介護の相談窓口はどこにある
ある日突然やってくる在宅介護。在宅介護は「わからないことだらけ」の状態からスタートします。
これは何の病気?何の薬?どうしたらいいの?介護者となった家族は手探りの状態で介護と向き合います。
そんな介護の困りごとを相談できる相談窓口があります。
1人で悩まず、1人で抱え込まないことが在宅介護を成功させるための最大の秘訣。まずは信頼できる相談窓口を見つけることから始めましょう。
身近な相談窓口
在宅介護の相談窓口はあなたの身近なところにあります。
すぐに相談できる、話を聞きに来てくれる相談窓口がありますので、上手に活用していきましょう。
介護をしていてつらい時があっても、困りごとや愚痴もちゃんと聞いてくれる人がいる、一緒に悩んでくれる人がいる、心配してくれる人がいる。そう思えるだけでも心強くなります。
あなたにとって、信頼できる相談窓口がきっと身近にあります。
窓口の機能・特徴を把握する
介護の相談窓口も様々で、それぞれに機能や役割・特徴が異なります。
相談する内容や状況に応じて、適切な相談窓口があります。今回紹介する窓口はすべて無料で相談できる窓口です。
その機能や特徴を理解し、上手に活用していきましょう。
介護の相談窓口
地域にある介護の相談窓口を5つ紹介します。
介護の相談窓口の機能や役割、特徴を1つずつ解説します。
地域包括支援センター
最初に紹介する相談窓口は地域包括支援センターです。地域包括支援センターは地域に暮らす高齢者の総合的な相談窓口です。
平成18年の介護保険法改正により創設されました。
日常生活圏域(主に中学校区)に一か所を目安に全国すべての市町村に設置されています。
現在、地域包括支援センター施設数は全国で5,221施設となっています。市町村ごとに独自の呼称・愛称をつけている場合があり、「高齢者支援センター」や「お年寄り相談センター」など、地域包括支援センターという名称を使っていない場合もあります。
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員という介護・保健・福祉の専門3職種を配置しており、介護に関する相談に対応しています。
地域包括支援センターでは、以下の4つの事業を行っています。
総合的な相談窓口なので、利用したい制度を問わず、幅広い相談に対応してくれます。具体的には、以下のような状況で相談するといいでしょう。
「介護が必要になったとき」
「介護保険の認定申請をしたいとき」
「ケアマネジャーの対応に不満があるとき」
「虐待を発見したとき」
「介護予防のために運動をできる場所を探しているとき」
地域に暮らす65歳以上の高齢者に関することであれば、誰でも相談することができます。
ただし、地域包括支援センターには担当エリアが定められており、相談することができる地域包括支援センターは1つだけ。地域包括支援センターを選ぶことはできません。
どこの地域包括支援センターが担当かわからないときには市役所・区役所に相談してみましょう。
地域包括支援センターの役割についてはこちらの記事に掲載しております。
市役所・区役所
介護の相談窓口、2つ目は市役所・区役所です。その地域で生活していれば、区役所・市役所がどこにあるか、ほとんどの人が知っています。
介護・福祉の担当課の名称は市町村によって異なりますが、高齢者福祉課や介護保険課、介護福祉課のような名称になっています。
市役所・区役所の窓口では介護保険の申請や、市町村独自で行う福祉サービスの申請、負担減免などの助成制度の申請手続きなどができます。
介護に関する手続きについての相談をすることはできますが、事務的な対応が多く、個別的・具体的な介護に関する相談は地域包括支援センターにつないで相談終了となる場合が多いです。
改めて地域包括支援センターに連絡し、サービスの利用や介護方法などについて相談することになります。
誰もが知っていて信頼できる相談窓口ですが、申請などの手続きを事務的に処理することや、適切な機関につなげるという対応で終わる場合が多く、介護についての個別的な相談対応までは行き届きません。
具体的な相談を行う場合は地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
居宅介護支援事業所
介護の相談窓口、3つ目は居宅介護支援事業所です。居宅介護支援事業所は在宅の高齢者を支援するケアマネジャーが在籍している事業所です。
市役所や地域包括支援センターを通さなくても、直接居宅介護支援事業所に相談し、要介護認定の申請や、ケアプランの作成をお願いすることができます。
ケアマネジャーをお願いしたい事業所が決まっているのであれば、居宅介護支援事業所にダイレクトに相談するのも1つの方法です。
「近所に評判のいいケアマネジャーさんがいる」「近所の○○さんがお世話になっているケアマネジャーさんはフットワークが軽くてすぐ来てくれる」など、近所の口コミも有力な情報源です。
信頼できるケアマネジャーがいるようであれば、直接そのケアマネジャーが所属している居宅介護支援事業所に相談してみましょう。
ただし、直接居宅介護支援事業所に相談する際には注意点が1つあります。それは、認定が要支援となった場合です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーはあくまで在宅の要介護認定の高齢者を担当するのが仕事です。
要支援の認定が出た場合、原則的には地域包括支援センターが管轄となります。
事業所によっては要支援の利用者を担当することができないところもありますので、要支援認定が出た場合、居宅介護支援事業所のケアマネジャーではなく、地域包括支援センターが担当する場合もありますので注意しましょう。
医療機関
介護の相談窓口、4つ目は医療機関です。かかりつけの病院やクリニックでも介護に関する相談を受け付けています。
