いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
介護認定を受けている高齢者が引っ越す場合、介護保険に関連する手続きやサービスの変更が発生します。引っ越し後に今までのように介護サービスが受けられなくなるのではないか、手続きが遅れてサービスに空白期間が生じるのではないかと、不安を感じているご家族も多いのではないでしょうか。
要介護2の夫と二人で暮らしているけれど、認知症が進んでしまって。私一人では大変だと娘に話したら、娘のところの近くに引っ越すことを提案してくれて、同じマンションで暮らすことになったんです。
でも、引っ越しの手続きは何をしたらいいかよくわからなくて。特に、今まで利用していた介護サービスと同じようにサービスが利用できないと、・・・不安です。介護度も今までの介護度と同じだったらいいけれど、介護認定はやり直すのかしら?
この記事では、高齢者を介護している家族の方を対象に、引っ越しに伴う介護保険の手続きや注意点について詳しく解説します。特に、要介護認定の引き継ぎ方法やサービス利用の注意点をまとめました。
【この記事を読んでほしい人】
- 引っ越しが決まり、何をしたらいいのか戸惑っている利用者や家族
- 担当利用者の転居が決まり、引き継ぎの準備をするケアマネジャー
- 転入の相談を受けて担当ケアマネの調整を行う地域包括支援センター
【この記事で伝えていること】
- 要介護認定は引っ越し先でもそのまま使えるのか?
- 必要な手続きとスムーズに進めるための準備。
- 住所地特例や住宅改修費の利用方法。
引っ越しに伴う介護関連の手続きは煩雑に思えるかもしれませんが、ポイントを押さえれば決して難しいものではありません。この記事を参考にして、スムーズに引っ越し手続きを進めましょう。
引っ越しと介護保険制度の基本知識
介護保険は、高齢者やその家族が介護を受ける際に利用する公的な制度ですが、介護保険は市区町村単位で運営されています。このため、引っ越しに伴い市区町村をまたぐ場合には、引っ越し前と引っ越し後で介護保険に関する情報を引き継ぐためにさまざまな手続きが必要となります。この章では、引っ越しと介護保険制度に関する基本的な知識を解説します。
介護保険制度の概要
介護保険制度は、高齢者が必要な介護サービスを受けられるよう、40歳以上の国民から保険料を徴収し、介護が必要になった際にサービスを利用できる仕組みです。介護保険は、利用者が住んでいる市区町村が保険者となって運営し、以下の役割を担います。
- 介護保険被保険者証(介護保険証)の発行・管理:各市区町村が担当。
- 地域密着型サービスや居宅介護支援事業所の指定:市区町村ごとに提供されるサービスが異なる場合がある。
- 認定調査:要介護認定も市区町村単位で実施される。
これらの仕組みにより、引っ越しに伴い住所が変わると、介護保険の保険者が変更になるため、介護保険の手続きも転出先で再び行う必要があります。
市町村(保険者)をまたぐ引越しをする場合、基本的な情報は引き継がれますが、被保険者番号もこれまで利用したサービスの実績などもクリアされ、まったく別の被保険者として扱われます。月途中の転居でも、サービス利用限度額は転出前の利用分はカウントされません。
転居前のA市のXさんと転居後のB市のXさんは別の人と扱われると理解しておくといいでしょう。
引っ越しにより手続きが必要なパターン例
介護保険は市区町村単位で管理されているため、特に以下の状況で手続きが必要です。
- 市区町村をまたぐ引っ越し
- 介護保険の被保険者証は転出元の市区町村で返却し、新しい市区町村で再発行を受ける必要があります。
- 要介護認定を受けている場合は、「介護保険受給資格証明書」を取得しておくことで、引っ越し先でもスムーズに認定が引き継がれます。
- 住所地特例対象施設への引っ越し
- 特別養護老人ホームなどの施設に入居する場合、引っ越し後も元の市区町村が保険者として管理を続ける「住所地特例」という仕組みが適用されます。
- この場合、被保険者証の返却や再発行は不要です。
- 同一市区町村内での引っ越し
- 住民票の住所変更手続きのみで対応できるため、介護保険の手続きは簡易的です。介護保険証は住所などが変更されて再発行されますが、被保険者番号や認定期間など、そのまま継続されます。
引っ越しに関する疑問
介護認定を受けているご家族の引っ越しでは、以下のような疑問が多く寄せられます。
- Q. 要介護認定は引っ越し後もそのまま使えるの?
