いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
「介護業界は離職率が高い」と言われることがあります。
実際はどうなのでしょうか。介護保険サービスの利用者様のご家族よりこのような質問をいただいています。
ヘルパーさんに来てもらっていて、せっかく慣れたと思ったのに、今月で仕事を辞めると言われました。なんで辞めるのか聞いてもはっきり入ってもらえなかったし。別の人が来てくれるって言うけれど、やっぱり慣れた人がいなくなるのは寂しいし、お互いに戸惑ってしまう。
今回が初めてじゃないんです。特にうちの主人は気難しいので、関係性を作るのに時間がかかるみたい。できるだけ同じ人に来てもらうことはできないのかしら。
利用する側としたらずっと同じ人に来てもらいたいですよね。でも担当の介護職員やヘルパーさんの離職・退職はよくあることです。介護職員の離職率は本当に高いのか、また、どうして介護職員は退職するのか、その傾向も含めて説明できればと思います。
【この記事をお勧めしたい人】
- 担当していた介護職員さん・ヘルパーさんが退職することを聞いた方
- 新しい担当者との関係づくりをしていきたい利用者様・家族様
- 介護職員の離職理由について知りたい介護職員・事業所管理者・運営者
【この記事でお伝えしていること】
- 介護職の離職率の高さと全産業平均との比較
- 介護職員の離職理由
- 新しい担当者との関係を作るためのポイント
介護職員の離職率について
介護職の離職率は14.3%
介護職員の離職率については、介護労働安定センターが介護労働実態調査という調査で数字を公表しています。
令和3年度調査が最新ですが、1年間の離職率は14.3%となっています。
この数字が高いか低いかというと、全産業平均の離職率と比較してみます。
令和3年度の雇用動向調査で見ると、離職率は13.9%です。業種別でみると、離職率が高い順に「宿泊業・飲食サービス業」や、「生活関連サービス業・娯楽業」、「その他サービス業」「教育・学習支援業」があって、その次に「医療・福祉」となっています。
このような状況から考えると、必ずしも介護職の離職率が高いとは言い切れないと思われます。それでも、終身雇用が一般的だった世代の方から見れば、介護職の離職率は高いと感じてしまうのかもしれません。
ちなみに介護サービス種別ごとに見ると、最も離職率が高いのが特定施設(有料老人ホーム等)でした。訪問介護は14.4%となっていました。
介護職の離職理由 トップ5
「なんで辞めちゃうの?」と聞いても、本当のことを隠さず教えてくれる介護職はあまりいないと思います。
一般的にどのような理由で退職するのか。介護職の離職理由について、介護労働安定センターの調査で公表されています。
離職理由 | 割合(複数回答あり) |
---|---|
職場の人間関係に問題があったため | 27.5% |
法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため | 22.8% |
他に良い仕事・職場があったため | 19.0% |
収入が少なかったため | 18.6% |
自分の将来の見込みが立たなかったため | 15.0% |
介護職の離職理由は多岐にわたりますが、主な要因は以下の通りです。
- 職場の人間関係に問題があったため(27.5%): 職場の人間関係が円滑でないことは、介護職員にとって大きなストレス要因です。コミュニケーションの不足や不適切な上下関係、チーム内の対立などが、離職の主な理由となっています。
- 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(22.8%): 介護職員は、自らが働く組織や施設の理念や運営方針に共感することが重要です。これらに不満を持つ場合、職場へのモチベーション低下や離職につながる可能性が高まります。
- 他に良い仕事・職場があったため(19.0%): 他の業種や職場に魅力を感じ、そちらへの転職を選択するケースも多いです。特に、労働条件や給与面での改善が見込める場合には、離職率が上昇する傾向があります。
- 収入が少なかったため(18.6%): 介護職は、その負担とリスクに比べて報酬が低いと感じることがあります。経済的な不安や生活の安定を求めて、収入が増える他の職種への転職を選択するケースがあります。
- 自分の将来の見込みが立たなかったため(15.0%): 将来のキャリアパスや成長の見込みが不透明であると感じると、職場へのコミットメントが低下し、離職の理由となります。介護職員は、自己実現やキャリアの発展を求めることもあります。
それぞれに様々な理由があって退職という選択をしていることがわかります。以前は、腰痛などの体調不良で退職する介護職員も多かったのですが、腰痛予防のための介護技術が浸透したことや、「持ち上げない」ノーリフティングケアなどが広がったことで、その割合は減りつつあるようです。
