【どうして食べない】認知症高齢者の食事拒否!今すぐ試せる対応法と改善策11選!

認知症高齢者の食事拒否。食べない原因は? 介護コラム
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いえケア 編集部

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いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

認知症の方の食事トラブルでよく聞くのが「食事を食べない」「食事の拒否」というものがあります。

栄養のためにしっかり食べてほしい。そんな家族の思いはなかなか届かないようです。このような質問をいただいています。

利用者家族
利用者家族

食事はやっぱり大切なのでちゃんと食べてほしい。でも、しょっちゅう「いらない」と言って食べようとしないんです。無理やり食べさせるわけにもいかないし、どうしたらいいでしょうか。

食事を食べないというのは家族にとってもやはり心配ですよね。

では、どうしたら食べてもらえるのか。その原因から探っていきましょう。

認知症による食事拒否の原因

認知症の方の食事拒否。原因は様々です。

疾患を主な原因としたものもあれば、環境に原因があるものもあります。

食べたくなければ放っておけばいい。またお腹がすけば食べるだろう。と、放っておくと、本当に食べなくて脱水や栄養失調になってしまうのが認知症なので、放ってばかりもいられません。

では、なぜたべたくないのか。認知症による食欲低下、具体的に原因を解説します。

認知機能のトラブルによるもの

まず認知機能の低下が主な原因となっているパターンを解説します。

失認(認識障害)=「それが食べ物だとわからない」

認知症の方の症状のひとつに、失認というものがあり、食べ物を食べ物と認識できないことがあります。つまり、目の前に置かれたものが食べ物と思えない状態です。食べ物でないものを食べることはできない状況です。食事の彩りやにおいなどを工夫するといいでしょう。

失行(運動障害)=「食べ方を忘れてしまう」

目の前にあるのが食べ物だとわかっていても、どうやって食べたらいいのかがわからない。これが失行です。実は私たちが何気なく行っている食べるという動作も複雑ないくつもの動作を高度に組み合わせているのです。お茶碗を持つ・箸やスプーンを操作する・口に入れたものを咀嚼する・飲み込む、これらの動作が適切にできなければ食事ができません。こまめな声掛けなどが有効です。

妄想(被害妄想)

妄想により、食事を食べないという場合もあります。「毒が入っているに違いない」などの被害妄想を持つ場合もあります。食事を一緒に食べる・同じものを食べるなどで、安心して食べれる場合もありますが、あまり妄想が強い時には無理は禁物です。

意欲の低下=「食欲・意欲がない」

認知症になると全体的な意欲の低下がみられる場合が多いです。特に初期の認知症で起こりやすい状況です。全体的な活動性が低下しますので、それに伴って食欲も減るということも起きやすいです。メリハリのある生活を送ることで食欲が回復することもあります。

集中できない

環境の影響で食事に集中できないことも食欲の低下を招くひとつの原因となります。騒がしい、周囲が気になるなどの影響で、食事に意識が向かなくなることがあります。テレビを消すなど、臥位的な刺激を減らし、食事に集中できる環境づくりも大事です。

それ以外の原因

認知機能の低下が直接の原因ではないものの、間接的な要因となっている場合を紹介します。認知症によるコミュニケーション能力の低下から自分の状態を説明できないことや、意図を伝えられないことなども多いため、認知症があることで問題をより複雑化しています。

摂食・嚥下機能の低下=「噛めない」「食事を飲み込めない」

認知症に原因があるのではなく、摂食・嚥下能力が原因の場合もあります。一般的に加齢とともに噛む力・飲み込む力は低下します。硬いものを食べれなくなることや、なかなか飲み込めないこと、むせることなども多くなります。背景にこのような原因がある場合は、食べやすい食材や食形態にすることなどの工夫で解決できる場合もあります。

口腔内のトラブル

口の中にトラブルがある場合があります。口内炎ができていて口の中が痛い、虫歯で歯が痛い、入れ歯が合わないなどのトラブルも起こりやすいです。また、舌が荒れているため痛い・舌に汚れがたまっているために味覚を感じられないなど、舌のトラブルも意外と多いです。歯科・訪問歯科などに相談することもおすすめです。