- Q. サービスが受けられなくなることはあるの?
- Q. 手続きは複雑ですか?
この章では、介護保険が市区町村単位で運営されていることを中心に、引っ越しに伴う手続きの背景を説明しました。次は、具体的な必要手続きの流れについて解説します。
必要な手続きの流れ
介護認定を受けている高齢者が引っ越しをする際には、転出時と転入時のそれぞれで手続きが必要です。特に市区町村をまたぐ場合、現在の介護保険被保険者証を返却し、新しい自治体で新規発行を受けることになります。
また、引っ越し先で介護サービスを継続するためには、転出時に「介護保険受給資格証明書」を取得し、それを転入先の市区町村に提出する必要があります。この章では、転出時、転入時、それぞれの手続きの流れと、施設に入居する場合に適用される住所地特例について詳しく解説します。
転出時の手続き
まず、引っ越し元の市区町村では、現在の介護保険被保険者証を返却しなければなりません。介護保険被保険者証は、市区町村ごとに発行されるものであり、新しい市区町村で改めて発行を受ける必要があるからです。この手続きの際には、「介護保険受給資格証明書」を発行してもらうことが重要です。この証明書は、現在の要介護認定の区分(要介護度)を引っ越し先でそのまま引き継ぐための書類であり、引っ越し後の手続きをスムーズに進めるために重要です。
さらに、引っ越しをスムーズに進めるためには、現在のケアマネジャーへの連絡も忘れてはいけません。ケアマネジャーは、介護サービスを利用している高齢者にとって重要な役割を果たしており、ケアプランの作成や引き継ぎ書類の準備を依頼する必要があります。引っ越し後に新しいケアマネジャーとスムーズに連携を取るためには、この事前準備が欠かせません。
引っ越しが決まったらではなく、引っ越しの計画がある段階で現担当のケアマネジャーに早めに相談しましょう。ケアマネジャーを通して、各サービス事業所などに連絡を取り、引っ越しまでに必要なサービス調整を行います。
転入時の手続き
引っ越し先の市区町村においては、新たな介護保険被保険者証の発行手続きを行います。この際、転出時に取得した「介護保険受給資格証明書」を提出することで、現在の要介護認定がそのまま引き継がれます。手続きは市区町村の介護保険窓口で行うのが一般的であり、住民票の登録後、速やかに手続きを行いましょう。
基本的には住民票の手続き後に、そのまま健康保険や介護保険窓口に順に案内されます。指示に従って手続きを進めていけば問題ありません。
また、転入後は新しいケアマネジャーを選任する必要があります。転入先の地域包括支援センターや介護保険窓口で相談することで、地域に適したケアマネジャーを紹介してもらえます。新しいケアマネジャーと最初の面談を行い、現在の介護状態や必要なサービスについて詳しく話し合うことで、引っ越し後の介護サービスが途切れることなく利用できるようになります。
住所地特例の手続き
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、特定の施設に入居する場合には「住所地特例」が適用されます。住所地特例とは、転出先の市区町村に住民票を移しても、元の市区町村が引き続き介護保険の保険者となる仕組みです。この特例は、施設入居者が介護サービスを安定して受けられるように設けられています。
住所地特例の適用を受けるためには、転出時に「住所地特例適用届」を提出する必要があります。この手続きによって、住民票を移しても現在の介護保険制度がそのまま継続されるため、特例の適用を希望する場合には忘れずに手続きを行いましょう。ただし、この特例は施設内で提供されるサービスに適用されるものであり、訪問介護やデイサービスなどの地域密着型サービスについては、転出先の自治体で新たに契約する必要がある場合があります。
手続きをスムーズに進めるためのポイント
転出と転入、それぞれの手続きには期限があります。特に、転入手続きは引っ越し後14日以内に完了させる必要があり、この期間を過ぎると、再度要介護認定の新規申請が必要になる可能性があります。そのため、引っ越しの日程が決まり次第、早めに転出・転入手続きを進めることが重要です。