介護職が仕事に求めるもの
介護職員の離職理由を見ると、介護職員が何を重視しているのかを知ることができます。介護職員が仕事・職場に求めるものが以下のようなものであることがわかります。
- 人間関係の重要性: 介護職は、チームでの連携や利用者・家族とのコミュニケーションが欠かせません。そのため、職場の人間関係が良好でない場合、ストレスや労働満足度の低下につながります。介護職の特性として、人間関係の構築と維持が重要であることが浮かび上がります。
- 理念や運営方針への共感: 介護職は、利用者の生活や安全を支える使命感を持って働いています。そのため、施設や事業所の理念や運営方針に共感できない場合、モチベーション低下や離職という結果に繋がります。介護職の特性として、使命感や倫理観が強く求められることが分かります。
- 他の職場への転職動機: 介護職は身体的・精神的な負荷が大きい一方で、報酬や労働条件が不十分であると感じることがあります。そのため、他の職場や業種への転職を選択する動機が強くなります。介護職の特性として、負担と報酬のバランスが求められることが明らかになります。
- 将来の不透明感: 介護職員は、自分のキャリアパスや将来の見通しに不透明感を感じることがあります。介護職の特性として、職業の安定性や成長性が十分に提供されていない場合、離職率が上昇する傾向があります。
このような傾向が読み取れます。介護職は使命感や倫理観、コミュニケーション能力などが求められる一方で、報酬や労働条件、将来のキャリアパスに関する不安が離職率を高める要因となっていることがわかります。
退職後も資格取得や将来性の豊かな職場に移ることでステップアップしていく方が多いです。必ずしも後ろ向きな理由だけで退職するわけではありません。寂しい気持ちもあると思いますが、新たなステージで活躍することを願い、エールを送りましょう。
新しい介護職員・ヘルパーとの関係づくりのポイント3つ
介護職員・ヘルパーとの関係性を深める
ずっとヘルパーさんは同じ人がいいな。と思っていても、別れは必ずやってきます。
それでも、在宅介護は続いていきます。新しい担当者と慣れるまでは時間がかかるかもしれません。でも、慣れるまでの時間を短くしていくことはできます。こんな工夫をすると関係性が深まり、安心して介護を受けることができます。
- オープンなコミュニケーション:
- 新しい担当者とのコミュニケーションを大切にしましょう。自分の気持ちやニーズを素直に伝えることで、お互いの理解が深まります。やはり言葉にしないとわからないことはたくさんあります。言いにくいこともあるかもしれませんが、こうしてほしい、こうされると困る、という点は早めに伝えておくといいでしょう。
- 共通の話題を見つける:
- 趣味や興味を共有することで、気軽な雰囲気を作り出すことができます。共通の話題を見つけると、関係がより深まります。好きな芸能人やよく見るテレビ番組、好きなスポーツなど。ただ、プライベートの話をしたがらない介護職員さんもいますので、あまり深く突っ込みすぎない程度がいいでしょう。
- 感謝を言葉で表す:
- 介護職員やヘルパーさんが行ったことに対して感謝を伝えることで、関係性を強化できます。言葉の力はとても大きいです。仕事だと言っても、やっぱり感謝の言葉があると嬉しいものです。
利用者と介護職・ヘルパーさんとの間で温かく信頼できる関係が築かれると、安心して介護を受けることができるようになります。
離職率の少ない事業所を選ぶ
新しくサービスを利用するときなど、事業所を選択する場面があります。その際に、離職率の高い事業所を避けるということもできます。
介護サービス情報公表システムというサイトから、事業所ごとに離職率を確認することができます。最近の離職率が高い事業所を避け、最近の離職率が低く、長く勤務している職員の多い事業所にする、というのもひとつの方法かもしれません。
事業所の選び方、ケアマネジャーの選び方については以下の記事を参考にしてください。
まとめ
まとめると、介護の離職率は他の産業に比べて、特別に高いというわけではありませんが、介護人材は今や引く手あまたなので、転職の選択肢は大きく広がっています。向上心のある優秀な介護職員や、現状に不安や不満を抱えている介護職員は次のステップにと、転職する方も少なくありません。様々な理由はありますが、職場内の人間関係など、働きやすい環境を求める傾向があります。
ずっと同じ職員でお願いできればいいのですが、同じ職員でずっと対応してもらうということはできません。
別れは寂しいことですが、新しい方ともいい関係を作っていくことで、在宅での暮らしを続けることが大切です。いいケアはいい関係から生まれます。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)
コメント