いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
在宅介護の要と言われるケアマネジャー。在宅介護の成否を握ると言われるほど重要な存在です。特に、一人暮らしや高齢者のみの世帯などが増えている今、その役割は非常に増えています。
ただ、ケアマネジャーにも良し悪しはあると言われています。実際身近に見聞きしたことはありませんが、一握りは悪質なケアマネジャーも世の中にはいます。利用者の金銭を搾取するなどの犯罪行為につながっているケースなども中にはありますので、不安を感じているご家族もあるかと思います。
1人暮らしをしている母のことで相談です。私は離れて暮らしていて、あまり頻繁に実家にも顔を出せません。ヘルパーさんと歩行器のレンタルを利用して、なんとか自宅で生活しています。先日、母にケアマネさんと相談しているかと聞いてみたら、「ケアマネさんなんて来てないよ」と言うんです。月に一回は訪問すると聞いていたのですが、来ていないということだと心配で。そんなことあるのでしょうか?
離れて暮らすお母様のこと、心配ですね。ケアマネジャーは月一回定期訪問することがルールです。ただ、そうでない場合もありますので、ここでルールなどを整理しつつ、より安心して在宅生活ができる方法について検討しましょう。
【この記事を読んでほしい人】
- 離れて暮らす家族のところにケアマネジャーが定期訪問しているか心配な方
- 最近、ケアマネジャーが来ていないな、と気になっている方
【この記事で説明していること】
- ケアマネジャーの定期訪問ルールについて
- ケアマネジャーの訪問を確認する方法
- ケアマネ訪問が行われていなかった場合の対応法
ケアマネジャーによる定期訪問とは
ケアマネジャーの月一定期訪問「モニタリング」の意義
まず、ケアマネジャーの定期訪問について確認しましょう。
居宅介護支援の契約をしている利用者のもとには、月に一回以上、担当のケアマネジャーが訪問することになっています。これをモニタリングと言います。
ケアマネジャーの行うケアマネジメントはPDCAサイクルを前提としており、計画・実施・評価・改善というサイクルで在宅生活のサポートを行っています。ケアプランを作成し、サービス計画の実施、モニタリングを行った内容を踏まえて、再アセスメントや修正を行うという一連のケアマネジメントプロセスを繰り返しています。
たとえば、サービスを利用開始したけれど、うまくいかない・本人の意向に合わない、想定外の問題が発生している、などの状況が生まれることもあります。ケアマネジャーはそのようなチェックをモニタリングを通して行っています。
そのほかにも、健康状態に変化がないか、生活に何か変わった様子がないか、新たな生活課題が生まれていないか、などを確認しています。
このような理由から、モニタリングは利用者の生活の質向上や自立支援のために重要な意味を持っています。
モニタリングの頻度
モニタリングは原則月一回のルールです。これは制度上に明確に規定されています。
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」という文書にはこのように記載されています。
⑭モニタリングの実施(第14号)
介護支援専門員は、モニタリングに当たっては、居宅サービス計画の作成後においても、利用者、およびその家族、主治の医師、指定居宅サービス事業者等との連絡を継続的に行うこととし、当該居宅サービス事業者等の担当者との連携により、モニタリングが行われている場合においても、特段の事情のない限り、少なくとも1月に1回は利用者と面接を行い、かつ、少なくとも1月に1回はモニタリングの結果を記録することが必要である。また、面接は、原則、利用者の居宅を訪問することにより行うこととする。
このように、ケアマネジャーは利用者の自宅を月に一回は訪問し、記録をすることが義務付けられています。
月に一回というのは、暦上の一か月です。極端な例で言えば、1月31日に訪問し、2月1日に訪問したとしても、月1回のモニタリングを行ったとみなすこともできます。市町村によってローカルルールを設けている場合などもありますが、原則としては、暦上の月で判断しますので、毎月訪問が一回あればモニタリングを行っていることになります。
ただ、生活状況の変化なども踏まえ、適切なタイミングで利用者宅を訪問することが必要です。
ケアマネジャーが訪問していない?確認方法は
ケアマネジャーが訪問しているのか、訪問していないのか。確認する方法はいくつかあります。
本人に確認する
シンプルに本人に聞いてみましょう。「ケアマネジャーが最後に家に来たのいつ?」と聞きましょう。
ただ、これも難しい問題なのですが、認知症の一人暮らしの方もたくさんいます。そして、ケアマネジャーという名称をしっかり理解している方も実は少ないです。自分もケアマネジャーとして仕事していましたが、「ケアマネ」という職業の認知度はあまり高くないです。もちろん、「○○さん」とか、「いつも来る人」とか、事業所名とかで認知していただいているのですが、「ケアマネジャー」という名称で認知している人は多くはないです。
