いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
「老人ホーム」というと、介護が必要な高齢者が入る場所とイメージされる方が多いと思います。ただ、介護の認定を受けていない方でも入れる施設はあります。
高齢者を対象にした施設や住宅、様々な種類があります。施設探しをされている方からこんな相談をいただきました。
父はまだ介護認定を受けておらず、まだ介護が必要という状況ではなく、一人暮らしをしている状況です。
いずれは施設で生活するのがいいんじゃないかなと思っているんです。母を失くしてからは元気もなく、友人も少なく地域に出かける場所もないし、特に趣味もあるわけではないです。食生活もカップ麺やレトルトやコンビニ弁当ばかりで、健康的にもよくないと思っています。
家でこもっているのであれば、施設のような場所で暮らした方が友人もできたり、生活のリズムも整って、健康にもいいんじゃないかなと思っているんです。
介護認定を受ける前から入れる施設ってありますか?
とてもお父様のことを心配されているのですね!介護保険の認定を受けないでも入れる施設や住宅もあります。いろいろな選択肢がありますのでお父様とよく相談できるといいですね!
今回は介護認定なしで入れる施設について紹介します。
【この記事を読んでほしい人】
- 介護認定を受けていないけれど施設に入れるか知りたい人
- 自宅で一人暮らしを続けることに不安を感じている人
【この記事に書いてあること】
- 介護認定なしで入れる施設・住まいの種類と特徴
- 施設や住まいの選び方と入居の流れ
- 2024年に新しく創設される居住サポート住宅の詳細
介護認定なしで入れる施設の種類
介護認定なしで入れる施設について紹介します。
高齢者の暮らしも多様化し、様々なライフスタイルがあります。一人暮らしや高齢者のみの世帯も多くなり、暮らしの場を自宅から施設や高齢者向けの住宅に求める方も増えています。
現在、高齢者の9割は在宅で暮らしており、要介護認定者に限定してもおよそ8割は在宅となっています。
参照:国土交通省資料 高齢者の住まいに関する現状と施策の動向
まだまだ割合としては在宅で生活される方も多いことがわかります。ただ、一方で高齢者向けの住まいや有料老人ホームの利用者は大きく数を増やしています。
参照:厚生労働省資料 高齢者向け住まいの今後の方向性と紹介事業者の役割
グラフから見てわかる通り、有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅の利用者数が急激に増えていることがわかります。健康な高齢者を対象にした施設も増えています。
高齢者のライフスタイルが多様化し、一人暮らし高齢者が増えることによって、ますます高齢者向け住宅や有料老人ホームの需要は増えていくことでしょう。
いずれ施設を利用するなら、介護認定が出る前、介護が必要になる前から利用したいという方も増えています。
介護認定なしで入れる施設・住宅、5種類
介護認定なしで入れる施設と言っても、種類は幅広く、以下に紹介する5つが該当します。
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- 健康型有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- ケアハウス(自立型)
- シニア向け分譲マンション
簡単に比較できるように表にまとめました。
施設の種類 | 特徴 | 対象者 | 費用 | 運営 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|---|
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 自立または軽度の介護が必要な高齢者向け賃貸住宅 | 自立または軽度の介護が必要な高齢者 | 初期費用15~30万円 月額15~30万円 | 民間業者など | プライバシーがあり、比較的自由度が高い。外部介護サービス利用可。 | 重度の介護が必要になると退去が必要な住宅もあり。 |
健康型有料老人ホーム | 介護が不要な自立高齢者向け施設 | 60歳以上の自立した高齢者 | 初期費用0~数千万円、月額10~40万円 | 民間業者など | アクティブなシニアライフを楽しめる、設備が充実 | 介護が必要になれば退去が求められる |
住宅型有料老人ホーム | 自立または軽度介護が必要な方が対象の施設 | 60歳以上で自立または軽度の介護が必要な高齢者 | 初期費用0~数千万円、月額15~30万円 | 民間業者など | 費用が比較的抑えられ、自由度が高い。外部介護サービス利用可。 | 重度の介護が必要になると退去が必要な施設もあり。 |
