どう変わる?今から備えたい2024年介護保険改正のポイントまとめ

2024年介護保険制度改正のポイントまとめ 在宅介護の最新情報
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いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォーム
(主任介護支援専門員

訪問介護やデイサービス・訪問看護・ショートステイなどの在宅介護サービスや、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設サービス。これらのサービスは介護保険という制度の下で提供されています。

厚生労働省

公的制度のルールに基づいてサービスが提供されるため、ルールが変更されればそれに伴い、サービス事業所や施設から提供されるサービスの内容も変わります。サービスを提供する事業所やそこで働く人、サービスを受ける人やそのご家族も、制度変更によって様々な影響を受けます。

次回の介護保険の制度改定は、2024年4月に行われることが決まっています。現在は制度改定についての議論が行われていますが、これによって介護保険制度がどう変わるのか、制度が変わることでサービス利用・サービス提供にどのような変化が予想されるのか、できるだけわかりやすく解説します。

2024年介護保険制度改定ポイント7つ

★こんな人に読んでほしい

  • 介護保険のサービスを受けている人・介護者
  • 介護サービスを提供する事業所の職員や管理者・経営者
  • 介護保険の制度改正についてわかりやすく教えてほしいと思っている方

★この記事で解説していること

  • 2024年3月に介護保険制度が改正される
  • 既に大筋の変更内容はまとまっている
  • 今後、最大の焦点は介護保険の自己負担割合を原則2割に引き上げるかどうか

1. 2024年4月介護保険制度が変わります

1-1. 介護保険は3年に1度見直しが行われる

介護保険制度は定期的に見直しが行われる制度です。
制度スタート以降、介護保険制度は何度も形を変えてきました。これは、その時点での財政状況や高齢化の進行状況などによって柔軟に見直しをすることを目的としていました。

ちなみに、前回の2021年改定では、以下のような変更がありました(*1)。

  • 感染症や災害への対応、業務継続計画策定義務
  • ハラスメント対策の強化
  • ICTの活用、利用者の同意に関する署名捺印の見直し(電磁的記録)
  • 介護情報システムLIFEを利用した科学的介護推進体制加算
  • リハビリテーションの見直し(訪問看護ステーションからのリハビリ報酬削減)

その後、介護職員の待遇改善を目指し、介護職員処遇改善加算の上乗せ加算として、介護職員等ベースアップ等支援加算が追加されています。こちらは別の記事でもまとめていますのでご覧ください。

近年の介護保険制度改定は厚生労働省が主導するのではなく、財務省が提言し、それに基づいて議論を行うパターンが定着しています。となると、必然的に社会保障費の見直し、財源確保がメインのテーマとなりやすい傾向にあります。

介護保険改正 世論と財務省の対立

介護保険の削減を推進しようとする財務省、

反発する世論と関係者、

その両者の板挟みにあう厚生労働省。

これらの関係者が集まる厚生労働省介護保険部会で介護保険制度の見直し議論が行われています(*2)。

社会保障審議会(介護保険部会)

さて、2024年の介護保険制度改正ではどのような変更があるのでしょうか。

1-2. 見送りが決定したこと

現在も制度改定の議論真っ只中です。提案が出たものの、議論の末、見送ることが決定した事項もありますので、こちらを先に紹介します。

要介護1・2、総合事業への移行見送り

要介護1と要介護2を軽度者とし、訪問介護・通所介護・居宅介護支援などのサービスを総合事業に移行するという案がありました。介護保険の介護給付サービスから切り離し、市町村事業である総合事業に移行するというものでした。サービスの質の低下、サービス提供事業所の撤退、地域間格差の拡大などが危惧されていました。

こちらも別の記事にもまとめていますが、世論の大きな反対を受け、2024年の制度改定には盛り込まないことが決定しました。

ケアプラン有料化見送り

ケアマネジャーと家族の会話

居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成する介護サービス計画(いわゆるケアプラン)は自己負担がありません。ケアプランに自己負担を徴収すべきという意見は今回に限らず、これまでも制度改正のたびに出てきました。

