介護保険の申請は入院中でもできる?働きながら申請できる便利な方法3選

入院中の介護保険申請ってできる?忙しい人でもできる便利な方法3選 介護コラム
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いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。

突然の親の入院。多忙な仕事も抱える中、家族は入退院の手続き・保険の申請・連絡など、やらなければいけないことが山積み。

どうやら退院の方向で進みそう、ということで、ひとまずホッとしたところで、病院から「介護保険」というキーワードが。え?介護保険って?保険料を支払っているのは知っているけれど、頭の中は?マークがいっぱい。

対象者の長男
対象者の長男

先日、父が入院しましした。幸い大事には至らず、しばらくリハビリなどを受けてから自宅に退院という話になりそうです。とはいうものの、歩く様子はふらふらで、自宅にひとりで置いておくのは心配です。

病院からは自宅での介護ができるように、「介護保険」を利用していくように勧められたのですが、自分も仕事を持っているのでまったく余裕がないんです。

まだ入院中なんですけど、介護保険の申請ってできるんですか?仕事で忙しくて平日役所に行く時間がないんですけど、どうしたらいいですか?教えてください。

いえケア編集部
いえケア編集部

相談ありがとうございます。

急な入院、気持ちばかりが焦ってしまいますよね。大変だと思います。

介護保険の認定申請は入院中でもできます。

また、仕事が忙しい方でも申請する方法もありますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

入院中でも介護保険申請は可能

突然病状が悪化した高齢者が救急搬送される

家族の入院で突然に「介護」を現実的な問題として感じる方がいます。

  • 「仕事に一生懸命で介護のことなんて考えたこともなかった」
  • 「今までも元気だったから、まだまだ元気だろうと思い込んでいた」
  • 「まさかこんな急に介護が必要になると思っていなかった」

以上のような声が聞かれます。多く場合、介護は「突然」の問題としてやってきます。

介護保険の申請」と言われてもどこでどうしたらいいの?そもそも入院中は介護保険の申請ってできるの?どこでどうしたらいいの?

そのような疑問にお答えします。

介護保険制度の概要と申請の流れ

まず、介護保険制度について簡単に解説します。

介護保険とは、介護が必要になってもその人らしく尊厳を守られ生活できる社会を目指した制度。介護をする人を社会全体で支える社会システムでもあります。

第一号被保険者(65歳以上)が保険料を支払い、それをもとに介護が必要になった際のサービス利用費用に充てるというものです。サービス利用者は、(所得に応じて)1~3割の自己負担でサービス利用ができます。

これが介護保険制度の簡単な説明です。介護保険制度についての詳細はこちらの記事に掲載しています。

申請からサービス利用までの流れは以下の通りとなります。

介護保険申請からサービス利用するまで

サービスを利用するまでには以下のステップがあります。

  • 申請書の提出: 市区町村の窓口、もしくは地域包括支援センター・居宅介護支援事業所で申請します。
  • 認定調査の実施: 申請を受けて、介護がどの程度必要かを市町村から派遣された調査員が確認します。
  • 審査・判定: 主治医の意見書の内容も踏まえ、市町村が調査結果をもとに要介護度を決定します。
  • 通知の受け取り: 要介護認定の判定結果が通知されます。
  • ケアプランの作成とサービス開始: ケアマネジャーが要介護度や、本人の状況・希望に応じてケアプランを作成します。それに合わせてサービス計画書が作成され、各サービスが提供されます。

申請には数週間から1ヶ月以上かかることが多いため、早めの準備が重要です。

入院中の場合は、退院時期なども踏まえ、どの時点で申請を行うか、タイミングが非常に重要です。

入院中の介護保険申請の具体的な手続き

入院中に介護保険の新規申請手続きをする場合の手順について解説します。

1. 申請書の提出

介護保険の申請書を提出する女性

介護保険は申請主義なので、本人や家族が申請をしなければいけません。

入院中は本人自ら申請をするために役所等を訪問することができません。そのため、本人に代わって家族が申請の手続きを行うことが一般的です。

申請する場合、市町村の介護保険担当窓口が一般的に知られています。

ただ、

  • 申請書を出したくても営業時間内に行けないよ!
  • 土日しか休みがないのに役所に行っている時間なんてないよ

と言われる方も多いと思います。

忙しい方でも介護保険申請の手続きはできます。申請するにはいろいろな方法がありますので、詳細はまた別の章でお伝えします。

申請書には、被保険者番号や生年月日、住所など、入院中の本人の個人情報を記載します。

一番大事なのは主治医の情報です。入院中に介護保険の申請を行う場合は、普段のかかりつけ医の名前でなく、入院中の担当医の名前を記載することをお勧めします。入院前の状態しか知らない普段のかかりつけ医ではなく、今現在の状態をよく見ている病院の担当医に記載してもらう方が正確な情報を反映することができます。

