【入浴拒否!】風呂嫌いな親。入浴を拒む原因と、入浴してもらう3つの方法

入浴してほしい 介護のことはじめ
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

ユーザーの方から届いた質問に介決サポーターがお答えします。
今回は入浴・お風呂に関する相談です。入浴を拒否するお父様に困っているそうです。

まずはいただいたご質問を紹介します。

質問「入浴を拒否されてしまう。なぜ?」

80歳になる父と娘である私、私の夫の3人で一軒家に暮らしています。

父は頑固な性格ではあるものの、もともときれい好きで身だしなみにもよく気を遣う方でした。ただ、半年ほど前に母を亡くしてから、すっかり元気を失ってしまったようで、何をするのにも面倒になってしまっているようです。着るものにも無頓着になり、ほとんど外出もせず、髭もずっと剃っておらず伸び放題になっていることもあります。

一番困っているのはお風呂です。以前は毎日お風呂に入っていたのですが、今は何度言ってもお風呂に入ろうとしません。しつこく言い続けて、週に1回入るのがやっとというくらいです。

衛生的にも良くないですし、臭いも気になります。
確かにもともと膝が悪く、整形外科で痛み止めはもらっていますし、立ったり座ったりするのも大変そうです。膝のせいでお風呂に入るのも大変なのはわかるのですが、せめて週に1回はお風呂に入ってもらいたいです。
お風呂嫌いの父を入浴させるにはどうしたらいいのでしょうか

―――という質問でした。
この記事ではこの疑問に介決サポーターが回答していきます。

【この記事を読んでほしい人】

  • 入浴嫌いの親にお風呂に入ってもらいたい家族
  • 入浴してくれない利用者をどうやって浴室に連れていくか悩んでいるデイサービスや介護施設職員

【この記事に書いてあること】

  • 入浴嫌い・入浴拒否には理由がある
  • 入浴嫌いな親に入浴してもらう3つの方法
  • 今すぐ試せる入浴嫌いな認知症高齢者も納得できる3つのポイント

介決サポーターがお答えします!

浴室・お風呂のイメージ

ご相談ありがとうございます。
お風呂嫌いになってしまったお父様のことで悩まれているということですね。お母様を亡くされてから無気力になってしまっているということですが、身近な人を失った喪失感から、自分のことに無頓着になる方は少なくありません。特に男性に多い傾向があり、お父様にとってお母様の存在はとても大きなものだったのでしょう。

まだお母様との死別から半年ということで、お父様の心の傷も癒えていないのかと思います。お父様の悲しみにも寄り添うことで、これからの人生を見つめ直すきっかけを作ってあげられたらいいのかもしれません。

さて、では本題に戻ります。お父様にお風呂に入るために、どんな方法があるのか。まずはそもそも入浴を拒否するのがなぜか、その原因から見ていきましょう。

高齢者が入浴を拒否する理由

入浴を拒否する高齢者

まず、若い世代にとっては実感することはあまりないのですが、高齢者にとって入浴はハードルの高い生活動作であることを理解しましょう。

転倒や溺水など、入浴による事故リスク

入浴には大きな事故につながる危険も数多くあります。高齢者が入浴するという行為に、どんなリスクがあるのか考えてみましょう。

  • 浴槽の縁をまたげずに転倒する
  • 浴室のタイルの床に足を滑らせて転倒する
  • 浴室の外との寒暖差によるヒートショック
  • 浴槽内で足を滑らせて溺れる

このように、入浴という行為の中にも、高齢者にとっては様々な危険が潜んでいます。厚生労働省の統計によると、入浴中の事故死の件数は1万9000人といわれています。

私たちが感じている「入浴は気持ちいい」「リフレッシュする」という側面とは、また違った側面があります。私たちにとって見えにくい危険性の部分が強く見えるのです。

基礎疾患や障害を持っている高齢者にとって、入浴は危険と隣り合わせの行為であることを理解しましょう。

認知症による拒否

また、アルツハイマー型認知症や、その前段階である軽度認知障害(MCI)の方は、何をするのにも億劫になりやすい傾向があります。自分のことにも無頓着になる結果、入浴することの必要性を低く感じてしまい、結果的に入浴を拒否することにつながりやすい傾向があります。

短期記憶が障害されるため、実際にはしばらく入浴していなくても、「昨日も風呂に入った」と言い張られてしまうのもよく見かける光景です。

認知症が重度に進行した場合はさらに難しい問題があります。

入浴を勧めたり入浴に誘っている人が誰か、そもそも認識できないことがあります。それが実の娘や息子であっても、認知症の高齢者は相手が誰かを認識できないことがあります。

この人は誰?
この人はなぜ私をお風呂に誘うの?
危害を加えようとしているのでは?