食器の操作

箸やスプーンなどの食器類を上手に操作できない・コントロールできない場合もあります。手指に震えが出ることや、握りこむ力が弱くなるなど、疾患の影響で食器をうまく使えない場合もあります。使いやすい食器やスプーンなどを扱いやすいものに工夫しましょう。

薬の影響も

飲んでいる薬の影響で食欲が低下する場合もあります。認知症による興奮状態を避けるために薬を飲ませることもありますが、薬が効きすぎると食欲も含めた生活意欲まで影響が出てしまう可能性もあります。通常、薬は少しずつ増やしていくのがセオリーですが、急に増量した場合などはこういった状態も起きやすいので注意しましょう。

食事の姿勢

食事の姿勢が影響している場合もあります。車いすで食事をする方もいると思いますが、背もたれが後傾している場合は食べにくくもなります。また、足がプラプラして地面やふっとレストについていない場合は足がしっかりつくようにしましょう。

食欲が低下している高齢者

認知症の方が食事を食べない・食事を拒否する原因を説明しました。認知症そのものが原因になるパターンだけでなく、認知症が間接的に影響する場合などもあります。原因が多岐にわたるため、ひとつの原因を特定することは難しいです。

原因が特定できない場合はどうしたらいいか。
いくつか考えられる原因から、すぐに試せることから試していくといいでしょう。

次の章ではすぐに試せる認知症の方の食事の改善ポイントを解説します。

今すぐ試せる具体的な対応法

時間がなくても、何の準備がなくても、その場で今すぐ試せる方法を紹介します。

食事の雰囲気づくり

とてもシンプルなことですが、場の雰囲気を変えるというのは効果的です。まず、食事以外の刺激が多い時には刺激を減らすことがおすすめです。例えば以下のような対応が効果的です。

  • テレビを消すこと
  • 強い光を遮ること
  • 暗いのであれば明るく影が少ないようにすること
  • 音がうるさいようであれば音を遮ること

以下に食事以外の刺激を減らしていくかという意識で考えていくといいでしょう。

一緒に食事を食べる

もし一緒に食事をしていないのであれば一緒に食事をしましょう。食事が目の前にあっても食べるという行為に結び付いていない可能性もあります。なので、一緒にテーブルについて食べることで、食べるスイッチがオンになることもあります。

食事を小分けにする

食事を小分けにすることで食べやすくなります。咀嚼や嚥下にトラブルを抱えている方には効果的です。

時間を改める

無理な時は無理で、食べないときは食べない。そんなときもあります。もし、時間的な余裕が許すようであれば、パッと切り替えて、別のことに一度集中を向けるようにしましょう。しばらく時間がたってからまた食事のタイミングを作りましょう。

このような本当にちょっとした工夫で食べてもらえることもあります。すぐに試せることはまず試してみましょう。もしそれでも食事を食べないときにはもう一歩違うステップが必要になります。

食事を食べてもらうための工夫・改善策

認知症の方も食事が食べれるようになる具体的な対策を紹介します。

食器を工夫する

食器を変えてみるのもひとつの工夫です。

  • つかむ・握るが苦手な方には 握りやすいフォークやスプーンに変更する
  • 食事をすくいやすい食器にする
  • 食事を認識しやすいシンプルな色の食器にする

握りやすさや持ちやすさ、軽さなども大事ですが、見た目も重要です。食べ物がはっきり見えるような食器にすると効果的です。

口腔ケア・歯科受診

口腔内のトラブルが影響している場合もあります。もししばらく歯科にかかっていないのであれば歯科に相談してみるのもひとつの方法です。通うことが難しければ訪問歯科という方法もあります。

  • 入れ歯の調整・作成
  • 口腔ケア
  • 舌苔の除去

舌苔というのは、舌の表面を細菌が覆ってしまう現象で、味覚が感じられなくなります。これを除去していかなければいけないのですが、あまり強くブラッシングすると舌の表面を傷つける原因になります。歯科に相談することもひとつの方法です。

機能に合った食べやすい食事を用意する

咀嚼や嚥下の機能に原因があると思われる場合は食事の形態を考えましょう。ごはんであれば、お粥くらいだったらいいのか、ペーストじゃないと食べられないのか。おかずは一口大か、刻みか、ペーストか、ムース状か。ユニバーサルデザインフードという規格があるので、その基準で見てどのくらいか。リハビリの方や看護師が関わっているときには相談してみるといいでしょう。