介護認定申請書

申請する前に、現在の担当医師の名前と担当課は確認し、メモを取っておくようにしましょう

申請書を記載する際に、「主治医」の欄があるので、担当医師の名前と担当課、連絡先を申請書に記載します(上図の⑧部分)。また、事前に医師に介護保険申請を行う旨を伝え、了承を得ておきましょう。

他の項目でわからない部分があっても、氏名・住所・主治医医療機関・主治医名・連絡先が最低入っていれば申請できる場合があります(未記入欄が多くても受け付けてもらえるかどうかは市町村によりますので、ご確認ください)。

また、病棟に認定調査に行く場合は、病棟の窓口(病棟看護師の担当者等)を伝えるとスムーズです。

2. 認定調査の実施

病室での認定調査。立ち会う娘と病棟看護師

認定調査は、どのくらいの介護が必要かを判断するために行われます。調査員が本人に直接会って、生活状況や体の状態を確認します。入院中であれば、市町村から派遣された調査員が病室を訪問して、病室で調査が行われることが一般的です。

この際、家族が立ち会い、普段の生活の困難さについて補足説明することが望ましいです。また、入院中の様子をよく見ている病棟の看護師からも調査員に説明を行います。現在の病棟内での様子やリハビリの様子、認知症やそれに伴う周辺症状の有無など、詳細な情報を調査員に伝えます。

ただし、入院後しばらくは状態が安定しないことが多いため、認定調査が入れない場合もあります。安定しない状態で調査を行っても正確な情報を得ることができないため、入院後まもなくの認定調査を行うことを禁止している市町村もあります(具体的に入院後○日以降と日数を設定している市町村もあり)。

早めに申請した方がいい。けれど、早すぎてもよくない。だったらいつ申請したらいいの?ということであれば、まずは病院と相談しましょう。退院についても適切なタイミングがありますので、退院に間に合うように申請を行うことがいいでしょう。

3. 審査・判定と通知の受け取り

介護保険証を受け取る女性

認定調査の結果と主治医意見書の内容をもとに、市町村の介護認定審査会で審査・判定が行われます。判定結果は郵送で通知されるため、申請後は自宅での受け取りが必要です。

本人が入院中のため受け取りができない、と言うことも考えておきましょう。市町村によって異なりますが、介護保険証を簡易書留で送る市町村もあります。簡易書留を受け取る人がいなければ、介護保険証は郵便局で保管され、さらに受け取りができなければ市町村に戻されてしまいます。

認定は出ているのに保険証を受け取れない。こんな事態を避けるためには以下のような方法が有効です。

  • 申請時に郵送先を変更。日中の受け取りができる人のいる家に送ってもらう。
  • 申請時に郵送先を変更。職場など日中に自分がいる場所に送ってもらう。
  • 自宅で受け取りができなければ、夜間や土曜日・日曜日に自分で保管している郵便局に受け取りに行く。

保険証の扱いはアナログなので不便な面もあると思いますが、できるだけ早く受け取れる方法を考えましょう。

4. 地域包括支援センター・ケアマネジャーへの相談

介護保険サービスを利用するためにはケアマネジャーが必要です。

まずは認定の結果を確認し、地域包括支援センターへ相談。もし認定が要支援だったら地域包括支援センターの職員が、要介護だったら居宅介護支援事業所がケアプラン(もしくは予防ケアプラン)を作成します。

居宅介護支援事業所を選ぶ際は、地域包括支援センターが候補の事業所などを紹介してくれますので、相談しながら事業所を選びましょう。

事業所が決定し、居宅介護支援事業所と契約(もしくは対応してもらえるという約束)したら、病院の相談員に担当事業所と担当する予定のケアマネジャーの名前を伝え、連携してもらいます。

その後、ケアマネジャーと病院スタッフで退院後の自宅の生活環境についての確認や打ち合わせ、必要なサービスの調整などを行っていきます。

以上が大まかな流れとなります。

入院中に介護保険申請をする場合はイレギュラーな対応が必要な部分も多いので、病院の相談員や地域包括支援センター等によく相談して行動しましょう。

入院中の申請で困ったとき、誰に相談できる?