このような恐怖心が生まれることも無理もありません。みなさんも、知らない場所で知らない人から、「お風呂入って行きなよ」って突然言われたら、「え!?」となるでしょう?それと同じです。

その感覚が理解できずに、無理やりお風呂に誘うことは、ますます恐怖心を植え付ける結果になります。ぜひ、認知症の特性を理解した上で、相手がどのように感じているかを考えてみましょう。


入浴を拒否される理由として、具体的に自己の不安と認知症によるものを紹介しました。

疾患や障害によって様々な理由がありますが、入浴をしたくない・入浴をしないことにはそれぞれの理由がありますので、それを取り除いていくことが必要です。入浴するという行為に対するハードルを低くすることで、安心して入浴してもらえるのが理想です。

では、進んでお風呂に入ってもらうためには、どんな方法があるのか。次の章で紹介していきます。

高齢者に入浴してもらう方法3つ

入浴拒否の解決策は?

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法を三つ紹介します。

  • 福祉用具を利用する
  • 住宅改修で環境を整える
  • デイサービスを利用する

ひとつずつ紹介していきます。

福祉用具を利用する

福祉用具(シャワーチェアー/シャワーベンチ/浴槽いす)

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法、一つ目は福祉用具を利用することです。

介護保険を使うことで、入浴用の福祉用具を利用することができます。
浴室で体を洗うときに座るいすは一般的に高さがなく、筋力の衰えた方やひざに痛みがある方にとって、立ち上がるのも大変です。高さがあって安定感のあるいすがあれば安全に立ち座りの動作ができます。介護保険では、シャワーいす・シャワーチェア・シャワーベンチと呼ばれるいすを保険適用で購入することができます

入浴補助用具は介護保険では特定福祉用具として、購入費用の1割・2割もしくは3割の自己負担で購入することができます。市町村によって取り扱い方法が異なりますが、購入後に、福祉用具の業者が手続きを行うことで、自己負担割合に応じて7割・8割もしくは9割の金額が償還払いとして払い戻されるので、実質1割~3割の自己負担で購入することができます。自己負担1割であれば自己負担2,000~3.000円程度で購入することができます。

シャワーいす以外にも、浴槽をまたぐときにつかまる浴槽手すり、浴槽内に沈めて浴槽をまたいだ後に足を乗せる浴槽台、浴室の段差を小さくするための浴用すのこなど、お風呂に使うことができる福祉用具は様々な種類があります。

福祉用具を使うことで、立ち上がりや浴槽をまたぐといった動作を安全にできる可能性があります。入浴することへの不安や負担が少なくなることで、入浴することへの抵抗も少なくなります。

ケアマネジャーや福祉用具業者の福祉用具専門相談員に相談し、どんな福祉用具が必要かを検討しましょう。

このサイトにもおすすめの入浴用福祉用具を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法一つ目。福祉用具を利用することについて解説しました。

住宅改修で環境を整える

浴室手すり

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法、二つ目は住宅改修で浴室の環境を整えることです。

介護保険制度を使って浴室をバリアフリー改修することができます。たとえば、浴室内に手すりを設置することもその方法のひとつです。筋力が低下し、大きく足を上げることが難しくなった高齢者でも、手すりにつかまることで浴槽をまたぐことができる場合もあります。

このような工事も介護保険を使えば、自己負担を少なくすることができます。介護保険では20万円分までの工事が保険給付の対象となり、給付対象の範囲内であれば、自己負担する金額は工事費用の1割・2割もしくは3割となります。積極的に活用したい制度です。

最近では浴室をユニットバスに変更する工事事例も増えていますが、これも介護保険の住宅改修で段差解消などの名目で対象になります。バリアーを小さく設計されているユニットバスは高齢者には最適な入浴環境です。当然、費用はかかりますが、お風呂が新しくなれば気分的にも入浴が楽しみになるかもしれません。

具体的な工事事例としては以下のようなものが多いです。

  • 浴槽の出入りのための手すり
  • 浴槽内での立ち座りのための手すり
  • 浴室洗い場での移動や立ち座りのための手すり
  • 浴室出入りのための手すり
  • 浴室扉を開き戸から折れ戸に変更
  • 浴室の床面をすべりにくい床面に変更

どのような工事をすれば入浴が可能か、ケアマネジャーや工事担当者と相談してみましょう。
住宅改修に関しては、バリアフリーリフォームの施工経験が豊富な業者を選択しましょう。あまり経験のない業者や工事担当者に依頼すると、本人の状態像と合わないバリアフリー工事になり、せっかくつけた手すりがまったく役に立たないという場合もあります。

このサイトではバリアフリーリフォーム施工経験の豊富な住宅改修事業者を多く紹介しています。お近くに事業者さんがあれば相談してみてはいかがでしょうか。

[事業所を検索する]
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また、住宅改修についてはこちらの記事でまとめていますのでご参照ください。

