
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と介護サービス事業所がケアプラン情報をオンラインで共有できる仕組みです。従来のFAXや紙のやり取りによる手間やミスを削減し、業務の効率化を図る目的で2023年4月に本格稼働しました。
しかし、全国の普及率は2023年11月時点でわずか5%程度と低迷。多額の予算が投入されているにもかかわらず、十分な効果が出ていないのが現状です。そこで、導入を促進するために2025年6月から1年間の「フリーパスキャンペーン」が実施され、通常年額21,000円(税込)の利用料が無料となります。
本記事では、ケアプランデータ連携システムの現状、フリーパスキャンペーンの詳細、導入メリット・デメリットを解説します。
この記事をおすすめしたい人
- 介護事業経営者や事業所管理者
- ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員
- 介護業界のデジタル化に興味のある方
- ケアプランデータ連携システムのマスコットキャラクター「ケアプー」のファン
この記事に書いてあること
- ケアプランデータ連携システムの現状と課題
- フリーパスキャンペーンの詳細と申し込み方法
- システム導入のメリットとデメリット
ケアプランデータ連携システムとは?

ケアプランデータ連携システムの基本概要
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と介護サービス事業所が、毎月やり取りするケアプラン情報をクラウド上で安全に共有できる仕組みです。
従来の方法では、ケアマネジャーが作成したサービス提供票(予定・実績)などの書類を紙に印刷し、FAXや郵送で送信するのが一般的でした。受け取った事業所は、その内容を手入力する必要があり、転記ミス、送信ミス、確認の手間、データの遅延などの問題が発生していました。
近年、郵便料金の値上げや普通郵便の配達日数の遅延が相次いでいます。特に、2024年には郵便料金の改定が行われ、封書の料金が引き上げられました。さらに、普通郵便の配達が1~2日遅れるケースも増加しており、これが介護事業の運営にも影響を及ぼしています。
このシステムを導入すると、帳票をオンラインで送受信できるようになり、FAXや郵送が不要になります。事業所間での情報共有がスムーズになり、転記ミスの防止、作業時間の削減、業務効率の向上が期待されます。
どんな帳票がやり取りできるのか?
ケアプランデータ連携システムでは、標準仕様に対応した帳票をデジタルで送受信できます。具体的には、以下の帳票が対象です。
- 居宅サービス計画書(第1表・第2表・第3表)
- ケアマネジャーが作成する計画書で、介護サービスの内容や目標が記載される
- サービス利用票(第6表)・サービス利用票別表(第7表)=サービス提供票・別表
- 介護サービスの予定を記載し、事業所間で共有するための帳票
これらの帳票は、介護保険制度において必須の書類であり、ケアプランの対象となっている利用者に関しては必ず作成・提出されるものです。特に、サービス利用票(第6表)と別表(第7表)は介護報酬の請求にも関わるため、迅速かつ正確な情報共有が求められます。
厚生労働省が主張する「費用対効果」
厚生労働省は、ケアプランデータ連携システムの導入によって、介護業界全体の業務負担軽減とコスト削減が期待できるとしています。
導入による主な効果は以下の3つです。
1. 業務時間の大幅な削減
✅ FAX送信・確認・転記作業が不要になるため、1事業所あたり年間約200時間の業務削減が見込まれる
✅ サービス提供票のやり取りに関する電話・FAXの問い合わせ対応も減少し、スタッフの負担軽減に
✅ 事務作業の効率化により、ケアマネジャーが本来の業務(ケアマネジメント)に集中できる
2. コスト削減
✅ FAX通信費・郵送費・紙の印刷代・人件費の削減
✅ 厚生労働省の試算では、1事業所あたり年間約80万円のコスト削減効果
✅ 郵便料金の値上げにより、紙の帳票管理コストが上昇している中、クラウドシステムの導入はコスト面での負担軽減につながる
3. 転記ミス・確認作業の削減
✅ サービス提供票の手入力ミスや送信漏れがなくなり、業務の正確性が向上
✅ ケアマネジャーが入力したデータがそのまま共有されるため、サービス事業所側の誤入力リスクが低減
✅ 確認作業が減少し、事業所間のスムーズな情報共有が可能に
厚生労働省は、このシステムが普及することで、将来的には「完全オンライン化」によるさらなる効率化が期待できるとしています。
鳴り物入りでスタートしたケアプランデータ連携システム。その現状はどうなっているでしょうか。
ケアプランデータ連携システムの現状