病院の医療ソーシャルワーカーと相談する女性

入院中でも介護保険申請を進めたい。でも時間もないし、知識も経験もない。そんな時にサポートしてくれるのは以下のような方々です。

  • 病院の医療ソーシャルワーカー・退院調整窓口: 病院には医療ソーシャルワーカーが在籍していることが多く、在宅生活との橋渡しになってくれる存在です。病院によっては、退院調整専門の部署もあります。介護保険申請についての説明や調整、地域の相談機関の紹介、退院後の医療機関や訪問看護事業所との連携など、幅広くフォローしてくれます。
    医療ソーシャルワーカー等に相談することによって、必要な書類の準備や申請の流れについて具体的なアドバイスを受けることができます。
  • 地域包括支援センター: 地域包括支援センターは、介護に関する相談を広範に受け付けている窓口です。介護保険の申請の窓口にもなり、認定が出た後にケアプランを作成する居宅介護支援事業所も紹介してくれます。もちろん、入院中でもサポートを受けることができます。電話での相談も可能で、土日祝日でも開所しているセンターもあります。
  • 市町村: 市町村は介護保険の申請窓口でもあります。市町村によっては土曜開庁日を設けている地域もありますので、調べてみるのもいいかもしれません。また、認定調査員は市町村から派遣されます。家族が認定調査の立ち合いをする場合は、土曜日に調査ができるかなど、相談することをお勧めします。
  • 他の家族: 自分一人で抱え込まず、協力してくれる人がいれば相談しましょう。退院前に自宅の片づけをしてもらう、書類の受け取りをしてもらう、必要な買い物をしてもらうなど、役割を分担しましょう。相談しながら、お互い無理のない範囲で協力していくことが理想です。

一人で悩まずに相談することでひとつひとつ課題をクリアにしていきましょう。

仕事をしながら介護認定申請するための方法

仕事をしながら介護保険認定するための方法

働きながら介護認定の申請をする方にとっては様々なハードルがあります。土日しか休みがないので介護保険の申請ができない!と焦っている方もいるかもしれません。そんな方でも申請の手続きができる方法があります。

郵送での介護保険申請

郵便での介護保険申請が可能です。平日に役所に行くことが難しい場合、郵送で介護保険申請を進めることができます。

自治体のホームページから、介護保険に関するページにアクセスしましょう。申請書のダウンロードができますので、ダウンロードし、印刷します。提出方法や記載例などを確認しながら必要事項を記載。介護保険証のコピーなどの添付書類が必要な場合もあります。必要な書類の準備ができれば郵便で送付することが可能です。

オンライン電子申請

一部の自治体ではオンラインで介護認定の申請をできます。

マイナンバーカードの認証をし、マイナポータルからシステムにログインし、電子申請を行える自治体があります。代理で申請をする場合は委任状などが必要です。

ただ、全ての自治体がオンラインに対応しているわけではありません。また、マイナンバーカードの保有やマイナポータルへの登録が必須になる場合が多いので要件をよく確認しましょう。

地域包括支援センターへの相談

地域包括支援センターの中には、土日祝日や夜間に対応してくれるセンターもあります。これにより、平日に時間が取れない場合でも、休日や夜間を活用して相談や申請手続きを進めることが可能です。

ただ、土日祝日や夜間に開所している場合は、センター内に人手が少ないことが多いです。窓口が混雑で対応できない可能性もあります。事前に予約をしておく方が確実ですので、まずは電話で問い合わせてから訪問するのが良いでしょう。

入院中の介護保険申請のタイミング

入院中の場合、介護保険申請をいつ行うか。

これはその方の身体状況や病院側の状況、さらに受け入れる家族や在宅サービス体制の状況などによって大きく変わります。そのため、入院後何日で申請や、退院前何日で申請、という目安を決めることはできません。

