介護保険ではさまざまなサービスメニューがあります。メニュー名を羅列されても、どんなサービスなのか、どんな人に適したサービスか、どのくらいの費用がかかるのか、わからないことだらけです。
在宅介護のサービスについて、わかりやすく紹介していきます。
介護給付と予防給付
介護度によって使えるサービスが異なる
介護保険の在宅サービスは、介護給付と予防給付に分かれます。介護給付を利用するのは介護認定で要介護1~5で認定された人が利用するサービスです。予防給付は要支援1・2と認定された人が利用するサービスです。
要介護と要支援。認定の結果によって、使えるサービスが異なります。レストランに入ったら、通常同じメニュー表が渡されると思いますが、介護保険では要介護と要支援という認定のランクにより選ぶメニュー表が異なるということです。要支援の人が利用できないサービスもあるということを覚えておきましょう。
介護給付とは
介護給付は要介護の認定を受けた方が利用できるサービスです。
給付と言っても、利用者がお金をもらえるわけではありません。介護保険サービスは現物給付というシステムになっています。利用者は、サービス事業者から介護サービスという現物を受け取り、利用者は所得に応じて1割から3割の自己負担分を事業者に支払います。残りの分を事業者は介護保険に請求し、介護報酬として事業者に支払われるという仕組みになっています。
介護給付のサービスは居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成するケアプラン(居宅サービス計画書)に基づき提供されます。ケアマネジャーは毎月、サービスの提供状況を確認し、給付額等の実績報告を行います。
予防給付とは
要支援の方が介護保険サービスを利用する場合、サービスメニューの前に「介護予防」という名称が付きます。「介護予防福祉用具貸与」「介護予防訪問看護」などの名称でサービスが提供されます。
要支援でも要介護でも単位数(料金)が同じなのは、福祉用具貸与や住宅改修・居宅療養管理指導のサービスのみで、他のサービスは要支援の方が単価は安くなります。また、要支援の場合、料金体系が一か月定額料金設定になるサービスも多いです。
要支援の場合、訪問介護・通所介護(デイサービス)・地域密着型通所介護(小規模事業所のデイサービス)は介護保険サービスとしてではなく、市町村が管轄する介護予防・日常生活支援総合事業における介護予防生活支援サービスとしてサービス提供されます。介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村が定める基準・報酬により、介護保険指定事業所以外の多様な担い手が主体となりサービスを提供できる制度です。介護保険の財源に限りがあるため、介護予防訪問介護・介護予防通所介護は市町村の事業に切り離したという意向のもと、総合事業として市町村に移管したというのが経緯になります。
予防給付や介護予防・日常生活支援総合事業では、居宅介護支援事業所のケアマネジャーではなく、地域包括支援センターの職員が作成する計画(介護予防サービス計画:介護予防ケアプラン)に基づいてサービスが提供されます。地域包括支援センターから委託という形で居宅介護支援事業所が請け負い、ケアマネジャーが介護予防サービス計画を作成する場合もあります。
ケアマネジャーと相談する
適切な介護サービスを利用するためには、ケアマネジャーの存在が欠かせません。どのようなサービスを利用すればいいのか、どのようなサービスを利用できるのか。ケアマネジャーがその状況に応じた適切なサービスを提案、サービス事業所の情報も提供してもらうことができます。
居宅介護支援事業所と契約
ケアマネジャーに相談するためには、まずはケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所と契約する必要があります。ケアマネジャーによる相談や計画作成、サービス調整など一連のサービスには自己負担がかからず、全額介護保険によって給付される仕組みになっています。
ケアマネジャーの事業所選びに迷ったら、まずは地域包括支援センターに相談しましょう。地域のケアマネジャーの情報に詳しく、要望に合わせてケアマネジャーを紹介してくれます。
必要なサービスを組み合わせる
介護保険には様々なサービスがあります。選べるサービスメニューはひとつだけではなく、必要なサービスを組み合わせることができます。基本的には週間スケジュールを利用者(と家族)・ケアマネジャー・サービス事業所とで調整して、計画的にサービスを利用します。
月曜日と木曜日はデイサービス、水曜日は訪問介護と訪問リハビリ、金曜日は訪問看護で、火曜日に通院、などのように一週間の基本スケジュールを決めてそれに合わせてサービスが動きます。