多額の開発費をかけたにもかかわらず…
ケアプランデータ連携システムは、介護業界のデジタル化推進と業務負担軽減を目的として開発され、政府の支援のもとで導入が進められてきました。しかし、多額の公的資金が投じられたにもかかわらず、その費用対効果については疑問の声が上がっています。厚生労働省は、システムの導入による業務効率化やコスト削減を強調していますが、現場レベルでは普及が進まず、導入による実質的なメリットを享受している事業所はまだ少ないのが現状です。
現時点では、システムの維持・改修に多額の税金が使われているにもかかわらず、十分な成果を上げているとは言い難い状況です。
普及率と導入状況
システムの普及状況を見ても、その浸透度の低さは顕著です。2024年11月時点での全国平均普及率は6.3%にとどまっています。自治体や地域ごとに大きなばらつきがあり、一部の自治体では導入が進んでいるものの、都道府県ベースで10%を越えているのは福井県、静岡県、京都府、鳥取県のみです。
鳥取県が突出して普及率が高く、申請ベースで24.7%。これは鳥取県のモデル事業としての取り組みで積極的にプロモーションを行ったことが影響しており、システム導入に県が補助金を出していることによります。鳥取がモデルになったのは、事業所数が全国で最も少なく、普及率の数字でインパクトを作りやすいということもあったのかもしれません。

引用:厚生労働省:介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システム 地方公共団体向けケアプランデータ連携システム説明会
地域性の似た隣の島根県を見ると、2.8%と全国最低の普及率となっています。県の取り組み次第で大きく異なることがわかります。
多くの事業所は依然として従来のFAXや紙による書類のやり取りを継続しています。これは、システム導入に対する抵抗感や、運用の難しさに起因していると考えられます。
導入事業所については、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の特設サイトでも確認することが可能ですが、掲載されている事業所数は限られており、システムが業界全体に普及しているとは言えません。

導入した事業所でも、相手事業所が未導入の場合には、結局FAXや郵送を併用しなければならず、「システム利用の事業所と紙の書類を扱う事業所で二重のオペレーションが発生し、業務負担が増えてしまう」という問題が浮き彫りになっています。
このように、システムを導入したことで必ずしも業務が効率化されたわけではなく、むしろ「対応の複雑化」により負担が増えたというケースも少なくありません。この状況が解消されない限り、事業所側としては「導入しても実質的なメリットがない」と判断し、導入を見送る要因となってしまうでしょう。
もちろん、年間21,000円(税込)という利用料金が発生することが事業者の出足を鈍らせています。事業所ごとのライセンスなので、複数事業所を運営している場合は、事業所数に応じた利用料が発生します。
ケアプランデータ連携システムは、スタートダッシュで大きくつまずいたと言えるでしょう。
マスコットキャラクター「ケアプー」を制作しPR

システムの普及を促進するために、厚生労働省は公式マスコットキャラクター「ケアプー」を制作し、PR活動を展開しています。ケアプーはクラウドをモチーフにしたキャラクターで、親しみやすいデザインを採用し、システムを身近に感じてもらうことを目的としています。公式ウェブサイトやSNS(X・旧Twitter)を活用し、システムの利便性や導入事例を発信する取り組みが行われています。
「まだケアプー使ってないの!?」と上から目線で煽りに来る好戦的なスタイルと、中央省庁をフォローする権力に対する忠実さを持ち合わせ、広報にかかる予算からエサ代の高い厚労省の犬と呼ばれるキャラクター「ケアプー」。
しかし、この広報戦略がどれほど効果を発揮しているのかというと、残念ながら不透明です。たとえば、公式Xアカウントのフォロワー数は2025年3月時点で264人にとどまっており、決して大きな影響力を持っているとは言えません。また、SNSでの投稿に対する反応も少なく、情報発信の到達範囲が限定的であることがうかがえます。SNSを活用した広報活動が成功しているとは言い難く、ターゲット層である介護事業所の関係者に十分な情報が届いているのか疑問が残ります。
税金を活用してマスコットキャラクターを作成し、PR活動を行うことがどれだけの効果を生んでいるのか、費用対効果を検証する必要があります。特に、業界内では「キャラクターを作るよりも、システムの操作性や導入支援の充実に予算を使うべきではないか」との意見もあり、公的資金の使い方として適切だったのかを再評価することが求められています。
今後の課題と展望
現状の課題を踏まえると、単にシステムを提供するだけでなく、導入事業所が増えるような具体的な施策が必要です。現場では、紙とデジタルのハイブリッド運用がかえって負担になっているため、地域全体での一斉導入を促進する仕組みや、他の補助金制度と組み合わせた導入支援が求められています。例えば、自治体ごとに導入率を一定水準まで引き上げることで、相互運用の負担を軽減し、スムーズな業務改革を促すことができるかもしれません。
現在の導入状況を見る限り、ケアプランデータ連携システムが本来目指している「業務効率化」と「負担軽減」を実現するためには、さらなる改善が不可欠です。公的資金を投じて開発された以上、単なるシステム提供にとどまらず、より実効性のある施策が求められています。
フリーパスキャンペーンの詳細
ケアプランデータ連携システムの普及を加速させるため、厚生労働省と国民健康保険中央会は、2025年6月1日から2026年5月31日までの1年間、フリーパスキャンペーンを実施することを発表しました。このキャンペーンでは、通常**年額21,000円(税込)**のシステム利用料が無料となり、導入にかかるコストを大幅に抑えられるチャンスとなっています。
キャンペーンの対象と条件
このフリーパスキャンペーンは、新規導入を検討している事業所だけでなく、既に利用している事業所や、過去に利用していたが解約した事業所も対象となります。具体的には以下のような事業所が対象になります。
フリーパス期間中に申し込みを行えば、申請日から1年間は無料で利用できるため、早めに導入するほど長く無料期間を享受できます。
詳細はケアプランデータ連携システムサポートサイトをご参照ください。