引っ越しに伴う手続きは複雑に思えるかもしれませんが、転出元と転入先の自治体、そしてケアマネジャーと連携を取ることでスムーズに進めることができます。特に、必要書類や手続きのフローを事前に確認しておくことで、無駄なく手続きを進められるでしょう。
以上で、引っ越しに伴う手続きの流れについて解説しました。次は、要介護認定の引き継ぎや注意点について詳しく見ていきます。
要介護認定の取り扱いと注意点
要介護認定を受けている高齢者が引っ越しをする際には、転出先の自治体でどのように認定が引き継がれるのかが重要なポイントとなります。この章では、認定の引き継ぎ方法や引っ越し後の有効期間、スムーズな手続きのための注意点について解説します。
要介護認定の引き継ぎの仕組み
介護保険制度では、要介護認定が市区町村単位で管理されていますが、引っ越しをした場合でも現在の要介護度をそのまま引き継ぐことができます。これを可能にするのが、「介護保険受給資格証明書」です。
この証明書には、現在の要介護度や認定の有効期間が記載されており、転入先の自治体で新しい介護保険被保険者証を発行してもらう際に必要となります。引っ越し後も同じ要介護認定区分でサービスを継続して利用するためには、転出時にこの証明書を必ず取得する必要があります。
転出先の市区町村は、転出元の認定結果をそのまま引き継ぎ介護保険の管理を行います。この仕組みにより、もともと要支援1であれば要支援1に、要介護5なら要介護5で認定が引き継がれます。通常は再認定や追加の手続きが発生することはありません。
引っ越し後の認定有効期間
引っ越し後の要介護認定の有効期間は、原則として6カ月に設定されます。このように短期間で設定されるのは、転入先の自治体が被保険者の状況を把握し、適切なサービス提供を行うための猶予期間という意味合いもあります。有効期間が終了する前に、更新手続きを行う必要があります。
更新手続きには、更新のための認定調査を受けるほか、主治医意見書の提出が求められる場合があります。このため、転居後は速やかに新しいかかりつけ医を探し、意見書を準備できる体制を整えることが重要です。特に、転居先で適切な医療機関を見つけるのに時間がかかると、更新手続きが遅れ、介護サービスの利用が一時的に中断するリスクがあるため注意が必要です。
スムーズな手続きのためのポイント
引っ越しに伴う手続きをスムーズに進め、介護サービスの中断を防ぐためには、以下の準備が重要です。
- 転出前に「介護保険受給資格証明書」を取得する 転出元の市区町村で発行されるこの証明書がなければ、転入先での手続きが進められません。必ず事前に手続きを済ませ、必要書類を確保しておきましょう。
- 転入後14日以内に手続きを行う 住民票の登録を済ませた後は、速やかに転入先の市区町村で介護保険の手続きを行いましょう。被保険者証が発行されれば、サービスの利用が再開できます。
- 新しい主治医を早めに探す 認定の更新時には主治医意見書が必要となるため、引っ越し後はできるだけ早く信頼できるかかりつけ医を見つけましょう。地域包括支援センターや自治体の窓口で紹介を受けることも可能です。
- 認定有効期間を確認する 有効期間が短い場合は、更新手続きの準備を余裕を持って開始してください。自治体からの通知を見逃さないように注意が必要です。
注意点まとめ
引っ越し後の要介護認定や介護サービスの利用においては、次の点に注意が必要です。
これらの手続きを計画的に進めることで、引っ越し後も安心して介護サービスを利用できる環境を整えることができます。
次の章では、引っ越し後の介護サービス利用の注意点について詳しく解説します。
サービス利用に関する注意点
介護保険のサービスは、要介護認定が引き継がれることで引っ越し後も継続して利用することが可能ですが、提供されるサービスの内容や条件は地域によって異なる場合があります。例えば、転居前の地域では看護小規模多機能のサービスを利用できたが転居後の地域にはないという場合や、お泊り対応が可能なデイサービスが近くにないなど、希望サービスを利用できない場合があります。
特に、地域密着型サービスの取り扱いや、ケアマネジャーの変更に伴う対応については注意が必要です。この章では、引っ越し後のサービス利用における重要なポイントを詳しく解説します。