ケアハウス(自立型) | ひとり暮らしに不安がある高齢者向けの公的施設 | 60歳以上で自立している高齢者 | 初期費用0~30万円、月額7~13万円 | 社会福祉法人など | 費用が安く、生活支援サービスが充実 | 入居条件が厳しく、介護が必要になると退去が求められる |
シニア向け分譲マンション | 高齢者向けに設計されたバリアフリーマンション、資産として購入可能 | 自立した高齢者(年齢条件はマンションによる) | 購入費用3000万円~1億円、月額10~30万円 | 民間業者など | 自分のペースで自由に生活できる、資産価値がある | 初期費用が高額。介護が重度になると転出が必要になる。 |
費用などは地域によってかなり異なる部分があると思いますので、あくまで参考程度にとらえていただければと思います。
それぞれの施設の特徴を解説していきます。
1.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、サ高住と呼ばれる高齢者向けの住宅です。2011年の「高齢者住まい法」により誕生した住宅ですが、施設数・利用者数も大幅に増えています。住宅と言えども、場所によっては重度な方に特化して対応をするサービス付き高齢者向け住宅なども増えています。
- 対象者: 自立した高齢者、または軽度の介護が必要な高齢者。
- 特徴: バリアフリー設計で、安否確認や生活相談など基本的な支援サービスが提供される賃貸住宅。介護サービスは外部の事業者と契約して利用する。
- 費用: 入居一時金なし、月額10万〜40万円程度。
- 運営: 民間業者。
- メリット:
- 自由度の高さ: 自立した生活を維持しつつ、必要に応じて介護サービスを外部から取り入れられる。外出や旅行なども比較的自由に行え、生活の自由度が高い。
- 安否確認の安心感: 定期的な見守りサービスがあり、緊急時の対応も可能で、万が一の際にも安心して生活できる。
- デメリット:
- 介護度が上がると退去が必要: 要介護度が進行し、常に介護が必要な状態になると、退去を求められる可能性が高い。
- 介護サービスは別途契約: 介護が必要になった際は、外部のサービスを個別に契約する必要があり、利用状況によっては介護保険の限度額をオーバーする可能性もあり。
2.健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは施設数自体は少ないですが、健康で自立した高齢者のみを対象にした有料老人ホームです。費用が高額な施設も多いですが、介護が必要になると退去が必要になるのが一般的です。
- 対象者: 自立した生活を送れる高齢者(原則60歳以上)。
- 特徴: 介護を前提としない高齢者向けの施設で、食事、掃除、洗濯などの日常生活支援やレクリエーションを提供。介護サービスは提供されず、要介護状態になると他の施設へ移る必要がある。
- 費用: 入居一時金0円~1億円、月額12万~40万円程度。
- 運営: 民間業者など。
- メリット:
- 豊富なアクティビティ: カラオケ、フィットネス、図書館などの娯楽設備が充実しており、アクティブなシニアライフを楽しめる。入居者同士の交流も活発で、健康な老後を送れる。
- 生活支援: 自立した生活を維持しながら、食事や掃除などをスタッフに任せられるため、日常生活の負担を軽減できる。
- デメリット:
- 介護が必要になると退去が必要: 要介護状態に陥ると、介護付き施設に転居しなければならず、終身利用には向かない。
- 高額な費用: 入居一時金や月額費用が高額になる場合が多く、特に豪華な設備が整った施設では費用負担が大きい。
3.住宅型有料老人ホーム
先にお伝えしたサービス付き高齢者向け住宅とかなり近い形態やサービス内容です。大きな違いとしては、サービス付き高齢者向け住宅が国土交通省が管轄の「住宅」なのに対し、住宅型有料老人ホームは厚生労働省が管轄の「有料老人ホーム」であることです。
- 対象者: 自立した高齢者や軽度の要介護者。
- 特徴: 食事の提供・見守りなどのサービスが提供されます。介護サービスは含まれておらず、介護が必要な場合は、外部事業者の訪問介護やデイサービスを利用します。
- 費用: 入居一時金0円~数千万円、月額12万~30万円程度。
- 運営: 民間業者。
- メリット:
- 柔軟な介護・生活支援: 施設のサービスを利用しながら、必要に応じて外部の介護サービスを契約でき、柔軟かつ自由な生活を保てる。