申し込み方法と手続き
キャンペーンへの申し込みは、国民健康保険中央会の専用サイトから行うことができます。申し込みの流れは以下の通りです。
- 事業所ごとのID取得(未登録の場合)
- 電子証明書の準備(一部の事業所では不要な場合もあり)
- システムのインストールと初期設定
- オンライン申請を完了
- 無料期間の開始(審査完了後、利用可能に)
手続き自体は比較的シンプルですが、電子証明書の取得や、システム設定に不安を感じる事業所も多いため、オンライン説明会などを活用することが推奨されています。
オンライン説明会の開催
フリーパスキャンペーンの開始に先立ち、2025年3月14日(金)13:30~15:00にオンライン説明会(YouTubeライブ配信)が実施される予定です。説明会では、以下の内容が詳しく解説されます。
- フリーパスキャンペーンの詳細と申し込み方法
- システムの機能や活用事例
- 導入の流れとよくある質問
- サポート体制について
この説明会は申し込み不要で、誰でも無料で視聴可能です。また、アーカイブ配信も予定されているため、当日視聴できない場合でも後日確認できます。
期待される効果と課題
フリーパスキャンペーンにより、導入コストの壁が取り払われることで、これまで費用面で導入をためらっていた事業所が参加しやすくなると期待されています。特に、小規模事業所や新規事業所にとっては大きなメリットとなるでしょう。
しかしながら、システムを導入しても、相手事業所が未導入であれば業務効率化のメリットが限定的になってしまうという課題は残ります。さらに、無料期間終了後の継続利用についても、事業所ごとに費用負担をどう考えるかがポイントとなります。
本キャンペーンは、単なる一時的な導入促進策ではなく、この期間中にどれだけシステムの利便性を実感できるかが、その後の定着率を大きく左右することになるでしょう。
ケアプランデータ連携システムのメリット
ケアプランデータ連携システムは、従来のFAXや郵送による書類のやり取りをデジタル化し、介護事業所間の情報共有をスムーズにすることを目的としています。システムの導入によって、業務効率の向上やコスト削減など、多くのメリットが期待されます。ここでは、主な利点について詳しく解説します。
業務効率の向上と時間削減
最大のメリットは、サービス提供票やケアプランのやり取りがオンライン化されることによる業務効率の向上です。これまで、ケアマネジャーが作成したケアプランを紙に印刷し、FAXで送信する作業には多くの時間がかかっていました。また、FAXを受信した介護事業所側でも、内容を手入力し直す手間がありました。

引用:厚生労働省「介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システム」
システムを導入すると、データをそのまま送受信できるため、手入力の必要がなくなり、作業時間を大幅に削減できます。厚生労働省の試算では、1事業所あたり年間約411時間の業務時間が削減できるとされています。これにより、ケアマネジャーや事務担当者は、利用者対応など本来の業務により多くの時間を割くことができるようになります。
転記ミスや書類紛失の防止
FAXや紙の書類のやり取りでは、誤送信や転記ミスが発生しやすく、内容を確認するために何度も電話でのやり取りが必要になることもありました。また、紙の書類は保管や管理が煩雑であり、紛失のリスクも伴います。
ケアプランデータ連携システムを利用すれば、データの直接送受信が可能になるため、転記ミスや情報の行き違いを防ぐことができます。また、クラウド上でデータを管理できるため、過去の書類を簡単に検索でき、ペーパーレス化が進むという利点もあります。
コスト削減
システム導入によって、FAX通信費・郵送費・紙の印刷代などのコストが削減されます。厚生労働省の試算では、人件費削減も考慮した場合、1事業所あたり年間約81万円のコスト削減効果が見込まれています。特に、最近の郵便料金の値上げや普通郵便の配達遅延の影響を考えると、郵送に依存しないデジタル化のメリットはますます大きくなっています。