地域密着型サービスの取り扱い
地域密着型サービスとは、利用者が住む地域に限定して提供される介護サービスのことを指します。代表的なものとして、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が挙げられます。これらのサービスは、提供地域が利用者の居住地と密接に関連しているため、市町村をまたぐと引っ越しに伴い原則として利用が継続できなくなります。
引っ越し前の市区町村で利用していた地域密着型サービスは、基本的には引っ越し先では利用できません。転居先で同様のサービスを探し、新たに契約する必要があります。引っ越し前に地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談し、引っ越し後のサービス提供事業所を事前に調べておくことが大切です。
特に、引っ越し後すぐにサービスを利用する必要がある場合は、早めに新しい事業所との契約を済ませるようにしましょう。手続きに時間がかかることもあるため、余裕を持った準備が必要です。
ケアマネジャーの変更について
引っ越しに伴い、ケアマネジャーも変更になる場合がほとんどです。ケアマネジャーは、要介護者が利用するサービスの調整やケアプランの作成を行う重要な存在です。新しい地域で適切なサービスをスムーズに利用するためには、ケアマネジャーの変更に伴う引き継ぎが円滑に行われることが重要です。
引っ越し前のケアマネジャーには、事前に転居の予定を伝え、引き継ぎ書類の作成を依頼しましょう。この引き継ぎ書類には、現在のケアプラン、アセスメント情報、直近のサービス利用票などが使われます。これがあることで、転居先のケアマネジャーが状況を正確に把握し、適切なサービスを調整することが可能になります。
新しいケアマネジャーを選任する際には、転入先の地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談するのがおすすめです。地域の情報に詳しい担当者から、信頼できるケアマネジャーや介護事業所を紹介してもらうことで、スムーズな対応が期待できます。
サービス利用が中断しないための対策
引っ越しに伴う手続きや調整が遅れると、一時的に介護サービスが利用できなくなるリスクがあります。このような事態を避けるためには、以下の点に注意してください。
まず、転入後14日以内に住民票を移し、介護保険被保険者証の発行手続きを済ませましょう。この手続きを完了させることで、正式に転入先での介護サービス利用が可能になります。また、引っ越し前から転入先で利用できるサービスや事業所について情報を収集し、事前に予約や契約を進めておくことが重要です。
さらに、一部の自治体では、正式な手続きが完了するまでの間、暫定的に介護サービスを利用できる制度を設けている場合があります。転入先の市区町村窓口で確認し、必要に応じて利用することで、サービスの中断を防ぐことができます。
地域独自の介護サービスの活用
引っ越し先の自治体によっては、介護保険のサービス以外にも独自の支援プログラムや補助制度を提供している場合があります。例えば、紙おむつの給付や、食事配達サービス、緊急通報システムなどが該当します。これらのサービスは市区町村ごとに異なるため、転入後に自治体の福祉課や担当になるケアマネジャーに問い合わせて、利用可能な制度を確認しましょう。
介護保険サービスを利用していない場合
介護保険サービスを利用していない場合についても解説します。
転居後すぐにサービスを利用するということでなければ、ケアマネジャーについてもらうことも必要ないので、認定を維持していくためにまずはかかりつけの病院を決めましょう。サービス利用していない場合も認定期間は基本6ヵ月で発行されます。
また、サービスが必要になったときや生活上に何か問題があった場合のために、地域包括支援センターの場所や連絡先だけはあらかじめ確認しておくといいでしょう。
家族の協力とサポートの重要性
