いえケア 編集部
在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
2024年から改定される介護報酬の単価が発表されました。3年間はこの単価をもとに介護報酬が支払われるため、介護サービス事業を運営する企業の経営に影響があることはもちろん、サービス利用者が自己負担する金額、さらには介護職員が受け取ることのできる処遇改善の金額なども決まってきます。
今回、厚生労働省から公表された単価に、地域加算(と掛率)を掛け合わせた金額が介護報酬となります。
ただ、全てのコードを紹介することはできないので、重要な部分だけをピックアップして紹介したいと思います。
【この記事を読んでほしい人】
- 在宅介護に関わるみなさん
- 介護サービスの利用費用が増えるか気になっているご利用者様・ご家族様
居宅介護支援費(ケアマネジャー)
在宅のケアマネが一人の利用者のケアマネジメントを行うことで得られるのが居宅介護支援費。この単価は以下のようになりました。
居宅介護支援費 | 改定前 | 改定後 | 増減 |
居宅介護支援費(ⅰ)=要介護1,2 | 1076単位 | 1086単位 | +10単位 |
居宅介護支援費(ⅱ)=要介護3,4,5 | 1398単位 | 1411単位 | +13単位 |
ケアマネの人材不足が深刻化し、増え続ける高齢者・サービス利用者に対してケアマネジャーの人員は増えていないという供給不足が生じ、ケアマネがいないためにサービスが利用できないケアマネ難民の状態が起きていました。
さすがにこれだけケアマネの担い手が少なく、供給が追い付いていない状況で、さらに業務の軽減もされていないのであれば報酬単価は上がるだろうと、思っていましたし、そう思っていたケアマネさんは多かったはず。
増えたのはわずか10単位(要介護1,2の場合)という悲しい現実。特定事業所加算は引き上げられていますので、今後も大規模化を促していきたいという流れは変わらないのかもしれません。入院時連携もハードルが上がった分、単価は上がっていますので、医療連携の促進も求められているようですね(医療現場から求められているというより厚生労働省から求められているという方が強いですが)
居宅介護支援に関しては処遇改善加算の対象外なので、10単位アップといっても処遇改善加算を得られる他の事業種別に比べたら相対的にマイナス改定という見方もできるかもしれません。
今後もケアマネの人材不足は進んでいきそうですし、ケアマネ難民の増加も避けられないでしょう。
介護予防支援は438単位から442単位となっていますが、包括を介さず、直接居宅介護支援事業所が契約する場合は472単位となっています。個人的には契約に包括が介入するメリットはほぼ内容に思うので、直接契約した方がいいでしょうね。これまで地域包括から委託という形でケアマネジメントしていた要支援の利用者も、直接契約に代わるケースが多くなるかもしれませんね。
また、今回オンラインモニタリングの一部解禁が決定しました。ただ、本人や家族、医師や関係機関の同意など、条件が多いため、スタートするまでのハードルが高いという印象も感じます。詳細はこちらの記事をご参照ください。
訪問介護
居宅介護支援と同様に人材不足が深刻な訪問介護。
訪問介護の報酬単価は以下のようになりました。
改定前 | 改定後 | 増減 | |
身体介護 30分未満 | 250単位 | 244単位 | -6単位 |
30分以上60分未満 | 396単位 | 387単位 | -9単位 |
生活援助 45分未満 | 183単位 | 179単位 | -4単位 |
45分以上 | 225単位 | 220単位 | -5単位 |
人材不足が深刻化し、新サービスを創設して訪問サービスの担い手を増やす計画までありました。大きな改定内容はなかったため、報酬単価は底上げされるのかと考えていました。
蓋を開けてみたらまさかのマイナス改定。これはかなり厳しいですね。
大規模化して特定事業所になるしかなさそうですが、それまで運営して事業所を大きくしていくこと自体難しそうな気もします。
処遇改善加算を底上げしたからいいでしょ、みたいなことを書いてありましたが。いやいや、そんなに上がってませんけど。
ちょっと今回はえげつないというか、これは厳しいですね。訪問介護をやりたいという人がいなくなってしまいます。
訪問介護に関しては、現在生活援助の介護保険サービス除外を検討する段階になっており、大きな影響が予想されます。
人材不足を補うために外国人介護士を訪問介護にも解禁することが決定されました。ただ、円安が進み諸外国と比べて低賃金な日本の介護労働。期待するだけの労働力の確保は難しいかもしれません。
訪問看護
訪問看護は以下のように改定されます。
訪問看護費 | 改定前 | 改定後 | 増減 |
30分未満 | 470単位 | 471単位 | +1単位 |
60分未満 | 821単位 | 823単位 | +2単位 |