大きな病院であれば医療相談室・患者支援センター・地域連携室といった患者相談の部署がありますので、そこで介護に関する相談ができます。
担当医師から病状の説明を聞いたけれど、「専門用語が多すぎて何を言っているのかよくわからなかった」「その場では詳しく聞けなかったけれど確認したいことがある」「食事や栄養をどうしたらいいのか相談したい」など、確認したい場合は医療機関の相談室に相談することもできます。
相談内容によっては、地域包括支援センターや地域の居宅介護支援事業所などの相談機関と連携をとってくれます。医療機関によっては居宅介護支援事業所を併設し、ケアマネジャーが在籍している医療機関もあります。
そのまま介護サービスの調整やケアプランの作成をお願いすることもできます。
民生委員
介護の相談窓口、5つ目は民生委員です。民生委員は厚生労働大臣からの委託を受けた地域の相談窓口です。
地域の実情をよく知り、社会福祉の増進に寄与している人の中から選ばれたボランティアです。同じ地域に暮らす住民でもあることから、地域住民にとって最も身近にいる相談窓口です。
民生委員は介護や医療の資格を持った専門家ではありませんが、地域内で太く密接なネットワークを持っています。
「○○のことだったら●●さんに聞いたらわかるわよ」「○○に行けば全部やってくれるわよ」など、ネットワークや経験を駆使して相談対応を行います。
地域で信頼できるケアマネジャーやサービス事業所の情報なども把握していることもあります。
1人暮らし高齢者の見守り訪問を行うことや、地域の高齢者サロンに参加する民生委員もいます。民生委員は専門職ではないものの、地域福祉を支える身近で頼れる相談相手です。
介護の相談窓口、5つを紹介しました。
いずれも身近な相談窓口ですが、それぞれの機能や役割が異なります。一番適切と思われる期間に相談しましょう。
それでもどこに相談したらいいいのかわからない、そんなときに取るべき方法を次の章でお伝えします。
迷ったらまずは地域包括支援センターに
総合相談窓口
迷ったらとりあえず地域包括支援センターに相談しましょう。
なぜなら、地域包括支援センターは地域の高齢者に関する総合的な相談窓口で、どんな相談にも対応してくれる窓口だからです。
介護保険の申請に関する相談のみならず、市町村の福祉サービスの申し込み、介護方法についての相談、サービス事業所の紹介、生活困窮に関する相談、成年後見制度利用に関する相談、消費者被害にあっている高齢者についての相談、健康相談、近隣の高齢者虐待についての相談など、幅広い内容の相談ができます。
地域包括支援センターだけでは対応できない問題だとしても、適切な専門機関につないでもらうことができます。
どこに相談したらいいのか、迷ったらまずは地域包括支援センターに相談しましょう。
ケアマネジャーの事業所探しも
ケアマネジャーの事業所を探すときにも地域包括支援センターに相談しましょう。
要介護認定が決定したら、介護サービスを利用するために、ケアプランを作成するケアマネジャーを決めなければいけません。
担当してもらうケアマネジャーの事業所を探すときも地域包括支援センターが相談に乗ってくれます。
地域包括支援センターの職員が公平中立な視点から、相談内容に合わせて適切なケアマネジャーを紹介してくれます。
ケアマネジャーの紹介をお願いするときには、希望する条件を伝えましょう。
ケアマネジャーに以下のような条件を求められる方がいるので、参考のために紹介します。
地域包括支援センターは地域のケアマネジャーのバックアップを行う機関でもあります。地域内のケアマネジャーの特徴や得意分野などの情報も把握しています。
ケアマネジャーを決めるためには、地域包括支援センターに相談し、紹介してもらうのがスムーズです。ケアマネジャー探しが必要な場合は、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
担当のケアマネジャーが決まれば、今後はケアマネジャーが中心になって介護の相談を受けることになります。
要支援の場合は、基本的には地域包括支援センターもしくは地域包括支援センターからの委託を受けた居宅介護支援事業所が介護予防のためのケアプランを作成します。2024年4月からは居宅介護支援事業所が予防支援の指定を受けて直接利用者と契約することができるようになりました。詳細はこちらの記事にもまとめております。
次の章ではケアマネジャーの役割について解説します。
在宅介護の要、ケアマネジャー
在宅介護では、様々な専門職が連携しながら利用者の生活を支援します。その支援チームの要になる存在がケアマネジャーです。
ケアマネジャーという名前は聞いたころはあるけれど、「そもそもケアマネジャーって何をしてくれる人?」と疑問を持っている人も多いでしょう。
ケアマネジャーの役割について解説します。
ケアマネジャーの役割
ケアマネジャーは在宅介護の頼れる相談相手
ケアマネジャーは在宅介護をする人、される人にとって、頼りになる相談相手です。ケアマネジャーは介護支援専門員の通称で、介護保険法に位置付けられた専門職です。
介護や看護・医療の国家資格保有者が実務経験を積み、試験に合格し、研修受講修了しなければ、ケアマネジャーとして仕事をすることができません。
月に一回は利用者のご自宅を訪問(モニタリング)し、介護に関しての相談や、新たな課題が生まれていないかを確認します。
ケアマネジャーは介護に関する相談を受けるだけでなく、以下のような役割を持っています。
利用者本人や家族の状況から、必要なサービスについて提案・利用調整し、サービス利用、課題解決につなげる重要な役割を果たします。
ケアマネジャーが機能しないと、支援チームの連携が取れず、利用者や家族の求めるケアが提供されません。ケアマネジャーは介護保険制度の要と言われる重要な存在です。
ケアマネジャーにはなんでも相談できるのか?
