認知症が一気に進んだ原因は?急激な認知症進行の代表的な3パターンとその対応策。

認知症が一気に進んだ原因とは? 介護コラム
いえケア(在宅介護の総合プラットフォーム)

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

「認知症の症状が急に変わった」と感じることありませんか?認知症は急に症状が進行することがあります。今までこのときはこの対応をすればよかった、というものが崩れ、家族はさらに多くの対応を迫られ混乱します。

認知症の方の介護をしている方からこのような相談をいただいています。

利用者家族
利用者家族

母の認知症が急に進んだようで困っています。もともと、アルツハイマー型の認知症はあると言われていましたが、それでもヘルパーさんの協力を得ながら一人暮らしで生活できていました。

離れて暮らしていますが、月に1回は様子を見に行くようにしていました。

それが、先週会ってみたら、話のつじつまも合わないし、エアコンの温度設定もおかしいし、料理もしていないみたいで、急に認知症が進んだように感じます。

こんな急に認知症が進むことはあるのでしょうか?どうしたらいいでしょうか。

急な認知症の進行でご家族も戸惑っているようです。

認知症はなだらかに悪化していくというイメージを持たれている方も多いと思いますが、必ずしもそうとは限りません。ある日から突然、「認知症が一気に進んだ」というケースも多数あります。

では、どのような原因で認知症の症状が急激に進むのか。この記事では、いくつかの代表的なパターンをわかりやすく解説し、疾患別の傾向や、その対策法などを紹介します。

【この記事を読んでほしい人】

  • 家族の認知症が急激に進んだと感じている人
  • 認知症の対応に困っているご家族
  • 利用者の認知症が急に進んだと感じている介護関係者

【この記事で解説していること】

  • 認知症が急激に進行する代表的なパターン3つ
  • 認知症の進行に対する対応3つ

認知症が一気に進む原因とは?急激な進行のサインを見逃さない

認知症が一気に進んだ?原因3パターン

認知症が一気に進む原因について解説します。

※認知症についての詳細な記事は以下のページに記載しておりますので、こちらもご参照ください。

もっとも代表的な認知症疾患であるアルツハイマー型認知症も含め、認知症というと時間とともに徐々に進行するパターンをイメージする方が多いと思います。

しかし、そうではなく、急激に認知症が進行する場合もあります。今回はそんなパターンに絞ってわかりやすく解説します。

環境の変化(入院・引っ越しなど)

認知症が急速に進行する原因のひとつに、環境の変化があります。高齢者、特に認知症の方は環境の変化に弱いという特徴があります。認知症の方は脳の情報処理や記憶の保持が難しくなります。つまり、新しい情報をインプットし、記憶するということが難しいのです。これまでは定着したルーティンとして行っていた動作がリセットされてしまい、混乱してしまいます。

環境が変われば、トイレの場所がわからなくなる、リモコンの使い方がわからなくなる、電子レンジが使えなくなるなど、これまでできていたことも、不安や混乱からできなくなることがあります。長年住み慣れた環境や見慣れた景色が、安心感や生活の安定をもたらし、認知機能の低下を補うことができるのです。

入院中で認知症が進行する高齢者男性

特に顕著にみられるのが入院による環境変化です。制限が多く、活動量も大幅に減り、生活リズムも乱れます。会話をする機会も少なく、情報のインプット・刺激も極端に少なくなります。もちろん、治療のための薬などの影響も受けます。このような影響から、入院中は認知症が急激に進むという例が非常に多いです。

同様に、ショートステイの利用時などにも認知機能が低下することがあります。生活リズムや環境の変化が、認知機能にも大きな影響を与えます。

親を安心させたいと思って同居するために呼び寄せる方も多いです。もちろんお互いにとってとてもいい選択ですが、今まで一人で何でもやっていた家事を家族に任せるようになり、地域の顔なじみとも離れるなど、活動の質が大幅に減ることがあります。結果として環境の変化で認知症が大幅に進行することが少なくありません。