ただ、ケアマネジャーには公平中立性が求められ、ケアプラン作成以外にも地域支援や給付管理など公共性の高い業務を行っていることから、これに自己負担を徴収するのはふさわしくないという意見も強く、今回も制度改定には盛り込まないことが決定しました。

以上ふたつの論点は議論の末、2024年の改定時には見送りという形で決着しました。ただ、その次、2027年の制度改定に向けて検討を行うということでしたので、引き続き検討は行われるようです。

これ以外に議論が進められているポイントと、それによる影響を次の章で解説していきます。

2. 制度改定の焦点、7つのポイント

2024年の介護保険制度改定の議論、焦点は大きく7つのポイントとあります。

  • 2割自己負担対象者の拡大
  • 通所介護事業所による訪問サービスの提供
  • 介護事業所の経営見える化・財務諸表の公表
  • 居宅介護支援事業所による予防支援事業指定
  • 処遇改善加算の一本化
  • 福祉用具のレンタル対象商品見直し
  • 科学的介護を訪問介護・居宅介護支援にも

ひとつずつポイントを解説していきます。

2-1. 2割自己負担対象者の拡大

確実性:不透明(2023年夏決定)→2023年年末に結論延期

影響を受けるサービス種別:全サービス

介護の費用

介護保険サービスの利用者は、利用者本人の前年の所得に応じて1割・2割・3割の自己負担を支払わなければいけません。現在、介護保険サービス対象者の9割以上の方は1割負担に該当しています。この負担割合の基準を見直し、2割負担対象者の割合を増やすという改正案です。

現役世代の負担増を避けることと、少子高齢化が続く中で制度を持続させることを目的としいています。しかし、1割負担が2割負担になるということは、介護保険サービス利用に伴う自己負担が2倍になるということを意味しています。急激な負担増は、家計に大きな影響を与えます。経済的な事情により、在宅サービスの利用を減らさなければいけない場合や、特別養護老人ホームなどの施設利用費が払えなくなるという場合も想定されます。

本来であればこの自己負担割合についての方針は2022年12月に決定する予定でしたが、この判断を政府は先送り。2023年の夏に方針が決定することとなりました。

財政状況や、物価高に伴う国民生活の影響、世論、政府与党の支持率など、今後の状況を見据えて決定していくものと考えられます。

当初2022年12月に決定する予定だった2割負担の拡大についての議論ですが、世論の影響もあって7月に結論を先延ばし。
さらに、この議論の結論を2023年年末まで先送りにすることが報道されました。

議論が熟することもなく、先送りしている印象はぬぐえませんが、現場への影響も大きくなりそうです。

介護保険負担増、年末に結論延期 政府、少子化対策の財源検討 | 共同通信
政府は26日、介護保険制度に関し、今夏までに決める予定だった保険料やサービス利用の負担を増やす案につ...

2-2. 通所介護事業所による訪問サービスの提供

確実性:ほぼ確定

影響を受けるサービス種別:通所介護・訪問介護など

デイサービスに行く男性高齢者イメージ

介護保険サービスのうち、人手不足が深刻化しているのが訪問介護です。訪問介護は自宅で生活する利用者の生活を支える重要なサービスです。しかし、その担い手であるホームヘルパーが少なく、募集しても人が集まらないというのが現状です。

都心部ではホームヘルパーの有効求人倍率が10倍を超えており、ホームヘルパーの確保ができず閉鎖する事業所も増えています

不足するホームヘルパーを補うため、デイサービスの職員に訪問介護の仕事をやってもらいたいというのが今回の狙いです。

従来から小規模多機能型居宅介護というサービスがありますが、これは訪問介護・デイサービス・ショートステイとケアマネジャーの機能がセットになったサービスです。このうち、ショートステイとケアマネジャーがないサービス事業所という位置づけになります。

介護労働者や介護事業者など、サービス資源の少ない過疎地域などでは、訪問介護・デイサービスという事業所種別の垣根を超えたサービスで効率化をすることができるかもしれません。

とはいえ、デイサービス事業所も決して人員に余裕があるわけでもなく、訪問サービスをしたくてもそこに人員を割ける体制がある事業所は限られるのではないでしょうか。

2-3. 介護事業所の経営見える化・財務諸表の公表

確実性:決定[法改正交付済]