では、次の章から具体的なサービスの内容について説明していきます。
在宅で利用できる介護保険サービス
在宅で利用できるサービスについて紹介します。サービスの種類を「自宅で利用する」「通いで利用する」「短期入所を利用する」「訪問・通所・泊りを1つの施設で利用する」「介護の環境を整える」という5つに分類しました。いずれも介護保険が適用され、利用料は所得に応じて1割から3割の自己負担金となります。
地域によってはそのサービスを提供している事業所が存在しない場合もありますので、利用に関しては担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。
サービスの特徴と、どんな人が利用するのに適しているかを紹介します。
自宅で利用する
まず紹介するのは自宅で利用するサービスです。介護サービスを提供する職員が自宅を訪問し、サービス計画に沿ったケアを提供します。自宅で利用するサービスには以下の7種類があります。
1つずつ、サービスの内容を解説します。
訪問介護
訪問介護は利用者の自宅を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問し、ケアを提供するサービスです。
ケア内容は大きく分けて2種類。
・ 食事や排せつ・入浴などの身体的なケアを行う「身体介護」
・ 調理・洗濯・掃除などの家事を提供する「生活援助」
ケアの種類によって、利用料金が異なります。身体介護に続けて生活援助を行うなど、ケア内容を組み合わせることも可能です。
介護保険サービスとして提供できない内容もあります。床ずれなどの傷を処置する医療行為や、同居家族分の食事作りなどは保険の対象外となります。
他にも、通院等で外出する際に車両への乗降介助を行う「通院等乗降介助」というメニューもあります。
訪問入浴介護
訪問入浴介護は、看護師と介護職員が基本3人1組となって自宅を訪問し、事業者が持参した浴槽で入浴介助を行うサービスです。
自宅での入浴が困難な方が対象のサービスです。スタッフは浴槽を車両に積んで移動、車両にはボイラーがついており、ボイラーで沸かしたお湯を自宅に供給して入浴をします。体調不良などから入浴が困難な場合は、部分浴や清拭にすることが可能です。
事業所によって加算が異なりますが、入浴1回あたり1,260円が基本料金となります。
訪問看護
自宅を看護師もしくは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリテーションスタッフが訪問するサービスが訪問看護です。
主治医からの指示に基づき、定期的に看護師が自宅を訪問し、健康に関する相談・指導、療養上の世話などを行います。床ずれの処置や、たん吸引、点滴などの医療行為にも対応しています。
看護師だけでなく、理学療法士をはじめとするリハビリテーション専門職が訪問することも可能です。看護師と連携しながら、必要なリハビリテーションを行います。
訪問看護は介護保険のサービスですが、ある一定の条件下では医療保険が優先となり、医療保険サービスに切り替わります。「がん末期」や「難病」などに該当する場合は、医療保険のサービスとして訪問看護が提供されるルールがあります。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションは医療機関・介護老人保健施設などから理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が派遣され、医師の指示に基づいたリハビリテーションを提供するサービスです。
訪問看護でもリハビリテーション専門職が自宅を訪問してリハビリを行うことが可能ですが、訪問看護事業所が提供するリハビリは、「看護業務の一環」として行うものと規定されています。
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問看護は、その訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるという位置付けのものである。
指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について より
訪問看護事業所が提供するリハビリは訪問看護、医療機関・介護老人保健施設などが提供するのが訪問リハビリテーションと、サービス事業所の運営主体によってサービスメニューが異なると覚えておきましょう。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間対応で訪問介護と訪問看護が定時訪問や臨時訪問を行うサービスです。