90分未満 | 921単位 | 923単位 | +2単位 |
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問の場合 | 293単位 | 294単位 | +1単位 |
訪問看護はここ数年で事業所数が急激に増えています。ただ、そのサービスの質にはばらつきも大きいことから、質の高い事業所を評価していく流れを強化しているように思います。その質のひとつの指標として、専門性がクローズアップされています。
新たに専門管理加算250単位が作られましたので、人工肛門・人口膀胱などの専門看護師・特定行為研修終了後の看護師等がいて、ストマケアの依頼を受ける機会が多ければチャンスかもしれません。ただ、専門性の高い看護師がいるということで料金が高くなるからと敬遠されるケースも出てきてしまうかもしれませんが。悪性腫瘍の鎮痛療法と書いてありますが、この場合は多くは医療保険の対象になるかと思います。
半面、最も大きな影響を受けるのはリハビリテーションをメインにしている訪問看護事業所でしょう。看護職員の訪問回数<リハ職員の訪問回数の事業所もしくは、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない事業所は8単位の減算となります。
リハビリテーションスタッフが中心で、看護師は最低限しか配置していない事業所に関しては、かなり大きな減算になりそうです。ちなみに、リハビリテーションの訪問は1枠20分で、40分1セットで訪問している事業所が多いものですから、1訪問16単位の減額と考えるとイメージしやすいでしょうか。かなり大きな減算となります。
訪問看護・通所リハビリ・訪問リハビリなど医療系サービスに関しては4月改定ではなく、診療報酬改定に合わせて6月改定となります。
通所介護
通所介護(中規模以上のデイサービス)は以下のように改定されました。
通所介護 通常規模 7時間以上8時間未満 | 改定前 | 改定後 | 増減 |
要介護1 | 655単位 | 658単位 | +3単位 |
要介護2 | 773単位 | 777単位 | +4単位 |
要介護3 | 896単位 | 900単位 | +4単位 |
要介護4 | 1018単位 | 1023単位 | +5単位 |
要介護5 | 1142単位 | 1148単位 | +6単位 |
単位数は微増となっています。
ガソリン代・光熱費・食材費・感染症対策の物品など、コスト高の影響を大いに受ける通所系サービス。たったこれだけの報酬増でそのコストの増加分を吸収できるかと言ったら、絶対に無理です。工夫してどうにかなるコストではないだけにこれもかなり厳しい改定と言えます。
通常規模型のみ掲載しましたが、大規模型も同様に微増となっています。
ちなみに、研修が義務化された入浴介助加算ですが、単位数はこれまでと変わりません。要件が増えたのに報酬が変わらないというのはどうなんでしょうか。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護は小規模のデイサービスです。地域密着型通所介護は以下のように改定されました。
地域密着型通所介護 7時間以上8時間未満 | 改定前 | 改定後 | 増減 |
要介護1 | 750単位 | 753単位 | +3単位 |
要介護2 | 887単位 | 890単位 | +3単位 |
要介護3 | 1028単位 | 1032単位 | +4単位 |
要介護4 | 1168単位 | 1172単位 | +4単位 |
要介護5 | 1308単位 | 1312単位 | +5単位 |
地域密着型通所介護も通所介護同様、微増にとどまりました。同様にコストだがによる経営的なダメージを吸収することは難しいかもしれません。
まとめ
まだ詳しく見ているわけではありませんので続報はこちらからも発信していきます。
賃上げに関しては処遇改善加算が引き上げられました。すごい増えたように見えます。
ただ、よく見てみると、
処遇改善(Ⅰ)+特定処遇改善(Ⅰ)+ベースアップ=22.4%を
まとめて
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)=24.5%
になっただけですので、2.1%増えただけです。それほど大きなインパクトには思えないように感じます。本当に6000円賃上げは実現するのか・・・。
処遇改善加算による料金変更について、こちらの記事が参考になるかと思います。
今回、メリハリをつけた報酬改定というよりも、物価高もあるためにちょっとだけ上げたよ、という改定イメージです。その中で、人手不足が深刻な訪問介護の報酬単価減はかなりインパクトの大きいものと感じます。在宅介護を支えるマンパワーが維持できるのか、心配ですね。
参考資料
この記事を執筆・編集したのは
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