討しましょう。客観的な視点から、介護度が妥当なのかを判断してもらうことも必要です。ケアマネジャーはほかにも多くの利用者を担当していることから、状態像が介護度とマッチしているかどうか判断することもできます。

また、区分変更申請を行う場合は、サービス事業所との連絡調整が必要になる事や、介護報酬の請求に必要な書類作成にもかかわってきます。区分変更申請をしたい場合は、家族が提出するとしても、必ずケアマネジャーさんに相談・連絡しましょう。

都道府県に審査請求を行う

認定結果に納得がいかない場合、区分変更申請をするのではなく、都道府県に対して審査請求をすることも可能です。

審査請求は、市町村が行った行政処分によって自己の権利や利益を侵害された人が行うものです。原則として、処分があったことを知った日から三ヶ月以内であれば、都道府県に設置されている介護保険審査会に対して審査請求を行うことができます。

ただし、これは介護認定という処分の取り消しを求めるものであって、再認定を求めるものではないため、認定をやり直すことが目的であれば区分変更の申請をする方が確実です。

認定調査に誰も来ていないのに認定されていた、など、認定調査におけるプロセスに明らかな不正があった場合などは、この審査請求を行うことがあります。

新しい介護度をポジティブに受け入れる

ケアマネジャーとケアプランの相談
ここまで、想像する介護度が出なかった場合の対応策を紹介しましたが、認定の結果に対して対応せず、そのまま受け入れるという選択肢もあります。

介護度は高い方がいい、とは限りません。実は介護度が軽くなる事にもメリットはあります。介護度が軽くなることによって得られるメリットを2つ紹介します。

  • デイサービスやショートステイの利用料金が安くなる
  • 本人のモチベーションにつながる

デイサービスやショートステイの利用料金が安くなる

介護度が低い方が安く利用できるサービスもあります。デイサービスやショートステイなどがそれにあたります

デイサービスやショートステイは、介護度によって報酬単価が設定されています。介護度が高い方が、職員の手間も増えるので、報酬が高く設定されているのです。これは当然、利用する側の自己負担の金額にも影響します。つまり、介護度が高くなれば自己負担の金額が大きくなり、軽くなれば自己負担の金額も安くなるのです。

どのくらい違うかというと、デイサービス一回あたりの料金、要介護1であれば700円程度ですが、要介護2だと830円程度(地域やサービス提供時間によっても異なります)。介護度が1つ増えるごとに1回あたりの自己負担金額が100円以上高くなるのです。

一回当たりの料金
(1割負担)
一カ月あたり合計
週3回(13回利用)の場合
要介護1666円8,658円
要介護51162円15,106円
※地域加算なし デイサービス利用時間は8~9時間 加算や保険対象外料金(食費等)は含まないものとします

介護度が要介護5だったら、1回あたりの利用料金は1,200円程度になるので、要介護1とは500円以上の差があります。

1割負担ではなく、2割負担、3割負担となれば、介護度が1つ上がるだけで1回利用あたり200円、300円増えることになります。

極端な例で言うと、月に15回デイサービスを利用している方の介護度が1から5になった3割負担の方であれば、年間で自己負担の金額は30万円近く増える計算になります。

同じサービスを利用しているだけなのに、介護度が上がったというだけで自己負担が大幅に増えてしまうのです。

このように介護度が増えることで、サービスを利用する際のコストが増えてしまうデメリットがあります。

介護度が軽くなったとしても、今利用しているサービスが継続でき、自己負担が減るのであれば、むしろラッキーと考えることもできます。

介護の費用についてはこちらの記事でまとめていますのでご参照ください。

[介護にかかる費用が知りたい]

本人のモチベーションにもつながる

介護認定が軽くなることは本人のモチベーションにつながる場合もあります。

本人の気持ちになって考えてみましょう。一生懸命リハビリを続けているのに、認定結果が重くなったら、残念な気持ちになるのではないでしょうか。

逆に、認定が軽くなったのであれば、自分のリハビリの成果が目に見える結果となり、継続してリハビリをすることへのモチベーションにもつながります。

介護保険制度はお手伝いをすることを目的とした制度ではありません。自立支援のための制度です。介護にかかる手間が少なくなり、自立に向かって進んでいくことはむしろ歓迎すべきことととらえるべきでしょう。

このように、介護度が軽くなることによるメリットもあります。もちろん、今まで利用出来たサービスが利用できなくなる、といった直接大きなデメリットが発生する場合は検討する必要がありますが、そうでなければ新しくなった介護度をそのまま受け入れるのもひとつの方法です。

介護度が軽くなったことを悲観するのではなく、ポジティブにとらえることもできます。介護保険では7つの認定区分以外に非該当(自立)という認定もあります。自立を目指していくことは介護保険制度の目的でもあります。

今後、サービスがたくさん必要な状況になったらどうしよう、施設に入れなくちゃいけない状況になったらどうしようと、先の心配をする方も多いです。その時には、状況が変わったタイミングでいつでも区分変更申請をすることができます。区分変更申請をどのタイミングで行うか、ケアマネジャーと相談していくといいでしょう。

まずは担当のケアマネジャーに結果を報告し、どうするかを相談しましょう

まとめ

介護認定の結果はあくまで介護にかかる手間を判定したものにすぎません。介護の大変さや病気の重さ、本人のパーソナリティ、今後のリスクなどといったあらゆる要素を総合的に網羅したものではありません。

介護度が高いから、介護している人は大変というものでもなく、介護度が軽いから介護は楽というものではありません。

あまり介護度の数字にとらわれることなく、感情的に行動せず、まずは今必要なサービスが利用できるかを考えましょう。サービス利用や生活に支障が出るようであれば、ケアマネジャーと相談し、区分変更申請を行うことをおすすめします。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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