- 医療対応施設との連携: 一部の施設では、近隣の医療機関と提携しており、健康管理や緊急時対応が可能。
- デメリット:
- 介護度が上がると退去が必要: 要介護度が進行すると、他の介護付き施設に移らなければならない場合がある。
- 介護サービスは別途契約: 施設内での介護サービスは標準的には提供されないため、外部事業者との契約が必要。利用状況によっては限度額を超過する可能性もあり。
ケアハウス(自立型)
民間施設だけでなく、公的施設でも介護保険対象外の高齢者向けの施設があります。それがケアハウスです。自立型と介護型に大きく分かれますが、自立型は健康な方の暮らしの場として適しています。
- 対象者: 経済的に余裕がなく、一人暮らしなどで日常生活に不安がある自立した高齢者(60歳以上)。
- 特徴: 市区町村の補助を受けて運営される公的な施設で、バリアフリー設計の住まいと、食事や基本的な生活支援が提供される。身寄りのない高齢者や、援助が受けられない事情がある場合にも適している。
- 費用: 入居一時金0円~30万円、月額6万~12万円。
- 運営: 社会福祉法人など。
- メリット:
- 低コストで生活支援が受けられる: 所得段階によって補助を受けることができ、費用が他の施設と比べて安価。経済的に余裕のない高齢者でも安心して利用できる。
- 日常生活の安心サポート: 食事や見守りなどの生活支援が提供され、必要時は外部の介護サービス利用も可能。緊急時の対応もあるため、一人暮らしが不安な高齢者に向いている。
- デメリット:
- 介護が必要になると退去が必要: 基本的には自立した高齢者向けの施設であり、介護が必要になると他の施設へ転居する必要がある。
- 入居条件が厳しい: 施設数も少なく、誰でも入居できるわけではなく、入居待ちが多い場合もある。
5. シニア向け分譲マンション
- 対象者: 自立した高齢者(60歳以上が多い)。
- 特徴: 高齢者が快適に生活できるようバリアフリー設計された分譲マンションで、見守りサービスや生活相談が提供されます。マンションの所有権を取得し、資産として保持することが可能。
- 費用: 購入価格3,000万円~1億円、月額10万~30万円程度。
- 運営: 民間業者など。
- メリット:
- 高いプライバシーと自由度: 自宅のように自由に生活でき、他の施設と異なり所有権を持つため、将来的に売却や相続が可能。
- 安心の生活サポート: 見守りサービスや、コンシェルジュによる生活相談サービスがあり、日常の生活面での不安を軽減できる。
- デメリット:
- 高額な費用負担: 購入時の費用が非常に高額であり、資産に余裕のある高齢者でないと入手しにくい。
- 介護が必要になると転居が必要: 介護施設ではないため、介護が必要になった場合は別途サービスを契約するか、他の介護施設に移る必要がある。
介護認定なしで入れる施設、5つの種類を紹介しました。
将来的に介護が必要になってもそこで住み続けるということを考えると、「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型有料老人ホーム」が最も有力な選択肢になります。ただ、施設によって対象者や退去条件なども異なりますので、よく説明を聞いて確認することをお勧めします。
施設選びのポイント
実際に入居や入所を考えたとき、どんなことに注意して施設選びをすればいいか。一番大事なのは施設見学。実際に目で見て、相談員の話を聞いて確認することが重要です。
施設見学の際に注意すべき具体的なチェックポイントを7つ紹介します。
1. 健康状態と将来介護が必要になる必要性
- 介護が必要になったとき: 健康で自立していることが条件の施設も多いです。早い段階で介護が必要になる可能性がある場合は、外部サービスの利用などで比較的柔軟な対応ができる住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームが候補になります。
- 将来的な介護度の上昇に対応できるか: 介護度が上がった際に退去が求められる施設もあります。医療ケアの必要性や、夜間のケア、認知症による他住民とのトラブルなど、様々な可能性も含めて長期的に住み続けられるか、本人に合った条件を確認しましょう。
2. 提供されるサービスの内容
- 日常生活の支援: 食事の提供、見守りや相談などの支援が受けられるか確認しましょう。
- 介護サービスの利用: 外部の介護サービスを利用する必要があるか、施設内で事業者を紹介しているか、ケアマネは誰が行うかなどを確認し、将来の介護ニーズに対応できる施設かどうかがポイントです。
3. 施設の費用