引用:厚生労働省「ケアプランデータ連携システム」の概要等の 周知について
また、書類の郵送や手持ちでの持参にかかる交通費も削減でき、業務の効率化とコスト削減を同時に実現できる可能性があります。
ただ、あくまでこれはすべての事業所が導入した前提ですので、それまでには途方もない時間がかかり、費用効果も目に見えるまでは時間がかかるかもしれません。
複数の介護ソフトと連携が可能
ケアプランデータ連携システムは、介護業界で広く使われているソフトウェアと連携可能な標準仕様を採用しており、異なるソフトを使用している事業所間でもスムーズに情報共有ができます。これにより、「特定のシステムを導入しないと使えない」という制約がなくなり、既存の業務フローを大きく変更せずに導入しやすい環境が整っています。
利用者サービスの向上
ケアマネジャーや事業所の事務作業が軽減されることで、より多くの時間を利用者対応に充てることが可能になります。また、情報のやり取りが迅速化することで、サービス提供票の調整や変更の対応がスムーズになり、利用者に適切なサービスをより速く提供できるようになります。
このように厚生労働省はケアプランデータ連携システムのメリットを強調していますが、これらの試算が現場の実態を正確に反映しているものとは言えないでしょう。
半面、デメリットも数多くあります。
ケアプランデータ連携システムのデメリット

ケアプランデータ連携システムには、業務の効率化やコスト削減といったメリットがある一方で、導入にあたっていくつかの課題やデメリットも存在します。特に、費用面や運用上の制約、業務フローの変化による影響については慎重な検討が必要です。
1. 無料期間終了後の費用負担
フリーパスキャンペーンによって、2025年6月1日から1年間は無料で利用できますが、それ以降は年額21,000円(税込)の利用料が発生します。これまでFAXや郵送のコストはかかっていたとはいえ、システムの利用料として新たにコストが発生する点を負担に感じる事業所も多いでしょう。特に、小規模な介護事業所や経営に余裕がない施設では、この費用を継続的に負担できるのかが課題となります。
一部の自治体では補助金などを活用できる可能性もありますが、補助金がない地域では「無料期間が終わって業務改善効果がなければ解約したい」という事業所も出てくる可能性があります。フリーパス期間中にどれだけシステムの利便性を感じ、費用をかけても導入する価値があると判断できるかが重要です。
2. 相手事業所が未導入の場合の二重オペレーション
システムを導入した事業所同士ではデータ連携がスムーズに行えますが、相手の事業所が未導入の場合、これまで通りFAXや郵送で対応する必要があります。そのため、結局「システムを利用する事業所向けのデータ送信」と「紙やFAXでやり取りする事業所向けの対応」という二重のオペレーションが発生し、業務負担が増えるケースもあります。
普及率は全国平均で約5%程度と低迷しており、導入事業所ゼロの市町村もあります。このため、「自分の事業所だけ導入しても、結局FAXや紙の運用を続けなければならない」といった状況が発生しており、導入をためらう事業所も少なくありません。
3. 1台のPCでしか利用できない制約
現在の仕様では、ケアプランデータ連携システムは基本的に1台のPCにインストールして利用する形となっています。そのため、複数のPCやタブレットからアクセスすることができず、業務の流動性が制限される可能性があります。
例えば、ケアマネジャーが外出先からタブレットでサービス提供票を送信するなど、異なる端末から作業したりすることができない仕様になっています。提供票や実績を一括送信する場面では使いやすいかもしれませんが、随時発生する情報共有に適していないことがわかります。
4. システムの導入・設定のハードル
システムを利用するには、事業所ごとのID取得や電子証明書の準備、専用ソフトのインストールなど、一定の初期設定が必要です。普段PCを使い慣れていない職員にとっては、この手続きが難しく感じられる可能性があります。また、ITに詳しいスタッフがいない事業所では、設定や操作方法の習得に時間がかかることも考えられます。
厚生労働省は導入支援のためにオンライン説明会やサポート体制を整えていますが、「ITに不慣れな職員でも簡単に利用できるか?」という不安は、実際の導入のハードルとして残るでしょう。
5. 導入効果が実感しにくい事業所もある
システムの導入メリットは、特にFAXでのやり取りが多い事業所や、大規模な介護サービス事業所において顕著に表れると考えられます。しかし、もともとFAXの送信業務が少ない小規模な事業所では、導入しても業務効率化の効果をあまり実感できないケースもあるでしょう。
また、デジタル化によって生じる業務フローの変化に適応するまでには時間がかかります。例えば、「今まで紙で送っていた業務をすべてデジタルに移行するのは難しい」「スタッフが慣れるまでの間、逆に作業が煩雑になる」といった声もあり、スムーズな移行のためには業務全体の見直しが求められる場合もあります。
現在行っている作業で慣れているので、それをあえて壊したくないという思惑が生まれる可能性もあります。
このように、システムの導入は、業務効率化やコスト削減の大きな可能性を持っていますが、普及率の低さや運用上の制約、コスト負担などの課題もあります。これらのデメリットを理解した上で、導入を検討することが重要です。
実際に導入した事業所の口コミ・評判
ケアプランデータ連携システムは、2023年4月の本格稼働以来、全国の介護事業所で導入が進められています。普及率はまだ低いものの、実際に利用した事業所からは、「業務負担が軽減された」「事務作業がスムーズになった」といった肯定的な意見がある一方で、「導入してもメリットが感じられない」「二重オペレーションが発生して負担が増えた」といった否定的な意見も寄せられています。