認知症ではなかったとしても、ケアマネジャーという言葉でピンとこない場合も多いので気を付けましょう。
サービス利用表・ケアプランなどの書類を確認する
自宅を訪問したら、ケアマネジャーが訪問した痕跡がないか確認しましょう。一番わかりやすいのがサービス利用表です。これはケアマネジャーが訪問した際に利用者に次月のサービス予定を説明するために配布する書類です。サービスの利用予定日・サービス利用に伴う自己負担額の目安などが記載されています。多くの事業所ではサービス利用表を利用者に確認していただき、一部配布し、一部に署名や捺印を受けるという方法をとっています。
もし、サービス利用表を配布しているケアマネジャーの事業所であれば、必ず毎月のサービス利用表が自宅にあるはずです。その書類の有無を確認するといいでしょう。
ただし、これも必ず毎月配布することが制度上厳格に規定されているかというと、そうではありません。市町村によっては配布義務はないことを明示している場合もあります。次月のサービスの内容を確認していただき同意が得られれば、本人がいらないと言えば配布しない場合もあります。
もしこれまで毎月あった利用表が突然ある時から途切れたりしていたら、ん?と思った方がいいかもしれません。逆に、今月のサービス利用表が自宅にあれば、先月はケアマネが訪問していることがわかり、翌月のサービス利用表があれば今月中に訪問があったと考えられます。サービス利用表には発行日・作成日が記載されている場合も多いので、その日付以降に訪問していると考えられます。
他にもケアマネジャーが配布する書類で、ケアプラン(居宅サービス計画書)などもありますが、これは介護保険の認定が更新された場合や、サービス内容に変更があった場合に限ります。もし、自宅に直近の日付でケアプランがあれば、ケアマネジャーが訪問していることがわかります。
このような書類の痕跡を通して訪問状況を確認する材料になる場合もありますので確認しましょう。
近所の方に聞いてみる
1人暮らしの方の生活を近所の方は結構気にかけている場合も多いです。近隣の協力が必要になる場面も多いので、近隣に挨拶に行く機会があったらそれとなく聞いてみましょう。「あ、よく来てますよ。」というような返答をしてくれる場合もありますし、ケアマネが近隣の方と連携してくれている場合もあります。
ヘルパーさんや看護師の連絡ノートを見てみる
1人暮らしの高齢者宅には事業所間で情報共有するための連絡ノートを置いている場合があります。ヘルパーや訪問看護師、リハビリスタッフ、訪問医、ケアマネジャーなどが情報共有するのに使っています。誰が書いたかなどを見ていくと、その中にケアマネジャーが書いたコメントなどもあります。もちろん毎回訪問時に書くことはないと思いますが、少なくとも、ケアマネがコメントを書いた日には訪問していることがわかります。
これらの方法を使っても、ケアマネが訪問している痕跡が一切ない。そんな場合は、ケアマネが訪問していない可能性もあります。
なぜケアマネは訪問していないのか、考えられるパターン
ケアマネが毎月の訪問をしていない。そんなことがあるのか。以下のような場合が考えられます。
要支援の利用者の場合は訪問頻度は3カ月に1回
月に一回訪問が義務付けられているのは要介護の認定で、居宅介護支援の契約をしている場合のみです。介護保険の認定が要支援の場合は、介護予防ケアマネジメントもしくは予防支援となり、訪問頻度が異なります。要支援の場合は3カ月に1回以上の訪問というルールになります。
要支援の方の場合は、状態の変化がそれほど頻繁ではない場合も多く、ケアマネの訪問頻度をゆるめに設定されています(その代わりケアマネへの報酬も安いです)。
介護認定が要支援であれば毎月訪問ではないので、認定区分を確認しておきましょう。
オンラインモニタリング
2024年の制度改正からオンラインモニタリングが制度化されました。これにより、オンラインモニタリングと訪問を隔月ずつ行うこともできます。訪問の翌月はオンライン、その翌月また訪問というパターンです。ラインやzoomなどのビデオチャットでモニタリングをすることも可能となっています。
ただし、オンラインモニタリングは本人や家族、サービス事業所や医師の同意が事前に必要とされていますので、もし事前に同意がない状態で行われているのであれば認められません。
このように厳しい運用上のルールがあるため、まだオンラインモニタリングは一般的に広く行われている状況ではありません。詳しくはこちらの記事にまとめています。
感染症の拡大予防の特例
つい昨年までは新型コロナウイルスの感染拡大防止のための特例がありました。感染拡大防止のために必要であれば、本人と相談し訪問以外の方法(電話など)で状況を確認するということもできました。ただし、これはあくまで感染拡大期の臨時的な取り扱いとされています。