ただ、入院も含めて環境の変化による認知症の進行は、環境を戻すことで改善する可能性も高いです。入院で急速に低下したと思われる認知機能も、退院して自宅の生活に戻ったらすっかり回復することもあります。こんな状態で退院できるの?という不安を感じる方もいますが、取り越し苦労に終わってほっとするなんて例は多いです。

新たな病気の発症(外傷性の認知症など)

認知症が急速に進行する例として、別の認知症性疾患を発症している例もあります。

もともとアルツハイマー型認知症で、認知症の進行自体はゆるやかだったものの、脳血管性認知症を発症することで急速に進行したように見えるということもあります。

よくあるのが、外傷性の認知症などを発症しているケースです。転倒して頭部外傷し、それがもとで脳神経を圧迫。慢性硬膜下血腫などのように、脳の血流が低下することで見当識障害などが顕著に現れます。

外傷による認知症の進行、頭部を手で抑える高齢者

他にも、正常圧水頭症や脳腫瘍など、脳に何らかの疾患や機能障害が発生することで、認知症が急速に悪化したように見えることもあります。

他にも、脱水や栄養失調などの影響で見当識障害・意識障害などが起きる場合もあります。脱水や栄養失調による見当識障害や意識障害は、厳密には認知症ではないものの、周囲から見れば認知症が進行したようにも見えます。感染症などによる発熱も同様の症状を起こすことがあります。他にもアルコール依存や低血糖なども同様に急激な認知機能低下として現れることがあります。

実際には、これまでの認知症とは別の認知症疾患(もしくは認知症に近い症状)が生まれており、周囲からは、認知症が急激に進行したように見えるのです。

これらの疾患は手術等により改善する可能性もあります。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫は、脳を圧迫している髄液や血腫を取り除けば脳の機能が改善します。脱水や栄養失調も点滴などにより状態が改善すれば回復します。

孤立感(家族との死別や独立など)

無気力で孤立している高齢者

もうひとつは孤立感です。今まであった大事な人間関係を失うことで認知症が急激に進行することがあります。

代表的なのが家族との死別です。特に、妻との死別をきっかけに夫の認知症が急激に進行するということがよく言われます。男性の方が身近な人との別れに影響を受けやすく、認知症が進行するきっかけになる傾向があります。男性の場合は特定の人との関係への依存が高い傾向があります。それに比べ、女性は多様なつながりを地域の中で維持することが多いと言われています。

他にも、子どもたちが独立して遠方に住むことで日常的な接触が減ることなども影響します。交流する機会が減り、社会的孤立が高まると、情報のインプット・刺激が大幅に低下します。さらには、うつ状態や不安感などの精神的なトラブルも発生しやすくなります。

気がついたらあっという間にゴミ屋敷状態になっていたということも少なくありません。

食事などもおろそかになることで栄養状態が悪化、栄養失調から認知機能が低下するなど、間接的に影響する場合もあります。

この場合、地域での関係づくりなどを通して孤立感の解消を目指すことが必要です。デイサービスの利用や地域のサークル等への参加なども大きな効果を持ちます。


このように、認知症が急速に進行する代表的なパターンを3つ紹介しました。

認知症の急速な変化の要因

他にも新しく飲み始めた薬の副作用で混乱しているように見えること、過度なストレスによる影響など、様々なパターンが考えられます。

いずれにしても、急速な認知症の進行には何らかの原因がその陰にある場合が多いです。何が原因かわかれば早期に対応し、進行を食い止めることも可能です。

原因がわかれば対応策はありますが、その原因が何かを突き止めることは困難です。認知症が進行していた、という場合にどんな対応をすればいいのか。具体的な対応方法を紹介します。