お風呂の介護リフォーム。危険の多い浴室、入浴を楽しむためにできる住宅改修。
ご自宅で在宅介護をする上で、お風呂での事故は大きな不安要素となっています。 お風呂は日常生活の中でリラックスできる場所である一方で、床や浴槽の滑りやすさや、入口の段差、浴槽の縁の高さなど、様々な危険要因も潜んでいます。お風呂での事故は高齢者

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法二つ目。住宅改修で環境を整備することについて解説しました。

デイサービスを利用する

デイサービスの広い浴室

お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法三つ目は、デイサービスを利用することです。

デイサービスは介護保険サービスの一つで日帰りの通所サービスです。職員の送迎でデイサービス事業所に行き、食事や排せつ、レクリエーションなどのサービスを受けます。そのサービスのうちの一つが入浴です。

施設によって大浴場がある施設や、ひとりずつ入る個浴の施設、車いすに座ったまま入浴できる特殊浴槽のある施設など、デイサービスによって入浴設備も様々です。

自宅でもお風呂に入らないのに、人前でお風呂に入るのなんて余計に嫌なんじゃない?そう思う方もいると思います。

デイサービスで入浴を楽しむ高齢者と介護職員

しかし、自宅ではお風呂に入りたくないという人も、デイサービスに行けばその場の雰囲気でお風呂に入ることもありますし、職員が上手に誘導するのでお風呂に入れるということもあります。家族に対しては拒否をするけれど、他人に対しては拒否せずに応じる方も多く、自宅でお風呂に入らない人もデイサービスでは進んでお風呂に入るというのは珍しいことではありません。

このサイトにはデイサービス事業所を検索する機能がありますので、ぜひお近くのデイサービス事業所を探してみてください。

[事業所を検索する]
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お風呂に入りたくないという高齢者に入浴してもらう方法三つ目、デイサービスを利用することを解説しました。
入浴するための三つの方法を紹介しました。

  • 福祉用具を利用する
  • 住宅改修で環境を整える
  • デイサービスを利用する

紹介した三つの方法以外にも介護保険を利用して入浴する方法もあります。

ホームヘルパーが訪問して自宅で入浴の介助をする訪問介護サービス、看護師が訪問して入浴を介助する訪問看護サービスを利用することもできます。寝たきりの方であれば、訪問入浴サービスという自宅に浴槽を運び込んで入浴するというサービスもあります。

その人の状態や要望に応じて、どのサービスを利用するのが最適か、まずはご担当のケアマネジャーさんと相談してみましょう。

今すぐ使える、認知症の方にも入浴拒否されないテクニック3選

サービスを利用しないでも、ちょっとした工夫でも上手に入浴に誘うことができる場合もあります。

自宅での入浴を勧めたのに応じてくれない認知症の方。介護されるご家族がそんな時に活用できる入浴のため、すぐに使えるテクニックを3つ紹介します。

本人の楽しみを引き出す声かけ

「どんな温泉に行ったことがありますか?」
「銭湯って近くにありましたか?」
「うちのお風呂も大きいんですよ!見てみますか?」

など、本人の過去の記憶や興味関心などに結び付けて浴室に近づいてもらうことは有効なテクニックです。過去の体験に結び付けて、好きな入浴剤などを一緒に入れることなども楽しみを引き出すきっかけになります。

視覚的なヒントを提供する

言葉だけでお風呂と言われてもピンとこないもので、タオルなどを持ってきたり、お湯の八田お風呂を見てもらうなどして、視覚から刺激・情報を入れていくといいでしょう。

自分が入浴する姿をイメージしやすくなり、スムーズに応じてくれる可能性が高まります。

拒否されたらタイミングをずらす

一度拒否されたらいったん引き下がるのもいいでしょう。むやみに誘うとかえって拒否が激しくなる場合があります。いったん距離を置き、タイミングをずらしてみるといいでしょう。

これはいったん場面を区切ることで気分や意識がリセットされるからです。

このようにちょっとの工夫で気持ちが切り替わる場合もありますので、ぜひうまく工夫してみてください。

ただ、高齢者は外出機会も少なく、汗もかきにくいため、そこまで頻回に入浴する必要はありません。かえって入浴の回数が多いと皮膚が乾燥しやすくなるなどのデメリットもありますので、注意は必要です。なので、あまり入浴に関して神経質になり過ぎると、かえって相手が拒否を強めてしまう可能性があります。

無理せずに入浴に誘っていくといいでしょう。

また、認知症の方の食事拒否についてはこちらの記事で紹介しています。

まとめ

「お風呂に入ってもらう」ための介護サービスを紹介しました。
様々なサービスがありますが、大事なのはご本人の気持ちです。なぜお風呂に入りたくないのか、その原因を考えてみることも必要です。無理やりお風呂に連れていくのではなく、本人のペースを尊重しましょう。

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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