引っ越し後の介護サービスの手続きや調整には、家族の協力が欠かせません。特に、手続きが完了するまでの間は、家族が介護を代わりに対応すること想定しておく必要があります。また、地域包括支援センターや自治体の相談窓口を活用し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、要介護者本人にも安心感を与えることができます。
引っ越し後の介護サービス利用においては、地域密着型サービスやケアマネジャーの変更が大きなポイントとなります。これらの手続きや調整をスムーズに進めるためには、事前準備と迅速な対応が求められます。家族や地域包括支援センターのサポートを受けながら、安心して新しい環境での介護サービスをスタートできるよう計画を立てましょう。
住宅改修費の利用について
介護保険制度では、要介護認定を受けている方が住環境をバリアフリー化するために利用できる「住宅改修費の支給」という制度があります。この仕組みは、要介護者が安全で快適に暮らせるよう住環境を整えることを目的としています。引っ越しをした場合、この制度の利用にどのような変化があるのか、また手続きの際の注意点について詳しく解説します。
住宅改修費制度の基本
住宅改修費は、介護保険を利用して以下のような住宅改修を行う際に支給されます:
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくい床材への変更
- 開き戸を引き戸に変更する
- 和式便器から洋式便器への変更
支給限度額は20万円であり、この限度額内であれば自己負担割合(1~3割)に応じた金額で工事を行うことができます。ただし、限度額を超える部分は全額自己負担となります。
詳しくはこちらの記事にまとめています。
引っ越し後の住宅改修費のリセット
市区町村が異なる場所に引っ越した場合、介護保険の保険者が新しい市区町村に切り替わります。この際、以前の市区町村で住宅改修費を限度額(20万円)まで利用していた場合でも、新しい市区町村では再び20万円の枠が復活します。つまり、引っ越し先で再度住宅改修費を利用できるため、新しい住居でも必要な改修を行うことが可能です。
例えば、以前の住居で段差の解消や手すりの設置に20万円分を使い切っていた場合でも、転入先の住居で同様の改修が必要であれば、新たに20万円分の支給を受けることができます。
また、住宅改修に関しては市町村の移動が伴わなくても引っ越しをすれば20万円がリセットされます。生活環境が変わればまた新しい環境における課題があります。そのため、環境に応じて新たに住宅改修費を利用できる仕組みとなっております。これは一般的に「転居リセット」と呼ばれます。
よくある質問(Q&A形式)
介護認定を受けている高齢者が引っ越しをする際には、多くの疑問が生じるものです。この章では、読者の皆様が抱きやすい疑問に対して、分かりやすく回答します。具体的なケースに基づいたアドバイスを交えながら、安心して引っ越しを進められるよう解説します。
- Q引っ越し前に準備しておくべきことは何ですか?
- A
引っ越し前には、次の手続きを事前に進めておくことが重要です。
- 介護保険受給資格証明書の発行
- 転出元の市区町村で「介護保険受給資格証明書」を発行してもらいます。この証明書がないと、転入先での手続きがスムーズに進みません。
- ケアマネジャーへの引き継ぎ依頼
- 引っ越し前のケアマネジャーに転居予定を伝え、引き継ぎ書類の作成を依頼します。この書類には、これまでのケアプランや利用していたサービスが記載されます。
- 転居先の情報収集
- 転居先の地域包括支援センターや介護保険窓口に事前に相談し、利用可能なサービスや事業所を確認しておきましょう。
- 介護保険受給資格証明書の発行
- Q引っ越し後すぐに介護サービスを受けられますか?
- A
転入先での介護サービス利用は、転入手続きが完了し、新しい介護保険被保険者証が発行されてから可能になります。そのため、引っ越し後14日以内に住民票の登録を済ませ、介護保険窓口で手続きを行う必要があります。
また、転入後すぐにサービスが必要な場合は、転出前から転入先のサービス事業所と連絡を取り、利用契約を準備しておくとスムーズです。一部の自治体では、手続きが完了するまで暫定的にサービスを提供する制度があるため、事前に確認しておくと安心です。
- Q住所地特例とは何ですか?