提供されるケア内容は、排せつや食事の介助など、訪問介護の身体介護のメニューが基本となっています。毎日の定期訪問以外にも、緊急時などには常駐オペレーターに連絡し、緊急訪問などの随時対応をすることが可能です。介護職員だけでなく、訪問看護が一体的にサービスを提供するか、もしくは密接に連携しながらサービスを提供します。
介護度によって料金が異なりますが、利用料は一か月定額料金となっています。随時訪問が何回あっても料金は変わりません。サービス対象を要介護の方に限定していますので、要支援1・2の方は利用ができません。
「在宅の限界値を上げる」ことを目的にスタートしたサービスメニューで、介護度が重度になっても、施設には入らず、できる限り自宅で暮らし続けたい方にとっては心強いサービスです。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護は夜間の定期的な巡回サービスと、コール端末による緊急訪問対応を組み合わせたサービスです。定期巡回・随時対応型訪問介護看護と似たサービスですが、サービス提供は夜間に限定され、日中は通常の訪問介護のメニューでの対応となります。
また、看護師による訪問はセットになっていないので、必要な場合は別途訪問看護サービスを利用します。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は一か月定額料金ですが、オペレーションサービス料金以外は、1回の訪問あたりの料金設定となっています。サービス対象を要介護の方に限定していますので、要支援1・2の方は利用ができません。
居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、通院が困難な利用者が医師・歯科医師・薬剤師等による療養上の管理・指導などを受ける際に利用するサービスです。
医師が自宅を訪問して診察を行う訪問診療は医療保険のサービスですが、この居宅療養管理指導という介護保険上のサービスも含まれています。医師が診療した際の報告や助言が担当のケアマネジャーに情報提供される仕組みになっています。
医師や歯科医師、薬剤師の他には、管理栄養士、歯科衛生士の訪問でも適用されます。
自宅で利用する7つの介護保険サービスを紹介しました。
通いで利用する
自宅から通いの場に移動してケアを受ける通所系サービスです。一般的にはデイサービスという名称でよく知られていますが、以下の5つのサービス類型があります。
類型ごとのサービス内容の違い・対象者の違いなどを紹介します。
通所介護
通所介護は一般的にデイサービスと呼ばれる通いのサービスです。
送迎車両でデイサービス事業所へ移動し、食事・入浴・排泄・リハビリテーションなどを受けるサービスとなっています。事業所によって提供するサービスは異なり、機能訓練に特化した事業所や、レクリエーションを中心としたデイサービス、延長預かりなどのレスパイトに力を入れた事業所など、多種多様な事業所があります。事業所によっては実費で夜間宿泊サービスを提供する「お泊りデイサービス」もあります。
多くの人と交流することで刺激を受けることから、認知症進行を予防する効果や、鬱・閉じこもりを予防する効果もあります。デイサービス事業所内で日中活動することで、生活にメリハリができ、生活リズムを整える効果もあります。
デイサービス利用中は家族が介護から解放されることや、日中仕事などで家族が不在でも見守りやケアをしてもらうことができます。
利用料金は要介護度によって異なり、介護度が高いと利用料金も高くなります。利用時間も長ければ長いほど料金が高くなります。また、デイサービスなどの通いのサービスで昼食を食べる場合は、実費として食事代が必要になります。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護も通所介護と同様、事業所に通ってサービスを受けるデイサービスです。一番の違いは利用定員で、定員19名未満の小規模なデイサービスが地域密着型通所介護、それ以上の規模のデイサービスが通所介護となります。
通所介護は事業所指定や指導の管轄が都道府県にありますが、地域密着型通所介護は市町村が管轄となります。基本的には事業所のある市町村の利用者しかサービスを利用することができません。
小規模な事業所なので、民家を改築したデイサービスなども多いです。また、利用者数が少ないため、職員の目が届きやすいというメリットもあります。
療養通所介護
療養通所介護は医療的ケアを必要とする難病患者や末期がん患者など、医療的ニーズの高い方を対象としたデイサービスです。
地域密着型通所介護と同様、市町村で指定を行う地域密着型のデイサービスですが、常に看護師による観察が必要なことから、人員配置基準が異なります。利用者の定員は1日5人以下と定められています。