感染症拡大防止のために訪問が行われていない期間があったということは考えられます。
今後、また感染が爆発的に増える状況などがあれば、このような措置が取られる可能性もあります。
特段の事情
運営基準には、
特段の事情のない限り、少なくとも1月に1回は利用者と面接を行い
と書いてあります。
この特段の事情というものにはどのような事情があるのか。具体的には以下のようなケースが考えられます。
- モニタリング訪問前に利用者が緊急で入院したため訪問できない
- 災害などにより訪問ができない状況にある
- 自宅に帰ることができない事情がありショートステイを連続利用している
このような場合には自宅への訪問・モニタリングができませんので、特段の事情として認められます。どのような状況下で特段の事情とされるかは市町村によって異なります。
このような場合以外では一度だけ特段の事情として市町村に相談したこともありましたが、あまり例はありません。
他にも、現在介護保険のサービス利用の給付が発生していない場合もケアマネの訪問義務はありません。入院中でサービスを利用していない場合や、介護保険外のショートステイなどをずっと利用している場合も同様、介護保険サービスの利用は発生していないためにケアマネの訪問は必要ありません。
このように例外的なケースでケアマネが訪問しないパターンもあります。
確かにケアマネは人手不足も深刻な状況で、業務も多忙です。かといって、ルールである訪問をしなくていい理由にはなりません。
訪問していない場合は、適切なルールを守っていないとされ、運営基準減算として報酬が減額されます。訪問ができていない状況であれば、改善していく必要があります。
ケアマネが訪問していない場合の対応
ケアマネジャーが訪問していない可能性が高い場合、家族はどのような行動をとるべきでしょうか。
最近の様子について情報共有
まずはケアマネジャーに最近の状況について電話などで確認してみましょう。ここ数カ月で起きている事象・問題などがあり、それをケアマネジャー自身が認識していない・対応していないということであれば心配です。
こんなことがあったら報告してください、こんなことがあったら教えてください。ということは事前にケアマネジャーに伝えておきましょう。
もちろん、過剰にケアマネジャーの負担を増やすことは望ましくありませんが、まったくケアマネジャーと接触がない状態だと、心理的な距離感が広がり、重要な情報共有ができない場合もあります。適度な距離感を持ちながら、必要時に情報共有ができるようにケアマネジャーと連絡をとることで、ケアマネジャー自身も意識的に訪問時に確認するようになるでしょう。
訪問時に連絡ノートにメモを残してくださいと言う
自宅に連絡ノートを置いている場合は、ケアマネにも連絡ノートにコメントを書いてもらうようにお願いするのもいいでしょう。もし訪問時に変わった様子がなくても、いつ来ていたのかわかると助かるので、と伝えるといいでしょう。
もしケアマネに問題がある場合は
もしケアマネに問題がある場合は、ケアマネジャーの変更も含めて検討しましょう。
ケアマネジャーに多くを求めすぎることはよくありません。本人の言うことだけを鵜呑みにするのもよくありません。
本人が「来てもすぐに帰ってしまう」と言っていても、実際は毎回30分くらいは話をしている場合もあります。本人の満足感とケアマネジメントとはまた別問題です。「何もしてくれない」という方もいますが、ヘルパーのように家事などをするわけでもありません。本人の期待と役割が正しく一致していない場合もあります。
それでもなお、ケアマネジャーに何らかの問題があり、訪問もしていないという場合はケアマネジャーを変更することも検討しましょう。ケアマネ変更についてはこちらの記事に詳しくまとめています。
今はケアマネジャーが圧倒的に不足していますので、代わりのケアマネジャーがすぐに見つかるとも限りません。地域包括支援センター等とよく確認することをお勧めします。
まとめ
ケアマネジャーが月一の定期訪問に来ていない、という心配をテーマに記事を作成しました。
このような声は実際よく聞きます。地域包括で勤務していた時にも実際よく聞きました。ただ、実際のところはしっかり定期訪問していることが多く、利用者の今の状況についてもよく理解ができていることもわかります。なので、実際の所は「家族側の取り越し苦労」だったということで終わることが多いです。
ただ、やはりケアマネジャーには、利用者本人の状況をよく知っていてほしいというのは家族の思いでしょう。家族とケアマネの間では信頼関係があり、なおかつしっかり情報共有できる距離感が大事だと思います。
この記事を執筆・編集したのは
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