影響を受けるサービス種別:すべての事業所

全国の介護サービス事業所の情報は、介護サービス情報公表システムという厚生労働省のシステムによって公開されています。このシステム上に、介護サービス事業所の財務諸表公開を義務付けて、事業所の経営状況の見える化を図るというものです。

売上や支出なども含めた財務状況にだれでもアクセスできるようになります。人件費の情報を見れば、その事業所で働く職員がどのくらいの給与をもらっているかも公開されてしまいます。

この項目はすでに政府決定されています。

全ての介護事業者に財務状況の報告を義務化 2024年度から毎年度 法案審議始まる | 介護ニュースJoint
16日の衆議院・本会議で、介護保険法の改正を含む「全世代型の持続可能な社会保障制度を構築するための法律案」の審議が始まった。【Joint編集部】 介護保険法の改正案は、厚生労働省の審議会が昨年末にまとめた意見書の内容を反

こちらはすでに2023年5月12日に賛成多数で国会で可決、5月19日には「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」として法改正が交付されています。

2-4. 居宅介護支援事業所による予防支援事業指定

確実性:決定[法改正交付済]

影響を受けるサービス種別:居宅介護支援・予防支援(地域包括支援センター)

ケアマネジャー

これまで要支援1・要支援2のケアプランをする介護予防支援のサービスは、各地区の地域包括支援センターが指定を受けて行っていました。要支援認定の方の中には、居宅介護支援の事業所のケアマネジャーが担当しているという人もいるかと思いますが、これは地域包括支援センターからの委託という形式で、いわば下請けのような形でケアプランを作成しているものでした。

地域包括支援センターの業務が多忙なため、予防支援の指定を居宅介護支援事業所でも受けられるようにし、地域包括支援センターの業務負担を少なくしようという狙いがあります。

地域包括支援センターと利用者の関係はどうなるのか、
これまで地域包括支援センターとしていた契約はどうなるのか、
予防支援の報酬単価はどうなるのかなど、具体的な部分についてはまだこれから議論していくことになりそうです。

介護予防支援、ケアマネ事業所も担い手に 2024年度から 改正案の審議始まる | 介護ニュースJoint
国会では22日、介護保険法の改正案を含む「全世代型の持続可能な社会保障制度を構築するための法律案」の審議が、衆院・厚生労働委員会で始まった。【Joint編集部】 介護保険法の改正案には、地域包括支援センターの負担の軽減に

こちらも同様に国会での賛成多数による可決し、5月19日付で法律の改正が交付されています。

2-5. 処遇改善加算の一本化

確実性:ほぼ確実

影響を受けるサービス種別:すべてのサービス事業所

介護職員の待遇を改善するために介護報酬には、介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算という三種類の加算が上乗せされています(*3)。

いずれも介護職員の待遇を改善するという目的によるものであり、この3つの加算を一本化しようというものです。

おそらく一本化に合わせて要件の見直し・加算金額の見直しも行われるので、利用する側の自己負担金額や、介護職員等の給与などにも影響があると思われます。

2-6. 福祉用具のレンタル対象商品見直し

確実性:微妙

影響を受けるサービス種別:福祉用具貸与・居宅介護支援

現在、介護保険では車いすや介護用ベッドなど、大きく分類して13種類の福祉用具をレンタルで利用することができます。

歩行補助つえ

中には、歩行器や歩行補助つえ、手すりなど、比較的安価な品物もレンタルで利用することができます。これらの比較的安価な商品に関しては、介護保険でのレンタルではなく、購入対象商品にするという話が出ています。

レンタル対象商品が購入対象商品に切り替わることで、長期間レンタル利用することで発生する介護報酬の発生を減らすことがねらいです。それと同時に、福祉用具レンタルが発生すればケアマネジャーによるケアプランの作成が必要になるため、介護報酬として居宅介護支援費(ケアプラン作成料)が発生してしまいます。福祉用具のレンタル費用と、居宅介護支援のケアプラン作成料の両方を削減することが目的となっています(*4)。

具体的に、厚生労働省は歩行補助つえをレンタルしている場合を想定したシミュレーションを提示しています。

厚生労働省資料・購入と貸与の比較

厚生労働省資料より:

歩行補助つえを

販売する場合
 利用者自己負担 1万円 のみ

福祉用具貸与する場合
 利用者自己負担 150円/月
 給付費 1,350円/月(福祉用具)+ 10,000円/月(居宅介護支援) 

ただ、福祉用具関連団体から大きな反発があり、この提案はトーンダウンしている印象があります。

日本介護支援専門員協会も独自に調査を行い、厚生労働省の想定する福祉用具のみの単品利用パターンは全利用者の6.7%と極めて少ないことを公表しています。また、具体例として挙げた歩行補助つえのみの利用パターンは1.2%しかないと反論をしています(*5)。

レンタルか購入かどちらかを選択できる「選択制」を導入するという案も浮上しています(*6)が、まだまだ具体的な提言には至っていません。選択制を導入するという可能性も残してはいますが、今回の制度改定では盛り込まれない可能性も高いと予想します。

2-7. 科学的介護を訪問介護・居宅介護支援にも

確実性:ほぼ確実

影響を受けるサービス種別:訪問介護・居宅介護支援

パソコン画面を見せるケアマネジャー

厚生労働省は科学的介護を推進しています。介護サービス利用者のサービス利用内容・介護度の変化といった情報を収集し、ビッグデータから最適な介護方法を割り出せるようになることを目指しています。データを蓄積しているシステムがLIFEというものです。

現在はデイサービスや特別養護老人ホームで、科学的介護がスタートしています。ただ、まだまだ情報収集の段階で、データをケアに生かすという部分に関してはまだまだ先の話になりそうです。

今後は事業所によっては訪問介護・居宅介護支援のサービスでもLIFEシステムに情報入力をするということもありそうです。

介護保険制度改正、現時点で見込まれている7つの主な変更ポイントについて解説しました。

再度、制度改定のポイントを、実現可能性もあわせて紹介します。

  • 2割自己負担対象者の拡大  :不透明・夏頃決定
  • 通所介護事業所による訪問サービスの提供  :ほぼ確定
  • 介護事業所の経営見える化・財務諸表の公表  :決定
  • 居宅介護支援事業所による予防支援事業指定  :ほぼ確定
  • 処遇改善加算の一本化  :ほぼ確定
  • 福祉用具のレンタル対象商品見直し  :微妙
  • 科学的介護を訪問介護・居宅介護支援にも  :ほぼ確定

3. 制度改定までのスケジュール

それでは2024年の制度改正までのスケジュールについて確認します。

既に大筋の議論は終わっていますが、自己負担割合を原則2割に引き上げるか、現行のベースを維持するのか、この決定は2023年夏まで先送りすることになりました。

介護保険制度改正と同時に、介護報酬という介護保険サービス提供に伴って発生する点数の改定も行われます。介護報酬の点数が公表されるのは前回の介護報酬改定(2021年4月改定分)ではその年の1月でした。同じ時期と考えれば1月頃に介護報酬の単価も公表されると思われます。

また、制度改定の実施前に、具体的な改正内容や解釈について示した介護保険制度改定に関するQ&Aも厚生労働省から公表されます。

具体的には次のようなスケジュールになると予想されます。

時期予定
2023年夏頃
 →2023年末
自己負担割合についての決定
(2割負担拡大について結論は2023年末に先送りに)
2024年1月頃介護報酬単価発表
2024年3月頃から制度改正に関するQ&A公表
2024年4月介護保険制度改正

まとめ

要介護認定

3年に一度行われる介護保険の制度改正。

介護保険という社会制度を持続可能なものにしていくことと、財源となる介護保険料や税金を負担する現役世代との世代間格差を埋めるという方向性を政府も示しています。

介護を行う家庭には厳しい制度改正になる可能性もありますが、介護を社会で支えるという制度の理念を守り、介護に困っている人が頼れる介護保険制度であってほしいと願っています。

これからの制度改正の議論についても注目し、ツイッターなどでもできるだけわかりやすく情報をお届けしていきますのでフォローをお願いいたします。

参考資料

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
運営会社:株式会社ユニバーサルスペース


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