常に医療的ケアが必要な方の場合、通常のデイサービスでは受け入れができない場合があります。重度の医療的ケアが必要でも、社会的孤立感の解消・機能訓練などを受け、家族の介護負担軽減を図ることができる通所サービスが療養通所介護です。
料金は通所介護・地域密着型通所介護と違い、要介護度に関係なく一律ですが、医療的ケアが必要なことから通所系サービスの中で最も高い利用料が設定されています。サービス対象を要介護の方に限定していますので、要支援1・2の方は利用ができません。
認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は認知症の方を対象にしたデイサービスです。こちらも市町村が指定を行う地域密着型サービスとなります。
一般のデイサービスでも認知症の方の受け入れを行っています。しかし、認知症が進行し、他の利用者へ影響が大きい場合や、人員的に対応できないなど、一般のデイサービスでの受け入れが難しい方もいます。一般のデイサービスよりも人員配置が多いため、認知症が進行した人でも受け入れができる体制となっています。少人数で家庭的な雰囲気の中で、入浴や食事の介助などのケアを行えることが特徴です。
料金は通所介護や地域密着型通所介護と比較すると高く設定されています。
通所リハビリテーション
通所リハビリテーションは病院・介護老人保健施設・診療所に併設された事業所で、理学療法士や作業療法士等によるリハビリテーションが行われるサービスです。
デイサービス等と同じ通所系サービスですが、医師の指示に基づいてリハビリテーションを行うことを目的としています。もちろん、食事や排せつ・入浴等の日常的な介護も行います。
通所介護や地域密着型通所介護の事業所でも機能訓練特化型の事業所は増えていますが、通所リハビリテーションは、病院・介護老人保健施設・診療所併設で、医師の指示に基づいて理学療法士等の専門職によるリハビリテーションを行うという特徴があります。
基本料金としては通所介護や地域密着型通所介護と大きく変わりませんが、短期集中リハビリやリハビリテーション計画作成などの加算項目が多いため、料金は高くなります。
通いで利用するサービス5つの累計で分けて紹介しました。
短期入所を利用する
短期入所は一般的にショートステイとして知られています。一定期間、介護施設などで利用者を預かり、食事や排せつ・入浴などの日常生活上の介護を行います。短期入所は、滞在する施設の違いによって以下の2つの類型に分かれます。
2つのサービスの違いについて解説します。
短期入所生活介護
短期入所生活介護は一般的にショートステイ呼ばれるサービスです。介護施設等に短期間宿泊・滞在する利用者の日常的介護を行います。
ショートステイを提供するのは特別養護老人ホームや有料老人ホームなどが多く、施設併設型となっています。介護保険施設を併設せず、ショートステイ単体でサービスを行っている事業所もあります。
家族の介護負担を軽減するための、「レスパイト」と呼ばれる利用方法が一般的です。それ以外にも、冠婚葬祭など家族の事情から自宅で介護できない場合などにも利用されます。また、特別養護老人ホームへの入所待機期間中に短期入所の名目で比較的長期間利用する場合(ミドルステイ)もあります。
介護度によって料金は異なり、要介護度が重くなるほど料金も高くなります。介護保険の料金以外にも、食費や居住費(部屋代)、日常生活費など介護保険対象外の費用負担が大きいサービスです。主に低所得者を対象にした負担限度額認定を受けると、食費と居住費が減免されます[詳細は04費用負担を参照]
短期入所療養介護
短期入所のサービス、もうひとつが短期入所療養介護です。短期入所生活介護と同じ短期滞在する利用者の日常生活上の介護を行うサービスですが、医療的ニーズにも対応できるよう、サービス提供場所は介護老人保健施設や医療機関に限定されます。同じ短期入所サービスですが、看護・医学的管理のもとに介護、機能訓練、医療処置、日常生活上の世話を行うサービスとされています。
料金は短期入所生活介護同様、介護認定の区分によって異なります。短期入所生活介護と比較すると料金は少し高くなります。食費や居住費は施設ごとに異なりますが、所得の低い方は負担限度額認定を受けることで食費と居住費の減免を受けることができます。
短期入所のサービス2種類をお伝えしました。
訪問・通所・泊まりを1つの事業所で
自宅に来てもらう訪問系サービス、デイサービス等に移動してケアを受ける通所系サービス、施設に短期滞在して介護を受ける宿泊系サービス。これら3つのサービスを1つの事業所で提供するサービスがあります。
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護について、特徴と違いを解説します。
小規模多機能型居宅介護
ホームヘルパーによる訪問、デイサービス、ショートステイという3つのサービスを1つの事業所で提供できるのが小規模多機能型居宅介護です。