家で状態に合った介護用の食事を一から用意するのは大変なので、市販のレトルト食品などを購入しておくことや、食形態を選択できる配食サービスを利用することもひとつの方法です。

食事姿勢の改善

実は食事に影響しやすい食事姿勢。車いすは適切か、という視点も大事です。食事時間が長くなっても崩れずに食事姿勢を保てるようなポジショニングができているか。足は地面についているか。首の角度は嚥下しやすい角度か。など、姿勢を分析し、改善することもできます。姿勢については理学療法士などのリハビリ職に相談してみましょう。

生活習慣の改善

睡眠や運動といった生活習慣も重要です。生活リズムが乱れているのに、決まった時間に食事を食べることを求めてもなかなかうまくいきません。生活リズムを一定にすることで食欲改善の可能性もあります。

また、認知症が原因で活動量が減ると、食欲も低下します。外出などの機会を作り、定期的な運動習慣を作ることが必要です。

食べたいものを食べる

栄養バランスなどの問題もあると思いますが、これは食べれるというものがひとつ見つかるといいですね。たとえば、レトルト食材で本人が好むものをストックしておくと、食べなかったときにも代わりに出せるので安心です。

本人が食べたいものは何か、という本人の意向を大事にするというのも忘れてはいけない視点です。昔、本人がよく食べていたものは何か、一番本人の思い出に強く残っている食事は何か、などの情報をたどっていくのもいいかもしれません。

以上、すぐにできることと改善方法を紹介しました。

すぐにできる対応策

  • 食事の雰囲気づくり
  • 一緒に食べる
  • コミュニケーション
  • 食事を小分けにする
  • 時間を改める

工夫・改善策

  • 食器を工夫する
  • 口腔ケア・歯科受診
  • 食事姿勢
  • 食べやすい食事
  • 生活習慣改善
  • 食べたいものを食べる

どれがヒットするか、どれが本当の課題なのか。見分けることは本当に難しいですし、複合的に問題が重なり合っている場合もあります。いろんなパターンが考えられますので、一度試してダメだった、で諦めないこと。ただし、無理に食べさせることは逆に食事への恐怖を植え付けてしまう可能性もあります。ぜひ参考にしてみてください。

その他の食事に関する質問

認知症の方の食事についてこのような質問・相談も紹介します。

Q
食事は食べないでお菓子ばかりを食べているのですが、食事を食べてもらうにはどうしたらいいですか
A

それにも何かの原因があるのだと思います。たとえば、スプーンや箸が使えないので、手づかみで食べれるお菓子ばかりを食べてしまうことも考えられます。硬いものが食べれないので柔らかいお菓子ばかりを食べている可能性もあります。また、刺激の強いあ時ばかりを好むようであれば、味覚に何らかの異常がある可能性もあります。何らかの精神的なこだわりなどが影響している場合もあります。様々な原因が考えられますので、まずはその状況をよく観察し、医師や看護師等の専門家に相談してみましょう。

Q
いろいろ試したんですけど、それでも食べないです。食事を食べないので痩せてきてしまって。どうしたらいいでしょう。
A

いろいろ手を尽くしても食べないということもあります。食べないことで栄養状態が低下、体力が低下し、嚥下機能も落ち、さらに食べなくなるという負のスパイラルが生まれる場合もあります。このような状況を避けるためにはまずどこかで悪循環を断ち切ることが必要ですので、例えば栄養状態低下を補うために医療用の栄養剤(エンシュアリキッドなど)を処方してもらうこともひとつの方法です。かかりつけの医師に相談してみましょう。

まとめ

認知症の方が食事を食べない、認知症の方の食事拒否について解説しました。食べないことにはきっと何かの理由があります。それを考えることが大事です。

年齢とともに食事量も減っていきますので、今までのように食べることはできないかもしれませんが、全身状態の維持のためにも、ある程度の食事量確保は必要です。ちょっとの工夫で改善できる可能性もありますので、ぜひ試してみましょう。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

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