ただ、介護保険申請が必要なタイミングがあれば病院側が説明してくれますので、基本的には病院からの話があったタイミングで行動することをお勧めします。介護認定のタイミングがずれているとどうなるか、実例で紹介します。

×事例:介護保険の申請が早すぎた場合

  • 親が入院したため、その翌日に慌てて介護保険の認定を申請に市役所へ。市役所で申請書類を書いて提出するも、まだ入院したばかりだから調査に行けるのは来週からです。と言われてしまう。
  • 急いで認定申請するも、病院側の担当医がまだ決まらず、情報も整理できていない。認定調査に来たものの、応対する看護師も情報を十分把握ができていなかったため、状態を正確に伝えられず、結果的に想像していた区分よりも要介護認定が低く判定されてしまう。
  • 慌てて介護保険を申請。ただ、すぐに転院することが決まり、現在の病院では認定調査を受けられないことが判明。転院した後に認定調査をすることとなる。もう一度市役所に行き、事情を説明。転院先の病院の情報を記載して再提出する。

このように、慌てて申請をしてもうまく手続きが進まない事例は数多くあります。まずは病院側と確認し、申請は早くした方がいいでしょうか?いつごろまでに申請すればいいでしょうか?と確認しておくことをお勧めします。

×事例:介護保険の申請が遅すぎた場合

  • 介護保険の申請をするのが遅かったため、退院日までに介護保険の認定が出なかった。
  • 介護保険の認定調査をするのが病院ではなく、自宅に退院してからの認定調査。自宅に帰ってきて比較的元気な状態で調査を受けたため、思っていたよりも軽度な認定が出た。

タイミングを失って遅くなりすぎても、認定前の退院や自宅での認定調査などの状況となる場合があります。

介護保険の認定が決定する前に退院してしまった場合はどうなるでしょうか。その場合、暫定のケアプランで介護保険のサービス利用ができます。介護保険の認定は、介護認定の申請を提出した日から有効となります。つまり、認定が要介護2で届いたら、通知された日や、審査会で決定した日から要介護2ではなく、介護保険の認定を申請した日にさかのぼって要介護2が有効となります。

そのため、認定が届く前にサービスを利用することも可能です。ただ、思っていたよりも低い認定が出る場合もあり、限度額オーバーしてしまう可能性もあります。暫定ケアプランでサービスを利用する場合は慎重に、最低限のサービスを意識して利用することをお勧めします。

認定がいつまでも届かない!という場合は不在票を見落としている場合などもありますので、市町村に確認してみてください。

退院後のサービス利用の検討と退院の準備

介護保険で利用できるサービスには、訪問介護やデイサービスなどがあります。これらのサービスを利用するためには、退院前にケアマネジャーと相談し、どのサービスが最適かを検討することが大切です。

また、自宅の生活環境の調整も重要です。介護用ベッドは必要か、手すりや段差解消が必要か。住宅の環境の評価については、病院の理学療法士・作業療法士等のリハビリ専門職が退院前に同行訪問をするパターンが多いです。リスクの高い場所などを確認し、住宅改修や福祉用具の提案を行います。また、自宅の環境に合わせて動作のリハビリをし、退院後の生活にも備えます。

退院後の生活環境についてはこちらの記事を参照してください。

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自宅で介護をするために、とても大事なのが介護をする環境です。 介護者側から見て介護を少しでも楽にするために重要であるとともに、介護される側も快適で過ごすためにはその生活環境を無視することはできません。 こんな相談をいただいています。 相談者

まとめ

入院中でも、介護保険の申請は可能です。病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談しながら、退院後にすぐ介護サービスを利用できるように準備しましょう。

仕事をしながら、時間に余裕がない方でも申請や相談をすることはできます。協力してくれる機関がありますので、ぜひ上手に活用しましょう。

ぜひ早めの対応を心がけ、退院後の生活にスムーズに移行できるといいですね。

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この記事を執筆・編集したのは

いえケア 編集部

在宅介護の総合プラットフォームいえケアです。
いえケア編集部では主任介護支援専門員としての地域包括支援センター相談員や居宅介護支援事業所管理者などの介護分野での経験を活かし、在宅介護に役立つ記事を作成しております。
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