- A
住所地特例とは、特定の介護施設(例:特別養護老人ホームや介護老人保健施設)に入居する場合に適用される制度です。この制度が適用されると、引っ越し先の市区町村ではなく、元の市区町村が引き続き保険者として介護保険を管理します。
この制度により、施設入居後も介護サービスの内容や利用条件が変わらないよう配慮されています。ただし、住所地特例の適用を受けるには、転出時に「住所地特例適用届」を提出する必要があります。
- Q引っ越し先でケアマネジャーをどう選べば良いですか?
- A
引っ越し先でのケアマネジャー選任は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談するのが最もスムーズです。相談員が地域に詳しいケアマネジャーや信頼できる事業所を紹介してくれます。
引っ越し前に引き継ぎ書類を用意しておけば、転入後のケアマネジャーが迅速に対応できます。最初の面談で要介護者の状況や希望するサービスについて詳しく伝えることで、適切なケアプランの作成が期待できます。
- Q認定更新が近い場合、引っ越し後にどう対応すれば良いですか?
- A
引っ越し前に認定更新期限が迫っている場合でも、引っ越し後には有効期間もいったんリセットされます。なので、引っ越しの日までに有効期間が残っていれば問題ありません。引っ越し後の要介護認定の有効期間は、通常6カ月に設定されることが多いです。この間に状況に変化がない場合でも、認定更新の際には主治医意見書が必要となります。
引っ越し後は早めにかかりつけ医を見つけ、意見書を作成してもらえる準備を進めましょう。地域包括支援センターや自治体窓口に相談すれば、適切な医療機関を紹介してもらうことも可能です。
- Q車いすなどの福祉用具をレンタルしていますが、これは引っ越し先にそのまま持って行ってもいいですか?道中も使うかもしれないので。
- A
基本的には転居前の福祉用具は終了して、転居先の地域のレンタル事業所からまたレンタルをする形になります。今利用しているものと同じものを利用するか、それとも環境に合わせて違う商品を利用するかは、転居先のケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談してください。
また、引っ越しの移動の際に使いたいという希望については、近隣であれば転居元の業者が転居後の自宅に回収することなどもできると思いますが、距離が遠い引っ越しになると改修することが難しくなります。転居前と転居後、同じ法人の福祉用具事業者に相談しても難しい場合が多いです。なので、道中でも使う場合は、車いすを用意してくれる介護タクシーなどを利用するか、転居後に車いすを返却に転居前に利用していた福祉用具業者に届けることが必要になります。
- Q何か引っ越しの時に用意しておいた方がいいものってありますか?
- A
転居後に、「あれがない」「これがない」というのはよくある話です。とりあえず介護のために必要なものを分けておくといいでしょう。紙おむつなど必要な介護用品はもちろん、食事に使うものなど、生活に直接必要なものは分けておくことをお勧めします。
あとは困ったときの連絡リストは整理しておきましょう。特に、何が起こるかわからないので、緊急時対応などをお願いする可能性のある訪問看護や定期巡回随時対応型訪問介護看護、小規模多機能などのサービスの利用予定がある方は早めに契約・初回サービス利用をしましょう。通常、初回サービス利用がないと緊急対応のサービスを利用できません。緊急対応が予想される場合は、引っ越し当日に担当者会議・初回サービス利用を予定しておくのが安全です。
- Q父が認知症なんですが、引っ越しをすると混乱するというので心配です。
- A
引っ越しなどで環境が変わると認知症の方は混乱するというのはまさしくその通りです。自分はどこに来てしまったのだろうと不安になってしまいます。なので、まずは自分の居場所であることを認識できるように、思い入れのあるものなどを身近に置いておくことも大事です。
あとはトイレの場所がわからないことなどもあるので、トイレの場所がわかるようにトイレの扉に大きく「トイレ」と書いておくことや、トイレまでの廊下の動線を明るくしておくことも効果的です。
引っ越しに伴う手続きや対応は、多くの不安や疑問が生じるものですが、事前の準備と計画的な対応で多くの課題は解決できます。この章で取り上げた質問と回答を参考に、安心して引っ越しの準備を進めてください。次の章では、引っ越し手続きの総まとめとチェックリストをお届けします。準備が整いましたらお知らせください!