- 初期費用と月額費用の負担: 入居一時金や月額費用が予算に合うか確認が必要です。施設によっては費用が大きく異なるため、しっかりと比較することが大切です。例えば、サービス付き高齢者向け住宅では初期費用が低いことが多いですが、健康型有料老人ホームなどでは高額になることがあります。
- 追加費用の有無: 介護サービス費用、医療費、日用品費など、居住費以外の追加費用が発生する場合もありますので、その点も含めて確認することが必要です。
4. 施設の設備と環境
- バリアフリー対応: 居住スペースや共用エリアがバリアフリー設計されているか確認します。浴室やトイレなども使いやすいか確認しておきましょう。
- レクリエーションやアクティビティの充実度: 健康型有料老人ホームなどでは、フィットネス、カラオケ、イベントなどのアクティビティが豊富に用意されているため、アクティブに過ごしたい方には向いています。
5. 立地とアクセス
- 家族との距離: 家族が頻繁に訪問できる場所であるか、アクセスのしやすさも確認しましょう。
- 外出や買物できる場所: 近隣に買物や散歩などできる場所などがあると、外出機会も増え、生活の質も高まります。
- 近隣の医療機関: 緊急時に対応できる病院やクリニックが近くにあるかどうかも、施設選びの重要なポイントです。
6. 施設の雰囲気や職員の対応
- 施設の清潔さと快適さ: 見学の際に施設全体の清潔さ、共用スペースの快適さを確認します。居住する高齢者にとって、清潔で快適な環境は重要です。
- 職員の対応: 職員が親切で、入居者に対してどんな姿勢で関わっているかも重要な選択基準です。見学時にスタッフと現入居者とのコミュニケーションの様子などをチェックしておきましょう。
7. 施設の運営体制や信頼性
- 施設の運営企業や団体の信頼性: 施設を運営している企業や団体が信頼できるかどうか、運営の安定性も確認しましょう。長期的に運営が継続できるかどうかは、入居後の安心感にもつながります。
以上の7つは、安心して暮らし続けるために、契約前に確認しておきたいポイントです。
入居するまでの流れ
施設への入居までの流れを簡単にまとめると、以下の通りです。
以上が大まかな流れですが、施設によって一部異なる部分もあります。ただ、介護保険の利用がないので比較的手続きなどの手間は少なくなります。
居住サポート住宅とは?
健康な状態で入居できる施設・住まいとして5つの種類を紹介しましたが、この他に、新たに居住サポート住宅ができました。
居住サポート住宅は、「住宅セーフティネット制度」によって位置づけられた新しい住宅です。見守り等のサポートが受けられる賃貸住宅として、2024年内に登録が開始されます。
高齢者だけを対象にしている住宅ではなく、低所得者や身寄りのない人など、一般の賃貸住宅では入居を断られてしまう方が暮らせる場所です。そのため、介護保険の認定も必要ではありません。住宅が行うサポートの内容としては、「IoT等による安否確認(人感センサー等)」や、居住支援法人の職員が訪問する「見守り」などがあります。
比較的自立した方を対象とした住宅です。見守り付きの住宅というと、サービス付き高齢者向け住宅と近い印象を感じますが、大きな違いは以下の通りです。
- 制度上の違い:居住サポート住宅は「住宅セーフティネット法」に基づき、サービス付き高齢者住宅は「高齢者住まい法」に基づいています。
- 対象者の違い:居住サポート住宅は高齢者だけでなく、低所得者や身寄りがない人など、幅広い要配慮者を対象としています。サービス付き高齢者住宅は高齢者を対象としています。
- 運営やサービスの違い: 居住サポート住宅は一般賃貸事業者が運営し、連携する社会福祉法人等が訪問や見守りサービスを提供します。それに対して、サービス付き高齢者住宅は介護事業者等の民間業者が運営します。居住サポート住宅では、IoT等センサー技術などで見守りを行うとされていますが、サービス付き高齢者向け住宅は相談員・支援員等がサポートを行います。居住サポート住宅の方がより自立した方に向いている住宅になりそうです。
居住サポート住宅という新しい住まいの形が生まれるので、こちらも注目したいですね。
まとめ
介護認定なしで入れる施設について解説しました。
介護が必要になる前の段階で入居することで、施設での生活に慣れておけば、介護が必要になっても安心して暮らし続けることができます。
暮らしの場にもいろいろな選択肢があるので、自宅だけでない暮らし方も一度検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)
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