毎月、サービス提供票をFAX送信していたが、一部はPC上で数クリックするだけで完了するようになった。紙を印刷しなくなっただけでも業務負担の軽減を実感できる。

サービス提供票の誤読や、転記ミスがなくなり、事務作業が減った。時間変更の多い訪問介護の実績なども自動で取り込まれるのでとても楽になった。

データ連携するようになった利用者の分は、FAXや紙の保管をしないで済むため、書類管理の手間が減った。

システム自体は便利だが、連携先の事業所がまだ導入していないため、結局FAXとシステムの両方を使わざるを得ず、手間が増えた。

1台のPCでしか操作できないのが不便。送受信も別の拠点からできたらいいのに・・・

連携システムいち早く導入してみたはいいけど、市内に連携できる事業所がひとつもなかったわよ・・・。無駄な出費をしてしまっただけ。
また、フリーパスキャンペーンが終了した後のコスト負担についても、事業所ごとに慎重に判断する必要があるとの意見もあります。「無料期間はありがたいが、結局21,000円の費用を支払って継続するかどうかは、今後の業務負担を見極めて判断したい」といった声もあり、長期的な利用についてはまだ慎重な姿勢を示す事業所も多いようです。
導入事例の傾向
現時点では、全国の導入率は低いものの、自治体単位での導入推進が進められている地域では一定の効果が見られるケースもあります。特に、市町村ごとに普及率が30%を超えた地域では、導入メリットを活かせる状況が生まれています。
しかし、普及が進んでいない地域では、導入しても結局従来の運用と併用せざるを得ない状況が続いているため、効果が限定的となっているのが現状です。これが、システム導入をためらう要因の一つにもなっています。
ケアプランデータ連携、今後の課題と期待
ケアプランデータ連携システムは、デジタル化による業務効率化の可能性を持っていますが、普及が進まなければ十分な効果を発揮できません。今後の課題としては、以下のような点が挙げられます。
- 自治体単位での導入支援を強化し、普及率を向上させる
- システム操作の簡素化や、導入サポートを充実させる
- 1台のPCでしか利用できない制約を解消し、より柔軟な運用を可能にする
- フリーパス期間終了後の継続利用を促進するための支援策を検討する
導入事業所の口コミからも分かるように、システムの利便性を実感している事業所も多く、今後普及が進めば、介護業界全体の業務効率向上につながる可能性があります。フリーパスキャンペーンを活用しながら、どのように導入を進めていくかが、今後の鍵となるでしょう。

そもそもシステム導入当初からちゃんと予算をつけて導入を広げるべきだったんですよね。せめて居宅介護支援事業所と地域包括には無償で利用できる状況にしておけば、サービス事業所の導入は進むはずだったのに、後手を踏んでしまったことが最大の失敗ですよね。かえってコストが高くつき、導入数が少ないから意味がないという印象を覆すまでにはそれ以上に高いコストがかかってしまいます。
もちろん、諸々の問題はありますが、データ連携は業務効率化に重要ですので、ケアプランデータ連携システム以外の選択肢も含めてデータ連携が進むことを期待したいです。

この記事を執筆・編集したのは
いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
(運営会社:株式会社ユニバーサルスペース)

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