失敗しないためのチェックリスト
引っ越しに伴う介護保険の手続きや準備は、複雑に感じるかもしれませんが、ポイントを押さえて進めればスムーズに対応できます。この章では、引っ越しを成功させるために必要な準備事項を「転出前」と「転入後」に分けてチェックリスト形式で解説します。必要な手続きを見逃さずに進めるため、ぜひ活用してください。
転出前にやるべきこと
1. 介護保険受給資格証明書の取得
- 転出元の市区町村で必ず「介護保険受給資格証明書」を発行してもらいます。この書類がないと、転入先での手続きが進められません。
2. ケアマネジャーへの連絡と引き継ぎ依頼
- 引っ越し前のケアマネジャーに転居予定を伝え、ケアプランの引き継ぎ書類を作成してもらいましょう。サービス内容や利用状況を正確に引き継ぐための重要なプロセスです。
3. 転居先の情報収集
- 転居先で利用可能な介護サービスや事業所を事前に調べます。地域包括支援センターや自治体の窓口に相談し、利用予定の事業所をリストアップしておくとスムーズです。
4. 主治医の意見書を準備
- 認定更新が近い場合は、転居前に主治医意見書を取得しておくと、転入後の手続きがスムーズになります。
5. 住宅改修の必要性の確認
- 転居先の住居でバリアフリー改修が必要な場合、改修箇所を確認し、ケアマネジャーや市区町村に相談しておきましょう。
転入後にやるべきこと
1. 住民票の登録
- 引っ越し後、速やかに住民票を転入先に登録します。この手続きが完了しないと、介護保険被保険者証の発行が行えません。
2. 介護保険被保険者証の取得
- 住民票登録後に転入先の市区町村で介護保険被保険者証を発行してもらいます。この被保険者証がなければ介護サービスの利用が開始できないため、最優先で手続きを行いましょう。
3. 新しいケアマネジャーの選任
- 地域包括支援センターや市区町村の窓口で、新しいケアマネジャーを選任します。引き継ぎ書類を活用し、スムーズなケアプランの移行を目指します。
4. 必要な介護サービスの契約
- 転入先で利用する介護サービスの事業所と契約を結びます。転居前に予約や相談を進めておくと、サービス開始までの時間を短縮できます。
5. 住宅改修費の申請
- 必要に応じて、転入先の市区町村で住宅改修費の事前申請を行います。改修工事は申請が承認されてから始めることが原則です。
6. 主治医の選定
- 転居先で信頼できるかかりつけ医を探します。主治医意見書が必要な場合もあるため、早めの準備が重要です。
特に注意すべきポイント
- 手続きのタイムラインを守る
- 転入手続きは引っ越し後14日以内に行うことが法律で定められています。この期間を過ぎると、介護保険の利用開始が遅れるリスクがあるため注意してください。
- 書類の不備を防ぐ
- 受給資格証明書や主治医意見書、住民票などの必要書類が揃っていないと、手続きが中断する可能性があります。事前にリスト化し、確認を怠らないようにしましょう。
- 地域包括支援センターの活用
- 地域包括支援センターは、転居後のケアマネジャーや医療機関選定の相談に応じてくれる心強い存在です。分からないことがあれば早めに相談しましょう。
まとめ
介護認定を受けている高齢者の引っ越しは、事前準備と手続きをしっかり行うことでスムーズに進めることができます。
新しい生活には不安だけではなく、新たな生活のスタートでもあります。今回紹介した内容をしっかり押さえれば安心して新しい環境での生活をスタートできます。ぜひご活用ください。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)
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