独立した事業所がそれぞれにサービス提供するのではなく、1つの事業所で必要なケア内容を組み合わせて提供するので、柔軟な対応が可能です。また、慣れたスタッフがすべてのサービスに関与するので、本人も家族も安心感を得ることができます。
特に家族が不規則勤務や夜間の残業などで、固定したスケジュールを組むことができない家庭は小規模多機能型のサービスを使うと、訪問・通所・宿泊を組み合わせながら柔軟に対応してもらうことができます。
市町村が事業所指定を行う地域密着型サービスなので、事業所のある地域に住んでいる方以外は原則的に利用することができません。
小規模多機能型居宅介護事業所にはケアマネジャーが配置されており、事業所内のケアマネジャーが計画作成を行います。そのため、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに担当してもらっていた方が、小規模多機能型居宅介護に移行すると、居宅介護支援事業所のケアマネジャーは契約終了となり、小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーに担当変更となります。
料金は一か月の定額固定料金です。小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーと相談しながら必要なサービスを利用する形になります。介護保険分の料金に加え、食費や宿泊時の居住費が全額自己負担の料金として加わります。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護に訪問看護を加えたサービスです。
訪問・通い・宿泊の3つのサービスを1つの事業所で提供するのが小規模多機能型居宅介護ですが、これに加えて訪問看護も1つの事業所で一体的に運営し、看護師によるケアが提供されます。医療依存度の高い方や、在宅看取りを希望される方のニーズにも柔軟に対応することができます。
2012年に創設したサービス類型ですが、2015年までは「複合型サービス」という名称でした。わかりにくいという指摘が多く、看護小規模多機能型居宅介護という名称に変更されました。
小規模多機能型居宅介護と同様、市町村が指定する地域密着型サービスであり、原則として事業所のある市町村に住んでいる人しか利用できません。小規模多機能型居宅介護と違い、要支援1・2の方は利用することができません。
料金は定額の固定料金となります。要介護度によって料金は異なりますが、小規模多機能型居宅介護と比較しても料金は高く、看護小規模多機能型居宅介護サービスを利用する場合は、区分支給限度額の大半をこのサービス利用分で占めてしまいます。これに加えて食費と宿泊代が追加されますので、費用負担は大きくなります。
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護を紹介しました。
生活環境を整える
ここまで、訪問・通所・宿泊など、人に直接的にケアをしてもらうサービスを紹介してきました。介護保険のサービスは直接人にケアをしてもらうだけでなく、福祉用具などにより生活環境を整えるサービスもあります。
生活環境を整えるサービスを1つずつ紹介します。
福祉用具貸与
福祉用具貸与は、福祉用具をレンタル利用できるサービスです。
介護保険では、日常生活の自立を助けるための福祉用具のレンタルができます。大きく分類して13種類の福祉用具レンタルが認められています。
要介護度によって利用可能な用具も異なります。
料金は福祉用具貸与事業者が、品目ごとにレンタル料金を個別に設定しており、自己負担割合に応じてその費用の1~3割が自己負担となります。
福祉用具について、
詳しくは[08 高齢者の自立を助ける福祉用具]でまとめていますので、ご参照ください。
特定福祉用具販売
こちらも福祉用具のサービスですが、レンタルではなく、購入対象となる商品です。レンタルというサービスになじまない「排泄」や「入浴」などに関する商品は特定福祉用具販売というサービスが利用できます。
特定福祉用具販売業者が福祉用具を販売し、購入費用の一部が市町村から払い戻しされる形式となります。料金は介護保険の負担割合に応じて1~3割が自己負担となります。購入者は販売業者から全額(10割)分の代金を支払い、市町村から負担割合に応じた7~9割分の金額が払い戻されます。
特定福祉用具販売の対象となる福祉用具は以下の5種類です。
特定福祉用具販売は年間10万円分までは介護保険の対象となります。
こちらも、詳しくは[08 高齢者の自立を助ける福祉用具]でまとめていますので、ご参照ください。
住宅改修
住宅改修は自宅で生活を続けるために手すりの設置や段差解消などの工事を行う際に利用できるサービスです。