認知症が進行していた場合に、家族がとるべき対応策

では、実際に認知症が急速に進行していたことがわかったら、どのような対応をとるのがいいでしょうか。具体的な対応方法を紹介します。

医師に相談する

ひとつは医師に相談することです。家族だけでは気が付きにくい部分も客観的な視点から、医療的に原因を探っていくことができます。

これまで行った認知症テストとの結果の違いや、運動機能障害の有無などを見て、原因を推測することも可能です。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫の場合は運動機能障害を伴う場合も多いため、判断できる可能性もあります。

これまでとの変化が明らかであれば検査をすることで原因を探ることができます。血液検査、MRI、CTなどの検査によって原因を確認できます。あらゆる可能性の中から原因が限定できれば、手術によって改善・完治できる認知症もあります。

介護サービスを利用する

デイサービスの利用で孤立感を解消する

ふたつめの対応策は介護サービスを利用することです。

まずは担当のケアマネジャーと相談しましょう。現状の問題点を分析(アセスメント)し、生活が継続できる対応策を検討します。

例えば、社会的孤立などが原因で認知症が進行しているのであれば、デイサービスを利用することで他社とつながる機会を増やすことができます。引っ越してきた場合なども、新たな人間関係のつながりを作る意味でデイサービスの利用は大きな効果をもたらします。閉じこもりやうつ状態の改善にも大きく役立ちます。

認知症の進行で今までできていた家事などが滞るようであれば訪問介護を活用することもひとつの解決策です。ただ、今までやっていたことをヘルパーにやってもらうというだけではなく、共に行う家事として本人と一緒に行うことで、能力を取り戻していくことができます。できなくなったことがあれば、どの部分を支援すればまたできるようになるか、自立支援の視点からサポートすることができます。

家族のサポート体制

3つ目は家族のサポート体制を改めて構築することです。

認知症高齢者を家族がサポート

認知症の進行で、生活上のリスクは高まります。それが一人暮らしであればなおさらです。安全に暮らしていくために、家族側もどのような支援が必要か、考えましょう。独居の場合であればこのような対策があります。

  • 訪問の回数を増やし、状況の変化に気が付きやすくする
  • ケアマネジャーの訪問時に今までは同席していなかったが家族が誰か立ち会う
  • 通院には立ち会う
  • 毎日電話をする
  • 近隣に声をかけて協力を依頼する
  • 見守りカメラ・センサーなどで安否確認できるようにする

接触回数を増やすことや、専門職からの情報をキャッチしやすくすることで、認知症の状態や生活の変化に気が付きやすくなります。早期に発見ができるというだけでなく、対応・アクションに移りやすくなります。また、自宅でいつまで暮らし続けることができるかを検討する材料にすることもできます。

遠距離介護はまずしっかり体制づくりをしておき、異変をキャッチできる状況にしておくことが大事です。下記の記事も参考にしてみてください。

家族間での調整や役割分担は難しいかと思いますが、下記の記事が参考になるかと思います。

すべてを家族で担う必要はありませんが、家族の心構えや体制づくりは重要です。

まとめ

「認知症が一気に進んだ」という代表的な3つのパターンと、その場合の対応策について解説しました。

今回紹介したパターンに限らず、認知症が一気に進むという事例は数多くあります。認知症の症状にもともとムラがある「まだら認知症」や、レビー小体型認知症のような日内変動の大きな認知症のタイプもあります。これらを正確に見分けていくことは専門職でもなかなか困難です。

それでも、一気に認知症が進む場合には、何らかの原因があることが多いです。それは周囲から見たらほんの些細な変化が原因なのかもしれません。外傷によるものも、周囲は気に留めない程度の軽い転倒事故だったのかもしれません。けれど、脳に与えるダメージが大きく、認知症が進行するということはあるのです。

原因がわかれば改善する可能性もあります。「もう年だから認知症はしょうがない」「自宅で暮らすのはあきらめよう」ではなく、原因を探ることで解決できるかもしれません。

いえケアロゴ

この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


在宅介護のことはじめ

コメント

いえケア 在宅介護の総合プラットフォーム
タイトルとURLをコピーしました