ケアマネジャーには「なんでも」相談できるか、というと、そうではありません。
毎月自宅に足を運んでくれるので、ついつい家庭内の愚痴や身の上話、話が長くなる利用者や家族もいます。
なんでも相談してくださいとは言うものの、ケアマネジャーは便利屋ではありません。
ケアマネジャーをしていると、業務外のいろいろな相談をされることがあります。
冗談のような話ですが、ケアマネジャーをしている人であればこのような相談を受けること、一度や二度ではないはずです。
いずれも、ケアマネジャーの業務で対応できる内容ではありません。
※ちなみに全部実体験で相談された経験があります。
ケアマネジャーは一人当たり標準担当件数35件の利用者を受け持っており、多忙です。ケアマネジャー自身が「なんでも相談してください」と言っていたとしても、ケアマネジャーの仕事を理解した上で相談するようにしましょう。
ケアプランとは
ケアマネジャーの仕事の1つがケアプラン(居宅サービス計画)を作ることです。
ケアプランは、利用者の課題を明らかにし、長期目標・短期目標を定め、関係機関それぞれの役割と注意点を記載した計画書となっています。
訪問介護事業所やデイサービスなどのサービス事業所は、このケアプランに基づいてサービス提供を行います。
利用者一人一人の状況や希望に合わせた、完全オーダーメイドの計画書になっています。
参考:居宅介護サービス計画書(1)
ケアプランを作るためには利用者本人や家族からの情報収集が重要です。
一年後にどんな自分になっていたいか、どんなことを実現したいか、という目標が固まっていれば、利用者にとっても大きなモチベーション・生きる希望になります。
サービス担当者会議
ケアマネジャーはサービス事業所などの関係機関を招集し、サービス担当者会議を開催します。利用者本人・家族も出席し、普段の様子や困りごとなどについて話し合います。
出席者はケアマネジャーが利用者に関わるサービス事業所の担当職員などから選ぶのですが、具体的にはこのような方々が集まることがあります。
介護保険サービス事業所にとどまらず、地域の方も含めて話し合いが行われることもあります。
利用者に関わる人・機関がそれぞれの役割を確認し、課題があれば専門職と一緒に話し合い、解決の道を探します。
一度に多くの人が集まり、気後れしてしまう方もいますが、それだけたくさんの方がサポートしてくれているということも実感でき、今後も続く在宅介護のモチベーションにすることもできます。
困りごとがいくつもあって、あれもこれも困っているので助けてほしい!では話し合いの焦点がブレてしまうので、優先的に解決してほしい問題を絞って話し合うとスムーズに会議が進行し、着地点を見出しやすくなります。
ケアマネジャーと協力しながら、意義のある話し合いを目指しましょう。
ケアマネジャーは変更することもできる
ケアマネジャーが在宅介護のカギを握る重要な存在であることがわかりました。しかし、そのケアマネジャーが「信頼できない」という場合はどうしたらいいのでしょうか。
「相談してもちゃんと取り合ってもらえない」「いつも連絡がつかず、折り返しもしてくれない」「月に一回来ると言いながら、しばらく訪問にも来てくれない」など、ケアマネジャーとして信頼できない人が担当になってしまうこともあります。
そんなときには、ケアマネジャーを変更することができます。ケアマネジャーは一回契約したら変更できないと勘違いしている人も多いのですが、居宅介護支援事業所との契約を終了し、担当事業所を変更することが可能です。
どうしても信頼できないという場合は、同じ事業所内の別のケアマネジャーに担当変更をお願いするか、別のケアマネジャー事業所に変更することをおすすめします。
他の信頼できる居宅介護支援事業所を紹介してほしい、という場合は、地域包括支援センターに相談することができます。
在宅介護を続けていくためには、ケアマネジャーとの信頼関係が欠かせません。今のケアマネジャーと信頼関係が作れないと悩んでいる方は地域包括支援センターに相談してみましょう。
ケアマネジャーを変更したいと思っている方には、以下の記事をご参照ください。
まとめ
介護の相談窓口について解説しました。様々な相談窓口があり、それぞれに機能と役割が異なります。
介護に関する相談、迷ったらまずは地域包括支援センターに相談しましょう。その後、要介護の認定が出たら担当するケアマネジャーが相談窓口となります。
ケアマネジャーは在宅介護をする上で要になる存在です。ケアマネジャーと相談しながら無理のない在宅介護を目指しましょう。