介護保険で認められる工事は以下の6種類です。
工事にかかった費用のうち、自己負担割合に応じた1~3割分の費用が自己負担となります。介護保険適用の限度額は20万円です。1割負担の方が20万円分の住宅改修工事を行った場合、費用全額20万円をいったん住宅改修業者に支払い、18万円が市町村から払い戻される仕組みになります。市町村によっては受領委任払いという方式をとっており、自己負担割合に応じた自己負担分の費用のみを住宅改修業者に支払い、介護保険支給分は市町村から住宅改修業者に直接支払われる仕組みを採用している場合もあります。
住宅改修についての詳細は[09生活環境を整える介護リフォーム]でまとめています。
以上、介護保険の在宅サービスを紹介しました。
このサイトでは、これらのサービスを提供する事業所を検索する機能がありますので、お近くの事業所を探してみてください。
次の章では、介護保険対象外ですが、利用者の生活を支える重要な在宅サービスを紹介します。
介護保険以外の在宅サービス
在宅で利用できるサービスは介護保険サービスだけではありません。地域包括ケアシステムでは介護保険サービスだけに依存するのではなく、多様な団体が主体的に介護に関する課題解決を行うことを目指しています。
介護保険外の在宅サービスを紹介します。
自宅で利用する
まずは自宅で利用するサービスです。
訪問理美容
訪問理美容サービスは、美容院や理髪店に行くことができない高齢者のもとに美容師・理容師が訪問し、カットやパーマを行います。
いすや車いすに座ることができない方も、寝たままの状態でカットしてもらうことができます。
料金は理美容にかかるメニューの料金に加えて出張費用が加わります。基本的には全額自己負担ですが、市町村によっては訪問理美容の助成券などが使える場合もあります。
配食サービス
配食サービスはお弁当配達のサービスです。高齢者を対象にした食事を提供する業者も増えています。
業者によって特色は異なります。毎日宅配する業者や、一週間分をまとめて冷凍食品として届ける業者もあります。疾患に応じた治療食・病態食を提供するところや、飲み込みの状態に合わせてペースト食・ムース食といった食形態で提供する業者もあります。アレルギーに対応することも可能です。
1食500円から700円程度の料金で配達してもらうことができます。ただ、毎日利用するとなると費用的には大きくなります。市町村によっては低所得者を対象に費用を助成してくれる場合もあります。
訪問マッサージ
訪問マッサージは、治療院や接骨院に通院できない高齢者を対象に行うマッサージのサービスです。事業者によっては、はり・灸などを行うことも可能です。リハビリテーションに近いメニューを提供する事業者も増えています。
医師の同意が得られれば、医療保険の対象になり、費用は自己負担割合に応じた自己負担となります。
以上が自宅で利用する介護保険外のサービスです。
通い・外出で利用する
通いや外出など、自宅の外で利用するサービスを紹介します。
介護タクシー
介護タクシーは一般のタクシーでは乗車するのが難しい方を対象にしたタクシーです。車いすやストレッチャー(担架)での乗車にも対応しています。
料金は通常のタクシー料金に加えて、タクシーへの乗降にかかる介助料金がかかります。オプション料金として、階段昇降の介助などが発生する場合もあります。
病院通院時の院内の移動介助なども追加料金で対応してもらうことも可能です。
老人会・サロン
デイサービスなど、通いの介護保険サービスでなくても、地域に集まる場所がある場合もあります。自治会や老人会、自主グループなどで開催しているサロンなどもあります。定期的にカラオケや映画鑑賞、レクリエーションなどの活動を行っています。
もちろん、集まっているのは地域の住民で、運営しているのはボランティアなので、重度な介護が提供できるわけではありません。また、デイサービスと違って送迎サービスはありませんので、自分の足で会場まで行けることが条件になります。
サロンなどの地域情報は地域包括支援センターでも把握していますので、参加できる場所があるか質問してみるといいでしょう。
その他
市町村独自サービス
他にも市町村独自で行っているサービスがあります。地域によって異なりますが、具体例としては以下のようなものがあります。
住んでいる自治体にはどのようなサービスがあるのか、ケアマネジャーや地域包括支援センターに確認するか、ホームページ等で調べてみるといいでしょう。
まとめ
介護保険または介護保険外で利用できる在宅サービスを紹介しました。
どのようなサービスが適しているのか、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員と相談しながら、必要なサービスを組み合わせていくことで、在宅介護の負担を軽減することができます。